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第二章
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甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるエルシオンのお蔭で、リュカオンの監禁生活は驚くほど快適だった。快適な寝床や美味しい食事だけでなく、暖かい風呂に珍しい酒の数々。毎日が贅沢三昧だ。
エルシオンは約束通りワインと手紙をすぐに届けてくれたので、やっと狼族の仲間たちと連絡が取れるようになった。家を出ることはできずとも手紙を運んでもらえることになり、向こうの情報も色々と入ってくる。
宴は今のところ順調ではあるものの、なぜかリュカオンが白うさぎに殺されたという根も葉もない噂が立っているらしい。だが、あまりにも荒唐無稽すぎて信じている者は少ないという。
柔らかなソファに深く座り、何通もの報告の手紙を読み進めていた彼は、ふと気になる報告を見つけて手を止めた。
考え込んでいると、隣で控えていたエルシオンが声をかけてくる。
「何かあったのか?」
「ああ、いくつかの群れがまだ到着してねぇんだって。それから、商人もまだ来てねぇらしい」
来ていないのは、隣国やそれ以上に遠い地域に住んでいる者たちだ。それに、商人は黒の森で宴を行うこの時期、酒好きの狼たちのためにいつも酒を売りに来ているのだが、まだ姿が見えないという。
何度も宴に参加しているが、こんなことは初めてだった。
「お前が酒を差し入れてくれるから、助かってるってよ。良かったな」
あれから何度か、エルシオンに手紙と共に箱庭で流通する珍しい酒を届けてもらっていた。それもかなりの量だ。それなのに、エルシオンはいつも嫌な顔一つせずに届けてくれる。
結果として酒不足を補う形となり、手紙には仲間たちからの感謝の言葉が綴られていた。
「リュカの采配がいいからだろう」
「いや、お前のお陰だよ。無茶言ってんのにありがとな」
エルシオンは黙ったままいつもの澄ました顔をしていたが、リュカオンは彼との生活を続けるうちにあることに気が付いていた。彼は感情が耳に現れがちだが、嬉しい時はぴょこぴょこと小さい尻尾を振っているのだ。
ちらりと尻尾へ視線を向けると、案の定ふわふわの塊が元気いっぱいに揺れていた。愛らしい塊につい手が伸びそうになるが、リュカオンは改めて手紙に目を通した。
「でも参ったな。様子を見に行った奴らが、迷子になって帰ってくるんだと」
報告には、あまりにも客人の到着が遅いので、何かあったのではと配下を偵察に行かせたとある。しかし、何度人を送っても道を見失い、戻ってきてしまうという。
手紙を覗き込んだエルシオンがぽつりと呟いた。
「アリスが道を封鎖したせいかもしれない」
「道を封鎖? 魔女様はそんなこともできんのか?」
普段は箱庭に引きこもっているので、その姿を見られるのは彼女が外出のために空を飛んでいる時くらいだ。リュカオンは三回くらいしか見かけたことがなく、アリスがどんな魔法を使うかもよく分かっていなかった。
「彼女は他国で疫病が流行っていると言っていた。そのせいで、箱庭の住人はしばらく彼女に買い出しを頼んでいる」
状況を理解できていないリュカオンのために、彼は箱庭の物流事情を教えてくれた。先の外出も、遠くの地方から商人を連れてくるためだったと説明する。
考え込みながら、エルシオンは言葉を続けた。
「……ただ、疫病というのは怪しい。恐らく、他の領土の魔女と喧嘩しただけだろう」
「喧嘩で往来禁止って、そんなんアリかよ……その閉鎖、いつまで続くか分かるか?」
これから冬になるというのに、閉鎖が続いて商人が来ないとなると冬の備えができない。狼族はいつも宴のときにやって来た商人に必要なものを注文して、雪が降る頃に届けてもらっているのだ。
