絶対に寝取られない僕の彼女・壬生さん 【R18版】

カワサキ萌

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第五章 享楽編

10 百崎瑞樹の土産話

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 校内を歩いていると、なんだか見られているような気がして、視線が気になる。さきほど市川さんにあんなこと言われたせいで、女子から熱っぽい視線を送られているような、そんな気が。

 お昼休みに壬生さんと一緒にお弁当を食べているときにそのことを相談すると、

「気のせいじゃない?」

 とにべもない返事を受けた。

「そうかなあ?」

「そうよ。それとも見られたいの?」

「いや、そういうわけじゃないんだけどね」

 壬生さんは特に関心がないようで、淡々と食事を続ける。

「それより、今回の期末試験、ずいぶん成績が良かったね」

「え、ああ、うん、そうだね」

 テストが返却され、無事期末試験は終了。そのあと、試験結果が発表されたのだが、僕の成績は校内で3位まで上昇していた。

 まさに快挙である。本来であれば泣いて喜ぶところだろう。しかし今の僕は、次の寝取られ報告が気になってそれどころではなかった。

 ちなみに1位は壬生さんだった。全教科100点とかどうすれば取れるのだろう?やはり頭の構造が違うとしか思えない。とてもではないが、僕の破壊され尽くされた脳みそでは一生彼女に太刀打ちできない、そんな気がしてならなかった。

「根東くん、最近はぜんぜん私に勉強の相談してくれないし、うかうかしてると私、追い抜かれちゃうかもね」

「いやいや、それは無いでしょ。だって全教科100点より高い点数なんてさすがに無理だって」

「うーん、そっかあ。それもそうだね」

 壬生さんはどこか上の空で返事をする。なにか考え事をしているような気がする。一体なにを考えているのだろう?なんだか僕にとって最悪なことを考えているような、そんな気がした。

 とにかく、話題を変えた方が良いような気がする。

「そ、それよりさ。昨日の件だけど…」

「うん?杏のこと?」

「そうそう。いや僕としては嬉しいんだけど、ほら、彼氏が他の女の子とイチャイチャしたら壬生さんは怒らないのかなあ、ってちょっと気になって」

「うーん」

 と壬生さんはパクッと卵焼きを食べ、もぐもぐと咀嚼し、ごくりと飲み込むと、

「そうだね、気持ち的には最悪かもね」

 と言う。やっぱり怒ってるじゃないか。

「でも負けは負けだから。しょうがないよ。負けたくせに四の五の言うのって、みっともないって思わない?」

 え、いや、まあそれはそうなのだが。だからって彼氏が他の女の子とエッチなことをするのを納得して受け入れられるものだろうか?

 いや、この人は受け入れるのだろう。そういう人だ。たとえ嫌だとしても。

「私ね、今までいろんな人と競い合ってきたの」

 僕がまだ納得できていないと思ったのか、壬生さんは子供に聞かせるように丁寧に話しかける。

「中には私が女だからって理由で勝手に見下す人もいたよ。そういうウザい人はね、コテンパンに実力で負かしてやったの。勉強とか、スポーツとか、いろんな分野でね」

 ——相手の得意分野でそいつを負かすのって、すごく気分が良いよ、と壬生さんは嘲笑を浮かべながら言う。

 おや、ちょっとドSモード入ってない?

 黒髪の美少女は他の人には見せないような、サディスティックな顔つきで語る。

「そうやって今まで、いろんな人の面子を潰してやったの。もちろん、今回みたいに勝負を賭けごとにしたこともあるよ。もしあの時負けてたら、私、今頃慰み者になってたかも」

 な、なんだと!そんな、今日は壬生さんの寝取られトークの番じゃないのに!百崎さんの番なのに、こんなタイミングで寝取られ報告が始まるだと!

 突然のことに僕の心臓がドクンドクンと早鐘を打って、嫌でも興奮が増してくる。こんなこと聞きたくないのに、もっと聞かせてほしいと体が喜び初めて…

「でも私が強すぎるからそんなことはなかったんだけどね」

 ああ、なんだ。寝取られは無しか。

 …いや、おかしいだろ。彼女の貞操が無事だとわかったのに、なぜがっかりする?落胆するとかおかしくね?

