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第五章 享楽編
9 宗像杏の土産話
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ネカフェで受付を済ませると、僕たちは二人で楽しめるカップル用の個室に入った。
全体的に薄暗い雰囲気のあるネカフェで、個室には照明が一つしかない。周囲を黒い壁で囲まれた個室で、僕と宗像さんは今、この部屋で二人っきりだ。
冷房が効いているにも関わらず、体温がやけに高く、汗がじんわりと皮膚から溢れている。
「根東くん、座ろう」
「うん」
宗像さんに促されるようにして僕が座ると、宗像さんはその右隣に座り、ぴったりと僕の体に寄り添ってくる。
ちょこんと女の子座りをする宗像さん。スカートが短いので、彼女のむっちりとした太腿がどうしても視界に入ってしまい、僕の興奮を煽ってくる。
女の子特有の柔らかく、温かみのある宗像さんの感触にドキドキと心臓が跳ね上がって止まらない。
「今日はずいぶん緊張してるみたいだね」
「それはだって、宗像さんが可愛いから…」
「あら、それは本当かしら?違うでしょ」
宗像さんは僕の手を握り、恋人同士のように指を絡ませてくる。彼女の手はサラサラしていて握り合っていると幸福感で脳が癒される。
彼女は僕の耳にふぅと吐息を吹きかけると、
「私が寝取られた姿を想像して、その興奮で緊張してるんでしょ?」
と僕の脳を破壊しに来る。
「宗像さん、君は本当に…」
僕がなにかを口にしようとすると、宗像さんがその綺麗な人差し指を僕の唇において、「ダメ」と甘く囁く。
「今日は私のこと、名前で呼んで欲しいな」
「え?」
「そっちの方が盛り上がるでしょ?」
こんな狭い空間で、お互い密着した状態で、恋人同士みたいに手を取り合って、挙句に名前で呼んだりしたら、本当に恋人同士みたいじゃないか!そんな状況で温泉旅館で寝取られた話を聞いたら、僕の脳が壊れるかもしれないでしょ!
…あ、それはいつものことか!なーんだ、じゃあ安心だね!
僕は意を決して宗像さんに言う。
「教えて、杏。旅行の話を」
「うーん?キスしてくれないの?」
そんな甘えるような声を出さないでよ。好きになりそうなんだけど?
いや、もう好きになってるのかもしれないね。正直な話、僕は今、彼女を独占したくてしょうがない。この綺麗な女の子が他の男に触られただなんて、我慢ならない。
しかし同時に、その姿を想像して興奮している自分がいるのもまた事実だ。僕は宗像さんが好きだ。そしてそんな好きな彼女が他の男に抱かれる姿を想像して興奮する変態なのだ。
宗像さんの顔が今、目の前にある。本当に綺麗な顔をした美少女だ。同年齢なのに、まるで年上のお姉さんのような優しく、おだやかな雰囲気のある顔立ちの美少女に向かって、僕はそっと唇を重ねてキスをした。
僕がキスをすると、宗像さんもお返しとばかりにキスをしてくる。それが心地良くて僕もお返しとばかりにキスをする。
ちゅ、ちゅ、とお互いの唇を貪る水音がしばらく鳴り響き、僕はやがて宗像さんの体をそっと抱きしめて体をさらに密着させる。
制服の上からでもわかるほどボリュームに満ちた彼女の胸が僕の胸板にあたって、柔らかな感触が伝わってくる。このどくんどくんという心臓の音は僕の音なのか、それとも彼女の音なのか、どちらなのかわからない。まるで本当に恋人同士のように、僕らはお互いに体を寄り添わせている。
「根東くんって、キスがとっても上手だよね」
「本当に?嬉しいよ」
「優しくて、それでいて強引で、女の子のことを気持ちよくさせようって意思が伝わってくる、甘いキスだったよ」
——こんなキスをされたら、好きになっちゃうよ、と宗像さんは続ける。
「あの日もね、根東くんにいっぱいキスをされてね、私、久しぶりにすごく興奮しちゃったの。なんだか体がうずうずして、頭がおかしくなりそうになってね、もうこのままめちゃくちゃにされちゃえ、って思ってたの。ねえ根東くん、どうしてあの日、私を抱いてくれなかったの?」
「え、いや、それは…」
「もしあの日、私のことを抱いてくれていたら、どうなってたと思う?」
え、どうなってたんだろう?もしあの日、壬生さんから宗像さんを抱いても良い許可をもらったあの時、そのまま宗像さんを、杏を抱いていたら…
「私ね、きっと堕ちちゃってた。恋に堕ちるとか、そういうことじゃないよ。もうね、私の体が根東くんの…ううん、司くんの色に染まって、完全に司くんのためだけのメスに変えられちゃってた」
な、なんだと!