「彼女の気分次第だ。今回はかなり機嫌が悪いから、長丁場になると思う」
その言葉を聞いて、リュカオンは頭を抱えた。事態は思っていたよりも深刻だ。
箱庭の住人たちはアリスが居るから良いだろうが、外の住人にとっては一大事だ。備えが不十分だと死人も出かねない。
仲間たちにどう説明したものか。今後起きうる最悪の事態を想定して悩んでいると、エルシオンが静かに口を開いた。
「彼女はクマと狐の獣人の所に取り寄せの希望を聞くはずだ。彼らに協力を要請してみよう。うさぎ族にも余分に物資を頼めないか掛け合ってみる」
箱庭の領地の側面を守るクマ族、そして病院を経営している狐族はアリスにとっても敵には回せない存在で、彼らの所にはいつも便宜を図っているという。そこにうさぎ族の分も加われば、なんとか乗り切れそうだ。
願ってもない申し出に、リュカオンは大喜びでエルシオンに飛びついた。
「助かる! お前がいてくれて本当に良かった!!」
ぎゅうっと力いっぱい抱きしめると、彼は突然のことに驚いて硬直してしまった。頬はみるみるうちに赤く染まり、珍しく動揺しているようだ。
照れた顔を見たリュカオンは、ニヤリと口の端を吊り上げる。そしてぴんと立った耳にそっと唇を寄せ、甘ったるい声で囁いた。
「エル、ありがとう」
意表を突かれてポカンとするエルシオンを見て、彼に振り回されてきたリュカオンはやっと意趣返しができたと満足する。身を離して驚きに見開かれた赤い目を見据えると、心からの感謝を込めて言った。
「お前はもう俺たちの家族だ! エルが困った時は、俺たちが助けてやるからな」
無関係な狼族のためにここまで尽力してくれるなんて、彼はもう立派な群れの一員だ。最初の頃こそ人さらいに遭って困っていたが、彼のひたむきな愛情ともてなしにリュカオンは感謝の気持ちさえ芽生え始めていた。
何より、攫われていなければ箱庭の事情も分からないままだった。この非常事態に情報が手に入るのはありがたい。
エルシオンは耳をピンと立て、嬉しそうに頬を緩めながらリュカオンをじっと見つめた。
「家族ということは、私と番になってくれるということか?」
甘やかな期待に満ちた声に、彼の求愛について頭から抜け落ちていたリュカオンは小さく息を呑んだ。熱を帯びた眼差しから目を逸らすことができず、エルシオンの顔がぐっと近付いてくる。
あわや唇同士が触れそうになり、リュカオンは慌てて後ろに仰け反った。
「……そ、そういう意味じゃねぇからっ」
家族と番は別だと付け加えると、エルシオンの耳がしゅんと伏せる。リュカオンは落ち込んだ彼の顔から視線を逸らし、甘い空気を払拭するように口を開いた。
「まずは仲間たちに教えてやんねぇとな。うさぎ族への交渉はエルに任せて良いんだろ? 狐の方は俺の仲間を向かわせる」
狐の住処は黒の森の奥地で、狼族の経営する飯屋にもよく来ているため、それなりに親しい仲だ。リュカオンは部下を送ればすぐに話がつくだろうと予想していた。
さっそく手紙に箱庭の事情とこれからのことについて書き連ねていると、隣で様子を見ていたエルシオンが思わぬことを口にした。
「猫族と犬族も、交渉次第では協力してくれるかもしれない」
「本当か!」
箱庭の内と外はほとんど断絶されているようなもので、リュカオンは内部に何の伝手も持っていない。頼める相手は多ければ多いほど良いと目を輝かせる。
「ねずみ族にも声をかけてみる。だから……」
言葉が途切れ、エルシオンは何か言いたげにじっとリュカオンの顔を窺い見た。期待するような眼差しに、彼は首を傾げる。
「どうした?」
「……ご褒美がほしい」
消え入りそうな声と共に、エルシオンは甘えるようにそっと肩にもたれかかった。