「へえ、そうなんだ」

「なんでちょっとがっかりしてるの?」

「そ、そんなことないよ!壬生さんが勝ってくれて嬉しいな!」

「ふーん、ならそういうことにしてあげる」

 と壬生さんは疑いの眼差しを向けつつも、それ以上は追及してこなかった。あっぶねえ、僕の本音がバレたかと思ったよ。

「とにかく、そうやって今まで勝負事に勝つたびに負かした相手に泥を塗ってぐちゃぐちゃにしてきたの。なのに今更勝負で負けてやっぱり嫌だから無しにしてなんて言ったら、私の今までの勝負が全部台無しになってしまうと思わない?」

 それは、うん、そうかもね。

「うん、そっか。なんとなく壬生さんのことがわかった気がするよ」

「そう?」

「うん、壬生さんが良いって言うなら、僕も受け入れるよ」

「ありがと。それで…夕べはお楽しみだったみたいだね」

 あれ、もしかして全部知ってる?

「いいんだよ、根東くん。最後までやっても。約束って言っても、根東くんが一方的にしてる約束だし、いつでも反故にして良いよ」

「いやいや、それはないから!確かに壬生さんの言った通り、後悔はしたよ!でも曲げないから!いったん約束したら最後まで絶対守るよ!だって僕、壬生さんが大好きなのは本当だもん!」

「そう?なんだかそんなに愛されると照れちゃうね。なら約束、ちゃんと守ってね」

 フフッと嬉しそうに笑みを浮かべる壬生さんは、なんだかとても可愛らしかった。こんな素敵な彼女がいるのに、今日は別の女の子と遊びに行くというのだから僕もなかなか業が深いな。

 しかし壬生さんは勝負ごとにはかなり公平なのだな、と思う。

 もちろん、いくら約束だからといって、嫌なものは嫌だ。それでも受け入れて実行する、それが壬生さんという人の生き方なのだろう。

 …それってつまり、僕が負けたらガチで寝取られに行ってたってことかな?

 その結論に気づいたとき、ぞくりと背筋に戦慄が走ったのと同時に、胸の中から何かを期待する興奮が沸き起こった。

 いや、期待してねえから。いいんだよ、これで。僕が勝ったことで壬生さんの貞操は守られた、それでいいじゃないか!わざと負けて壬生さんを寝取らせるだなんて、言語道断だからね!

 そしてお昼休みが終わり、放課後になる。壬生さんは今日も部活に行き、そして僕は正門前で待ち合わせをする。

 夏の日差しはますます暑くなっている。今日は雲一つない青空なので、余計に暑い。

「おーい司!待たせたな!」

 正門前で待つこと十分ほど。ポニーテールをたなびかせながら夏の制服姿の百崎瑞樹さんが、明るい笑顔を浮かべつつ、そのしなやかな手をこちらに振りながらやってきた。

 どうやら部活をサボったらしい。というより最近はあまり部活は頑張ってないらしく、適当にやってるそうだ。

「しょうがないだろ、お前と一緒に遊ぶ方が楽しいんだからよ」

「え、そうなの?僕も…百崎さんと一緒にいると楽しいよ」

「お、嬉しいこと言うじゃねえか。へへ。早く行こうぜ💓」

 僕の彼女は壬生さんだ。それは間違いない。百崎さんは彼女ではない。もちろん、大事な友達であることは間違いない。

 そして僕は、そんな大事な友達の百崎さんが、他の誰か別の人に抱かれることを想像して興奮していた。

 一体今日はどんな話を聞かせてくれるのだろう。楽しみでしょうがない。もちろん、それが最低なことであることは十分に理解している。それでも興奮が止められないのだ。

 まったく、寝取られ性癖というのは本当に呪いだよね。

「へへ」

 百崎さんは僕と楽しそうに腕を組んで一緒に歩く。今日が暑い夏の放課後ということもあってか、百崎さんの腕は汗で塗れており、僕の腕と絡まることで余計に皮膚と皮膚が密着しているような気になった。

 彼女もまた、宗像さんとは違うタイプの美少女なのだ。鋭くも愛らしい眼差しに、白く綺麗な肌。テニスで鍛えた健康的な体。短いスカートから伸びる足もすらりとしており、肉付きの良さそうな太腿がセクシーでたまらない。

