絶対に寝取られない僕の彼女・壬生さん 【R18版】

カワサキ萌

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第六章 夏休み編

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 高校二年生の夏休みがついにやってきた。今更小学生みたいにはしゃぐつもりはないが、ただ今年の夏休みは例年と違い、彼女がいる夏休みなのだ。

 そう、今の僕には彼女がいる。なのになぜだろう?一週間にわたって会えないという、非情な宣告を僕は受けていた。

 一体なぜ?僕がなにか悪いことをしたというのだろうか?

 …うん、まあ、したといえばしたね。

 でもしょうがないじゃないか。だって壬生さんが良いって言ったんだもん。彼女が良いって言ったから、宗像さんや百崎さんとギリギリ防衛ラインのエッチを楽しんだのに。

 なぜだ、なぜダメなのだろう?いや、もちろん世間一般の基準でいえば普通にアウトだろ、ということは僕もわかっている。それぐらいは承知しているのだ。

 しかし壬生さんはそもそも世間一般の普通の女の子ではないし、なにより彼女の公認でやっているのだ。公認なのにアウトってそれはそれでおかしいだろ。

 夏の暑さのせいか、ちょっとイライラしているのかもしれない。こうなったら壬生さんが寝取られる姿を妄想して気分を落ち着けよう。

 もちろん、本当に寝取られて欲しいとは露ほども思っていない。あくまで妄想、想像の産物だ。最愛の彼女を他の男に寝取ってもらうだなんて、想像することはあっても現実にやるわけないよね!

 しかし壬生さんはこの一週間、一体なにをしているのだろう?すでにアゴは直ったと聞いているので、アゴが原因で会えないということはないだろう。

 では何が原因なのか?

 …まさか、他の男を相手に練習してる、とかじゃないよね?

 え、嘘、それはないよね?!たとえ練習したとしても、バナナとか使って練習するだけだよね!

 そうだよ、 棒状のモノなんて世の中にはいくらでもあるんだ。本物を使って練習するだなんて、ありえないよね!

 そう、ありえないはずなのだ。しかしどうしても想像してしまう。壬生さんが僕以外の男を相手に練習する姿を。その姿が脳裏によぎる度に心臓がバクバクと跳ね上がり、不安に苛まれ、身を引き裂かれるような痛みに悶えつつ、同時に圧倒的な興奮に晒されて動悸が激しくなっていた。

 くぅ、なんて凄い光景なのだろう。こんなん絶対興奮しちゃうじゃないか!

 お願いだ、壬生さん。それだけは絶対にやめて!でないと僕、僕、あまりの興奮にどうにかなってしまうよ!

 …いや、違う違う。興奮なんてしないからね。ははは、なにを狂ったこと言ってるのやら。大好きな彼女が他の男を相手に例のアレの練習をする姿で興奮するなんて、彼氏が考えることじゃないよね!

 …

 …

 …

 ヤバい。考えれば考えるほど妄想が止められない。違うと信じたいのに、心のどこかでは、あの負けず嫌いな壬生さんが他の男を相手に練習する姿が脳裏に浮かんで離れない。

 今日も今日とて僕の寝取らレーダーはガンガンと唸っている。こんなことダメなのに、ダメなのに、拒否すればするほど反応して止められないよ!

 ぴろん♪

 夏休みの初日に、そんな寝取られの恐怖と興奮と戦っていると、スマホにメッセージが来た。百崎さんだった。

『今日暇か?』

 暇といえば暇だったので、返信をする。

『うん、暇だよ。どうかした?』

『俺、今日部活なんだよね。でさ、終わったら遊びに行かねえか?』

 ふむ。夏休みなのに部活とは、テニス部は大変だな。

 本当だったら、壬生さんと遊びたい。当たり前だ。僕の人生初めての彼女だ。大事にしたい決まっている。

 しかし当の本人が彼氏を放置してどこかに行っている。もしかしたら遊んでいるのかもしれない。

 うーん、じゃあいいのかな?