ご褒美と言っても、着の身着のままで誘拐されたリュカオンは彼にあげられるものを何も持っていない。そうすると、できることは限られてくる。
エルシオンの言いたいことを察して、彼は顔を赤らめた。だが、何もお礼をしないというのもプライドが許さない。
「わ、分かった。目ぇ閉じな」
覚悟を決めてそう言うと、エルシオンは嬉しそうに身を起こし、そっと目を閉じた。
彼の長いまつ毛は、目を閉じると一層際立つ。その端正な顔立ちは息を呑むほど美しく、目を閉じるとより作り物めいて見える。
リュカオンは大きく深呼吸して心を落ち着かせると、静かに顔を寄せた。
しかし、どうしても彼の唇にキスすることができない。いざしようとすると恥ずかしさが込み上げてきて、彼は迷った末、ちょっと伸びをして滑らかな額に口づけた。
ちゅっと軽やかな音をさせ、リュカオンはぎこちなくソファに座り直した。顔は火を吹いたように熱くなり、隣を見ることができない。
それでも、エルシオンは満足したらしい。お返しにリュカオンの頬に軽く口づけ、ソファから腰を上げた。
「これから箱庭に話を通しに行ってくる。場合によっては代表たちと話し合うことになるかもしれないが、大丈夫か?」
「お、おう……お前に任せる」
手紙に没頭するふりをしていたリュカオンは、ふと可愛いものしか立ち入れないという箱庭の決まりを思い出す。エルシオンは美しい見た目をしているが、可愛いとは程遠い。
どうするのか気になり、彼はこっそりと様子を窺う。すると、エルシオンは小瓶を持ち、透き通る青色の液体を飲み干していた。
ぼふんと白い煙が上がり、彼の体を包み込む。一体何が起こったのか、リュカオンが思わずソファから腰を浮かせると、煙が晴れて子うさぎの獣人が現れた。
「行ってくる」
零れ落ちそうな大きな赤い目と可愛らしい少年の声に、リュカオンはあっと声を上げる。下半身をふわふわの白い毛に覆われた姿はまさに半人半獣だ。
獣人の多くは幼少期、獣の部分が多くなる。そのため、リュカオンは成獣したエルシオンを見ても気付けなかったのだ。
やっと思い出したというのに、愛らしい子うさぎは引き止める間もなく、ステンドグラスの窓がある扉の奥に消えてしまった。
エルシオンは約束通りワインと手紙をすぐに届けてくれたので、やっと狼族の仲間たちと連絡が取れるようになった。家を出ることはできずとも手紙を運んでもらえることになり、向こうの情報も色々と入ってくる。
宴は今のところ順調ではあるものの、なぜかリュカオンが白うさぎに殺されたという根も葉もない噂が立っているらしい。だが、あまりにも荒唐無稽すぎて信じている者は少ないという。
柔らかなソファに深く座り、何通もの報告の手紙を読み進めていた彼は、ふと気になる報告を見つけて手を止めた。
考え込んでいると、隣で控えていたエルシオンが声をかけてくる。
「何かあったのか?」
「ああ、いくつかの群れがまだ到着してねぇんだって。それから、商人もまだ来てねぇらしい」
来ていないのは、隣国やそれ以上に遠い地域に住んでいる者たちだ。それに、商人は黒の森で宴を行うこの時期、酒好きの狼たちのためにいつも酒を売りに来ているのだが、まだ姿が見えないという。
何度も宴に参加しているが、こんなことは初めてだった。
「お前が酒を差し入れてくれるから、助かってるってよ。良かったな」
あれから何度か、エルシオンに手紙と共に箱庭で流通する珍しい酒を届けてもらっていた。それもかなりの量だ。それなのに、エルシオンはいつも嫌な顔一つせずに届けてくれる。
結果として酒不足を補う形となり、手紙には仲間たちからの感謝の言葉が綴られていた。
「リュカの采配がいいからだろう」
「いや、お前のお陰だよ。無茶言ってんのにありがとな」
エルシオンは黙ったままいつもの澄ました顔をしていたが、リュカオンは彼との生活を続けるうちにあることに気が付いていた。彼は感情が耳に現れがちだが、嬉しい時はぴょこぴょこと小さい尻尾を振っているのだ。
