絶対に寝取られない僕の彼女・壬生さん 【R18版】

カワサキ萌

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第一章 出会い編

木曜日

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 普通、自分の恋人が自分以外の異性と仲良くしていたら、怒ったり、悲しんだり、傷ついたり、とにかく嫌な気分になるものだ。もしも自分のことを裏切ってその人と恋仲になっていようものならば、人によっては強い怒りに発展し、なかには恋人を激しく恨む人もいる。



 それだけ男女の裏切りというのは強く黒い感情を揺り動かすものだ。



 そう、それが普通の人の思考パターンなのだろう。



 しかし僕はどうなのだろう?



 昨日の水曜日。僕は壬生さんから火曜日のカラオケについて詳細を聞いた。彼女が他の男たちと合コンをしていたという話を僕は聞いた。



 それは普通に考えたら裏切りと呼べるか否か、正直ラインギリギリなところだと思う。



 別に彼女が合コンに行ったからといって、それすなわち彼氏を裏切った、浮気だと断罪するつもりはない。そもそもこの合コンは僕と付き合う前の予定だったわけだし、今回に限っていえば彼氏が強く糾弾できるほどの裏切りというわけではないのだ。



 いや、違う。そういうことではない。



 許せるかどうかでいえば、今回の出来事は人によっては許せないと判断されることなのかもしれない。しかし僕の場合、彼氏を差し置いて合コンに参加していたという事実に対して、確かにショックは受けた。体が裂かれるような痛みを感じたし、苦しくて哀しくて、とにかくそういう黒い感情は確かにある。あるのだが…



 同時に僕は、壬生さんが他の男と仲良くする姿を見て、少しだけ、本当に少しだけだけど、悦んでいる自分がいた。



 もしもあの日、壬生さんがヤリチン高の男子と仲良くなって、そのまま送り狼の如くホテルに連れていかれたら…そしてそのままヤリチンに相応しい淫行を彼女に実行していたら…



 嫌でも連想してしまう。あの黒髪の美少女がチャラい感じの男子に服を脱がされ、そのまま動物みたいに交わってしまう姿を…



 その状況を思い浮かべると、彼女が他の男に取られ、裏切られたという黒い感情とは別に、うわあこれすっごいエロいシチュエーションだなあと期待するピンクの感情まで僕の脳に割り込んでくる。



 黒い感情だけなら良かった。一体このピンク色の感情はどこから沸きあがってくるんだ?まさかこれが世間で言われる寝取られ性癖だとでもいうのか?



「違う!僕はノーマルだよ!ちょっと期待してんじゃねえよ!」



 ついそんな言葉が口から出てしまう。ここが人気の少ない校庭の片隅のベンチでなければ、誰かに聞かれていたかもしれない。そう思うとちょっとだけ恥ずかしかった。



 冗談じゃない。こんなピンク色の感情に支配されてたまるか!どうせ支配されるなら黒い感情の方がまだマシだよ!



「……そろそろ部活が終わるころかな…」



 今日も壬生さんが部活動を終えるまで校庭のベンチで待っていた。本当ならこの時間を利用して英単語でも覚えておいた方が効率が良いのだろうが、今では壬生さんのことが気になって勉強どころではなかった。



 もしかしたらまだ部活動の最中かもしれない。ただテニスをしている壬生さんを見たくなって女子専用のテニスコートへと足を運んでみた。



 ボールが外に飛んでいかないように緑色のフェンスで囲われているテニスコート。その周囲には女子のテニス部員だけでなく男子の部員もいる。



 それだけではない。明らかにテニス部と関係ない男子も意外と多かった。彼らが女子テニス部を見学しているのは明らかだった。



 いや、僕も見学しているのだから人のことはとやかく言えないか。



「あれー、来沙羅っちの彼氏じゃん。なにやってんの?」



 壬生さんを探していたら、別の女子部員に話しかけられた。声のした方を振り返ると、火曜日に壬生さんをカラオケに連れて行った張本人、美香さんがいた。



「あ、一昨日はどうも。えーと、壬生さんを待ってたんだけど、まだ部活中でした?」



「うん?もう終わったよ。来沙羅っちは…あれ?どこだ?」



 美香さんという女性は、健康的な小麦色の焼けた肌をしている女子で、さっきまでテニスをしていたせいか、今はじゃっかん汗ばんでいた。光沢に輝く首筋がやけに色っぽく感じる。



