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俺我が子に母乳をあたえる
しおりを挟む両腕に抱き上げた双子が必死におっぱいを吸っている。
「なんだか今日はいつもよりたくさん飲んでるな」
「昨日私が飲んだので新鮮だからじゃないですか?」
……デジャブ?
俺の背後から覗き込むようにして授乳を見ているレイを見上げたら、双子を羨ましそうに見ていた。
このおっぱいは、赤ちゃんのものであってお前のものじゃないからな?
結局本当に俺とレイは結婚することになり、そのニュースはすぐに王国内を駆け巡った。
なんせメス人気ナンバーワンの俺だからな……って言ってて虚しい気分になってきた。
俺が他のメスのものになったことが分かると、巨乳軍団はさっとアプローチの対象を変えた。
なんというか変わり身早すぎ。
ミレーネなんて縁談するしないというところまで進んでいたのに、さっさと別のオスと結婚した。
相手は城の補修工事に来ていた大工の見習い君だ。
結構な高さの足場から落ちたのに、傷一つ負わなかった見習い君に一目惚れしたらしい。
世紀のシンデレラストーリーに俺の結婚話は、すぐに風化した。
まぁ身分とかで結婚が決まるような世界じゃなくて良かったなとは思う。
そんな見習い君は絶賛妊娠中で、子どもが生まれれば、ミレーネはシーホース王国第425代国王に即位することになる。
あれからすぐに妊娠した俺は育児休暇中だ。
俺が両乳をさらけ出して母乳をあげているところに、トーマスとカーラそれからセバスチャンもやってきた。
孫が相当うれしいようで毎日顔を見せてくれる。
「それにしても羨ましいわ……。私ももうあとひとりくらいは孕ませたかったのに」
「トーマス様はまだお若いですから可能性はありますよ」
カーラが羨望の眼差しで双子を見つめていると、レイが慰めの言葉をかけた。
結婚後、思い悩む俺にトーマスがふたりの馴れ初めを教えてくれた。
なんとふたりの出会いはトーマスが生まれたときに遡る。
二十歳の若さで宰相になったカーラが、友人の出産祝に訪れた際、一目惚れをしたらしい。その赤子に。
カーラの友人は俺のおばあちゃん。今はおじいちゃんとふたりで諸国漫遊の旅に出ている。
本当はその場で連れ去りたい気持ちをなんとか押さえて成長するまでは見守っていたらしい。それでも宰相の力を最大限に使って、トーマスの周りにメスが近寄らないようにしていたらしい。
それでもトーマスのオスの魅力は多くのメスを魅了したらしい。
しかしそこはカーラ。
おばあちゃんの了承を得て、小さいころからトーマスにあの手この手で自分の子を産むことを洗脳してきたらしい。ついでにケツの開発も勧めていたらしいから、前世だったら事案になる話だ。
「カーラ様、妊娠させるにはコツがあるのですが、一度そちらを試されてみてはいかがですか?」
「コツなんてあるの?」
「えぇ。古い精子をすべて排泄させて空っぽにさせてから――」
「そうなの? 小さいころから受精嚢でイくこと覚えさせてしまったから、トーマス排泄得意じゃないのよ」
「レイ! 子どもの教育に悪い話は外でしろっ!」
思わず声をあらげたら、双子が泣き出してしまった。
見た目はまったく似てない双子なのに、こういうときだけは同じ反応をする。
ひとりは俺と同じ赤毛、でも肌は真っ白のオスだ。
もうひとりはレイに似た水色の髪に、黒い肌のメス。
どちらも可愛い我が子だが、性格はどちらにも似ないで欲しいと思う。
この子たちもいずれ、誰かと恋をするのだろうか?
どうも、この世界の人たちは一目惚れをする確率が高いような気がする。
しかも一途。
カーラにしろ、レイにしろ、ミレーネにしろみんな一目惚れでオスを手に入れている。
やっぱりあれか、竜人だったりするんだろうか?
結婚してからレイに聞いたら、この世界に竜自体存在しなかった。物語の中にすら、いないらしい。
俺の前世の話を聞いて、似たようなことが過去になかったかと調べるために、王立図書館にある本を全部読んだレイが知らないなら、いないのだろう。
というか、そんなことしてくれていたのだと思うと、ちょっとうれしい。
結局俺はこの世界を理解することは出来そうにない。
まぁ、前世だって世界のなんたるかなんて理解出来なかったんだから、理解する必要もないのかもしれない。
なんだかんだで、レイのことは好きだし、言い方はキツイけど優しいし、セックスは激しいけど普段は物静かでおしとやかといえばおしとやかだし、いつも俺を癒やしてくれる。
結婚相手として理想の相手だった。
うん、俺しあわせだ。
お腹がいっぱいになったのか、赤毛のオスのほうが乳首から離れた。
ゲップさせないと、と背中を叩こうとしたらなにやら様子がおかしい。
目を丸くして、わなわなと震えている。
「どうした?」
「ふぎゃぁぁっぁぁぁぁぁぁっ」
驚く赤子の泣き声が、部屋中に響いた。
……デジャブ?
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