「そうなってたらね、もう浮気なんて絶対にできない、従順な女になってたんだよ。私、エッチが大好きな女だから、たとえ彼氏がいても他においしそうな男の子がいたらすぐにエッチしちゃう。でもね、司くんが私を堕としていたら、そんな不純なことなんて一生できない、従順で、おしとやかで、司くんに身も心も全部捧げて、一生尽くしちゃう、あなただけの女になってたんだよ」
え、マジで!あの時の杏ってそんな状況だったの!
「なのに抱いてくれないんだもん。私、がっかりしちゃったな。それに悲しくなっちゃった。こんなにも私、司くんの事が好きなのに、司くんは私に興味がないんだもん。だからね、来沙羅に誘われた温泉旅行についていっちゃった。でも司くんとしてはまったく問題ないよね。だって私、司くんの女じゃないんだもん」
——司くんの女じゃないんだから、どこの誰とエッチしても問題ないよね、と杏は僕の耳元に甘く、そして責めるように話しかける。
知らず知らずのうちに僕の杏を抱きしめる腕に力が入った。
まさかそんな美味しすぎる状況だったなんて。僕は壬生さんの言葉を思い出す。後悔するといったあの言葉を。
僕があの時、見栄なんて張らずに杏を抱いていれば、この可愛い女の子を自分のモノにすることができたのに。男なら誰もが羨むような美少女を、まさに心から独占できたのに。なぜチャンスを不意にしてしまったのだろう?
確かに僕は今、後悔の渦の中に巻き込まれていた。しかし同時に、ドクドクと血流が体内を巡りまわり、別の感情を呼び起こしてもいる。
「杏」
「なーに?」
「それで、どうなったの?」
「…ふふ。気になる?」
僕はそっと頷く。杏の体温が上がったような気がして、汗ばむ杏の表情がなんだか艶めかしい。
「来沙羅のお兄さんとね、その友達の的野さんってね、免許を持ってるの。それでね、今回はそんな二人が車をレンタルして、温泉旅行に連れていってくれたんだ」
ふむふむ。そうか、車で出かけたのか。
「温泉旅館っていってもそんなに遠くじゃないよ?車で走らせてだいたい3時間くらいで着く、山の景色が楽しめる旅館だよ」
「へえ、それは趣があって良いよね」
そういう話を聞くと僕も行きたくなるな。
「軽く温泉を楽しむだけの簡単な旅行だから、本当に遊ぶだけって感じの旅行だね。でね、旅館についたらさっそく私たち、温泉に入ったの」
ま、まさかその温泉って、混浴!
「ちなみに、女湯だよ」
…そうか。
あれ、なぜ僕はちょっと残念がっているのだろう?よかったじゃん、女湯で。女湯だったら間違いとか起きないもんね。
いや、混浴だって間違いは起きないよ。だって温泉って一応、公共の場だよ。そんな場所でエッチなことしたら通報されるよ?混浴で女の子とエッチなイベントが起きるなんてのはね、エロ漫画の世界だけなんだよ。
「ふふ、なにも無くて残念だった?」
やばい、見透かされてる。
「そ、そんなことないよ!杏が無事で安心だよ!」
杏が安心、なんだかおやじギャグみたいなことを言ってしまった。
「そう?じゃあここからの話は司くんにとって、ちょっと心臓に負担が大きいかもしれないね」
どくん。杏のその危険な香りのする単語のせいで、僕の心臓が恐怖と期待に大きく鼓動する。
な、なんだと?ただの温泉旅行でしょ?温泉ってゆっくり心と体を癒す場所なんだよ?温泉ってそもそもスリルを味わうような場所ではないよ!
「温泉から出た後ね、私、体が火照っちゃって、浴衣でちょっと休憩していたの。そのときはね、私一人だったんだ」
な、なに!僕の大好きな杏が浴衣姿で一人だと!そんなの危険すぎるじゃないか!
誰か、誰かボディガードはいなかったんですか!
「あ…もう。司くん、すごい興奮してるね。抱きしめる力が強い」
「ごめん、でも我慢してもらっていいかな?」
「あらあら。そんなに私のことが気になるの」
「…うん」
「来沙羅っていう可愛い彼女がいるのに、私のことが気になってしょうがないの?」
「…うん、ごめん。でも今は、杏のことで頭がいっぱいだよ」
「へぇ、そうなんだ」
杏は僕の頭にそっと手を置くと、「よしよし」とやんわり慰めてくれる。
「司くんっていつも来沙羅のことばかりで私のこと、ぜんぜん構ってくれないから、てっきり私に興味がないのかと思って不安だったんだよ」
「それはごめん。でもそんなことないよ」
「わかってる。だって今、すごいケダモノみたいな顔してるよ」
え、そんな顔してた?
「もう興奮しすぎて今にも襲い掛かってきそう。一体なんでそんなに興奮してるの?」
「いや、そんなことは…」
「温泉旅館で知らないおじさんにナンパされちゃった」
ドクン。
杏は今、なんと言った?
