サラリーマンのおっさんが英雄に憧れたっていいじゃないか~異世界ではずれジョブを引いたおっさんの英雄譚~

梧桐将臣

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第2章~学園動乱編~

無双気味なおっさんと詐欺師の本性

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「お前の相手は俺だ!滑稽な詐欺師さんよ!」

俺は逃げるエリス達を守るため、偽りの王を挑発する言葉と共に横っ面に飛び蹴りをお見舞いする。

グブアァッという癇に障る声を発しながらのけぞるホブゴブリン・ザ・スウィンドラー。

「クッ・・。オノレー!!貴様ダケハゼッタイに許サンゾ!二度モ詐欺師呼バワリシオッテ!!手足をチギッテ動ケナクシテ飼ってヤロウ!オンナハソノアトダ!ドウセワシの部下ニ捕マルでアロウ!貴様の目の前デワシニ犯サレ快楽に溺レル様ヲ共ニ楽シモウデハナイカ!!」

胸糞の悪くなる言葉を吐きながらこちらに斬りかかろうとする偽りの王。

シャーマンのように吹き飛ばす訳にはいかなかったが、敵視を俺に向ける事には成功したようだ。

俺は部屋から出ようとするエリス達を尻目に、ボスに接敵し斬撃を繰り出す。

「ゲハアァァ!!」

大きく口を開き笑いながら俺の斬撃を受け止めるホブゴブリン・ザ・スウィンドラー。

さすがに視認された状態で、真っすぐに斬りかかるのでは受け止められてしまう。

続けざま蹴りを繰り出しボスの左ふくらはぎに叩き込む。

ボスは多少体勢を崩しながらも、片手剣を力まかせに振るい反撃をしてくる。

俺の首を狙う反撃をしゃがむことによって危なげ無く回避し、低い体勢のまま斬撃をボスの脚に狙い放つ。

刀はボスの脚に吸い込まれダメージを与えるが、直後右半身に衝撃が襲ってくる。

足元でちょろちょろと動き回る俺を振り払うように、ボスが左手を振るってきたのだ。

僅かだが確実なダメージを受けてしまう。

「くっ!!」

すぐに体勢を立て直し、ボスの胸から腹にかけて右上段から袈裟切りにする形でななめに切り裂く。

グファッという確かなダメージを感じさせる声を発しながら、払いあげるような形で装飾過多な片手剣を振るうホブゴブリン・ザ・スウィンドラー。

その苦し紛れの攻撃をレベル11の中でも最も高く、身のこなしを助けてくれる花風羽織によって更に底上げされた素早さを最大限に活かしボスに突っ込む形で跳躍しかわす。

片手剣の射程圏内よりも内側に入り込んだ安全圏から、3メートル程あるボスの更に上方から首の付け根を狙って刀を突き立てる。

「グウゥアァァァーーー!!!」

急所への攻撃が成功したのだろう、ボスは大きく喚き散らしながら暴れ回る。

俺はいらぬダメージを受けぬよう距離をとり退避する。

レベル10のボスクラスであるホブゴブリン・ザ・スウィンドラーだが純粋な戦闘タイプでは無く、名前が示す詐欺師の異名とおり言葉巧みにゴブリン達を騙したり、人の神経を逆撫でするような言葉で冷静さを失わせたり狡猾さに長けている個体なのだろう。

俺のレベルが高いことと装備の強さも相まって、単純な戦闘能力であれば負ける事は無さそうだ。

ボスは首の傷口を抑えながらこちらを見据えていが、しかし肩で大きく息をしているのみで明らかな戦意の低下を感じる。そのHPゲージは約半分となっている。

まぁ容赦する必要は無いな――と心の中でつぶやき、レベル10のボスをもソロで倒せるかもしれないという全能感を覚えながらボスに攻めかかる。

「マ!参ッターーー!!!」

その時だった、偽りの王は自らの権威をみせつける為の片手剣を地面に放り投げ、ひざまずき両手を上げ降参の意を示す。

「ワシが悪かった!!モウ人間ハ襲ワナイシコノ地カラ出て行くカラ許してくれ!!」

さすがの詐欺師だ。毛頭許すつもりはないが、この世界で詐欺師と言う名の二つ名を冠するボスクラスのモンスターが、どんな手を使って命乞いをしてくるのか興味が湧いた。

「許すかどうかは話を聞いてみてから決める。まず何のためにこんな事をした?お前は王ではないんだろう?こんな事をしたって本当の王国なんて作れないとわかっているんじゃないか?・・・あぁそうだ。お前が嘘をついていると俺が判断した瞬間容赦なく殺す。武器も捨ててしまっている今嘘は上策じゃないってことくらいわかるな?」

