聖騎士の盾

かすがみずほ@理想の結婚二巻発売中

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【続編・神々の祭日】騎士の目覚め

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「お前な、犬の鎖じゃねえんだよ。引っ張んな」
 カインが益々拗ねた口調で言い、尾を解いて取り戻した。
 彼はしばらく風呂の外で結った髪の先を角に巻きつけていたが、やがて渋々と風呂の反対側に入ってきた。
 艶めかしいため息と共に逞しい身体が楕円形の木桶の中に収まり、湯面が風呂のへりのぎりぎりまで上がる。
 流石にこの体格の男が二人向かい合って入ると、両脚が触れあってしまう狭さだ。
 くすぐったく感じながらもレオンが温かさを堪能していると、目の前の男はまた小言を言い始めた。
「大体、お前には自覚が足りねえんだよ。町の男や女どもが、一体どんな目でお前を見てると思ってる」
「……。無口で無愛想な……馬鹿力の異国人?」
「ちげぇよ」
 呆れた、と言わんばかりに赤い唇から深いため息が漏れる。
「身体中にキスマークくっつけて、尻ん中も俺ので濡れたまんまで、人気のない川べりに行って……もしも誰かに襲われでもしたら」
 その続きを遮るように、レオンは言い放った。
「殴って気を失わせる」
「……」
 カインが閉口し、ギロリとこちらを見る。
 慌てて、折った膝を抱き寄せながらレオンは言い訳した。
「か、身体の中も外もベトベトだったから、早く風呂に入りたかったんだ。大体、昨晩は早く寝ようと言っていたのにお前が盛るから」
「俺のせいにすんのか!? 煽ってきたのはお前だろっ」
 かえってきた言葉にムッとして視線を逸らす。
「煽ってない。寒かったからくっ付いて寝ただけだ」
「抱き着いてきて、キスしろ、今日は抱かないのかって潤んだ目で訴えてきただろうが」
「……っ!」
 絶句した瞬間、レオンの閉じた膝の間が、湯の中でぐいと押された。
 ハッと下を向くと、湯の中でカインの白い足が、レオンの両脚を無理やり割り開いている。
 足の指先は更に奥にあるペニスに達し、親指と人差し指が器用に開いて亀頭のすぐ下を挟んできた。
「そんな事俺は言ってな……はぁっ…アッ」
 陰茎を掴んだ指先がそのまま上下し始め、既に半ば硬くなり始めているそこを強引に擦ってくる。
「寒いのにわざと緩いシャツ着て、勃ってる乳首俺に見せつけて」
 もう一方の足もレオンの股の間に入り込んで柔らかな陰嚢に触れ、フニフニと持ち上げるようにくすぐった。
「っ、そんな、の、偶然……ふァあ……っ、足、やめ……」
 足だけでされているのに、淫らな声が止まらない。
 愛撫されている内にペニスはすっかり反り返り、腹に付く程になった。
 するとカインの足の裏がそれを腹側に押しつけるように、絶妙な力加減でギュウッと踏みつけてくる。
「んァあ……っ、はぁっ……あっ、カイン、」
「――足コキだけでも感じまくってる癖に。この淫乱騎士」
 辱める言葉に言い返せない。
 以前よりもずっと愛されているのに、彼を求める心と身体を自分でも止めることが出来なかった。
 出会う前は自涜さえしたことが無かったし、一緒に暮らす前も彼と会っている時以外は極めて禁欲的に暮らしていたのに。
 ところが今は毎晩、湯水のように口づけと愛撫を与えられて、冷静になる暇がない。
 毎日心に溢れるまま、素直にカインを求めてしまう――。
「カイン、したい……」
 レオンは湯の中に揺れていたカインの白い尾の先を掴んで、キスした。
 そのままねだるように舌を這わせると、目の前の恋人が、ふーっと大きなため息をつく。
「お前、その内、俺とするだけじゃ足りねえとか言いだしそうだな……」
 その言われように密かに傷つき、瞼を伏せた。
 彼以外、男も女も、欲しいと思ったことは一度もないのに。
「言ったらどうする……」
 わざと意地を張るような言葉で返すと、カインは両肘を風呂のへりにゆっくりと預け、冷たい視線でレオンを見下ろした。
「――俺もお前以外とも寝るかな」
 その言葉に更に激しく心を揺さぶられ、レオンは唇を噛んだ。
 カインは人間ではない。愛し合ってはいるが、結婚は勿論出来ないし、人間の恋人同士で共有されている価値観を彼は持っていない。
 事実今までも、同情から人間に寄り添い、相手の望む姿でセックスの相手になるようなこともしている。
 もしかしたら現状でも、自分の知らない所ではそういう事をしているのかもしれない……。
 そんなことを想像しただけで、ぼろっと涙が頬をこぼれて、湯の中に落ちた。
「ば、バカ、本気にするなよ」
 カインが慌てたように湯に波を立て、レオンの両肩を掴んで抱き寄せてきた。
「……っ、」
 素直に彼の肩に顎を預け、肌を密着させて首筋に抱き着く。
「悪い……。おかしいんだ、俺は」
 毎朝目覚める度に、カインが隣にいるのを確かめてしまう。
 夢ではないかと疑ってしまう。
 もういつでも傍にいるのに、彼の顔を見ると条件反射のように淫らな繋がりが欲しくなる。
 そしてまたどこかへ居なくなってしまうのではと疑う。
 百年の間に骨の髄までしみ込んだ習慣と孤独は、レオンを容易に開放してくれなかった。
「キスしてくれ……」
 まだ涙が滲んでいるヘイゼルの瞳に恋人を映し、懇願する。
 望み通りに深く唇が重ねられて、大きく歯列を開き、舌同士をねっとりと根元まで絡ませ誘った。
「ンん……っ、はふ……っ」
 相手の膝に乗り上げるように跨って淫らなキスを深め、湯音を立てて自分のペニスを、既に固く猛ったカインの雄に擦り付ける。
 ――これが欲しい。俺だけの物にしたい――と、心と体の両方で必死に訴える。
「分かったから……」
 強い望みは言葉にせずとも、カインの心に直接伝わった。
 逞しい腕がレオンの尻を両手で抱える。
 やがてその手のひらに強い力がぐっと加わり、カインが急に、ざばりと湯の中で立ち上がった。
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