やばい、聞きたくない、胸が痛い、脳が壊れてしまいそう。それなのに、苦しいはずなのに、僕の心臓はドクドクと鼓動を打ち鳴らし、早く続きを聞かせろとせかしているようだった。
「40代ぐらいのおじさんかな?その人がね、私のことを誘ってきたの。普段だったらね、こんなおじさんはお断りなんだけどね。でもね、そのとき、司くんのせいで私、欲求不満だったんだ。だからね…」
——ナンパ、受けちゃった💓
「おじさんはね、私のことを自分の部屋に連れ込むとね、すごい強引にキスしてきたの。ねちっこくて、強引で、もう私のことをただの欲望をぶつけるためのメスぐらいにしか考えてないような野蛮なキスだった。こんな強引なキス、本当は嫌なんだよ。でも体の疼きが止められなくてね、もっと欲しいよ、欲しいよってねだっちゃった」
な、なんだと!そんな、僕のせいで杏はおっさんなんかに抱かれてしまったのか!
「キスだけじゃないよ。おじさんはよっぽど興奮してたみたいだね。私の浴衣を強引に脱がすと、旅館の和室でたーっぷり、すみずみまで、私の体を味わいつくしたの」
あ、味わう?一体それはどんな味わい方だったんだ!やはりメロン味なのだろうか?
「お父さんと同じくらいの年齢のおじさんなのにね。もう親子みたいな年齢差があるのに、それでもおじさん、私を見てすごく興奮しちゃって。いい年したおじさんのくせに体力だけはあったみたいでね、時間をかけてじーっくり私の体、開発されちゃったの」
開発?おじさんは杏を使ってどんな開発をしたというのだろうか?まさか大人のリゾート開発でもしたのか?
「何時間くらい経ったんだろう?ようやく終わっておじさんから開放されてね、来沙羅たちが心配してると思って、私、部屋に戻ることにしたの。そしたらね、おじさん、私に後でまた来なさいって命令してきたんだ」
な、なに?なんて強欲なおじさんだ。杏は僕のモノだぞ!勝手に命令するなよ!
「それでね、私、何食わぬ顔で来沙羅たちと合流してね、旅館で用意された晩御飯を食べて、それで就寝。三人で一緒に眠ることにしたの。でね…」
——みんなが寝静まった後に私、またおじさんの部屋に行っちゃった💓
「おじさん、私が来るってわかってたみたいだね。部屋に入ると私、自分から浴衣を脱いで、おじさんに抱きついて、自分からさっきの続きをおねだりしちゃったの」
そ、そんな。杏が、僕の杏が、自分からおじさんと…
脳が破壊される。僕の中でなにか大事なものが音をたてて壊れてしまったような気がした。
「おじさん、私の体が大好きみたいでね、ぜんぜん終わらないの。深夜なのにいつまでもいつまでも私の体を貪ってね、ついには夜が明けちゃって。結局私、一睡もできなかったんだ」
——本当に、濃厚な一夜だったよ、司くん💓
普段はとても優しい、温和な雰囲気のあるお姉さんみたいな宗像杏さん。そんな彼女が今では、やけに艶めかしく、官能的な雰囲気をまとって僕に語りかける。
「杏…それって…」
「ぜんぶ司くんが悪いんだよ」
「え?」
「司くんがあの日、私を抱かなかったからこんなことになったの。だからぜんぶ、司くんが悪いの。わかってる?」
そんな、だって、まさかこんなことになるだなんて…
「ごめん、杏。僕が悪かったよ…」
「なーんてことがあったかもね」
あれ?
今までの妖艶な雰囲気はどこへやら。杏は表情をパっと切り替えると、いつものお姉さんフェイスで僕に「ふふ」と笑いかける。
あ、なんだ、嘘だったのか。もうビックリしたな。
「は、はは、そうだよね、嘘だよね」
「さあ、どっちだろ?」
え?
杏は僕の心をいまだ揺さぶってくる。
「私、司くんに抱いてもらえなくてショックだったなあ。なんだか意地悪がしたい気分だよ」
「そ、それはごめん。でも僕…」
「だからね、私のこと、抱いてくれたら本当のこと、教えてあげる」
え?それって壬生さんと同じ…
いや、そういうことか。壬生さんは僕らの関係を杏に教えているのだ。だからこんな真似をする。
「来沙羅は良いって言ったんだよ。なのにどうして拒否するの?私、傷ついちゃった」
「それは本当にごめん。杏を傷つけるつもりは全然なくて…」
「私、こんなこと初めて」
え?
「私ね、男なんてみんな、腰を動かすことしか能がない低能なサルだと思ってるの。私が誘惑して堕ちない男なんて今まで一人もいなかった。だからね、屈辱なんだ、司くんみたいな私を拒否する男って」
おや、なんか雰囲気がいつもと違う。もしかして怒らせちゃったかな?
