妖精姫はくまさんに恋をする。

ノノ

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本編

妖精姫と従兄弟たち。

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「その髪飾り最近よくつけてるよね。」


アレクサンダーとお茶をしていると、アレクサンダーの兄でありこの国の王太子である第一王子レオンハルトに言われた。

ソフィアの白銀の髪をより美しく飾っているのは、あの日エメルから貰ったプレゼントの髪飾りだ。
黒曜石が散りばめられた大人っぽい髪飾りをソフィアはすごく気に入っていた。
エメルから貰ったというだけでも嬉しいことだが、髪飾りの色がエメルの髪と瞳の色なのだ。嬉しくないはずがない。

ソフィアの髪飾りを見ながら、アレクサンダーは少し面白くなさそうな顔をしている。

「それアイツからだろ?」

「エメル様のことをアイツだなんて呼ばないで。」

ソフィアが少し頬を膨らませると、レオンハルトは優しくソフィアの頭を撫でた。

「エメルと言えば黒騎士団のエメルだろ?叔父さんが昔から可愛がってるあの熊みたいな大きい青年だよね。」

「えぇ。くまさんみたいに大きいけどすごか可愛い人なのよ。すごく素敵なの。」

「馬鹿みたいに何年も訓練場で見てるだけだったのに、最近付き合いだしたんだろ?」

アレクサンダーが太々しい。

「あぁソフィの初恋の人だったね、彼。」

「お前、趣味悪いよなー。」

「こら、アレク。ソフィにもエメルにも失礼だよ。」

レオンハルトがアレクサンダーを嗜めるが、ふと思い出したように呟いた。

「ヴィルヘルムが帰ってきて知ったら大変だろうな。」

「あーヴィル兄はヤバイな。」

ヴィルヘルムとは第二王子のことだ。

「ヴィルがどうしてヤバイの?」

ソフィアが2人に問いかけると、2人は顔を見合わせて苦笑いするだけだった。

「そういえば、レオン兄様はマリー嬢との婚約が内定したのよね?おめでとう。」

「あぁ、ありがとう。私がもう結婚するなんてね。」

「レオン兄はもう27歳だし、遅いくらいだろ。」

「まぁそうなんだが、アレクだって22歳になるんだ。私の婚約が内定したんだから、次はお前の番だぞ。」

「げ。それは無理。まだ婚約とかしたくない。」

「アレクの前にヴィルじゃないの?」

「ヴィルこそ絶対無理だよ。アイツ絶対結婚しないぜ。」

アレクサンダーがそう言えば、レオンハルトも苦笑いする。

「ヴィルの場合は寧ろ…早く結婚したくてしたくてたまらないだろ。」

「あら、ヴィルって好きな人がいたの?」

ソフィアが誰かしらと考えている様子をみながら、レオンハルトとアレクサンダーは再び顔を見合わせるのだった。

日が暮れ始め公爵家へ帰ることにしたソフィアはレオンハルトと共に王城内を歩いていた。


「レオンハルト様」

少し高い女性の声に2人で振り返るとマリー嬢がいた。
赤毛の髪に赤いドレス。全身真っ赤だ。

「やぁ、マリー嬢。来ていたんだね。」

「はい。王妃教育の打ち合わせで少し。」

そう言いながらマリーはソフィアをキッと音がつくほど睨み付けた。

「お久しぶりですね、マリー様。」

「えぇ、お久しぶりですわ。ソフィア様はもう16歳だというのに未だにレオンハルト様に付き纏っておいでなのですね。」

「マリー嬢、そんな言い方は失礼だろう。それにソフィは従兄弟なんだ。交流が他の令嬢たちより多いのは当たり前だし、今回は久しぶりに会ったんだ。」

「そうでしたか。それは失礼しましたわ。」

ソフィアは困ってしまった。マリーは昔からレオンハルトを慕っていて、レオンハルトと一緒にいることが多いソフィアのことを目の敵にしているのだ。

「そう言えば、ソフィア様には最近お付き合いをはじめた方がいらっしゃいましたわね。たしか、ファンド伯爵家のあの恐ろしい方ですわよね。」

マリーの言い方にソフィアの顔は険しくなった。

「恐ろしい?」

「えぇ、全身真っ黒で体格なんて野獣のように大きくて顔も恐ろしいではありませんか。そんな殿方とお付き合いするだなんてソフィア様は相変わらずお優しいお方ですのね。」

ソフィアはマリーの言い分に酷く苛立ちを感じた。エメルのことを馬鹿にされるのが許せなかった。

「私のことを何と言おうと構いませんが、私の大切な愛する殿方を貴方に馬鹿にされる謂れはありませんわ。謝罪して下さいませ。」

「私は本当のことを言っただけではありませんか。そんなに熱くならないでちょうだい。」

そんなマリーにソフィアは呆れてしまった。王妃教育がこれから始まるにしても、将来の王妃がマリーだと思うと不安しか感じなかった。
それを思ったのはソフィアだけではなかったようだ。

「マリー嬢、申し訳ないが私たちはこれで失礼するよ。」

マリーはレオンハルトに何か言おう口を開きかけたが、彼の唯ならぬ雰囲気に口を閉ざした。

レオンハルトは手をソフィアの背中に添えて歩きだした。


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