聖騎士の盾

かすがみずほ@3/25理想の結婚単行本

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悪魔と騎士

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「――あの時のお前、可愛かったよなあ」
 カインが懐かしむように深い溜息を吐く。
 ……2度目に交わったあの夜から、気付けばもう百年近くも経ってしまった。
 ヴオーダンの宿屋の二階の小さな部屋に、ギシリとベッドの軋む音が響く。
「最近は、俺の言うことあんまり聞かねえし」
「悪魔の言うことなんてそうそう聞いてられるか……っ」
「まだそうやって俺を悪魔呼ばわりするし」
「悪魔以外の何者でもないだろう……」
「それ、人の上に乗っておいて言うセリフか?」
「……っ!」
 それを言われては言葉もない。
 レオンは全裸で自ら膝を開いてカインのペニスに股がり、それを堪能するように腰をうねらせている最中だった。
「まあ、益々スケベになった今のお前も好きだけどな、俺は」
「ンッ……」
 好き、という言葉に何故か鼓動が早まり、繋がっている場所が無意識にギュッと収縮する。
 ――こういう自分が嫌で、最近はカインが来ても交接するのをなるべく避けようとしてしまう。
 神への信仰を楯にし、来る度に相手を罵り嫌悪をあらわにして、物理的にも距離を置こうとしているのに、カインはそれを許してくれず結局こうなってしまう。
 お陰で益々近頃の自分はおかしい。最中に、自分でもうまく説明できない感情が湧く。
 寂しいような切ないような……。
 そして一旦抱かれれば感じすぎておかしくなる。
「今のお前は、あの娼婦なんかよりずっとココで精液搾り取るの上手いよな?」
 早く終わらせたいと腰を揺らす動きを早めていると、そんな風に揶揄された。
「……っ」
 無視して集中していると、カインの尾が伸びて来て、レオンの下肢で屹立しているペニスの尿道口をくすぐる。
「ッ、そこはっ」
 嫌な予感がして身をよじるが、間に合わない。
 小さな穴にギチギチに尾の先端が入り込んで来る。
 痛みは少ないが、奥に入り込むほどペニスの中を支配する存在感が凄まじい。
 精液の通り道が完全に塞がれた所で、それが鈴口をゆっくりと出入りする。
「だ、ダメだ、いや」
 安穏と横たわって居たカインが急に身を起こし、レオンの胴を対面で抱き締め、腰を使い始めた。
「っあっ、両方はっ、あああっ」
 自分で快楽をコントロールすることが出来なくなり、気絶しそうな程の性感に目眩がする。
 悪魔の性器は完全にレオンの感じる場所を把握済みで、どこをどうすれば支配できるのか分かっている。
 レオンの体もその形と熱を忠実に覚えていて、一度繋がれば二度と離れたくないと際限なく貪欲になる。 
 カインは来る度にそんな彼を堪能し、散々なぶり倒すのだ。
「乳首も昔よりデカくなったか?」
 色の濃くなった胸の突起をからかうように弄ばれ、尻穴の収縮と淫らな声が止まらない。
 既に何度かイッているのに、鈴口を塞がれているせいで果てることが出来ず、快楽の責苦を延々と味わわされる。
「あぁあ……っ、カイン、許し……俺の、っ、壊れる、からあ……っ」
「お前の何が壊れるって?」
 尿道口をクチュクチュと出入りする尾が激しくなり、同時に尻の中の快楽の器官をグリグリと責めあげられる。
「ンふァっ、尻の中も……チンポも……っ!」
「忠実に神に仕える男がそんな言葉使っていいと思ってんのか?」
 カインが耳元で辱めてくる。
「っあ、だって、ほんと、に、壊れるっ」
「そんな時はどうやってねだるんだ」
「……はァッ、あっ、……イ、イかせて……」
「どこでイきてえんだよ、淫乱な騎士殿」
「お、お前のチンポで、尻の穴、ナカ、突いてっ、イかせてくれ……っ」
「上出来。素直なお前は好きだぜ、レオン」
 スルン!と尾が尿道口から抜け、代わって凶暴な程の突き上げが激しくレオンを襲う。
 数秒後には望み通り大量の精を吐き出し、レオンは果てていた。


 北の国の夜は長く、二人が長い時間を掛けて交わっても、まだ窓の外は暗かった。
 夜が明ければ悪魔はまた消え去っていく。
 だが今はまだ白い尾がレオンの片脚に懐くように絡まり、狭いベッドの隣には素晴らしい肉体を露わにしたカインが居て自分に腕枕をしている。
 窮屈だが、この時間が酷く心地良い。
 そして朝が来た時のことを考えると無償に寂しかった。
「――お前、これからどうするんだ」
 腕に触れる黒髪の感触を楽しみながら、囁くようにカインが訊く。
「……」
 その質問に、レオンはしばらく考えるように答えを躊躇した。
 言ったとしても、冷徹な反応しか思い浮かばない。
 ――この百年で、エルカーズ王国を巡る情勢は変化していた。
 彼らは最初の数十年で大陸の三分の二を征服した。
 ところが、エルカーズの王は彼らの言うところの「神」、悪魔バアルと一体となっているうちに身も心も魔物へと成り果ててしまい、まともな指揮が取れなくなったことでその版図の拡大は現在まで止まっている。
 他国との戦闘兵器として怪物のような姿にされた兵士達も、やはり時間が経過するうちに理性を失い、魔物化する者が次々と現れ、エルカーズの領土内は当初を超える混乱と崩壊に襲われ始めた。
 事態を収拾出来なくなった神官や貴族達も次々と周辺の他国に亡命しているという。
 レオンはこの百年、名もない傭兵として各地を転々としながら魔物化したエルカーズ兵と戦い、周辺国からエルカーズの領内に侵入し、王を暗殺する機会を伺っていた。
 そして今こそが、その絶好の機会だと感じている――。
「……行くんだな? エルカーズの王都ヴァーリに」
 黙っているレオンの胸の内を読み透かし、カインがもう一度訊く。
 レオンは閉じていた瞼を開け、静かに頷いた。
「お前はついて来る気はないんだろう」
「……」
 今度は逆にカインが黙ってしまった。
 子供にするように額に口付けが落とされ、顔をじっと見つめられる。
「また、お前が泣いて逃げ帰ってきたら、この胸に迎えてやるよ」
 その言葉に、苦笑いしか浮かばない。
 言いようのない寂寥にもう一度目を閉じ、顔を逸らすように寝返りを打った。
 悪魔はそれ以上何も言わず、ずっと髪を撫で続けている。寂しさを含んだその心地よさの中で、いつしかレオンは浅い眠りに落ちていた。
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