絶対に寝取られない僕の彼女・壬生さん 【R18版】

カワサキ萌

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第二章 ドキドキ!野外合宿編!

3日目 前半

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ごそごそ。ごそごそ。



 寝静まる深夜の寝室。他の女子たちはすでに眠っているのだろうか、布団の中にいる女子たちに動きはない。一つを除いて。



 本来は五人で泊まる和室には今、六人目がいた。しかもそれは、女子ではなく男。男は本当であれば消灯前に部屋から逃げるはずだったのだが、運悪く転んでしまい、逃げることができなかった。



 このままだと見つかってしまう。だから男子は近くの布団の中に入って隠れ、やり過ごすことにした。



 こうして一つの布団の中に男と女が同衾することになったのだが―



「ん♡」



 布団の中からは女性の艶やかな声が漏れていた。



 ごそごそとうごめく布団の中で、男と女は外に声が漏れないよう最大限の注意を払いつつも、お互いの体を確かめ合い、抱きしめ合い、くちゅくちゅと淫猥な水音をたてる行為をしていた。



「そこ…だめ…あ♡」



「壬生さんって感じやすいんだね」



「だって…そんなとこ弄るから…ん♡」



 布団の中でうごめく男女。やがてその動きは激しさを増していく。



「彼氏がいるのにこんなことしていいの?」



「ダメだよ…だから、今夜のことは内緒にしてね」



「わかったよ。その代わり、今夜はもう離さないよ」



 他の女子たちがスヤスヤと寝息をたてる最中、激しく動く布団の中からは熱っぽい声が漏れていた。



 …

 …

 …

「…壬生さん、君が狼に襲われた村娘なのかな?」



 目が覚めたらやはり自分の部屋だった。



 今回の悪夢は、今までの悪夢の中でもっとも最悪かもしれない。だって、布団が邪魔でなにも見えないんだもん。なんだよ、それ。夢なのに見せないってそれ夢の存在意義ある?



 いや、いいんだけどさ。見なくても。そんな壬生さんが寝取られるなんて辛い場面、本来は見ない方がいいんだよ。でもね、夢の中なら別に見てもよくない?いつも大事な場面で目が覚めてんだからさあ、一回ぐらいがっつり見てもいいじゃん。



 僕の性癖のくせに、なんで僕にとって都合の悪いことばっかりするかなあ。なんか納得できないんですけど。



 今日で合宿は二日目。といっても二泊三日が予定なので、泊まりはもうない。壬生さんは今日、午後には帰ってくる。



 やっとだ。やっと壬生さんに会える。



 辛かった。なんかいろんな意味で辛かった。



 確かに壬生さんの寝取られ報告のせいでいろいろと辛い目に遭った。でもそれは今振り返ってみれば、僕の性癖が満たされる分、辛さ半分、興奮度半分といったところかもしれない。



 だから寝取られに関して言えば、それほど辛くはないのかもしれない。辛い経験をした分、ご褒美をもらえるのだから。



 じゃあなにが一番辛いのかといえば…



「壬生さんに会えないのが一番辛いよ」



 やっぱり彼女に会えないのがもっとも辛く、寂しかった。一刻も早く、壬生さんに会いたいよ。



 もしかしたら夢に見たように壬生さんが他の男に寝取られてしまった可能性があるにも関わらず、今はそんな寝取られより壬生さんに会えない寂しさに胸が支配されていた。



 僕は出かける準備をする。制服に着替え、参考書を鞄に仕舞い、ゴールデンウィークだけど学校に行くことにした。



 うちの学校は受験生のために、土日や祝日も図書館や学習用の教室を解放している。だから僕みたいな受験生が休日に学校に行ってもまったく問題ない。



 それに受験生だけでなく、連休中に学校で部活をする人もいるので、いざ学校に向かうと僕以外にも学校へ向かっている生徒がいた。



 壬生さんが帰ってくるのは午後以降だろう。それまで受験勉強をして時間をつぶすことにした。



 僕はスマホをオンにしてメッセージを送る。



『壬生さん、今日は学校で待ってるよ。着いたら教えてね』



『うん、わかった。昨夜の答え、考えておいてね』



 意外にもすぐに返事がきた。もしかして待ってたのかな?だといいんだけど。



 壬生さんが帰ってくるまでまだ時間はかなりある。とにかくそれまでは勉強をして時間を潰そう。



 参考書を見る。ノートを取る。スマホで時間を確認する。参考書を読む。ノートを取る。スマホで時間を確認。参考書…



 ダメだ。気になって集中できない。本当に大丈夫なんだよね、壬生さん!もう昨夜の件が気になって気になって集中できない!