 別に壬生さんが遊んでるから当てつけに僕も遊んでやれとか、そういう意味で応じるわけではない。

 そもそも壬生さんがどこで誰と遊ぼうか、それは基本的に壬生さんの自由なのだ。彼氏だからといって、僕がどうこう口出しするのはおかしい。

 かといって、壬生さんを理由に他の女の子と遊ぶというのも、なんか格好悪い気もする。

 そう、僕は別に壬生さんを非難する気はないのだ。壬生さんが楽しんでくれるなら、それが一番なのだ。

 壬生さんが何を考え、何をするつもりなのか、それは正直わからない。ただ壬生さんが楽しんで行動しているなら、僕としてはそれを応援したい。

 そう、だから壬生さんを当てつけに遊びに行くのではないのだ。

 そうではなく、壬生さんをもっと楽しませるために、あえて遊びに行くのだ。

 今の僕のこの状況は、壬生さんが自分から招いた状況といっても過言ではない。つまり壬生さんとしては、意図は不明だが、僕に自由に遊んできて欲しいと願っているということであろう。

 うん、きっとそうだ。そうに違いないよね。でないと彼氏を放置するとかあり得ないよね!

 わかったよ、壬生さん。君の意図は承知した。だからこそ、あえて自分から遊びに行こう!

 ということで僕は百崎さんの提案に積極的に応じることにした。

『うん、いいよ!楽しみにしてるね!!』

『おう、わかった!午後2時ぐらいには終わるから、待っててくれよ!』

 なんか、壬生さんより百崎さんとの付き合いの方が健全な恋人っぽいな。いや、気のせいだな。

 うーん、今は8時か。僕も学校に行こうかな?

 夏休みといっても、別に学校が閉まってるわけではない。むしろ部活動の生徒もいるので、休日ではあるが学校そのものは開いている。

 うちの学校は受験生のための勉強スペースを夏休み中も開放しているので、部活動の生徒だけでなく、受験の生徒なんかも夏休み中に登校することが多い。

 壬生さんの件は気になるが、僕は僕でやらないといけないこともある。大学に進学するという目的があるだけに、勉強もしっかりやっておこう。

 ということで僕は夏休み初日から制服に着替えて登校し、図書館で受験勉強に精を出すことにした。

 意外と勉強は捗った。

 お昼に適当にファーストフード店で食事を済ませ、再び図書館で勉強を再開する。

 図書館に寄る前に女子テニス部のコートに行くと、百崎さんが熱心に練習していたので、適当に手を振ったら、気づいたようで百崎さんが笑顔で手を振ってくれた。

 ふむ、なんだか恋人同士みたいで照れるな。

 テニスコートには百崎さん以外にも部員がいたのだが、はて。宗像さんがいないな。壬生さんがいないのはなんとなく想像がついていたのだが、宗像さんもいないというのがちょっとだけ気になった。

 …あの二人、なにかしてるのかな?

 図書館には僕以外にも受験生がいたようで、熱心にペンを動かして勉強をしている。

 そんな彼らに負けじと僕も受験勉強をするのだが、ふむ、スラスラと留まることなく参考書の内容を消化できる。

 妙だな。壬生さんとの付き合いを通じてさんざん脳を破壊されてきたのだが、むしろ脳の働きは良くなっている気する。

 期末試験では学年三位だったし、なんだか学力が向上している気分だ。これはきっと、壬生さんのおかげかな。

 ふむ。勉強は壬生さんのおかげでとして、エッチが上手になっているのはどういう現象なのだろう?

 僕はまだ童貞なのだが、宗像さんも百崎さんもすごく上手いと褒めてくれる。

 うーん、きっとアレだな。演技だね。そうだよ、演技だよきっと。でないと経験もないのにそんな上手にエッチできるわけないよね!

 そんなことを考えていると、やがて時間になったので、勉強を切り上げて図書館を出て、テニスコートへ向かってみた。

 明るい太陽が降り注ぐテニスコートでは、まだテニス部が活動していた。いや、部活を終えている生徒もいるので、あれはただ遊んでるだけだろう。

「ふう、やっと終わったぜ」

「こんな暑い中部活とかやってらんねえな」

「まったくだな、今日は壬生さんも宗像さんもいないし、なんのためのテニス部だよ」

 テニスコートに近寄ると、帰宅途中の男子テニス部の声が聞こえてきた。

「それにしても竜二の奴、最近凄いよな」

 おや、竜二といえば百崎さんの元カレだな。

「ああ、ここ最近のあいつ、なんか覚醒してるよな。なにがあったんだ?」

「瑞樹と別れてから、なんか変だよな、あいつ。だって目を瞑りながらテニスしてんだぞ。なんであれで試合ができるんだよ」

「あいつ、なんか心眼に目覚めたとかわけわかんねえこと言ってたな」

 へえ、竜二は目を瞑りながらテニスをするんだあ。…どうやって?