「モ・・モチロンダ!嘘ハツカナイ!オレハホブゴブリンノ中デハチカラガ弱ク好キナメスヲ孕マセルコトガデキナカッタンダ。仲間内デモ馬鹿ニサレたオレハイツシカ自分ダケノ居場所ガ欲シクテ群レヲ離レテ旅ニデタンダ!」

ワシという王を演じる為の第一人称も忘れ必死な表情で命乞いを始める詐欺師。

「・・・ほう。それで自分よりも弱いゴブリン達を騙して偽りの王を演じたということか?」

「イ・・イヤ騙すツモリはナカッタんだ!旅の最中デ訪レタコノ地ノゴブリンが近クデハ見カケナイ巨体のオレを見テ勝手ニ仲間ニナッテキテ・・・ソレデ“シャーマン”ト協力シテコノ地デササヤカナ楽園ヲ築キアゲヨウトシタダケナンダ!」

確かに3メートルの身長でレベル10の個体であるこいつは、この近辺の低レベルのゴブリンから見たら王にも見えたのだろう。

「そのお前が言うささやかな楽園の為に人間の女性が犠牲になってもいいと?」

「犠牲ニナンテナッテイナイ!実際ニオレクラスのホブゴブリンデハ人間を孕マセルコトハデキナイ。タダ快楽ヲ与エタニ過ギナインダ!ソレサエモアンタガ気ニクワナイナラコノ地カラハ出てイクシオンナモ全員解放スル!ダカラ許シテクレ!」

人間がこのクラスのホブゴブリンとの間では妊娠ができないという事は、今日の惨劇を目の当たりにした上で唯一の救いとなる情報だ。

だが、自らの体液を壺にいれ手下のゴブリン達を使い、女性達の中に入れさせている儀式めいた肉欲の宴も、繁殖の為でもなくただ単にこいつの快楽の為だったということか。

繁殖の為だとしても到底受け入れることはできないが、自らのエゴの為にあのようなことを行っているこいつの行動には心底反吐がでる。

「そうか・・・。それであの子達が喜んでいると本当に思っているのか?」

「グッ!!ソレハ・・・。多少ゴウインナ部分ハアッタカモシレナイ!モシカシタラ嫌ガッテイル女モイルノカモシレナイガ、回数ヲ重ネレバ最後ハミンナ身ヲ委ネルヨウニナッテキタ!」

犯され続け尊厳を奪われ抵抗の気力すらも失った女性を指して、身を委ねると理解しているのだろう。救いようが無い。

「なるほど。あくまでも最後には相手も受け入れてくれるから悪いことをしている訳では無いということか。しかも、とりあえずはここオルニアの地からはでていくと。・・・素直に話してくれて感謝する。」

「ジャ・・ジャア!?ミノガシテクレルノカ!?」

「あぁそうだな・・・・・・死ね!!」

今までの所業も許す余地は無いし、仮にこの地からでて行ったとしても悪意を振りまくだけの害悪。

こいつと人間がわかりあえる事は確実に無い事が判明した今ここで殺すしかない。

武器を捨てひざまずき両手をあげ無防備な状態のホブゴブリン・ザ・スウィンドラーの首を狩らんと、容赦なく全力で斬りかかろうとする。

・・・!?!?

斬りかかろうとしたはずの身体が動かない!!

いや!身体は動くが足が不可視の鎖で地面に繋がれた様に、その場から進む事ができない!!

――魔法か!?罠か!?いつかかった!?すぐ解けるのか!?逃げられるか?それとも攻めるべきか?最悪死ぬかもしれない!

あらゆる可能性と今後とるべき行動が、高速で頭の中を駆け巡る。

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