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貴公子と騎士
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「……どうしたんだ。何かあったか?」
訝し気に問われて心臓が飛び上がる。
「……あ……、いやっ、何でもないんだ……っ」
やっと出てきたのはそんな言葉だけで、上手い言い訳も思いつかない。
とにかく離れようとするが、手首が痛い程の力でオスカーに握られている。
「離してくれ……っ」
もしかして、不用意に触ったことを怒っているのだろうか。
――気味が悪いと思われた?
動けないでいればいる程、不安と焦燥に押し潰されそうになる。
せっかく出来た親しい人間にもまた、軽蔑と忌避の目で見られるのではないかと――。
「……どうしてそんな顔をしている」
オスカーが眉を寄せて問い、掴まれている腕がグッと強く引き寄せられた。
懸命に体を離そうとしていたが、相手の強引な動きに引きずられ、倒れこむようにして彼の体の上に覆いかぶさってしまう。
「!」
片腕を取られていて、上手く体を支える事が出来ない。否応なく相手の胸に頬をぴったりと付ける形で密着する体勢になり、レオンは心底動揺した。
「わ……悪かったからっ……本当に離し……」
首まで赤く染めながら必死で懇願すると、手首は解放された。
だが、今度は指に指を重ねるように触れられて、ぎゅっと握られる。
「……っ!」
彼の纏う茉莉花を思わせる香水の匂いが鼻をくすぐる。
心臓の音が間近で聞こえ、息も出来ない。
ぴったりとくっついているその温かい胸から響いてくるように、オスカーが言葉を発した。
「手が冷たい」
緊張で血流が滞っている手を確かめるように優しく触れられる。
「――相当寒かったんだな。起こされるまで気付かなくて悪かった。私は暑がりだから……毛布を一枚余計に持っているから、貸してやろう」
手がそっと離され、代わりに背中を抱きしめるように片腕で支えられた。
頭の芯がクラクラするほど、その腕の中が温かい。
オスカーは腹筋だけで二人分の体重を支えて起き上がり、やっと腕を離してくれた。
体が解放され、力なく彼の毛布の上にへたりこむ。
隣で青年が立ち上がって馬の傍へ行き、荷を解いている気配がした。
「……」
ようやく手を離されて安心したはずなのに、切ないような感覚が触れていた部分全てに残っている。
安堵とショックの両方でぼんやりと膝を抱えていると、温かな濃緑色の毛布が、背後から巻き付けるように肩に掛けられた。
その一瞬に後ろから強く体を抱きしめられたような気がして、ビクンと肩が跳ねる。
振り向くと、オスカーが心配そうな表情を浮かべて後ろに跪いていた。
「調子が悪いなら火の番を代わるぞ」
そう言ってくれたが、言葉を聞き終わらない内に首を振った。
「大丈夫だ」
肩に掛けられた毛布を握りしめ、彼の傍から逃げるように立ち上がる。
「……それならいいが。時間になったらちゃんと起こせよ」
オスカーがまたその場に横になり、あっさりと目を閉じてまた眠り始めた。
そんな彼の傍から離れていこうとするのに、身体を包む刺繍の入った上等な布からは、オスカーと同じ香りが強く漂う。
その匂いに酔ったようになり、体がふらついた。
「……!」
同時に、ジンと響くような感覚が下肢に走り、まともに歩けないほどペニスが勃っていることに気付く。
「っ……」
反射的に低く呻き、毛布で体を隠すようにして元いた場所へと戻った。
なるべく火から離れ、オスカーに背を向ける形で、倒れるようにして地面に横たわる。
「っはァ……っ、はぁっ」
自分が情けなくて消えてしまいたい。
カインでなくても、触れてくれるなら誰でも良かったのか――いや、そうではないはずだ――それなのに一体何をしようとしている。
泣きそうになりながら、頭まで被った毛布の下で、自分の乗馬用のズボンの前を必死でくつろげる。
もどかしい指でやっと火照った雄を取り出すと、先走りでドロドロに濡れていた。
「うっ……うぅ……っ」
涙ぐみ、しゃくり上げながら自分の指を汚し、拙くそれを一人で慰める。
「っくふ……っ」
淫らな声を抑える為に毛布の端を噛むと、繊維に浸みた香がダイレクトに嗅覚を刺激し、まるで背後から包まれるように抱きしめられている気分になる。
先刻の温もりと匂いを一層思い出して、腰が震える程感度が上がった。
「……、ぐっ……」
こんな淫らな自分を、オスカーに知られたら耐えられない。
優しさと思いやりで貸してくれたものを、こんなひどい事に使っていると知られたら絶対に軽蔑される。
頭ではそう思うのに、毛布の影で濡れそぼった陰茎を扱き立てる手が止まらない。
さっき、オスカーに握られた手が――。
その熱い掌の感触を思い出して、まるで彼の大きな手に性器を直に握られているように、一瞬錯覚する。
「ンん……! んうン……っ!」
ビクビクと下腹を痙攣させながら絶頂し、鈴口から精が勢いよく飛び出す。
カインと離れてから溜まるばかりだったそれは思いのほか多く、指の隙間から溢れ出て、オスカーの毛布をひどく汚してしまった。
訝し気に問われて心臓が飛び上がる。
「……あ……、いやっ、何でもないんだ……っ」
やっと出てきたのはそんな言葉だけで、上手い言い訳も思いつかない。
とにかく離れようとするが、手首が痛い程の力でオスカーに握られている。
「離してくれ……っ」
もしかして、不用意に触ったことを怒っているのだろうか。
――気味が悪いと思われた?