「なにがなんでも堕としたくなっちゃったの。安心して、来沙羅の許可は取ってるから。私のことを抱いても、来沙羅は許してくれるよ」
杏、君は、そんな密約を壬生さんと結んでるの?うーん、でもそれなら安心かな?
まさに安心の杏である。いや、そんなこと言ってる場合か?
それにしても、杏って実は男に対してキツイ考え方を持ってるんだな。まあ実際、男なんて性欲に従うサルみたいなもんだし、これは否定できないか!ハハ!
「そうなんだ、まさか杏がそこまで屈辱に思ってるとは知らなくて。ごめんね。お詫びにコーヒーでも奢ろうか?」
「あら、それも良いわね。また今度、一緒にお詫びもかねてデートしましょうね」
「うん、いいよ!」
「それで…今日、私のこと抱いてくれるの?」
え、この話ってこれで終わりじゃないの?
「いや、あのだってその…」
「司くんって本当に寝取られフェチなんだね」
え、急にどうした?
「私が今まで何度も誘惑しても耐えてたのに、今日は違うね。まさか本当にここまで寝取られフェチに頭が支配されてるだなんて、ビックリだよ」
そ、そうなんだ。あの性経験が豊富な杏を驚かすなんて、僕の性癖はそこまで常軌を逸しているのだろうか?
「こんな方法で司くんを興奮させられるだなんて、すごく驚いた。これはもう時間の問題かな?」
「いや、そんなことは…」
「司くん」
「はい!」
杏は僕の方をじーっと見つめる。綺麗な瞳をしているな。そんな彼女が温泉宿で知らないおじさんに寝取られたかもしれないと思うと、急にふつふつと怒りが沸き、そんな彼女を抱かなかった自分への情けなさに後悔が溢れそうだった。
壬生さん、君の言う通りだ。確かに僕は今、最上級の後悔に見舞われている。でもね、一つだけ誤算があるよ。
確かに僕は後悔している。でもね、同時に喜んでもいるんだよ。それが君の誤算さ!
「好きだよ💓、司くん」
「あ」
ちゅ、と杏が僕にキスをしてきた。
「どうしようもないくらい好き。私のモノにして、ペットにして、今まで我慢させた分、たっぷりお仕置きをして痛めつけたいぐらい好きだよ」
それ本当に好きなんですか?本当は嫌ってんじゃないの?なんかとんでもない仕打ちを受けそうで怖いんだけど?
「司くん、私で今、こんなにも興奮してるのに、それでも抱いてくれないの?」
「…ごめん。約束はどうしても破れないから」
そうだよな、本当に。なんであんな約束しちゃったんだろうなあ。あんな約束しなきゃ今頃この興奮をぜんぶ杏にぶつけてエッチできたのに。
確かに杏の寝取られ話を聞いて僕は心の底から喜んでいたが、やっぱり後悔しちゃうよね。
「そっか。本当に来沙羅が大好きなんだね。じゃあこうしようか」
おや、一体なんだろう?
「来沙羅とエッチしたら、私ともエッチしてくれるんでしょ?」
「え?ああ、うん、そうだね」
そういえばそういう約束だったな。
「じゃあいざエッチをするとき、失敗しないように、今のうちにトレーニングしておこうよ」
「ふむ、詳しく聞こうか」
「せっかくエッチしても下手くそだったら意味ないでしょ?私、楽しめないエッチに興味はないの」
「うん、確かにそうだね」
「だから、私と一緒にトレーニングして、上手なエッチができるように練習しようね」
ふむ、なるほど。なんて理路整然とした理論なのだろう。反論の隙が見当たらないな。
「司くん、今日はおっぱいとお尻、どっちの講座を受けたい?」
ふむ、なにげに究極の選択だな。
僕は数秒ほど思案した挙句、おっぱいコースを受講した。とても有意義でためになる講義だった。杏先生の講座はとても素晴らしく、ぜひリピートしたいと思った。
僕はネカフェのパックプランの時間が終了するそのギリギリまで熱心に講義を受けた。これほどまで真面目に講義に参加したことなど、人生で初ではないだろうか?
講義が終了した後、杏から、
「はぁ、はぁ、司ぁ、もう💓すごく気持ちよかったよ💓…好き💓」
と太鼓判を押してもらえた。僕はなぜ学業が大事なのか、その重要性をとくと理解した。新しい知識を学ぶというのは、とても素晴らしいことなんだね!
次の日。
僕が教室で次の授業の準備をしていると、隣の席にいる市川志保子さんから、
「ねえ根東くん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
と質問された。同じクラスといっても話したことはほとんどなく、あまり面識のない女子だけに、一体なんの用だろう?
