サラリーマンのおっさんが英雄に憧れたっていいじゃないか~異世界ではずれジョブを引いたおっさんの英雄譚~

梧桐将臣

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第2章~学園動乱編~

薄着の山賊たちと桜色の天使

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入学式を終え、【山賊の隠れ家亭】の従業員寮である【乙女のオアシス】に帰宅する。

今日起きた出来事をみんなに話し少しでも情報を整理したいと思いリビングに向かう。

そこには、仕事を終えくつろいでいるヒルダたちがいた。

以前、俺が初めてリビングに足を踏み入れた際にシャウネの“上半身裸にタオルを首からかけているだけ”の恰好を見てしまったこともあり、みなちゃんと服を着るようになっている。

だが、【山賊の隠れ家亭】店主で元盗賊団の頭であったダークエルフのヒルダをはじめ兎の獣人のイセラ、猫の獣人のシャウネ、ハーフエルフのレナの4人の服装は、寝間着なのだろうが、みな薄手のネグリジェを着ているので視線のやり場に非常に困る。

見たい気持ちはもちろんあるのだが、不躾な視線を送り嫌われるわけにはいかない。

嫌われるだけならまだしも、【乙女のオアシス】を追い出されかねないので紳士的なふるまいを心がけなければならない。

しかし、少し動くたびにぷるんっと揺れる胸や、その先の突起がどうしても気になってしまう。

また、4人ともネグリジェの丈が短く、立ち上がるとお尻と太ももの境目ら辺がちらちらと見えている。

Tバック?もしや履いていない?

色々な想像を掻き立てられてしまうこの状況で、紳士でいなければいけないというのはある種の拷問みたいなものだ。

桃色の葛藤を知る由もない4人に、俺はオルニア学園の入学式で起きた事を話した。

「なんだか今年はいつもよりも過激だねぇ。入学式以降に最終試験をやるってことはよくあるけどね。それに、オルニア学園在学中に生徒が死んだりすることもあるが、それはあくまでも不慮の事故が起きた場合だ。学園側がわざと生徒を死なすような事はしていないはずだよ。」

「そうですね。身の丈にあっていないクエストを受けてモンスターに殺されたり、ルーキーを狙う犯罪者に殺されたりとかは良く聞きますけどね!」

「そんな無謀な若者たちに冒険者としての知識や強さを教えたり、逆に冒険者に向かない奴らをふるいにかけて結果的に生徒たちを守ってるって話だにゃー。」

「ええ。私も皆さんと同じ認識です。なので貴方の言う、黒ローブの男の存在やレベル2のモンスターならまだしも、レベル7のモンスターを最終試験で投入してくるというのはどうも違和感を覚えます。」

皆一様に、今年の入学式が例年通りではないと感じているようだ。

「まぁ坊やの言う通り十中八九、今日の入学式に起きた事件は学園側が仕込んだ最終試験だろうが、学園側でも予測できなかった何かが起きたってとこだろうねぇ。だけど深く考えたってしょうがないさ!アンタは別に冒険者になんかならなくったって良いんだからね。いつでもウチの専属のおつかい士として雇ってあげるから怖くなったら学園なんて辞めちまいな!」

「うんうん。おつかい士さんは戦闘向きの天職では無いんですから勇者さんにはどうせ勝てないと思いますよ!勇者さんに勝てないってことはおつかい士さんが目指す英雄にはなれないんじゃないですか~?」

「そうにゃ!わたしらも昔は盗賊団をやっていたけど、今の生活も楽しいにゃ!」

「それに貴方の、物をたくさん運べる能力は、冒険者よりもおつかい士としての仕事に向いていると思います。」

みんな俺を思ってくれてのことだろうし、仲間として迎えいれてくれているのが伝わるのは嬉しいが、こうも冒険者になることをおすすめされないと少しへこむ。

だが、それくらいで諦める気はさらさら無い。

それどころか、日本にいた頃にアニメやゲームの世界の英雄を見て漠然と憧れていたものが、今日の入学式でより具体的に、そしてより強い想いとなって確かに自分の心の中にある。