 昨夜。容疑者は四名。そのうち、もっとも容疑が濃厚なのは壬生さんだと思うのは、それは僕が寝取られ性癖の持ち主で、自然と壬生さんが襲われた村娘なら良いのに~とか心のどこかで考えているからなのか?そうでないと信じたい。ただどうしても想像してしまう。



 布団の中で僕以外の男に寝取られてしまった壬生さん。その艶やかな姿が脳裏に焼き付いて離れない。



 大丈夫、絶対違う、壬生さんなわけがない。では仮に壬生さんが違うとして、誰が襲われた可能性が一番高いんだ?



 あの面子は全員彼氏持ち。だから彼氏がいるから大丈夫、というのは根拠にならないだろう。



 …ただ、一人だけ、現場に彼氏を連れ込んでいる女子がいるんだよなあ。それは瑞樹。壬生さんと同じ部屋だった俺っ娘さん。



 そもそも現場において、わからないのは女子だけではない。男についても同様だ。



 狼はそもそも誰だったのだろう?



 当時の状況を振り返ると、消灯の時間、男四人のうち三人は現場から逃走。一人は逃げられず、残ってしまい、そのまま村娘を食べたということだ。



 そして現場には瑞樹の彼氏もいた。瑞樹の彼氏が狼である可能性は四分の一、ということになる。



 狼の正体が瑞樹の彼氏で、食べられたのが瑞樹なら、まあ一番丸くおさまるなあ、というのはもちろんある。ただ瑞樹はすでに前日、彼氏とやっているという前科がある。



 いや、別に彼氏とやることが悪い事とは言わないけどね。ただほら、壬生さんを外で待たせた件は許せねえから。そこだけはきっちり詰めたいよね。



 果たして二夜連続で彼氏とエッチをするのだろうか?



 仮に僕が壬生さんとのエッチがOKになった場合、僕は二夜連続で壬生さんとエッチをするか?



 …うん、するな。二夜連続どころかたぶん一年を通じて毎日やるね。じゃあ二夜連続で瑞樹が彼氏とエッチをしてもぜんぜんおかしくないのかな?



 わっかんねえ!ぜんぜんわからん!これ、意外と難問だよ。だって手がかりほとんど無いんだもん!壬生さん、もっとヒントちょうだい!



『壬生さん!』



 僕はスマホで連絡を送る。



『ヒントちょうだい』



『いいよ』



 あれ?冗談のつもりで送ったんだけど、良いみたい。



『男の正体は瑞樹の彼氏ではありません』



 じゃあお手上げだぜ!っていうかなんで僕が今、一番知りたいことがわかるんだ?僕の彼女は僕のこと理解しすぎだろ。



 じゃあ瑞樹は違うのかな?いや、瑞樹じゃないとみせかけて実は瑞樹とか?



 くっそお、一体誰だ?四人のうち、誰が狼に食べられたのだ?まさか後輩のちーちゃんじゃないよね?昨夜の会話を聞く限り、ちーちゃんという女の子はとても純粋無垢な感じがした。正直、ちーちゃんが寝取られたとするとかなりショックである。



 …じゃあ消去法で宗像杏でいいや。



 よし、とりあえずクイズの答えは決まった。僕はスマホを見る。すでに夕方だった。



 嘘だろ。ほとんど受験勉強できてないじゃん。NTR人狼ゲームで悩み過ぎだろ!



