妖精姫はくまさんに恋をする。

ノノ

文字の大きさ
2 / 6
本編

妖精姫の大切な思い出。

しおりを挟む
エメルにはまた後日会うことを約束しその場を離れた。
王城からそう遠くない我が家に戻ると、自室のベットの上に置いてある大切な宝物を手に持った。

それは少し古びた黒いくまのぬいぐるみ。
そっとぬいぐるみを抱きしめながら椅子に腰掛けて思い出すのは、彼と初めて出会った時のことだった。




10年前。6歳の誕生日の時にソフィアの父であるシュワルツ公爵からこの黒のくまのぬいぐるみを貰った。
ソフィアの上にいる3人の兄たちは、女の子のソフィアに黒色のクマなんて!と文句を父に言って困らせていたが、ソフィアはすごく嬉しくてたまらなかった。
黒は父が団長をしている黒騎士団の色だから。父のことが大好きなソフィアは黒色も大好きだった。
今まで貰った中でも1番嬉しいプレゼントだ。ソフィアは父に抱きつきながら、ありがとうを沢山言った。
父に文句を言っていた兄たちも、ソフィアが喜んでいるならと何も言わなくなった。
それからソフィアはどこに行くにも何をするにも必ず黒いくまのぬいぐるみを持ち歩いていた。

しかしソフィアはそれからすぐに酷く傷つき涙を流すことになった。
従兄弟の第三王子アレクサンダーに誘われて王城へ訪れたとき、それはおきた。

隣国の王子がソフィアの黒いぬいぐるみを汚らしいゴミのようだと馬鹿にしたのだ。
従兄弟のアレクサンダーはソフィアがくまのぬいぐるみを大切にしていることを知っていた為、隣国の王子に抗議した。
しかしそれに余計に腹を立てた隣国の王子は、ソフィアから黒いくまのぬいぐるみを無理矢理奪い投げ捨てたのだ。
奪うときにビリっと嫌な音をたてたぬいぐるみは、首のところが破けて取れそうになっていた。
しかも投げた先は子供には少し大きな池の中。

ソフィアは泣きながら池に入ろうとしたが、それを慌ててアレクサンダーが止めた。ソフィアの目の前でどんどん沈んでいくぬいぐるみ。
アレクサンダーに抱きしめられながら泣いた。

そんな時、バシャンと大きな水の音がしてソフィアは驚いて音の方をみた。

なんと、黒い人が池の中に入り何かをさがしていた。
その何かは彼がすぐに此方をむいたことで理解した。
黒い彼は黒いくまのぬいぐるみを探して拾ってくれたのだ。
池の側に脱ぎ捨てられた外幕でぬいぐるみの水分を拭き取ると、ソフィアの目の前に差し出してきた。

その時の彼の真っ黒な瞳がとても美しくみえた。
優しく手に持たれた黒いくまのぬいぐるみ。ソフィアは受け取ると、ホッとしてまた止め処なく涙が溢れた。
お礼を言いたいのに声にならなかった。

父と同じ黒騎士団の服を身につけた彼は頭を下げると持ち場に下がっていった。


それがソフィアとエメルの初めての出会いだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

我慢しないことにした結果

宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから

えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。 ※他サイトに自立も掲載しております 21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

年増令嬢と記憶喪失

くきの助
恋愛
「お前みたいな年増に迫られても気持ち悪いだけなんだよ!」 そう言って思い切りローズを突き飛ばしてきたのは今日夫となったばかりのエリックである。 ちなみにベッドに座っていただけで迫ってはいない。 「吐き気がする!」と言いながら自室の扉を音を立てて開けて出ていった。 年増か……仕方がない……。 なぜなら彼は5才も年下。加えて付き合いの長い年下の恋人がいるのだから。 次の日事故で頭を強く打ち記憶が混濁したのを記憶喪失と間違われた。 なんとか誤解と言おうとするも、今までとは違う彼の態度になかなか言い出せず……

彼はヒロインを選んだ——けれど最後に“愛した”のは私だった

みゅー
恋愛
前世の記憶を思い出した瞬間、悟った。 この世界では、彼は“ヒロイン”を選ぶ――わたくしではない。 けれど、運命になんて屈しない。 “選ばれなかった令嬢”として終わるくらいなら、強く生きてみせる。 ……そう決めたのに。 彼が初めて追いかけてきた——「行かないでくれ!」 涙で結ばれる、運命を越えた恋の物語。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

処理中です...