それは、自分の危険を顧みず誰かの為に戦う、エリスやポポロの姿を見て心をうたれたという事は疑うべくもない。

また、名も知らないがザ・ホープリッパーと渡り合っていた新入生たちはもちろん、クロードでさえも格好良いと思ってしまった。

日本のサラリーマンの方が、異世界の生活より大変だったと思っていたが、あれほど本気で命を賭して何かに取り組んだことは無かった。

俺はこの世界で本気で英雄を目指して生きる。その気持ちは今日でより強固なものとなった。

部屋に戻り改めて今日の出来事やこれからのことを整理してみる。

①今日の入学試験とこれから
オルニア学園はクラスわけの為の最終試験を入学式当日や翌日に行うことはあるが、今年の内容は明らかにイレギュラー。学園側にとっても予想外だったかもしれないが真相は不明。これは英雄でなく名探偵を目指す人に任せるとして、俺は頭の片隅にいれてはおくが積極的に真相の解明はしないでいいだろう。

②ハーレムライフについて
異世界に来た当初や今もハーレムには憧れるが自分には難しい気がしてきた。
言い訳として、思っていたよりも異世界だからといって無条件にハーレムイベントが起きない、あと単純に俺がモテない。
だけど、冒険者ギルドのアリナや【山賊の隠れ家亭】の従業員たち、エリスに会えて日本にいる頃よりも美女の知り合いが多いのは間違いない。これ以上の高望みは控えるべきだ。色欲で身を滅ぼしかねない。

③クロードは越えなければいけない
ナチュラルに人を見下したり、自己中だったり人間として嫌な部分はある。
だが、自分の思い描く勇者としての振る舞いを貫きとおす信念や行動力、それに実力も兼ね備えている。
俺が本当に冒険者として名を挙げて英雄を目指すのであれば、どういう形であれ彼は越えなければいけない存在・・・な気がする。

④英雄になりたい
命を賭して強敵と戦うエリスやポポロ、新入生らを見て英雄になりたいという気持ちはより強くなった。
だが俺が星から授かった天職は、冒険者を目指す上で、はずれジョブと言われているおつかい士。
冒険者として名を挙げ英雄を目指す上では戦闘力が大事なこの世界において、得意なスキルが何もないというのは致命的。
俺がガイア様から授かった能力は、クエストクリア時に依頼人の満足度によってボーナスがつくというものと、インベントリの収納にボーナスがつくというもの。
改めて整理してみると地味極まりない。
このふたつの能力と日本のサラリーマン生活で培った知恵、それと異世界での経験も掛け合わせて英雄を本気で目指す。
英雄になって何を成したいかなんてまだわからないが、今は本気で何かを成し遂げてみたい。サラリーマン時代には無かった感覚だ。
英雄になるというのは、本気で目指すものとしてこれ以上ない目標だと思う。
世界を救いたいとか、誰かを助けたいとか大それた目標は無いが、漫画の主人公でもない限り人生なんてそんなものだろ。
本気で目指せるものが出来ただけでも儲けものだ。



――翌朝、入学式の会場であるオルニア学園の大講堂に向かう。

昨日の事件があり、かなり人数が減るのかと持ったが予想に反しそれなりの人数が講堂内にはいた。

席の埋まり具合から見るに、昨日の半分くらいの150人ほどだろうか。

例年は30人1クラスで10クラス程あるというから、それでもかなりの人数が脱落したと言える。

いくら日本とは違う価値観を持つ異世界の16歳と言えど、昨日のザ・ホープリッパー戦を入学初日に経験したら、入学を避けるのも無理は無い。

少し想像を働かせる頭を持つ者ならば、クロードやエリスたちがいなかったらどうなっていたかを考えてしまうのだろう。

俺のように力を隠していた者がいない限りは、あの場にいた全員がザ・ホープリッパーに惨殺されていただろう。――実際には、さすがに学園長が止めるだろうが。最終試験のからくに気付いていなければ、自分が死んでいたかもしれないという考えに至るはずだ。

なんとなく昨日と同じ後列の席に座り、半分に減った学生を眺めながら物想いに耽っていると突然声をかけられる。

「ナツヒ君おはよう!良かった来てくれて。」

声をかけてきた相手は立っていた為、学園の制服であるグレーのスカートから伸びる太ももが視界に入る。白い素肌が健康的にピンクがかっておりまばゆい魅力を放っている。

視線をそのまま上に上げると、白いブラウスのみにとどまらず、紺色のブレザーごと膨らませている大きな果実をフォーカスターゲットしそうになるが、この世界にはないはずの意志力パラメータを振り絞り、相手の目まで視線を上げる。

淡い桜色の髪をツインテールに結び、弾けるような笑顔をこちらに向けるのはエリス=ヴァレンティアだった。

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