主神の祝福

かすがみずほ@理想の結婚二巻発売中

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夢奏でる夜の庭

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 深く長い口づけの後の溺れるような余韻の中、神が要求を視線で訴えてくる。
「ヴィクトル……、」
 濡れた唇を開き、ヴィクトルは喘ぐように頷いた。
「ああもう……分かった飲ませてやるからっ、手ぐらい自由にさせろ……っ、出番に間に合わなくなる……っ」
 バアルの手はやっとヴィクトルの手首を解放したものの、まだ名残惜しげに胴を撫で下ろしてくる。
 やがて下着の紐だけが通っている剥き出しの尻が掴まれ、窄まりが密かにヒクンと震えた。
「……っ、余計なことするんじゃねぇ……」
 牽制しつつ俯き、自由になった手で下着の紐を素早く解いていく。
 撥ね除けてもなお手首にすがってくる触手を絡みつかせたまま、ヴィクトルは見せつけるようにペニスをしごき始めた。
 鈴口の先からトロトロと溢れる先走りを、狂喜の瞳でバアルが見下ろす。
「あぁ……お前の体液が……っ、」
 言葉とともに、バアルの服の腹のあたりの布を突き破り、無数の細い触手がワッと飛び出した。
 その群勢はうごめきながらあっという間に性器を飲み込み、ペニスの全てに口付けを繰り返す。
 同時に尿道に甘い痛みが走り、狭い場所をこじ開けられて奥へ奥へと探られる感覚が始まった。
「うンン……っ!」
 ヴィクトルは爪先立ちでガクガクと震えながらも、されるがままに任せた。
 外側はザワザワと無数の小さな舌で舐めたくられ、内側は尿道を通して快楽の中枢をコリコリと刺激されて、溜まっていた精液があえなく吹き出し始める。
「はあっ、はあぁ……っ!」
 鈴口からずっぷりと入り込んだ侵入者がそれをコクコクと性急に飲み込み、目の前のバアルがまるで砂漠で水を得たものの様な恍惚とした表情になった。
「ああ……濃い……最高だ……」
 最後の最後まで扱き取られながら、熱を帯びた囁きが耳に吹き込まれる。
「……お前を、愛している……」
 ヴィクトルはヒクヒクと後孔を無意識に収縮しながら、脳髄を貫く絶頂に溺れた。
「は、あ……っ、あっ……」
 それでも何故か、どこか物足りない、甘苦しい切なさが下半身に湧く。
「もっと、奥まで行っていいか……?」
 問われて必死で首を振った。
 ――これ以上奥まで来られると、強制的に排尿させられてそれも飲まれてしまう。
 こんな往来で、それだけは許したくない。
「精液だけで我慢しろ……っ」
「そんな……それは無茶だ……」
 未練がましくチュコチュコと尿道の中を出入りされ、頭を割って舌を出した別の触手が尻の方に回ってくる。
 バアルの手のひらがヴィクトルの剥き出しの尻をギュッと掴んで左右に開き、ヒクヒクと窄まる無防備な孔を暴いた。
 そこに蛇ほどの太さの触手がひとつ、太腿に絡みながら近づき、チロチロと襞を舐め始める。
「ほら、こっちだって飢えている……そんなに腰を揺らして、奥が疼いているのだな……?」
「……っ、くはぁ……っ、やめろ、そっちまでシてる余裕なんかねえ……っ」
 バアルの唇が耳穴に近付き、耳飾りを揺らすように舌で耳朶をねぶりながら甘く囁いた。
「……お前も、私をこんなにも求めているのに。――どうか私を欲しいと……言っておくれ、ヴィクトル……」
 両腕が強く胴を抱きしめ、後孔を舐めていた触手が、ついに窄まりの中に潜り込んできた。
 だが、ヴィクトルは脚を上げ、思い切りバアルの身体を蹴倒した。
「誰が言うか、このタコ野郎!」
「ごふっ!」
 バアルの長身が吹っ飛び、その背中が鈍い音を立てて路地の向かいの建物の壁にぶつかる。
 触手がズルンと前と後ろから抜け、他の触手と共にだらしなく伸びたままバアルの体の上にビチャっと落ちた。
 そんな相手に同情する余地もなく、急いで下着とマントを拾い、手早く服装を整えてゆく。
 危うかった――と、紐を結ぶ指が震えた。
 このまま流されていたら、こんな場所までやってきた意味が何もかも無くなっていた所だ。
 痛そうに起き上がりかけたバアルに、ヴィクトルは言い放った。
「もう、これで終わりだ、終わり……! 時間がねえんだよっ、……俺はもう行くからな。お前は俺の仕事が終わるまでそこに居て出てくるなよ、分かったな!?」



 バアルを路地裏に置き去りにし、ヴィクトルは急いで城の前の広場へと駆け戻った。
(あの野郎、本当にふざけやがって……)
 まだ心臓の激しい鼓動と、快楽の余韻が収まらない。
 精を放出したのになぜか今ひとつすっきりせず、もやもやとしたものが下腹に渦巻く。
 それを振り払うように、ヴィクトルはぶるっと首を振り、祭りの人混みの中を突き進んだ。
 丘を上り、広場を取り巻く沢山の篝火の間を抜けると、聞き覚えのある美しい音楽が耳に入ってくる。
 顔を上げると、隙間なく集まった群衆に囲まれた舞台の上で、既にマルファスとハルファスが太鼓と弦楽器を手に演奏を始めていた。
 広場は昼間見た時よりもずっと混雑していて、その間を縫うように舞台に近づいて行く。
「――あんな真っ白なバルドル人がいるのか?」
「白く塗っているんじゃないか? エルカーズの神々の真似をしているんだろう。妙な二人だけど、演奏は上手いなぁ」
 人々の噂しているのを聞きながら舞台の前まで抜けると、ヴィクトルは一息にその上に飛び上がった。
 踊り手が戻ったことに気付いたマルファス達が無表情ながら嬉しそうに顔を上げる。
 新たな演者の登場に、期待と共に視線を集中させるラーンの人々の前で、ヴィクトルは城の方を向き、露台を見上げた。
 こちらをじっと見下ろしている若きボルツ公の姿を確かめると、敢えて彼には背中を向け、膝を曲げて街と民衆の多く居る方に挨拶をする。
 人々のざわめきが自然に収まってゆき、命知らずの舞台の上の人物へと集中した。
「今宵は、エルカーズの古き神々の為に――」
 始まりの言葉とともに、ヴィクトルは黒いマントの胸元を掴み、鮮やかな動きでそれを舞台の下へ投げ捨てた。
 華やかに着飾った裸体に近い衣装と、すぐには出身を判別し難い黄金に光る褐色の肌に視線が釘付けになる
 わあっと歓声が上がる中、双子の楽師が楽器を別のものに持ち替え、激しい太鼓の音と共に踊りのための小刻みな音の曲を情熱的に演奏し始めた。
 手拍子が高まり、一気に空気の熱量が上昇する。
 ヴィクトルはそれを更に煽るように、身体中の装飾を華やかに揺らしながら舞台の上を歩いた。
 広場中の人間の注目がこちらに集まってゆく中、伸ばした指を折り曲げる仕草で観衆を挑発し、もっともっとと手拍子を要求する。
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