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第2章~学園動乱編~
避けたい未来の為に
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この場にあって尚美しいエリスの姿を見て一瞬呆けている俺の脳内を、ゴブリン・ザ・スウィンドラーの耳障りな声が引き裂く。
「ゲハハ!!自ラモドッテキタカ!」
張り付かせていた笑みの質を、獰猛なものから卑猥なものへと変え一瞬攻撃の手が緩むゴブリン・ザ・スウィンドラー。
「コノコムスメガジャマヲスルナ!!!!」
毒づくゴブリンシャーマンは俺へのバインドを切らさぬよう、両腕で杖を持ち俺へと向かって魔法をかけ続けている。
「もうナツヒ君の邪魔はさせないよ!」
エリスは疾走の勢いそのままに、ゴブリンシャーマンの胴体を横薙ぎにするように大剣を振り抜く。
「ゲギャーー!!!」
俺へのバインドを優先したのか、ろくな回避行動もとれずにエリスの斬撃をもろに受け大きく喚くゴブリンシャーマン。
その体からは鮮血が飛び散る。
魔力操作が不可能になったのだろう俺は拘束魔法“バインド”が解け自由に動けるようになった。
俺はボスから距離をとるようにエリスの方へ向け大きく跳躍する。
「ありがとうエリス!助かった!」
「ううん!ナツヒ君が2匹を抑えてくれていたお陰で、みんなをこの部屋から逃がせたよ。今はジャスリーンと一緒にさっきの大部屋で避難してる!」
「そうか。外には逃げなかったのか?」
「うん。ジャスリーンが言うには、狩りに出かけた奴らにもしもこの洞窟の外で見つかったら殺されてしまうかもしれないって、だけどこの洞窟内で見つかる分には彼女たちの意志で逃げたとは見なされないだろうからまだ安全だろうからって。」
「なるほど。どちらにしろこいつらを片付けないとな。俺たちが逃がそうとしたとは言え1度逃げ出そうとした彼女たちがどんな扱いを受けるかわからない。さっきあいつは逃げ惑う彼女たちにむけて容赦なく剣を振るおうとしていた・・・。」
「絶対に許せないよ。あんなに酷い事をしておいていらなくなったら平気で殺そうとするなんて。」
眦を吊り上げ怒っている表情さえも美しいエリスの顔を一瞥したのち、肉欲の宴に終止符を打つべくこの戦いの最終章を始めようとした時だった。
――「2人とも!!今すぐ逃げて下さい!!あいつらが戻ってきました!!!」
ジャスリーンの切迫した叫び声が洞窟内にこだまする。
「きゃあーーー!!!!」
直後ジャスリーンの悲鳴が響き渡る。
思わず目を合わせる俺とエリス。ここに来て援軍とは・・・!
「ゲハハハーー!!コレデチェックメイトダナ!コノ後ガタノシミダ!」
人間の言葉がわかる偽りの王は、ジャスリーンの叫びを聞き勝利を確信し下卑た笑いを浮かべる。
「サンザンアバレテクレタガコレマデダナニンゲンメ」
HPゲージが残り4割を切っているゴブリンシャーマンも、闖入者たちの最後を悟り余裕な素振りを見せる。
ジャスリーンが言うあいつらとは、エリスを捕獲しに外に出ていった18匹のゴブリン達の事だろう。
あの1個小隊を率いるはレベル6のゴブリンリーダー。残りはレベル3~4の雑兵だった。
俺1人で倒せなくもないだろうが、俺がそちらに行ってしまってはエリスがこの2匹を相手どることになり確実にやられてしまう。
1番避けるべきはこの部屋に18匹がなだれこみ20対2の状況になってしまうこと。
絶対に合流は防がなければいけない。
少しでも俺たちが生き残る可能性が高いのは、俺がボスたち2匹を相手どりエリスに援軍18匹の足止めをしてもらうこと。
しかし、俺が素早くボスとシャーマンを倒しエリスに加勢しないとエリスが凄惨な目にあってしまう可能性が高い。
奴らの習性を考えると、エリスを殺しはしないだろうが集団でその肉体を蹂躙されてしまうことは多いにあるだろう。
それでも俺たちが選べる最適解の為、エリスに残酷な提案をしなければいけない。
「エリス・・・。あいつらを足止めできるか?」
「もちろんそのつもりだよ。私にはボスとシャーマンの相手はできないから。ここはナツヒ君に任せたよ!」
エリスのレベルでは18匹を足止めはできても、殲滅することはできないだろう。
そして最後には数の暴力に負け今日自分の目で見てきた女性達のような運命をたどってしまう事も想像はしているだろう。
本人もそれをわかっているはずなのに、微塵の悲壮感も感じさせずに俺の提案を承諾するエリス。