ちらりと尻尾へ視線を向けると、案の定ふわふわの塊が元気いっぱいに揺れていた。愛らしい塊につい手が伸びそうになるが、リュカオンは改めて手紙に目を通した。
「でも参ったな。様子を見に行った奴らが、迷子になって帰ってくるんだと」
報告には、あまりにも客人の到着が遅いので、何かあったのではと配下を偵察に行かせたとある。しかし、何度人を送っても道を見失い、戻ってきてしまうという。
手紙を覗き込んだエルシオンがぽつりと呟いた。
「アリスが道を封鎖したせいかもしれない」
「道を封鎖? 魔女様はそんなこともできんのか?」
普段は箱庭に引きこもっているので、その姿を見られるのは彼女が外出のために空を飛んでいる時くらいだ。リュカオンは三回くらいしか見かけたことがなく、アリスがどんな魔法を使うかもよく分かっていなかった。
「彼女は他国で疫病が流行っていると言っていた。そのせいで、箱庭の住人はしばらく彼女に買い出しを頼んでいる」
状況を理解できていないリュカオンのために、彼は箱庭の物流事情を教えてくれた。先の外出も、遠くの地方から商人を連れてくるためだったと説明する。
考え込みながら、エルシオンは言葉を続けた。
「……ただ、疫病というのは怪しい。恐らく、他の領土の魔女と喧嘩しただけだろう」
「喧嘩で往来禁止って、そんなんアリかよ……その閉鎖、いつまで続くか分かるか?」
これから冬になるというのに、閉鎖が続いて商人が来ないとなると冬の備えができない。狼族はいつも宴のときにやって来た商人に必要なものを注文して、雪が降る頃に届けてもらっているのだ。
「彼女の気分次第だ。今回はかなり機嫌が悪いから、長丁場になると思う」
その言葉を聞いて、リュカオンは頭を抱えた。事態は思っていたよりも深刻だ。
箱庭の住人たちはアリスが居るから良いだろうが、外の住人にとっては一大事だ。備えが不十分だと死人も出かねない。
仲間たちにどう説明したものか。今後起きうる最悪の事態を想定して悩んでいると、エルシオンが静かに口を開いた。
「彼女はクマと狐の獣人の所に取り寄せの希望を聞くはずだ。彼らに協力を要請してみよう。うさぎ族にも余分に物資を頼めないか掛け合ってみる」
箱庭の領地の側面を守るクマ族、そして病院を経営している狐族はアリスにとっても敵には回せない存在で、彼らの所にはいつも便宜を図っているという。そこにうさぎ族の分も加われば、なんとか乗り切れそうだ。
願ってもない申し出に、リュカオンは大喜びでエルシオンに飛びついた。
「助かる! お前がいてくれて本当に良かった!!」
ぎゅうっと力いっぱい抱きしめると、彼は突然のことに驚いて硬直してしまった。頬はみるみるうちに赤く染まり、珍しく動揺しているようだ。
照れた顔を見たリュカオンは、ニヤリと口の端を吊り上げる。そしてぴんと立った耳にそっと唇を寄せ、甘ったるい声で囁いた。
「エル、ありがとう」
意表を突かれてポカンとするエルシオンを見て、彼に振り回されてきたリュカオンはやっと意趣返しができたと満足する。身を離して驚きに見開かれた赤い目を見据えると、心からの感謝を込めて言った。
「お前はもう俺たちの家族だ! エルが困った時は、俺たちが助けてやるからな」
無関係な狼族のためにここまで尽力してくれるなんて、彼はもう立派な群れの一員だ。最初の頃こそ人さらいに遭って困っていたが、彼のひたむきな愛情ともてなしにリュカオンは感謝の気持ちさえ芽生え始めていた。
何より、攫われていなければ箱庭の事情も分からないままだった。この非常事態に情報が手に入るのはありがたい。
エルシオンは耳をピンと立て、嬉しそうに頬を緩めながらリュカオンをじっと見つめた。
「家族ということは、私と番になってくれるということか?」