 こんな可愛い美少女にあの日、なにがあったのだろう?それが気になって気になってしょうがないのだ。

 僕たちは昨日と同じネカフェで受付をし、カップル用の個室へ向かう。外が暑かったので、冷房の効いたネカフェの中はとても居心地が良い。

「へぇ、こんな感じなんだな」

「ネカフェはあんまり来ないの?」

「ああ、興味がなかったからな。でも、へえ、なかなか面白そうだな」

 きょろきょろと漫画コーナーを物色しつつ、僕らは自販機でドリンクを買ってから個室に向かう。扉を明け、中に入り、バッグを個室に置いて座る。

 そしてようやく僕らは二人っきりになる。

「なあ司」

「え、なに?」

「あの時、どうして抱いてくれなかったんだ?」

 百崎さんの距離が近い。隣同士で座る僕たち。百崎さんは僕の背中に手をおき、体を密着させてくる。すると、彼女の胸が僕の腕にあたり、柔らかな感触が伝わってくる。

「俺、期待してたんだぞ」

「そ、そうなの?」

「ああ、だってお前、あんなに激しいキスを突然するんだもん。期待しない方がおかしいだろ?来沙羅だって良いって言ったのに、なんでしてくれないんだ?」

「そ、それは…壬生さんと約束して…」

「ふーん、俺の体ってそんなに魅力、無いかな?」

「いや、そんなことは…」

「じゃあお前、俺の体、好きなのか?」

 僕は百崎さんを見る。短い半袖のブラウスに、短いスカート。そんな制服を盛り上げるような形の良い胸に、キュッと細まってる腰まわり、そしてスカートから伸びる形の良い太腿。どれをとっても男が好きそうな体そのものだ。

「…うん、好きだよ」

「へへ、そうなんだ」

 百崎さんは嬉しそうな笑顔を浮かべ、ゆっくりと僕に抱きついてくる。するとますます体同士が密着し、より彼女の体温と感触が伝わってきた。

 はあはあと百崎さんの甘い吐息がすぐ近くで聞こえる。

「俺の体が好きなのに、それでも誘惑に耐えたのは、俺が他の男に抱かれなかったから、なのか?」

 どくん。心臓が大きく鼓動する。僕は思わず百崎さんの背中に腕を伸ばし、ぎゅっと抱きしめた。

「お?なんだよ、急に反応するじゃねえか」

「あ、その、ごめん」

「本当に寝取られが好きなんだな。正直、ちょっと半信半疑だったぞ?」

 ——温泉旅館でなにがあったのか聞かせてやろうか、と百崎さんは僕の耳元で囁いた。

「…うん。お願い」

「ふ、ふふ。そんなに聞きたいのか。じゃあそうだな、俺にキスして、今だけ彼女としてて扱ってくれたらいいぞ」

 僕は百崎さんの顔を見る。壬生さんも綺麗な女の子だが、百崎さんもかなり綺麗な女の子だ。そんな綺麗な女の子の顔が今、目の前にある。

 僕はそっと百崎さんの唇にキスをした。すると彼女もお返しとばかりにキスをしてくる。

 僕の唇と彼女の唇が何度も触れあっていると、だんだんとその動きは激しくなり、ついにはお互いに求めるように濃厚なキスに発展していく。

 やがてキスの時間が終わる。百崎さんの普段の男っぽい言動は今やすっかり鳴りを潜め、その白い頬は赤く染まり、目はトロンと甘く蕩け、うるうると潤わせている。

「瑞樹」

 僕が彼女の名前を呼ぶと、

「なんだ?」

 と甘い声で返してくる。

「聞かせてほしい」

「へへ…良いぞ💓」

 僕たちはお互いに体を抱きしめあい、そして始まる。彼女の寝取られストーリーが。

「さっきも言ったけど、俺、本当に抱いてほしかったんだぞ。俺、お前のことが好きだし、それにあんなにがっつりキスなんかされたら、ますます好きになるに決まってるだろ。なのにお前、それ以上のことをしてくれなかった。ひどいよな、こんなにも発情した女をそのままにして放置するだなんて」

 ——だから俺、来沙羅に誘われて温泉旅行に行ったんだ、と瑞樹は続ける。

「別に問題ないよな?だってお前、俺のこと抱かなかったんだもん。好きなだけで付き合ってるわけではないし、抱いたわけでもない、そんな女がどこで誰とエッチしようと、司には関係ないもんな?」