 なぜだろう?凄く興味が出てきた。正直、竜二のことなんて完全に脳裏から忘れていたのだが、面白そうなのでちょっと男子テニス部を覗いてみよう。

 男子テニス部のテニスコートに行くと、凄い勢いでラリーをする男子がいた。いや、凄いのは一人だけで、もう片方が押され気味だ。

「ぐわ!なんて速さだ!とても追いつけない!竜二、お前、すごいな!」

「色即是空。貴様らは邪念に支配されている。開眼せずとも、気を察知すればどこに球があるか手に取るようにわかるだろう」

「え?あ、うん。そうなんだ。…よし、今日はもう帰るか」

 竜二の顔は知っているのだが、なぜだろう?あれ、本当に竜二か?一体彼に何があったのだろう?

 っていうか、本当に目を瞑りながらテニスしてる。あの人、テニヌとかできるタイプだっけ?

「よう、司。こんなとこで何してるんだ?」

 竜二の方に気を取られていると、後ろから声をかけられた。百崎さんだった。

「あ、百崎さん。うん、なんかあの人、すごく気になって」

「ああ、竜二か。あいつなあ、なんかなあ、おかしいんだよ。俺があいつを振ってからさあ、なんか変になったんだよなあ」

「へえ、そうなんだ。なにか悪いことでもしてるの?」

 僕の問いかけに、百崎さんは首を横に振って否定する。「いや」

「悪いってことはないんだけどな。むしろ女遊びが減って真面目に部活するようになったから、良いといえば良いんだけど。テニスも上手くなってるし、品性も良くなったんだけど、なんかアイツおかしいんだよなあ」

 と言って百崎さんは首を捻る。いや、うん、わかるよ。なんかあの人、覚醒してるよね。

「む、Nの気配を感じる!」

 やっべ、なんか気取られた。っていうかNの気配ってなに?

 コート上に立っていた竜二がパっと振り返ってこちらを見る。相変わらずイケメンなのだが、なぜだろう、妙な威圧感がある。あんな少年漫画の強キャラみたいなオーラを出す人だったかな?

「おや、瑞樹ではないか。それと、ふむ、君が例の男か」

 なんか品定めされている。どうしよう、関わり合いになりたくない。

「なんだよ、言っておくけど、変なことしたら大声を出すぞ」

「安心しろ瑞樹。今の俺は無我の境地にある。邪念はない。それより君、良かったら俺とテニスで勝負しないか?」

「なんでだよ。おい司、やる必要なんかないぞ。それより…」

「いいだろう」

「え、なんで?」

 理由はよくわからない。だが何故だろう?竜二と直接対面することで、僕の中のなにか、Nの気配が共鳴しあっている気がした。

 この男との勝負は避けてはならない。そんな気がしてならなかった。一体なぜ?

 それにしてもNの気配って何だろう?よくわからない概念なのに、なぜか理解できた。

「百崎さん、ラケット貸してほしい」

「え、本気?マジでやるの?なんで?」

「それはこの戦いが避けられないからだ。ふむ、司というのが君の名か。グッド、良い名だ」

「竜二、お前そんな口調のキャラだったか?なんかおかしいぞ」

 ビシビシと竜二から強者の気迫が伝わってきた。この男、できる。だが、負けるわけにはいかない。その理由は…えーと、なんだっけ?理由は特にないな。

「司くん。もしこの試合で俺が勝ったら瑞樹を返してもらう」

「なんでだよ。ふざけんな。おい司、ちゃんと拒否しろよ」

「いいだろう」

「なんでだよ!人の話聞いてるのか!っていうかお前、テニスやったことないだろ!」

 確かに百崎さんの言う通り、僕にはテニスの経験などない。まったく初心者だ。しかしなぜだろう。今の僕ならできる気がした。理由は知らん。

「え、ちょっと待って。本当に始めるの?え、この試合で負けたら俺、竜二の女にされんの?」

 慌てふためく百崎さん。当然だろう。僕という男がありながら本人の意思に関係なく勝手に他の男のモノにされてしまうのだ。ビックリして当然である。

 僕は彼女を安心させるためにも、その手を握りしめる。

「あ💓」

「大丈夫だよ、百崎さん。絶対勝つから。僕を信じて欲しい」

「え、でもお前、初心者…」

「勝って必ず君を取り戻す。瑞樹、君は僕のモノだ」

「え💓あの、なんで急にそんな男らしくなるんだよ…もう、頑張れよ💓」

 とりあえず百崎さんも納得してくれたらしい。こうして僕らの瑞樹をかけた戦いが始まった!