 ぴろん♪



 スマホにメッセージが来る。



『学校に到着したよ。今は正門にいるよ』



『迎えに行くよ』



『うん、待ってるね』



 なんかやり取りだけみると、とても健全な恋人同士みたいだな。まさか寝取られプレイ大好きカップルだなんて思わないよな。



 僕は参考書をバックに入れて席を立ち、速足で校庭へ出ると、正門に向かう。



 はやく、はやく会いたい。壬生さんに会いたいよ。



 夕日が沈みかける校庭。真っ赤に染まった空を背景に、複数の生徒たちが正門前にいた。どうやらテニス部の合宿に参加した人たちらしい。



 近づくと、壬生さんがいた。男子部員に囲まれている。



「壬生さん!」



 声をかけると、こちらに気づいたのか、にっこりと笑みを浮かべて手を振ってくる。



「ごめんね、みんな。彼氏が来たから行くね」



 壬生さんは彼女を囲んでいる男子たちに断りをいれると「おーい、根東くーん」と手を振りながら駆け寄ってくる。



「え!嘘!本当に彼氏いたの!」

「そんな!俺、壬生さん好きだったのに!」

「あれが彼氏?俺の方が絶対いいだろ!」

「意外と普通な男だよな」

「わかるよ、お前らの気持ち。俺も三ヶ月前、彼女が兄貴の部屋で…うっ、しまった!忘れかけていた過去が蘇る!」



 なんか一人だけ変な反応をしている奴がいるが、それ以外の男子から批判的な眼差しが飛んでくる。



 知ったことではない。他人の評価など知るか。



 僕は駆け寄ってくる壬生さんに近寄ると、そのまま腕を広げてぎゅっと抱きしめた。



「会いたかった」



「うん?そんなに待ち遠しかった?」



「…うん」



 つい抱きしめる腕に力が入る。女の子の柔らかい感触が両腕を伝ってくる。こんな人前で抱きしめたりしたら、絶対テニス部の奴らに変なこと言われるだろう。しかし止められなかった。



 壬生さんはそんな僕の行動に対して、特に咎めず、それどころか受け入れてくれたのか、僕の背中にすっと両腕を通して僕のことを抱きしめてくれた。



「私も会いたかったよ」



 ぎゅっと抱きしめる力が増す。ああ、もうすごい幸せだ。



 今思えばたったの二日。それだけの時間だ。しかしこうして壬生さんのことを抱きしめたことでハッキリと痛感する。

 

 やっぱり僕は壬生さんが好きなのだ。これからもずっと一緒にいたい。



「ところでさ」



 壬生さんは抱きしめる腕からすぅと力を抜き、僕の方を見上げてくる。



「これからテニス部のみんなと打ち上げに誘われてるんだけど、どうする?寝取られ好きの根東くんとしては、やっぱり…」



「ダメだ」



 僕は最後まで言わせず断った。



「うん?行っちゃだめなの?」



「うん、ダメ」



「うーん、でも私がどこで誰と何をしようと、私の自由だと思うけど?」



 確かに壬生さんのいう通りだ。たとえ彼氏だからといって、壬生さんの行動をすべて制限する権利なんて無い。たとえ彼氏以外の男と話そうと遊ぼうと、基本は壬生さんの自由だ。



「壬生さんと会えなくて寂しかった」



「…うん。それで?」



「もう会えないのは嫌だ。今日は一緒にいて欲しい。お願い」



 ぴく。壬生さんの体が一瞬、震えた気がした。



「そんなに私と一緒にいたいの?」



「うん」



「打ち上げに行けば、もっと根東くんの寝取られ性癖を満たして喜ばせられるかもしれないよ?」



 それはきっとそうなのだろう。壬生さんは僕のことをよく理解している。僕がなにをすれば喜ぶのか、興奮するのか、頭の良い彼女は完璧に理解しているのだろう。



 もうわかっているのだ。彼女がなぜあんな行動ばかりとるのか。それは僕のせいだ。僕が望んでいるから、彼女は行動する。彼女は悪くない。僕が悪いのだ。でも…



「今は壬生さんがいなくなる方が辛い。ずっと一緒にいて欲しい。もうこれ以上は待ちたくない」



 ぴくぴく。また壬生さんの体が震えている。というか彼女の体温がなんだか熱く、上昇している気がする。



 彼女を抱きしめている手がじゃっかん汗ばみ始めているが、これは僕の汗か?それとも壬生さんの汗か?どっちだ?