「いや、そんなことは…」

「うん?本当か?本当に違うって言えるのか?それとも…」

 ——他の男に抱かれて欲しいって思ってるのか?と瑞樹は言う。

「あの日はさ、瑞樹の兄貴とその友達が運転する車でな、温泉旅館に行ったんだよ。だいたい3時間ぐらいで到着してな。その頃にはもうすっかりあたりは暗くて。俺たち荷物を置いたらそのまま温泉に入ったんだよ」

 ふむ、そのあたりは昨日の宗像さんの話と同じだな。僕は瑞樹の話に耳を傾ける。

「その温泉は、女湯だったんだよね?」

「うん?ああ、そうだぞ。だからそこでは何もなかったな。それとも、混浴の方がよかったか?」

「いや、そんなことはないよ」

 僕は一体、どうしたいのだろう?瑞樹には無事でいて欲しいのか、それとも他の男に寝取られて欲しいのか。

 いや、寝取られない方が良いに決まってるよな。いくら彼女ではないからって、そんなよく知りもしない男に抱かれて良いわけないもんな!

「ふーん?どうだかな。今のお前、凄い顔してるぞ?」

「え?そうなの?」

「ああ、今にも俺のこと、襲いそうな顔してる。へえ、お前のこと、こうやって誘惑すれば良かったのか。良いこと知ったぜ」

 妖艶な笑みを浮かべる瑞樹は、チュッと僕にキスをしてくる。

「へへ。今のお前、なかなか男らしい顔してるぞ」

「瑞樹」

「わかってる。続きだろ?温泉から出た後はな、来沙羅の兄貴に捕まってな、男連中の部屋でちょっと話してたんだよ」

 ——その時な、襲われちゃった。

 どくん。突然の事態に僕の心臓が高鳴った。

「え、それは、あの」

「ひどい男だよな。妹の友達に欲情して、襲い掛かってくるんだぜ?本当だったら抵抗した方が良かったかもな。でもな、あの時の俺、お前のキスのせいで体がうずうずしてたんだよ。なんだか体が疼いて、どうにかして欲しいって気分だった。だからさあ、そのまま受け入れちゃった」

 な、なんだと!よりにもよって自分の妹の友達に手を出したというのか!そんなのエロすぎるだろ!

「来沙羅の兄貴ってさ、なかなかのイケメンだろ?それに体も鍛えてて男らしいし。そんな男に浴衣を脱がされてな、妹の知らないところでたーっぷり、この体を慰みものにされちゃった」

 そんな!瑞樹が、僕の大好きな瑞樹が、壬生さんのお兄さんに寝取られただなんて!そんなのひどいよ!ひどいのに、なんでこんなにも興奮するんだ?

「そうやって来沙羅の兄貴と絡み合ってるとな、俺の体もどんどん熱くなって、頭もおかしくなってな、もう自分でも冷静でいられなくなったんだと思う。そんな時にな、扉が開いて、もう一人入ってきたんだよ」

 …え?

「言っただろ?来沙羅の兄貴と、その友達と一緒だって。確か的野って名前だっけ?その的野さんにな、俺たちが絡んでるところを見られちゃったんだよ」

 ——さっきまで楽しくおしゃべりしてた女の子が、自分の知らないところで友達といやらしいことをしてたんだもん、なかなかショックだったろうな、と瑞樹は続ける。

「一瞬、時間が止まったかと思ったよ。的野さんな、俺の方をじーっと見ててさ。んでちょうどその時くらいかな?食事の用意ができたって仲居さんが料理を部屋に運びに来たんだよ」

 え?あー、うん、そうなんだ。てっきりそのままさらに行為が発展するのかと思ったが…いやいや、それでいいんだよ。それ以上発展させてどうする?むしろここは行為をストップさせた仲居さんのファインプレーを感謝すべきでしょ!

「それぐらいの時間かな?来沙羅が部屋に戻ってきて、あとちょっと遅れて杏も戻ってきたな。俺たちは食事をとって、いろいろお喋りして、そのまま就寝したんだよ」

「そ、そうなんだ。それで、お終いなのかな?」

「いいや」と瑞樹は否定し、続ける。「だって俺、まだ体が疼いてたんだもん。まだ終われないよ」

 え?それってどういう意味?

「部屋で寝てるとな、しばらくすると杏が出て行って、来沙羅も部屋を出て行ったんだよ。でな、俺一人になったわけだし、じゃあいいかなってことで…」

 ——男どもの部屋に行っちゃった💓

 ドクン、僕の心臓が大きく鼓動し、燃えるような熱さで血流が体内をドクドクと巡りまわる。

 な、なんだと?自分から男部屋に行っただと?