甘やかな期待に満ちた声に、彼の求愛について頭から抜け落ちていたリュカオンは小さく息を呑んだ。熱を帯びた眼差しから目を逸らすことができず、エルシオンの顔がぐっと近付いてくる。
あわや唇同士が触れそうになり、リュカオンは慌てて後ろに仰け反った。
「……そ、そういう意味じゃねぇからっ」
家族と番は別だと付け加えると、エルシオンの耳がしゅんと伏せる。リュカオンは落ち込んだ彼の顔から視線を逸らし、甘い空気を払拭するように口を開いた。
「まずは仲間たちに教えてやんねぇとな。うさぎ族への交渉はエルに任せて良いんだろ? 狐の方は俺の仲間を向かわせる」
狐の住処は黒の森の奥地で、狼族の経営する飯屋にもよく来ているため、それなりに親しい仲だ。リュカオンは部下を送ればすぐに話がつくだろうと予想していた。
さっそく手紙に箱庭の事情とこれからのことについて書き連ねていると、隣で様子を見ていたエルシオンが思わぬことを口にした。
「猫族と犬族も、交渉次第では協力してくれるかもしれない」
「本当か!」
箱庭の内と外はほとんど断絶されているようなもので、リュカオンは内部に何の伝手も持っていない。頼める相手は多ければ多いほど良いと目を輝かせる。
「ねずみ族にも声をかけてみる。だから……」
言葉が途切れ、エルシオンは何か言いたげにじっとリュカオンの顔を窺い見た。期待するような眼差しに、彼は首を傾げる。
「どうした?」
「……ご褒美がほしい」
消え入りそうな声と共に、エルシオンは甘えるようにそっと肩にもたれかかった。
ご褒美と言っても、着の身着のままで誘拐されたリュカオンは彼にあげられるものを何も持っていない。そうすると、できることは限られてくる。
エルシオンの言いたいことを察して、彼は顔を赤らめた。だが、何もお礼をしないというのもプライドが許さない。
「わ、分かった。目ぇ閉じな」
覚悟を決めてそう言うと、エルシオンは嬉しそうに身を起こし、そっと目を閉じた。
彼の長いまつ毛は、目を閉じると一層際立つ。その端正な顔立ちは息を呑むほど美しく、目を閉じるとより作り物めいて見える。
リュカオンは大きく深呼吸して心を落ち着かせると、静かに顔を寄せた。
しかし、どうしても彼の唇にキスすることができない。いざしようとすると恥ずかしさが込み上げてきて、彼は迷った末、ちょっと伸びをして滑らかな額に口づけた。
ちゅっと軽やかな音をさせ、リュカオンはぎこちなくソファに座り直した。顔は火を吹いたように熱くなり、隣を見ることができない。
それでも、エルシオンは満足したらしい。お返しにリュカオンの頬に軽く口づけ、ソファから腰を上げた。
「これから箱庭に話を通しに行ってくる。場合によっては代表たちと話し合うことになるかもしれないが、大丈夫か?」
「お、おう……お前に任せる」
手紙に没頭するふりをしていたリュカオンは、ふと可愛いものしか立ち入れないという箱庭の決まりを思い出す。エルシオンは美しい見た目をしているが、可愛いとは程遠い。
どうするのか気になり、彼はこっそりと様子を窺う。すると、エルシオンは小瓶を持ち、透き通る青色の液体を飲み干していた。
ぼふんと白い煙が上がり、彼の体を包み込む。一体何が起こったのか、リュカオンが思わずソファから腰を浮かせると、煙が晴れて子うさぎの獣人が現れた。
「行ってくる」
零れ落ちそうな大きな赤い目と可愛らしい少年の声に、リュカオンはあっと声を上げる。下半身をふわふわの白い毛に覆われた姿はまさに半人半獣だ。
獣人の多くは幼少期、獣の部分が多くなる。そのため、リュカオンは成獣したエルシオンを見ても気付けなかったのだ。
やっと思い出したというのに、愛らしい子うさぎは引き止める間もなく、ステンドグラスの窓がある扉の奥に消えてしまった。
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