 …この娘、昨日合コンでお持ち帰りされたんだよなあ。



 そんな変な妄想がつい脳裏を刺激して、またピンク色の妄想が僕の感情を支配しようとしている。



 違う違う。別にいいじゃないか。誰が誰と恋愛しようが大人の関係になろうが、人の自由だろ。問題は壬生さんだ。そう、僕の彼女だ。



「ねー美紀っちー。来沙羅っち、どこ行ったの?」



「先輩ですか?さっきバスケ部の先輩に呼ばれて部室棟に行きましたよ」



 おそらく一年の後輩なのだろう。ボールを片付けている姫カットの女の子が答えてくれた。



「バスケ部って、女子バスケ部?」



「え?違いますよ。男子バスケ部の、たぶん三年の先輩じゃないですか?」



 だ、だだだだ、男子バスケ部の三年の先輩、だと?



 バスケ部っていったら野球部、サッカー部と並んでもっともヤリチンが多い部活動じゃねえか!(※偏見です)



 その三年が壬生さんに声をかけて部室棟に連れてくって…やべえ、脳が、脳が破壊される!破壊される前に壬生さんを探さないと!



「壬生先輩がどうかしたんですか?」



「探してるんだって」



「え、なんでですか?」



「彼氏だからでしょ」



「え…あー、もしかして私、マズイこと言いました?」



 そんなやっべ、やっちまったみたいな顔しないでもらえます?



 美紀さんの問いかけに美香さんは、



「うん?うん、かもしれないね」



 まったく否定してくれなかった。



「お、教えてくれてありがとう。じゃあ僕は行くから…」



「うん、気をしっかりもってね」



「先輩、大丈夫ですよ…たぶん」



 なんで励まされるのだろう?え?マジでヤバいの?っていうか壬生さんさあ!なんでそんなホイホイ男の勧誘について行っちゃうの!あの娘に警戒心はないのか!ナマケモノだってもっと警戒するだろ!



 部室棟は体育館の横にある、部活専用の部屋が用意されている校舎だ。バスケ部が利用する場所なんてバスケ部専用の部室ぐらいだろう。



 だからバスケ部の部室さえ見つかれば、きっとそこに壬生さんもいるはずだ!



 一刻も早く、壬生さんを見つけてバスケ部のヤリチンから助けないと!



 でも、本当に良いのか?もっと時間をかけてゆっくり行けば、壬生さんがバスケ部の先輩に寝取られることで、とてもエッチな展開になるのでは?



 ハッ!僕は一体何を考えているのだろう?まずい、ピンク色の感情が脳を支配しようとしている。



 バカが!壬生さんがバスケ部の先輩といやらしい関係になって一体どんな得があるって言うんだ!得するのはバスケ部の先輩だけで、僕はなにも得しないんだよ!うん、そうだね。そうだと信じたい。



 そして僕は部室棟に到着した。



 ……ふむ。意外と部屋が多い。一体どこにバスケ部専用の部室があるんだ?



 部室棟の部屋は教室と違って外から覗くための窓などないから、一旦扉を閉めてしまうと完全に外部から視界がシャットアウトされる環境になっていた。



 ここならこっそり女子を連れ込んで淫らなことをしても、そうそう外部の人間にバレることはないだろう。



 …壬生さん、無事だよね?



「うう、一体どうやって調べたらいいんだ?」



 そうだ!扉に耳をあてて、中の音を聞けばいいんだ!もしも壬生さんがいたら、話し声が聞こえるかもしれない!