「うん、いいけど、なにかな?」
「あのね、根東くんって、すごくエッチが上手って噂があるんだけど、本当なの?」
学校の女子の間でとんでもねえ噂が広まっていた。僕は彼女に微笑みを浮かべて、「ちょっと比較したことないのでわからないですね」と返しておいた。
全体的に薄暗い雰囲気のあるネカフェで、個室には照明が一つしかない。周囲を黒い壁で囲まれた個室で、僕と宗像さんは今、この部屋で二人っきりだ。
冷房が効いているにも関わらず、体温がやけに高く、汗がじんわりと皮膚から溢れている。
「根東くん、座ろう」
「うん」
宗像さんに促されるようにして僕が座ると、宗像さんはその右隣に座り、ぴったりと僕の体に寄り添ってくる。
ちょこんと女の子座りをする宗像さん。スカートが短いので、彼女のむっちりとした太腿がどうしても視界に入ってしまい、僕の興奮を煽ってくる。
女の子特有の柔らかく、温かみのある宗像さんの感触にドキドキと心臓が跳ね上がって止まらない。
「今日はずいぶん緊張してるみたいだね」
「それはだって、宗像さんが可愛いから…」
「あら、それは本当かしら?違うでしょ」
宗像さんは僕の手を握り、恋人同士のように指を絡ませてくる。彼女の手はサラサラしていて握り合っていると幸福感で脳が癒される。
彼女は僕の耳にふぅと吐息を吹きかけると、
「私が寝取られた姿を想像して、その興奮で緊張してるんでしょ?」
と僕の脳を破壊しに来る。
「宗像さん、君は本当に…」
僕がなにかを口にしようとすると、宗像さんがその綺麗な人差し指を僕の唇において、「ダメ」と甘く囁く。
「今日は私のこと、名前で呼んで欲しいな」
「え?」
「そっちの方が盛り上がるでしょ?」
こんな狭い空間で、お互い密着した状態で、恋人同士みたいに手を取り合って、挙句に名前で呼んだりしたら、本当に恋人同士みたいじゃないか!そんな状況で温泉旅館で寝取られた話を聞いたら、僕の脳が壊れるかもしれないでしょ!
…あ、それはいつものことか!なーんだ、じゃあ安心だね!
僕は意を決して宗像さんに言う。
「教えて、杏。旅行の話を」
「うーん?キスしてくれないの?」
そんな甘えるような声を出さないでよ。好きになりそうなんだけど?
いや、もう好きになってるのかもしれないね。正直な話、僕は今、彼女を独占したくてしょうがない。この綺麗な女の子が他の男に触られただなんて、我慢ならない。
しかし同時に、その姿を想像して興奮している自分がいるのもまた事実だ。僕は宗像さんが好きだ。そしてそんな好きな彼女が他の男に抱かれる姿を想像して興奮する変態なのだ。
宗像さんの顔が今、目の前にある。本当に綺麗な顔をした美少女だ。同年齢なのに、まるで年上のお姉さんのような優しく、おだやかな雰囲気のある顔立ちの美少女に向かって、僕はそっと唇を重ねてキスをした。
僕がキスをすると、宗像さんもお返しとばかりにキスをしてくる。それが心地良くて僕もお返しとばかりにキスをする。
ちゅ、ちゅ、とお互いの唇を貪る水音がしばらく鳴り響き、僕はやがて宗像さんの体をそっと抱きしめて体をさらに密着させる。
制服の上からでもわかるほどボリュームに満ちた彼女の胸が僕の胸板にあたって、柔らかな感触が伝わってくる。このどくんどくんという心臓の音は僕の音なのか、それとも彼女の音なのか、どちらなのかわからない。まるで本当に恋人同士のように、僕らはお互いに体を寄り添わせている。
「根東くんって、キスがとっても上手だよね」
「本当に?嬉しいよ」
「優しくて、それでいて強引で、女の子のことを気持ちよくさせようって意思が伝わってくる、甘いキスだったよ」
——こんなキスをされたら、好きになっちゃうよ、と宗像さんは続ける。
「あの日もね、根東くんにいっぱいキスをされてね、私、久しぶりにすごく興奮しちゃったの。なんだか体がうずうずして、頭がおかしくなりそうになってね、もうこのままめちゃくちゃにされちゃえ、って思ってたの。ねえ根東くん、どうしてあの日、私を抱いてくれなかったの?」
「え、いや、それは…」
「もしあの日、私のことを抱いてくれていたら、どうなってたと思う?」
え、どうなってたんだろう?もしあの日、壬生さんから宗像さんを抱いても良い許可をもらったあの時、そのまま宗像さんを、杏を抱いていたら…
「私ね、きっと堕ちちゃってた。恋に堕ちるとか、そういうことじゃないよ。もうね、私の体が根東くんの…ううん、司くんの色に染まって、完全に司くんのためだけのメスに変えられちゃってた」
な、なんだと!