動けないでいればいる程、不安と焦燥に押し潰されそうになる。
せっかく出来た親しい人間にもまた、軽蔑と忌避の目で見られるのではないかと――。
「……どうしてそんな顔をしている」
オスカーが眉を寄せて問い、掴まれている腕がグッと強く引き寄せられた。
懸命に体を離そうとしていたが、相手の強引な動きに引きずられ、倒れこむようにして彼の体の上に覆いかぶさってしまう。
「!」
片腕を取られていて、上手く体を支える事が出来ない。否応なく相手の胸に頬をぴったりと付ける形で密着する体勢になり、レオンは心底動揺した。
「わ……悪かったからっ……本当に離し……」
首まで赤く染めながら必死で懇願すると、手首は解放された。
だが、今度は指に指を重ねるように触れられて、ぎゅっと握られる。
「……っ!」
彼の纏う茉莉花を思わせる香水の匂いが鼻をくすぐる。
心臓の音が間近で聞こえ、息も出来ない。
ぴったりとくっついているその温かい胸から響いてくるように、オスカーが言葉を発した。
「手が冷たい」
緊張で血流が滞っている手を確かめるように優しく触れられる。
「――相当寒かったんだな。起こされるまで気付かなくて悪かった。私は暑がりだから……毛布を一枚余計に持っているから、貸してやろう」
手がそっと離され、代わりに背中を抱きしめるように片腕で支えられた。
頭の芯がクラクラするほど、その腕の中が温かい。
オスカーは腹筋だけで二人分の体重を支えて起き上がり、やっと腕を離してくれた。
体が解放され、力なく彼の毛布の上にへたりこむ。
隣で青年が立ち上がって馬の傍へ行き、荷を解いている気配がした。
「……」
ようやく手を離されて安心したはずなのに、切ないような感覚が触れていた部分全てに残っている。
安堵とショックの両方でぼんやりと膝を抱えていると、温かな濃緑色の毛布が、背後から巻き付けるように肩に掛けられた。
その一瞬に後ろから強く体を抱きしめられたような気がして、ビクンと肩が跳ねる。
振り向くと、オスカーが心配そうな表情を浮かべて後ろに跪いていた。
「調子が悪いなら火の番を代わるぞ」
そう言ってくれたが、言葉を聞き終わらない内に首を振った。
「大丈夫だ」
肩に掛けられた毛布を握りしめ、彼の傍から逃げるように立ち上がる。
「……それならいいが。時間になったらちゃんと起こせよ」
オスカーがまたその場に横になり、あっさりと目を閉じてまた眠り始めた。
そんな彼の傍から離れていこうとするのに、身体を包む刺繍の入った上等な布からは、オスカーと同じ香りが強く漂う。
その匂いに酔ったようになり、体がふらついた。
「……!」
同時に、ジンと響くような感覚が下肢に走り、まともに歩けないほどペニスが勃っていることに気付く。
「っ……」
反射的に低く呻き、毛布で体を隠すようにして元いた場所へと戻った。
なるべく火から離れ、オスカーに背を向ける形で、倒れるようにして地面に横たわる。
「っはァ……っ、はぁっ」
自分が情けなくて消えてしまいたい。
カインでなくても、触れてくれるなら誰でも良かったのか――いや、そうではないはずだ――それなのに一体何をしようとしている。
泣きそうになりながら、頭まで被った毛布の下で、自分の乗馬用のズボンの前を必死でくつろげる。
もどかしい指でやっと火照った雄を取り出すと、先走りでドロドロに濡れていた。
「うっ……うぅ……っ」
涙ぐみ、しゃくり上げながら自分の指を汚し、拙くそれを一人で慰める。
「っくふ……っ」
淫らな声を抑える為に毛布の端を噛むと、繊維に浸みた香がダイレクトに嗅覚を刺激し、まるで背後から包まれるように抱きしめられている気分になる。
先刻の温もりと匂いを一層思い出して、腰が震える程感度が上がった。
「……、ぐっ……」
こんな淫らな自分を、オスカーに知られたら耐えられない。
優しさと思いやりで貸してくれたものを、こんなひどい事に使っていると知られたら絶対に軽蔑される。
頭ではそう思うのに、毛布の影で濡れそぼった陰茎を扱き立てる手が止まらない。
さっき、オスカーに握られた手が――。
その熱い掌の感触を思い出して、まるで彼の大きな手に性器を直に握られているように、一瞬錯覚する。
「ンん……! んうン……っ!」
ビクビクと下腹を痙攣させながら絶頂し、鈴口から精が勢いよく飛び出す。
カインと離れてから溜まるばかりだったそれは思いのほか多く、指の隙間から溢れ出て、オスカーの毛布をひどく汚してしまった。
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