 僕はできるだけ怪しまれないように部室棟の廊下を歩き、扉の近くでわざと足を止めて聞き耳をたてた。



 一つ目…無音

 二つ目…無音

 三つ目…女性の話し声が聞こえた。



 え、まさかここ?



 どうしよう?すごく緊張する。やけに喉が乾く。先ほどから心臓がバクバクと音をたててうるさいくらいだ。



 僕はできるだけ慎重に扉に耳をあてて、中の音を聞く。









…パン。

…パンパン。

…パンパンパン。



 なにか肉と肉が叩き合うような音がする。それに呼応するように、「あん、あん、あん」とやけに艶めかしい喘ぎ声が聞こえてきた。



『せんぱい、ダメです!激しすぎ!』



『はあ、はあ、すげー気持ちいい!お前、最高だぞ!』



 あ、これやってるわ。後輩の女子と先輩の男子が、やってるわ。



 そんなあ。まさか…壬生さん、壬生さんが…壬生さんが寝取られちゃった…



「根東くん、ここでなにしてるの?」



「ふえ?」



「え、泣いてるの?」



 そこには心配そうな顔をする壬生さんがいた。



「壬生さん、なぜここに?」



「そんな泣き顔で言われても。私も同じ質問したいかな?」



 壬生さんは僕から視線を横に移し、扉を見る。「サッカー部になにか用でもあるの?」



 どうやらここはサッカー部の部室のようだった。やっぱサッカー部ってヤリチン多いんだな。



「いや、違うんだ。壬生さんが部室棟に行ったって女子テニス部の人に聞いて。探しに来たんだ」



「ふーん、そうなんだ」



 ――じゃあ知ってるよね?



 壬生さんは意地の悪そうな笑みを浮かべた。



「私がなんでここに来たか、知ってるよね、根東くん」



 普段はただの可愛らしい女の子ボイスの壬生さん。でもその時だけは、邪悪な魔女にでも話しかけられたような気分だった。



「おいで、根東くん。先輩となにを話してたか、教えてあげる」



 壬生さんは僕の心を抉って楽しんでいるのだろうか?ただ彼女に手を握られて、引っ張られると、少しだけ元気が出た。もう全部君のせいで苦しんでいるというのに、なぜ壬生さんのことを嫌いになれないのだろう?



 部室棟の近くにあったベンチに僕たちは座った。「ねえ知ってる?根東くん」



「なにが?」



「さっき私をここに呼んだバスケ部の矢田先輩ってね、すっごいエッチが上手らしいよ」



 なんですと?



 壬生さんは微笑みながら僕の方をじっと見つめ、続ける。



「そんな矢田先輩が私になんの用があって、バスケ部の部室に呼んで二人っきりにさせたんだろうね?」



「さ、さあ?掃除の手伝いとか?」



「ううん、ハズレ。正解は、私のことが好きだから付き合えって命令されたの」



 め、めめめ、命令だと!そんな人権侵害みたいなこと、この平和な日本で許されるのだろうか?



「矢田先輩ってほら、モテるから。ちょっと高圧的なんだよね。バスケで鍛えてるから男らしいと言えば男らしいんだけど。そういえば、根東くんと比べると、すごく筋肉質で男らしい体をしてたよ。あんなに強そうだと、たとえ私が拒否しても、無理やりエッチなことされたら、拒否できないかもね」



 そんな!それじゃあ強姦じゃないか!犯罪だよ!



「でもさっきも言ったよね。矢田先輩ってエッチがすごく上手だって。たとえ私が嫌だって抵抗しても、あの男らしい手つきで強引に感じる箇所を弄られたら、気持ち良くなっちゃうかもね」



 そうなの?女の子の体ってそんなふうにできてるの?