「じゃあ…仕方ないね」



 壬生さんは足をもじもじと動かし、きょろきょろと視線が動く。なんだか動揺しているように見えた。彼女の顔が赤いのは夕日のせいか?



 壬生さんはくるりと振り返ると、テニス部の人たちに声をかける。



「みんなごめんね。これから彼氏とデートだから、打ち上げいけなくなりました!じゃあ、また今度ね」



 彼女は再び僕の方を振り向く。ただ顔は下を向いているので、どんな表情をしているのかわからない。



「早く行こう。時間なくなっちゃう」



「え、うん、そうだね」



 壬生さんは僕の手を引っ張って校門を抜ける。彼女は僕の前を速足で歩くので、彼女の顔が見えなかった。



「え!うそ、壬生さん、マジか」

「そうか、本当に付き合ってるんだあ」

「あのクール系の壬生さんがあんな顔をするなんて!クソ!」

「悔しいけど負けだよ。俺たちじゃ無理だ、壬生さんを幸せにできない」

「グス、そうだな。俺、梓ちゃんのこと好きだったけど、でも兄貴の方が好きだっていうなら、俺に止める権利ないよな。さよなら、梓ちゃん」



 なんか一人だけ違う反応をしてる奴いるけど、あいつは大丈夫か?っていうか梓ちゃんって誰だよ。



 というか、壬生さんはどんな顔してたんだろう。気になる。だが正門を抜けてしばらく歩き、繁華街に出る頃にはいつも通りのクールフェイスな壬生さんに戻っていたので、結局どんな顔をしていたのかわからず仕舞いだった。



「根東くんはどこに行くつもりだったの?やっぱりラブホ?」



「いや、ダメだ」



「どうして?」



「今ラブホなんて行ったら、壬生さんのことが好き過ぎて一線を超えちゃうから。それだと契約違反になるからダメだよ。それより、個室つきのネカフェにしよう。そこならまだ理性を保てる」



「…………しなきゃよかった」



「え?なにかいった?」



「ううん、早く行こう」



 今日の壬生さんはなんだか雰囲気が違う気がする。なんか、優しい。まあ壬生さんは本性を出さない限りは基本的に優しいんだけどな。



 僕たちは個室のあるネカフェに行き、そこでカップルシートの個室を案内してもらった。



 薄暗く、どこか大人の雰囲気のあるネカフェで、ここはソフトドリンクやソフトクリームが無料で食べられるネカフェだった。ただそんなもの注文することもなく、僕らは個室に入ると、荷物を置いてお互いに向き合う。



「壬生さん」



「うん?なにかな?」



「好きだよ」



 もう止められなかった。ここに来るまで、ずっと会えて嬉しいという気持ちが洪水のように溢れている。その思いが止められず、僕は個室の扉を閉めて鍵をかけると、壬生さんをギュっと抱きしめてキスをした。



「…ん、私も好きだよ」



 キスをして顔を離すと、今度は壬生さんの方から顔を近づけてキスされた。キスして、キスされて、そんなことを何度も繰り返しているうちにやがて濃厚なキスへと発展していった。



 壬生さんの唇の感触がとても柔らかく、その唇と触れている間は頭が真っ白になって、多幸感が体を支配する。



 幸せだった。もっと壬生さんのことが欲しくなって、抱きしめる腕に力が入る。思わず右腕をあげて彼女の頭を撫でてしまう。



 黒くサラサラとした髪を撫でていると、壬生さんの体温が再び上昇したような気がした。



「好きだよ」



 壬生さんの耳元でそう囁くと、



「ん♡」



 と甘い吐息が彼女の口から洩れて、びくりと体が反応した。その反応が面白くて何度も彼女の耳元で「好き」「大好き」「壬生さんのことが好き」と連続して囁くと、さらにびくびくと壬生さんの体が反応する。



 おもしろい。もっとやってみよう。



「根東くん、それ以上はやめて」



 あ、まずい。怒らせたかもしれない。やり過ぎたか?