猪突猛進な部分ばかり目についてしまっていたが、合理的な判断もできるのだと死地においてやっと気づかされる。
「ナツヒ君なら2匹とも倒せるよね?多分私は長くは持たないだろうから早く助けにきてね。」
晴れ渡る空を思わせるスカイブルーの透き通った瞳にうっすらと涙を浮かべつつも気丈に振る舞い笑顔すら浮かべるエリス。
俺は思わず言葉を失ってしまう。
「・・・!!」
「ナツヒ君死なないで。絶対あいつらを倒して!」
自身も死地に赴くのに俺の事を気にかけ鼓舞するエリス。
なんて強いのだろう。
俺のようなレベルのアドバンテージだけではない、数値では測れない心の強さを感じる。
ボスとシャーマンを早々に倒し、エリスに加勢しこの死地を脱する。
エリスの覚悟に応える為にも俺は意識を戦闘モードに切り替える。
「必ずすぐに駆けつける。それまでどうか頼む。」
「うん!任せて!」
“必ず”とか“すぐに”とか日本のサラリーマン生活において、できない可能性が少しでもあることは口にしないようにして生きてきた。
後々自分の首をしめることになると学んだからだ。
希望的観測を含んだ言葉を口にしたのはいつからだろうかと、自分の口から出た言葉を聞いて逡巡する。
隣にいるエリスの影響を少なからず受けているのかもしれない。
この先もエリスの生き方を見てみたい。その為にも必ず無事にここを切り抜ける。
欲望のままゴブリン達に犯されたとあっては、エリスの今後の生き方や性格すらも変えてしまうだろう。
それは絶対に防ぐ。
「エリス。これを使ってくれ。」
俺はインベントリから薬草をとりだしエリスに渡す。
「ありがとうナツヒ君。」
俺も薬草を使いHPゲージを半分程まで回復させる。
「じゃあいっちょいきますか!」
俺は少しおどけたセリフと共に拳を突き出す。
エリスは一瞬なんのことかわからない様子だったが、拳と拳を突き合わせるものだとすぐに理解しおよそ戦いとは無縁そうな綺麗な拳を突き出す。
コツッとお互いの拳を合わせ、目を合わせ微笑み合う。
俺はエリスが後方に駆けていく気配を感じながら、ボスとシャーマンに向かい疾走する。
「うおおおおおおぉぉぉ!!!!!!」
俺は裂帛の咆哮と共に最後の決戦に臨む。
「ゲハハ!!自ラモドッテキタカ!」
張り付かせていた笑みの質を、獰猛なものから卑猥なものへと変え一瞬攻撃の手が緩むゴブリン・ザ・スウィンドラー。
「コノコムスメガジャマヲスルナ!!!!」
毒づくゴブリンシャーマンは俺へのバインドを切らさぬよう、両腕で杖を持ち俺へと向かって魔法をかけ続けている。
「もうナツヒ君の邪魔はさせないよ!」
エリスは疾走の勢いそのままに、ゴブリンシャーマンの胴体を横薙ぎにするように大剣を振り抜く。
「ゲギャーー!!!」
俺へのバインドを優先したのか、ろくな回避行動もとれずにエリスの斬撃をもろに受け大きく喚くゴブリンシャーマン。
その体からは鮮血が飛び散る。
魔力操作が不可能になったのだろう俺は拘束魔法“バインド”が解け自由に動けるようになった。
俺はボスから距離をとるようにエリスの方へ向け大きく跳躍する。
「ありがとうエリス!助かった!」
「ううん!ナツヒ君が2匹を抑えてくれていたお陰で、みんなをこの部屋から逃がせたよ。今はジャスリーンと一緒にさっきの大部屋で避難してる!」
「そうか。外には逃げなかったのか?」
「うん。ジャスリーンが言うには、狩りに出かけた奴らにもしもこの洞窟の外で見つかったら殺されてしまうかもしれないって、だけどこの洞窟内で見つかる分には彼女たちの意志で逃げたとは見なされないだろうからまだ安全だろうからって。」
「なるほど。どちらにしろこいつらを片付けないとな。俺たちが逃がそうとしたとは言え1度逃げ出そうとした彼女たちがどんな扱いを受けるかわからない。さっきあいつは逃げ惑う彼女たちにむけて容赦なく剣を振るおうとしていた・・・。」
「絶対に許せないよ。あんなに酷い事をしておいていらなくなったら平気で殺そうとするなんて。」
眦を吊り上げ怒っている表情さえも美しいエリスの顔を一瞥したのち、肉欲の宴に終止符を打つべくこの戦いの最終章を始めようとした時だった。
――「2人とも!!今すぐ逃げて下さい!!あいつらが戻ってきました!!!」
ジャスリーンの切迫した叫び声が洞窟内にこだまする。
「きゃあーーー!!!!」
直後ジャスリーンの悲鳴が響き渡る。
思わず目を合わせる俺とエリス。ここに来て援軍とは・・・!