「み、壬生さんは、その矢田先輩と、その…そういうことを?」



 だとしたら、ポリスメンを呼ばないと。



「うん?私一言も、私がエッチなことされたなんて言ってないよ?」



 おっと危ない。うっかり国家権力を呼ぶところだった。



「告白されたってところまでは本当。で、続きなんだけど…根東くんはどんな話が聞きたいの?」



「え、それはどういうこと?」



「根東くんってさあ」壬生さんは僕の方をじっと見つめる。「私が他の男と一緒にいるって話をすると、すごく嬉しそうな目をするよね」



「どうしてかな?」



「え?いや、その、それは誤解だよ!僕はその、壬生さんが無事でただ安心してるだけだよ!」



「嘘だよ」



 壬生さんは僕の方に近寄ってくる。彼女の方から甘い香りが漂ってきて、その匂いに脳がくらくらしそうだった。



 女の子って、すごく良い匂いがするんだなあ、なんてバカのことを考えていた。



 壬生さんは僕の耳元に口を近づけて、ふぅと吐息をはいた。彼女の息遣いが聴覚に響いて、嫌でも興奮が高まっていることがわかる。



「だって根東くんのズボン、すごい膨らんでるもん」



 しょうがないよ。だって今、そこに血流が溜まってるんだもん。



「それは違うよ。いや、違わないけど、違うんだって。確かに興奮してるけど、それは違う理由だよ」



「そう?」



「そうだよ。だって壬生さんってすごい可愛いから。近くにいたら、男なら誰だってこうなるよ」



 なんかすごく情けない言い訳をしている気がする。



 でもしょうがないよ。今はなんとしてもで誤魔化す方が先決だ。



「根東くん、私ね。部室で二人っきりになったけど、彼氏がいるから付き合えませんって断ったの。そしたらね、矢田先輩。私のこと無理やり襲ってきたんだよ」



「え?」



「私は止めて欲しいって抵抗したの。でもダメだった。矢田先輩ね、私に強引にキスしてきて喋れないようにしたの。口を塞がれたら助けなんて呼べないよね?」



 確かに。くそ、なんて卑怯な先輩なんだ!ゆるせねえ。



「それでね。先輩は私が逃げないように体をしっかり抱きしめるの。そうなるともうなにも抵抗できない。先輩は私のおっぱいとかお尻とか、その手で触ってくるの。好きでもない男の人に触られるなんて最初は嫌だったよ?でもね…」



 ――途中から気持ち良くなっちゃったの。



「先輩の手ってごつごつしてるのに、女の子を触る手つきは凄く繊細で優しいんだよ。強引だけど、痛くはない。むしろ気持ち良く触ってくるの。そのせいでね、体がどんどん暑くなって、頭がおかしくなっちゃったの。体はどんどん気持ち良くなって、もっとして欲しいって思うようになっちゃってね…」



 ――気が付いたら、自分から先輩のことを求めるようになったの。



「もう口なんて塞がれてないのに、私ね、先輩が欲しくなっちゃって。自分から抱きしめちゃったの。いつの間にか裸になっててね。先輩の太くて大きいアレが、私の中にね」



 ――入れられちゃったんだ。



「なーんてことがあったら、どう思う?」



「え?」



 今までの艶めかしい態度から一転。壬生さんは健康的で朗らかな笑みを浮かべながら、「今のお話はどうでした?興奮した?」と聞いてくる。



 ああ、そうか。なーんだ、嘘か。揶揄われただけかあ。



「もう、壬生さんも人が悪いなあ。嘘なら嘘って言ってよ。すごい真実味があったよ」



「うん?私、今の話が嘘だなんて一言も言ってないよ」



 ――根東くんは嘘と本当、どっちだと思う?



「え、いや、それはもちろん、嘘だと思うよ。だってそんなの…」



 そんなの何なのだろう?