「扉をこんこんとノックするとな、扉が開いて、的野さんが出てきたんだよ。でな、俺の方を見ると、あいつ、俺のことを抱きしめてな、そのなま部屋に強引に入れて、さっきの続きを始めたんだよ」

 な、なんだと!的野さんは止める側の人間じゃなかったの!

「もちろん、部屋には的野さんだけでなく、来沙羅の兄貴もいたんだぜ。でな、俺たちが突然目の前のおっぱじめるからさ、最初は驚いてたみたいなんだよ。でもな、俺たちの姿を見て興奮したのか、自分も浴衣を脱いで…」

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「そ、そんな、それってつまり…」

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 そんな馬鹿な!僕の大好きな瑞樹が、よりにもよって二人の男を相手してただと!そんなの、そんなの、めちゃくちゃ興奮するじゃないか!

「俺も二人同時なんて初めてだからさあ、もうめちゃくちゃだよ。今どうなってるのかぜんぜんわからなくてな、ただ求められるがままにぐちゃぐちゃになって、とにかくひたすらに求めあって、まるで動物みたいに交じり合ってたよ」

 そ、そんな。瑞樹のこのスレンダーで綺麗な体も、形の良いおっぱいも、スベスベしている太股も、全部が全部、僕以外の男たちによって蹂躙されてしまっただと!

「そ、そんな、瑞樹が…だって」

「うん?なんだ、泣いてるのか?」

 ——可愛い奴だな、と瑞樹は僕のことをしっかり抱きしめつつ、僕の後頭部に手を置いてよしよしと撫でてくれた。

「俺が寝取られて悲しいのか?」

「うん」

「でも興奮してるんだろ?」

「うん、ごめん」

「へへ、なんだよ、来沙羅じゃなくても興奮できるんだな?寝取られだったら誰でも良いのか?」

「ち、違うよ。それは違う。僕にとって瑞樹も大事な人だから、だから悲しくて、それで、その、興奮もしてた」

「へへ、本当に変態なんだな。でも良いぞ。俺、お前のこと大好きだから、受け入れてやるよ」

 瑞樹はそう言って僕に微笑みかけると、唇を重ねてキスしてきた。その柔らかな唇はとても甘く、キスしていると幸福感で胸が満たされる。

「でも、それもこれも、全部お前のせいなんだぞ」

「え?」

「だってそうだろ?俺、お前のことが好きなのに、さんざんキスするだけして弄んで、最後には抱きもしないで放置なんかするんだもんな。あの時、ちゃんと俺のことを抱いて、お前の女にすればこんなことにならなかった」

 ——だからお前のせいだよ、と瑞樹は言う。

「俺のことが大事なら、ちゃんと抱かないとダメだろ?」

「う、ご、ごめん、瑞樹」

「それで、どうする?」

 え?なんのことだろう?

「もう杏から聞いてるだろ?今の話は、嘘かもしれないし、本当かもしれない。もしかしたら全部がデタラメで、旅館では何もなかったかもな」

 あ、そうだった。そういう話だった。

「俺のこと抱いてくれたら本当のことを教えてやる。さあ、どうする?俺を抱いて真実を確かめるか?」

 今までの妖艶な雰囲気が一転。まるで悪戯が成功した子供みたいな顔をして、ニヤニヤと瑞樹が僕に笑いかけてくる。

 正直、今の話はめちゃくちゃ興奮した。この話のどこが良いって、宗像さんの話とまるで矛盾がないところが良い。

 もしも宗像さんの話と矛盾が生じるようであれば、僕はそこを皮切りに矛盾を突きつけることができたのに、それすらできない。

 これではまるで、本当にそんなことがあったみたいじゃないか。

 瑞樹の話は嘘かもしれないし、なんならその可能性の方が大きいかもしれない。

 そして瑞樹は抱いてしまえばこの話の真偽について、本当のことを教えてくれる、そう彼女は言った。

 だから抱けばわかる。それは間違いない。でも良いのだろうか?それは、なんというか…

 ——壬生さんに負けを宣言するようなことではないのか、そんな気がした。

 確かに壬生さんは約束を反故にして良いといった。だが、一度交わした約束をそんな自分の欲望を理由に曲げて良いのか?