 僕は耳元から顔を離し、おそるおそる彼女の顔を覗き込む。そこには、目をトロンと蕩けさせ、はあはあと呼吸を荒くする、頬を真っ赤に染めた壬生さんの顔があった。



「それ以上は本当にダメだよ。私の頭がおかしくなる」



 うわ、この顔はやばい、可愛すぎる。これ絶対ラブホに行っちゃダメな奴だ。僕の理性が耐えられない。



 僕は最後にもう一度キスをすると、「ごめん、ちょっと飲み物もってくるね」と言って個室を出て、ソフトドリンクを二人分持ってきた。



 個室に戻ると、壬生さんの顔は普段通りに戻っていた。僕は彼女の横に座る。



 しばらく無言の時間が続いた。彼女はそわそわとしており、その綺麗な黒髪を弄っている。



「根東くん、じゃあ答え合わせでもする?」



 唐突にそんなことを言われて、なんのことかわからなかった。



 あ、NTR式人狼か。



「あ、あー、うん。いいよ」



 完全に忘れていた。そうだった。そういう約束してたね!



「根東くんは誰だと思う?」



 …どうしよう?壬生さんって答えたいな。こんな状況下でも、壬生さんが他の男に寝取られることを求めるだなんて、僕の脳神経はそうとう破壊されてるな。



 ごくり。喉が乾く。僕はソフトドリンクを飲む。そういえばこれ、なんのドリンクだ?適当に注文したからなんのドリンクかわからない。…メロンソーダだった。



 ダメだ。今はまずい。空気を読もう。今は寝取られ性癖を封印しろ!



「えっと、み…む、宗像さん」



 あっぶね、壬生さんって言いそうになった。いや、絶対違うじゃん。今、寝取られ性癖を発揮する場面じゃないじゃん。僕は確かに寝取られ性癖があるかもしれない。でも意味もなくリスクを犯すタイプじゃないから!



「え?あの、うーん、せ、せいかーい!やったね根東くん!」



 あ、当たったみたい。ただの消去法だったんだけどな。



 ていうかなんで壬生さんも動揺してんだろ?今日はなんだか、お互いの体温がすごく高い。



「正解なんだ。でも意外だね。宗像さんって、彼氏がいるから付き合えないって言ってたぐらいだから、もっと貞操が固い人だと思ってたよ」



「え?杏はその…付き合えないって言っただけで、エッチできないとは言ってないから…」



 ああ、そういえば。



 僕は通話の内容を思い出す。あのなんだかお姉さん口調の宗像杏さんは、確かに彼氏がいるから付き合えないとは言ってたけど、別にエッチはダメとは言ってないね。



 うん、確かに理屈はそうなんだけどさあ…え、それありなの?いや、もちろん人の性事情なんて人それぞれだと思うよ?だからどんな付き合いをしようとその人の自由だと思うよ?ただね、なんか意外だなって思って。



 もしかして僕が知らないだけで、世の中の女性はたくさんエッチしているのかもしれないね。



どうやら宗像さんは、性に奔放な女性のようだった。まあ、そういう人もいるよ。



 なんか、妙な空気になったな。いつの間にか紙コップの中身が無くなってる。



「空になったから、新しい飲み物もってくるよ」



「うん。お願い」



 にっこりと微笑む壬生さん。今日はなぜかすごく可愛く感じる。もちろん、いつも可愛いのだ。ただ今日はいつもと違って、なぜだろう?僕のことをすごく熱っぽい目で見てくる。それじゃあまるで恋する乙女だよ。



 僕はネカフェにある自販機に向かう。ここの自販機は全部無料なので、どれを注文しても良い。



 よく見たらすでに誰かが注文していたようで、自販機が動いている。



「あ、ごめんなさーい。それ私が注文したやつ…ってあれ?根東くんだ!奇遇だね!」



 うん?この柔らかい女の子ボイス、聞き覚えがあるな。見れば、小倉さんだった。



「あ、小倉さん。久しぶりだね。パソコンの調子どう?」



「うん、久しぶりー。パソコン?調子は良いんじゃない?快適に動くもん!」



「へえ、そうなんだ。それは良かったよ!」



 僕は突然の小倉さんとの邂逅につい話し込んでしまった。すると、



「根東くん」と後ろから声をかけられる。「そちらの女性は、どなたかしら?」



 なぜだろう。すごい圧を感じた。



 あれ?なんかこれ、修羅場っぽくね?
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