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第一部・二章
守人人形稼働!
しおりを挟む龍は苛立っていた。
ただの戯れのつもりが、息吹のためのマナを二度までも破壊された。
こうも邪魔をされているなどありえない。
鳥の羽ばたきが聞こえる。その背に乗って、さっきの奇妙な羽虫が飛びあがってくる。
龍は決めた。まずはこの気味の悪い個体からだ、と。
そんな龍を遠くへ誘導するために、神鳥が龍の近くをわずらわしい虫のように回る。
だが、ただ誘導するだけではダメだ。息吹を地上に向かって放たせてはならない。人がいる近くに降り立たせてはならない。
龍の視線が明らかに神鳥へと向いた。一気に加速して上空へと舞い上がる。
その後を龍が追いはじめた。
「息吹に気を付ければいいってわけじゃないのか。あの大声だけで、この作戦は失敗になる」
「ん、大丈、夫。それもう覚え、た」
覚えたってどういうこと――という疑問を口にする前に、龍が息を吸い込み、その咆哮をあげようとした。
<震えて眠れ>
神鳥の古い言葉の込められた鳴き声が高らかに響く。少し遅れて龍の咆哮が上がった。
先に神鳥によって激しく震わされた空気が、龍の咆哮の波動にぶつかり、音をかき消してゆく。
それだけでは龍の力は止められない。
ほぼ同時に、龍の口の方向に向かい、サーシャがマナをこめた拳を力いっぱいふるった。
まるでしならせた鞭のような破裂音がした後、サーシャは拳の痛みにわずかに顔をしかめた。
その拳が確実に龍の咆哮の残滓を殴り殺した。
アレクセイはあまりの出来事に笑ってしまった。
だが、そんな場合ではなかった。
龍が更に怒り、吼えようとする。
まずい――アレクセイがサーシャと神鳥を守りたいとそう思った時、人形が即座に反応した。
<守人人形>、その名の通りの術式が発動する。アレクセイの血とマナをもったこの人形は、本人の魂からマナを吸いあげる。
龍の口の周りで幾重もの硬い空気の層ができた。咆哮の衝撃が当たると同時に一枚一枚が爆発してゆく。
そうして音の振動が吸収されていき、次の瞬間またその残滓をサーシャが殴り殺した。
「ライヤさんすっごいな」
自分がやったことに驚くアレクセイ。
ここまで邪魔をされた経験のない龍は、もはや怒り心頭だった。
このたった二人と一羽に対して息吹を放とうと、マナを集め出した。
騎士が<砲網>で救出したイゴールを回収すると、ライヤはすぐに生きているか首元で脈をとった。
あの一撃を放った後、明らかにイゴールの様子はおかしかった。
まさか、使用者の命に係わる程にマナを吸う剣だとは――。
冒険者が駆け寄ってきた。
「おやっさんは!?」
「安心しろ。生きている。まあ、龍がいるのに安心しろというのもおかしいがな」
そうは言ってもライヤも安堵のため息をもらした。
そこにクー・シーが救出した一般人を乗せて集まってきた。ここから城に逃げたところで助かるとは限らない。誰もが不安そうだ。
今、アレクセイが龍を引き付けている間に、救助した人達を避難させたい。
<門>が開いたらそのマナで気づかれるかもれない。そうなった場合はどうすべきか。
「龍が<門>に勘づいた場合、本国から大量に転送をさせて意識を分散させる」
だが、それでもダメだった場合は、自分が――。
そこまで考えた時、ティモフェイがその内心を察して、ライヤに笑いかけた。
「団長の自己犠牲なんて、邪神が復活でもしてこない限りは認められないかな」
「おや、龍が出たら認めてくれるんじゃなかったのか?」
ライヤは苦笑する。先日のポイ捨ての時にもティモフェイは、今日と同じとぼけ顔で同じようなことを言っていた。
「そんなこと言いましたっけ?」
まったくこんな時に軽口など――そう思うが、少しだけ気が楽になった。
「本国。救助者を避難させるため小型<門>を開く。龍に気取られた場合、合図を送る。何でもいいから大量に転送して気をそらしてくれ」
きっとまた<門>の技術者は、無茶なことを言ってくれると舌をまいていることだろう。
一方アレクセイ達の近く。
また龍が息吹を放とうとしていた。
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