 …うん?なんか違和感あるな。

 いや、違う。確かに壬生さんは反故にしても良いと言ったが、僕はそのあと、再びエッチはしないって約束し直したんだ。

 あれ?じゃあ反故にはできないんじゃないの?

 今この段階で約束を反故にしたら、壬生さん、怒るんじゃないの?約束を破ったってことで、とんでもない仕返しをするのでは?

 …うん、それはヤバいな。やっぱり約束は破れないや。

「ごめん、瑞樹。約束は約束だから、どうしても今は抱けない」

「え、本気か?だってお前、すごい興奮してるぞ?」

 それは自分が一番よくわかってるんだって。僕だって本当は瑞樹を抱きたいんだよ。この欲望を全部この美少女のスレンダーボディにぶちまけたいよ。でも約束しちゃったんだから無理なんだってば!お願いだからわかってくださいよ!

「はあ、ったく、しょうがねえな」

 瑞樹は溜息をつくと、やれやれといわんばかりの態度で言う。

「わかったよ。そこまで頑固ならしょうがねえな。まあ今回は諦めてやるよ」

「え、ホント?なんかごめんね。でも僕、瑞樹を嫌いってわけじゃないんだよ。どちらかといえば大好きだよ。特に今回のことでめちゃくちゃ好きにはなったんだよ。でも約束は約束だから」

「わかったわかった。俺もお前のこと、好きだぞ。うーん、でもそうだな」

 ——別に本番さえしなきゃいいのか?と瑞樹は両腕を組んでなにか考えるような仕草をしながら言う。

「うん、そうだな。どうせ来沙羅とエッチしたら、今度は俺ともエッチできるんだろ?ならいまのうちに練習しておくか!」

 おや、この流れは…

「なんか杏とも練習したそうじゃねえか。じゃあ今度は俺とお尻講座でも受講するか?」

 なんと!前回受講できなかったあの未履修のお尻講座を、受講できるというのか!こんなチャンスは滅多にないよな!

 ということで僕は瑞樹のお尻講座を受講した。とても素晴らしい時間だった。僕は昨日と同様に熱心に講義を受けた。

 しかしどれほど熱心に受講したところで、やはりそう簡単に知識を習得することは叶わず、何度も瑞樹先生の叱責を受けることになった。まったく、自分の才能の無さが恨めしい。

「ん…💓そう、そこ…アン💓」
「ば、馬鹿ぁ💓そこは尻じゃないぞ…アン…もう、好きだぞ💓」
「ん💓あん💓あんッ💓上手だぞ、あん💓」
「あん💓だ、ダメだぞ。そこは舐めたら…あん!…💓そこは汚いからダメだってアン💓アン💓」
「ば、バカ…なんでそこそんなに大きくして…バカバカ!ダメだって、そこは絶対入れたらダメ…あん💓」




「……好き💓」

 前回の講座と違って今回はなかなか思ったような結果が出ず、瑞樹先生からは「もっと勉強が必要だぞ、今度補習だからな」と指導された。

 ふぅ、やはり未経験の人間が簡単に習得できるほど、この世界は甘くはないらしい。確かに厳しい世界だ。しかし僕は諦めない。どれほど時間をかかっても、必ずこの知識を習得するぞ、と決意を固めるのであった。

 それにしても凄い感触だったな。瑞樹先生のお尻の感触は凄かったな。毎日部活で体を動かしてるからだろう、締まりの良いお尻をしていて、それでいて艶のある良いお尻だった。触れば触るほど幸せになれる、素晴らしいお尻。瑞樹の尻タブを両手で触りながら、さらにあそこを舐めた時の甘えるような喘ぎ声がとてもエッチで可愛かった。

 どうしよう、好きかもしれない。

 次の日。

 授業が終わり、次の授業の準備をしていると、隣の席の市川さんに声をかけられた。

「あの、根東くん。ちょっと良いかな?」

「え?なんですか?」

「あのね、うちの学校の裏サイトで、根東くんがエッチが上手な男ランキングの6位に入ってるんだけど、そんなに根東くんって凄いの?」

 わが校にはとんでもなくスケベな学校裏サイトがあるということを初めて知った瞬間だった。

 とりあえず僕は市川さんに「その裏サイト、詳しく教えてもらっていい?」と言って詳細を教えてもらった。

 なんだか最近、市川さんの視線が気になるのだが、きっと気のせいだろう。

「根東くんって、エッチ上手なのかな💓」

 なんか市川さんが小さい声でなにか言っていた。
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