 三十分後。

「ゲームセット!ウォンバイ根東」

「くっ、完敗だ。なぜ勝てぬ?まさか伝説のスーパーNT…」

 なんか勝てました。

「うおー!すっげ、なんであいつ、竜二に勝てるの!おかしくね?」

「前半は負けてたのに、後半で一気に巻き返したよな!漫画かよ!」

「竜二もすげーけど、アイツもすげー、何者だ?うちにあんな奴いたのか?」

 なんかいつの間にかギャラリーができていた。とりあえず試合には勝ったので帰ることにしたが、途中で三年生の部長さんに「テニス部に入らないか?」と勧誘されたが、断った。

「おい、すげーな司。なんだよ、お前は本当はテニスできたんだな!」

「いや、本当に初心者で。でも何故か、試合中はやけに時間がゆっくり感じたんだよね。特にボールを打つ瞬間なんてスローモーションに感じた。今回勝てたのは、この妙な感覚のおかげかもしれない」

「え、あ、そーなんだ。…こいつ、寝取られのやり過ぎでなんかおかしくなったかな」

「うん?なんか言った?」

「いや、なんでもねえ」

 僕たちはそんなやり取りをしつつ、コートを去り、正門を出て遊びに出かけた。

 しかし竜二。あの男、なかなか手強かったな。奴もまた、僕と同じく寝取られの力に囚われた、哀れな犠牲者なのかもしれない。

「無茶苦茶だな、お前…でもカッコよかったぞ💓」

「そう?ありがとう」

 なんだか百崎さんとの距離がぐんと縮んだような気がした。七月の暑い中だというのに百崎さんは僕と腕を組んで歩いている。

 そんな彼女と一緒に街中を歩いていると、ふと我に返って冷静になった。

 え、なんで僕、竜二とテニス勝負なんてしてたんだろう?しかもなんか中二病みたいなこと言ってたし。僕、右利きなのに前半は左手でプレイするとか意味不明なことしてたし。うわ、やっだ、すごい恥ずかしいんだけど。

 なんだか壬生さんと寝取られプレイばかりやっていたせいで、脳がおかしくなっている、そんな気がした。

 寝取られ。それはもしかしたら禁断の秘術なのかもしれない。

「おい、司💓」

 百崎さんが僕の耳元に甘く囁く。

「前回の講座の続き、今日やるか?」

「…うん」

 僕と百崎さんはネカフェに入店するとカップル専用の個室に入り、前回の講座の復習をすることにした。久しぶりだから上手くできるだろうか?僕は一生懸命頑張ってみた。

「来いよ、司💓」

 狭いネカフェの個室で二人きり。百崎さんの服を脱ぐ衣擦れの音がする。僕はそんな彼女の隣に座り、百崎さんの甘い香りがするその肉体を抱きしめ、感触を楽しむ。

「あん💓…もう、司。お前、すごい上手になったな…好きだぞ💓…もっとしてくれよ💓」

 最初は優しく、あまり強い刺激を与えないように百崎さんの体を触っていく。やがて体がエッチの刺激に慣れてきたら、だんだんと感じやすい場所を攻めていった。

「ん💓…あん💓いい、すごく気持ち良いよ、司…アンッ!」

 百崎先生にはとても喜んでもらえた。

 一週間。壬生さんが何をするつもりなのか、僕にはわからない。わからないが、僕だって何もせずに一週間を過ごすつもりはない。

 ふふ、見てろよ壬生さん。君がどんなことをするつもりかはわからないが、必ず返り討ちにしてみせるぞ!

「あ💓…そこダメぇ💓…もう司の馬鹿💓…もっと💓」

 そうと決まれば特訓特訓特訓だ!

 僕は百崎さんを相手にひたすら練習をした。もちろん、練習なので決して本番はしなかった。

 そんなことばかりしてたせいか、百崎さんに「もう💓お前、上手になりすぎだぞ💓もうお前じゃないと満足できねえよ。どうしてくれんだよ、馬鹿💓」と甘い声で叱られた。
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