いつもと、違うことをしよう

三谷玲

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早川静玖は疲れていた

疲弊

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 早川静玖は疲れていた。
 このところ毎週金曜日は佑とデートをし、その後佑のマンションで二人の時を過ごしていた。
 それは静玖にとっては恥ずかしいながらも濃密な時間で、それ自体はとても嬉しいことだったが身体はかなり辛い。
 いくら佑が優しく抱いてくれていると言っても、静玖はもともと運動が得意ではなかった。
 それに受け入れる行為は身体的にも、精神的にも疲弊させた。
 佑との行為が嫌なわけではない。むしろ求められて嬉しい。ただ、どうしても性行為に伴う羞恥が心を疲弊させていた。

 しかもこのところ居酒屋もパチンコ店も繁盛していてこれまでよりも仕事量が格段に増えていた。

 静玖はとても疲れていた。

 パチンコ店のバイトが終わった日曜日の夜。
 狭いアパートの部屋に入るなり泥のように眠りについた静玖が目覚めたのは七時少し前。
 寝返りを打とうとして身体が動かないことに気がついた。

「あれ……?」

 目を開けてもまだ暗い。違和感はすぐに気づいた。

(僕、座ってる? それに目が……)

「静玖、起きた?」

 それは佑の声だった。

「ユウ? どうしたの? これ、なに?」
「今朝どうしても静玖に会いたいなって。そしたら静玖、熟睡してるからつい、いたずらしちゃった」

 寝起きの静玖は佑の言葉になんの疑問も持たなかった。いたずらなんて佑には珍しいが会いたいと言われたら嫌な気はしない。

「僕、今どうなってるの?」

 目隠しをされ、手を後ろに縛られ、裸で椅子に腰掛けられていることは感触でわかった。
 ここまでされてるのに目が覚めない自分もどうかと思ったが、寝る前のことを思い出した静玖はそれも仕方ないとも思った。
 相当疲れていたのだと。

「いつもと、違うことをしようか」

 佑が静玖の頭を撫でる。
 それだけで多幸感を得られる静玖はその言葉にうなずいた。
 同意を得た佑が静玖の首筋にキスをした。

「あっ」
「見えないと……興奮する、でしょ?」

 確かにそうだと静玖は思った。
 静玖は、見えない分何をされるかわからない緊張感に興奮していた。
 佑の熱いあつい舌が首筋を舐めあげるだけで身震いがする。
 直ぐ側に佑の身体がある。
 それなのにその姿が見えないだけでこうも感覚が違うのだろうか?
 いつもと違うその感覚に静玖は緊張だけではなく、これからされることへの期待が膨れ上がった。


「でも、ちょっと怖い……」
「怖い? 大丈夫、僕が君を傷つけるようなこと、したことないでしょ? 椅子に深く腰掛けて、深呼吸して」

 佑に言われればせざるを得ない。静玖は背もたれに身体を預け深呼吸をした。
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