「そうなってたらね、もう浮気なんて絶対にできない、従順な女になってたんだよ。私、エッチが大好きな女だから、たとえ彼氏がいても他においしそうな男の子がいたらすぐにエッチしちゃう。でもね、司くんが私を堕としていたら、そんな不純なことなんて一生できない、従順で、おしとやかで、司くんに身も心も全部捧げて、一生尽くしちゃう、あなただけの女になってたんだよ」
え、マジで!あの時の杏ってそんな状況だったの!
「なのに抱いてくれないんだもん。私、がっかりしちゃったな。それに悲しくなっちゃった。こんなにも私、司くんの事が好きなのに、司くんは私に興味がないんだもん。だからね、来沙羅に誘われた温泉旅行についていっちゃった。でも司くんとしてはまったく問題ないよね。だって私、司くんの女じゃないんだもん」
——司くんの女じゃないんだから、どこの誰とエッチしても問題ないよね、と杏は僕の耳元に甘く、そして責めるように話しかける。
知らず知らずのうちに僕の杏を抱きしめる腕に力が入った。
まさかそんな美味しすぎる状況だったなんて。僕は壬生さんの言葉を思い出す。後悔するといったあの言葉を。
僕があの時、見栄なんて張らずに杏を抱いていれば、この可愛い女の子を自分のモノにすることができたのに。男なら誰もが羨むような美少女を、まさに心から独占できたのに。なぜチャンスを不意にしてしまったのだろう?
確かに僕は今、後悔の渦の中に巻き込まれていた。しかし同時に、ドクドクと血流が体内を巡りまわり、別の感情を呼び起こしてもいる。
「杏」
「なーに?」
「それで、どうなったの?」
「…ふふ。気になる?」
僕はそっと頷く。杏の体温が上がったような気がして、汗ばむ杏の表情がなんだか艶めかしい。
「来沙羅のお兄さんとね、その友達の的野さんってね、免許を持ってるの。それでね、今回はそんな二人が車をレンタルして、温泉旅行に連れていってくれたんだ」
ふむふむ。そうか、車で出かけたのか。
「温泉旅館っていってもそんなに遠くじゃないよ?車で走らせてだいたい3時間くらいで着く、山の景色が楽しめる旅館だよ」
「へえ、それは趣があって良いよね」
そういう話を聞くと僕も行きたくなるな。
「軽く温泉を楽しむだけの簡単な旅行だから、本当に遊ぶだけって感じの旅行だね。でね、旅館についたらさっそく私たち、温泉に入ったの」
ま、まさかその温泉って、混浴!
「ちなみに、女湯だよ」
…そうか。
あれ、なぜ僕はちょっと残念がっているのだろう?よかったじゃん、女湯で。女湯だったら間違いとか起きないもんね。
いや、混浴だって間違いは起きないよ。だって温泉って一応、公共の場だよ。そんな場所でエッチなことしたら通報されるよ?混浴で女の子とエッチなイベントが起きるなんてのはね、エロ漫画の世界だけなんだよ。
「ふふ、なにも無くて残念だった?」
やばい、見透かされてる。
「そ、そんなことないよ!杏が無事で安心だよ!」
杏が安心、なんだかおやじギャグみたいなことを言ってしまった。
「そう?じゃあここからの話は司くんにとって、ちょっと心臓に負担が大きいかもしれないね」
どくん。杏のその危険な香りのする単語のせいで、僕の心臓が恐怖と期待に大きく鼓動する。
な、なんだと?ただの温泉旅行でしょ?温泉ってゆっくり心と体を癒す場所なんだよ?温泉ってそもそもスリルを味わうような場所ではないよ!
「温泉から出た後ね、私、体が火照っちゃって、浴衣でちょっと休憩していたの。そのときはね、私一人だったんだ」
な、なに!僕の大好きな杏が浴衣姿で一人だと!そんなの危険すぎるじゃないか!
誰か、誰かボディガードはいなかったんですか!
「あ…もう。司くん、すごい興奮してるね。抱きしめる力が強い」
「ごめん、でも我慢してもらっていいかな?」
「あらあら。そんなに私のことが気になるの」
「…うん」
「来沙羅っていう可愛い彼女がいるのに、私のことが気になってしょうがないの?」
「…うん、ごめん。でも今は、杏のことで頭がいっぱいだよ」
「へぇ、そうなんだ」
杏は僕の頭にそっと手を置くと、「よしよし」とやんわり慰めてくれる。
「司くんっていつも来沙羅のことばかりで私のこと、ぜんぜん構ってくれないから、てっきり私に興味がないのかと思って不安だったんだよ」
「それはごめん。でもそんなことないよ」
「わかってる。だって今、すごいケダモノみたいな顔してるよ」
え、そんな顔してた?
「もう興奮しすぎて今にも襲い掛かってきそう。一体なんでそんなに興奮してるの?」
「いや、そんなことは…」
「温泉旅館で知らないおじさんにナンパされちゃった」
ドクン。
杏は今、なんと言った?