 そんなの、嘘に決まっている。だって今の話が本当だったら、壬生さんは僕以外の男とセックスしたってことになるじゃないか。



「嘘だよ。だって僕、壬生さんのこと信じてるし」



「そっか、信じてくれるんだ。ありがとう、根東くん」



 ――でも、確認する方法、あるよね?と壬生さんは僕に怪しい提案をもちかける。



「ねぇ、根東くん。本当は気づいているんでしょ?私が他の男の人とセックスしたかどうかを確認する、てっとり早い方法が」



「え?いや、ごめん。僕そこまで性経験が豊富ってわけじゃないから、さすがにわからないよ」



 童貞に処女か非処女かを確認するなんて、とてもではないが不可能だ。



「経験なんて不要だよ。ただ根東くんが、私のことを抱いて、セックスすればいんだよ」



 ――それで真実がわかるよね、と壬生さんは囁く。



「私が処女だったら、初体験の相手は根東くんになるから、今の話が嘘だってすぐにわかるよね。もし非処女だったら、今の話は本当だったって証明になるよ」



 ――ほら、簡単でしょ?とまるで数学の公式を教える先生のように言う壬生さん。



「うーん、でもそうなると、一つ問題があるか」



 問題しかないような気がするけど?



「根東くんが私を抱くってことは、それ、私のこと疑ってるってことだよね?」



「え、ああ、うん。そうなるのかな?」



 壬生さんのことを信じてるなら、抱く必要はない。いや、抱きたいという気持ちはもちろんあるけど、わざわざこのタイミングで抱く必要性はない。もちろんエッチはしたいのだ。ただ必要性の有無でいえば今は無いというだけの話だ。



「私、付き合う時に言ったよね?私、疑う人は嫌いだって」



「そう、だね。言ってたね。…え?」



「根東くん、私のこと、抱いてもいいよ。その代わり、その時は条件を破ったってことで別れようね」



「え?」



 なぜそうなる?いや、理屈はわかるのだが、どうして?



「私のことが信用できないならエッチして確認すればいいけど、その代わり別れる。信用してるなら、エッチをせず、そのまま私と付き合えばいい。そういうことだよ」



 ――根東くん、どっちにする?



「…抱かないよ」



「…本当に?」



「本当だよ。だって僕、壬生さんのこと好きだし、別れたくないよ」



「へー、そっかー…良かった」



 壬生さんはそう言うとベンチから立ち上がり、僕の目の前に立つ。彼女は顔を近づけてきて、そのまま僕にキスをしてくれた。



 唇と唇が重なる瞬間。彼女の柔らかい唇の感触が気持ち良く、幸せな感情が体全体を包み込んだ。



「エッチはダメだけど、キスはいいよ」



 ――信じてくれてありがとね、と壬生さんは微笑む。



「根東くん、さっきの条件だけど、卒業して大学に進学したら、一緒に同棲しようよ。大学生になったら、いくらでもエッチしていいよ」



「え、本当?」



「うん、本当。さっきの話は、高校に在学している時だけでいいよ。大学生になったら、無条件でエッチしてあげる」



 嬉しい話なのだけど、なんか素直に悦べないよな。



「あ、ありがとう。嬉しいよ」



「やっぱり反応違うよね」



「え?」



 一体なんの話だろう?



「私がストレートにエッチしようって言った時より、他の男の人とエッチをしている話をした時の方が、根東くん、嬉しそうっだった。ねえ、やっぱり私が寝取られている時の方が興奮しているよね」



 え、もしかしてハメられた?



「そっかあ、根東くんって、寝取られ願望があるんだね」



 なんか、マズイ展開かもしれない。



「…ふ、ふふ…ぷぷぷ、くくく、あははははははは、、あははは、あははははははは…そっかあ、そうなんだあ。ごめんね根東くん、気づかなくて」



 それは今まで一度も聞いたことがないようなサディスティックな笑い声だった。



「さっきの卒業後の話だけど、もしも根東くんが処女なんて欲しくない、寝取られ済の彼女の体が欲しいって思ったら、いつでも言ってね」



 ――大好きな彼氏くんのために、寝取られて来てあげるから。



 彼女はそう言って、今まで一度も見たことがないような笑顔を浮かべた。



 あ、やばい、これガチな奴だ。



 たぶん、いや確実に。僕が壬生さんに寝取られて来て欲しいと頼んだら、彼女は躊躇なくそれを実行するだろう。そんな危ない覚悟を感じた。



 絶対に、そう絶対に、寝取られて欲しいなんて彼女に言ってはいけない、僕はそう硬く決意した。
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