「ゲハハハーー!!コレデチェックメイトダナ!コノ後ガタノシミダ!」
人間の言葉がわかる偽りの王は、ジャスリーンの叫びを聞き勝利を確信し下卑た笑いを浮かべる。
「サンザンアバレテクレタガコレマデダナニンゲンメ」
HPゲージが残り4割を切っているゴブリンシャーマンも、闖入者たちの最後を悟り余裕な素振りを見せる。
ジャスリーンが言うあいつらとは、エリスを捕獲しに外に出ていった18匹のゴブリン達の事だろう。
あの1個小隊を率いるはレベル6のゴブリンリーダー。残りはレベル3~4の雑兵だった。
俺1人で倒せなくもないだろうが、俺がそちらに行ってしまってはエリスがこの2匹を相手どることになり確実にやられてしまう。
1番避けるべきはこの部屋に18匹がなだれこみ20対2の状況になってしまうこと。
絶対に合流は防がなければいけない。
少しでも俺たちが生き残る可能性が高いのは、俺がボスたち2匹を相手どりエリスに援軍18匹の足止めをしてもらうこと。
しかし、俺が素早くボスとシャーマンを倒しエリスに加勢しないとエリスが凄惨な目にあってしまう可能性が高い。
奴らの習性を考えると、エリスを殺しはしないだろうが集団でその肉体を蹂躙されてしまうことは多いにあるだろう。
それでも俺たちが選べる最適解の為、エリスに残酷な提案をしなければいけない。
「エリス・・・。あいつらを足止めできるか?」
「もちろんそのつもりだよ。私にはボスとシャーマンの相手はできないから。ここはナツヒ君に任せたよ!」
エリスのレベルでは18匹を足止めはできても、殲滅することはできないだろう。
そして最後には数の暴力に負け今日自分の目で見てきた女性達のような運命をたどってしまう事も想像はしているだろう。
本人もそれをわかっているはずなのに、微塵の悲壮感も感じさせずに俺の提案を承諾するエリス。
猪突猛進な部分ばかり目についてしまっていたが、合理的な判断もできるのだと死地においてやっと気づかされる。
「ナツヒ君なら2匹とも倒せるよね?多分私は長くは持たないだろうから早く助けにきてね。」
晴れ渡る空を思わせるスカイブルーの透き通った瞳にうっすらと涙を浮かべつつも気丈に振る舞い笑顔すら浮かべるエリス。
俺は思わず言葉を失ってしまう。
「・・・!!」
「ナツヒ君死なないで。絶対あいつらを倒して!」
自身も死地に赴くのに俺の事を気にかけ鼓舞するエリス。
なんて強いのだろう。
俺のようなレベルのアドバンテージだけではない、数値では測れない心の強さを感じる。
ボスとシャーマンを早々に倒し、エリスに加勢しこの死地を脱する。
エリスの覚悟に応える為にも俺は意識を戦闘モードに切り替える。
「必ずすぐに駆けつける。それまでどうか頼む。」
「うん!任せて!」
“必ず”とか“すぐに”とか日本のサラリーマン生活において、できない可能性が少しでもあることは口にしないようにして生きてきた。
後々自分の首をしめることになると学んだからだ。
希望的観測を含んだ言葉を口にしたのはいつからだろうかと、自分の口から出た言葉を聞いて逡巡する。
隣にいるエリスの影響を少なからず受けているのかもしれない。
この先もエリスの生き方を見てみたい。その為にも必ず無事にここを切り抜ける。
欲望のままゴブリン達に犯されたとあっては、エリスの今後の生き方や性格すらも変えてしまうだろう。
それは絶対に防ぐ。
「エリス。これを使ってくれ。」
俺はインベントリから薬草をとりだしエリスに渡す。
「ありがとうナツヒ君。」
俺も薬草を使いHPゲージを半分程まで回復させる。
「じゃあいっちょいきますか!」
俺は少しおどけたセリフと共に拳を突き出す。
エリスは一瞬なんのことかわからない様子だったが、拳と拳を突き合わせるものだとすぐに理解しおよそ戦いとは無縁そうな綺麗な拳を突き出す。
コツッとお互いの拳を合わせ、目を合わせ微笑み合う。
俺はエリスが後方に駆けていく気配を感じながら、ボスとシャーマンに向かい疾走する。
「うおおおおおおぉぉぉ!!!!!!」
俺は裂帛の咆哮と共に最後の決戦に臨む。
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