やばい、聞きたくない、胸が痛い、脳が壊れてしまいそう。それなのに、苦しいはずなのに、僕の心臓はドクドクと鼓動を打ち鳴らし、早く続きを聞かせろとせかしているようだった。
「40代ぐらいのおじさんかな?その人がね、私のことを誘ってきたの。普段だったらね、こんなおじさんはお断りなんだけどね。でもね、そのとき、司くんのせいで私、欲求不満だったんだ。だからね…」
——ナンパ、受けちゃった💓
「おじさんはね、私のことを自分の部屋に連れ込むとね、すごい強引にキスしてきたの。ねちっこくて、強引で、もう私のことをただの欲望をぶつけるためのメスぐらいにしか考えてないような野蛮なキスだった。こんな強引なキス、本当は嫌なんだよ。でも体の疼きが止められなくてね、もっと欲しいよ、欲しいよってねだっちゃった」
な、なんだと!そんな、僕のせいで杏はおっさんなんかに抱かれてしまったのか!
「キスだけじゃないよ。おじさんはよっぽど興奮してたみたいだね。私の浴衣を強引に脱がすと、旅館の和室でたーっぷり、すみずみまで、私の体を味わいつくしたの」
あ、味わう?一体それはどんな味わい方だったんだ!やはりメロン味なのだろうか?
「お父さんと同じくらいの年齢のおじさんなのにね。もう親子みたいな年齢差があるのに、それでもおじさん、私を見てすごく興奮しちゃって。いい年したおじさんのくせに体力だけはあったみたいでね、時間をかけてじーっくり私の体、開発されちゃったの」
開発?おじさんは杏を使ってどんな開発をしたというのだろうか?まさか大人のリゾート開発でもしたのか?
「何時間くらい経ったんだろう?ようやく終わっておじさんから開放されてね、来沙羅たちが心配してると思って、私、部屋に戻ることにしたの。そしたらね、おじさん、私に後でまた来なさいって命令してきたんだ」
な、なに?なんて強欲なおじさんだ。杏は僕のモノだぞ!勝手に命令するなよ!
「それでね、私、何食わぬ顔で来沙羅たちと合流してね、旅館で用意された晩御飯を食べて、それで就寝。三人で一緒に眠ることにしたの。でね…」
——みんなが寝静まった後に私、またおじさんの部屋に行っちゃった💓
「おじさん、私が来るってわかってたみたいだね。部屋に入ると私、自分から浴衣を脱いで、おじさんに抱きついて、自分からさっきの続きをおねだりしちゃったの」
そ、そんな。杏が、僕の杏が、自分からおじさんと…
脳が破壊される。僕の中でなにか大事なものが音をたてて壊れてしまったような気がした。
「おじさん、私の体が大好きみたいでね、ぜんぜん終わらないの。深夜なのにいつまでもいつまでも私の体を貪ってね、ついには夜が明けちゃって。結局私、一睡もできなかったんだ」
——本当に、濃厚な一夜だったよ、司くん💓
普段はとても優しい、温和な雰囲気のあるお姉さんみたいな宗像杏さん。そんな彼女が今では、やけに艶めかしく、官能的な雰囲気をまとって僕に語りかける。
「杏…それって…」
「ぜんぶ司くんが悪いんだよ」
「え?」
「司くんがあの日、私を抱かなかったからこんなことになったの。だからぜんぶ、司くんが悪いの。わかってる?」
そんな、だって、まさかこんなことになるだなんて…
「ごめん、杏。僕が悪かったよ…」
「なーんてことがあったかもね」
あれ?
今までの妖艶な雰囲気はどこへやら。杏は表情をパっと切り替えると、いつものお姉さんフェイスで僕に「ふふ」と笑いかける。
あ、なんだ、嘘だったのか。もうビックリしたな。
「は、はは、そうだよね、嘘だよね」
「さあ、どっちだろ?」
え?
杏は僕の心をいまだ揺さぶってくる。
「私、司くんに抱いてもらえなくてショックだったなあ。なんだか意地悪がしたい気分だよ」
「そ、それはごめん。でも僕…」
「だからね、私のこと、抱いてくれたら本当のこと、教えてあげる」
え?それって壬生さんと同じ…
いや、そういうことか。壬生さんは僕らの関係を杏に教えているのだ。だからこんな真似をする。
「来沙羅は良いって言ったんだよ。なのにどうして拒否するの?私、傷ついちゃった」
「それは本当にごめん。杏を傷つけるつもりは全然なくて…」
「私、こんなこと初めて」
え?
「私ね、男なんてみんな、腰を動かすことしか能がない低能なサルだと思ってるの。私が誘惑して堕ちない男なんて今まで一人もいなかった。だからね、屈辱なんだ、司くんみたいな私を拒否する男って」
おや、なんか雰囲気がいつもと違う。もしかして怒らせちゃったかな?
「なにがなんでも堕としたくなっちゃったの。安心して、来沙羅の許可は取ってるから。私のことを抱いても、来沙羅は許してくれるよ」
杏、君は、そんな密約を壬生さんと結んでるの?うーん、でもそれなら安心かな?
まさに安心の杏である。いや、そんなこと言ってる場合か?
それにしても、杏って実は男に対してキツイ考え方を持ってるんだな。まあ実際、男なんて性欲に従うサルみたいなもんだし、これは否定できないか!ハハ!
「そうなんだ、まさか杏がそこまで屈辱に思ってるとは知らなくて。ごめんね。お詫びにコーヒーでも奢ろうか?」
「あら、それも良いわね。また今度、一緒にお詫びもかねてデートしましょうね」
「うん、いいよ!」
「それで…今日、私のこと抱いてくれるの?」
え、この話ってこれで終わりじゃないの?
「いや、あのだってその…」
「司くんって本当に寝取られフェチなんだね」
え、急にどうした?
「私が今まで何度も誘惑しても耐えてたのに、今日は違うね。まさか本当にここまで寝取られフェチに頭が支配されてるだなんて、ビックリだよ」
そ、そうなんだ。あの性経験が豊富な杏を驚かすなんて、僕の性癖はそこまで常軌を逸しているのだろうか?
「こんな方法で司くんを興奮させられるだなんて、すごく驚いた。これはもう時間の問題かな?」
「いや、そんなことは…」
「司くん」
「はい!」
杏は僕の方をじーっと見つめる。綺麗な瞳をしているな。そんな彼女が温泉宿で知らないおじさんに寝取られたかもしれないと思うと、急にふつふつと怒りが沸き、そんな彼女を抱かなかった自分への情けなさに後悔が溢れそうだった。
壬生さん、君の言う通りだ。確かに僕は今、最上級の後悔に見舞われている。でもね、一つだけ誤算があるよ。
確かに僕は後悔している。でもね、同時に喜んでもいるんだよ。それが君の誤算さ!
「好きだよ💓、司くん」
「あ」
ちゅ、と杏が僕にキスをしてきた。
「どうしようもないくらい好き。私のモノにして、ペットにして、今まで我慢させた分、たっぷりお仕置きをして痛めつけたいぐらい好きだよ」
それ本当に好きなんですか?本当は嫌ってんじゃないの?なんかとんでもない仕打ちを受けそうで怖いんだけど?
「司くん、私で今、こんなにも興奮してるのに、それでも抱いてくれないの?」
「…ごめん。約束はどうしても破れないから」
そうだよな、本当に。なんであんな約束しちゃったんだろうなあ。あんな約束しなきゃ今頃この興奮をぜんぶ杏にぶつけてエッチできたのに。
確かに杏の寝取られ話を聞いて僕は心の底から喜んでいたが、やっぱり後悔しちゃうよね。
「そっか。本当に来沙羅が大好きなんだね。じゃあこうしようか」
おや、一体なんだろう?
「来沙羅とエッチしたら、私ともエッチしてくれるんでしょ?」
「え?ああ、うん、そうだね」
そういえばそういう約束だったな。
「じゃあいざエッチをするとき、失敗しないように、今のうちにトレーニングしておこうよ」
「ふむ、詳しく聞こうか」
「せっかくエッチしても下手くそだったら意味ないでしょ?私、楽しめないエッチに興味はないの」
「うん、確かにそうだね」
「だから、私と一緒にトレーニングして、上手なエッチができるように練習しようね」
ふむ、なるほど。なんて理路整然とした理論なのだろう。反論の隙が見当たらないな。
「司くん、今日はおっぱいとお尻、どっちの講座を受けたい?」
ふむ、なにげに究極の選択だな。
僕は数秒ほど思案した挙句、おっぱいコースを受講した。とても有意義でためになる講義だった。杏先生の講座はとても素晴らしく、ぜひリピートしたいと思った。
僕はネカフェのパックプランの時間が終了するそのギリギリまで熱心に講義を受けた。これほどまで真面目に講義に参加したことなど、人生で初ではないだろうか?
講義が終了した後、杏から、
「はぁ、はぁ、司ぁ、もう💓すごく気持ちよかったよ💓…好き💓」
と太鼓判を押してもらえた。僕はなぜ学業が大事なのか、その重要性をとくと理解した。新しい知識を学ぶというのは、とても素晴らしいことなんだね!
次の日。
僕が教室で次の授業の準備をしていると、隣の席にいる市川志保子さんから、
「ねえ根東くん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
と質問された。同じクラスといっても話したことはほとんどなく、あまり面識のない女子だけに、一体なんの用だろう?
「うん、いいけど、なにかな?」
「あのね、根東くんって、すごくエッチが上手って噂があるんだけど、本当なの?」
学校の女子の間でとんでもねえ噂が広まっていた。僕は彼女に微笑みを浮かべて、「ちょっと比較したことないのでわからないですね」と返しておいた。
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