【R18】恋愛願望強めの魔女は邪な欲望のままに召喚する

とらやよい

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17.相棒

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「おかしいわ。イルメラの仕事が忙しいのは以前からだけど、こんなに家を空けて研究室に何日も泊まり込むなんて……」
「ああ、対応した男も不自然だった」

 翔太とジェシカは姿を消した泉とイルメラを探していた。まずは仕事の可能性が高いイルメラを訪ねて魔法省まで来てみたが対応に出てきた男が去っていったドアを睨んだ。

 対応に出てきた男は本人から預かったと小さなメモ紙を渡してきただけだった。
 メモには『仕事が忙しくて暫く帰れない。心配しないように』とだけ書かれていた。
 ジェシカ曰く、筆跡はイルメラのもので間違いないが面会が出来ない時点で不自然だとジェシカは眉根を寄せた。

「この私が急用だから会いたいって言っているのに顔も出さないなんて今まではなかったもの……」

 魔法省を後にした二人は無言で歩いた。

「正当な方法でどうにもならないなら……奇襲しかないな。あそこに忍び込む方法ってあるのか?」
「私もそれを考えていたところよ。気が合うわね」

 翔太はほんの一瞬目を細めてどこか嬉しそうな表情をした。

「魔法省は国の機密を扱う部署でエリート集団の集まる場所だと聞いたが」
「そうよ。だからこそ魔法省の護りは鉄壁よ。難攻不落の要塞だわ。忍び込むなんて普通の人間じゃ、まず無理ね」

 この非常事態だと言うのに、翔太と街中を歩くと決まって女達の視線が集まることにジェシカは少し苛ついていた。
 チッと舌打ちをした次の瞬間立ち止まる。
 苛つく女達の熱視線のお陰で閃いたのだ。そして満面の笑みでジェシカは翔太を見た。

「あったわ。方法が」
「あんたのそんな顔見たら悪い予感しかしないけどな」
「相変わらず失礼な奴ね。ショータ、あんたの力をフル活用しましょう! あんたじゃなきゃ成立しない作戦よ!」
 
 ジェシカの含みのある笑みに翔太は寒気を感じブルリと身を震わせた。



 ◆


 
 翔太は仄暗いバーのカウンターである女性と並んで酒を飲んでいた。
 彼の肩に手を乗せた女は金髪に翡翠色の瞳を持つなかなかの美女である。

 彼女はうっとりと男を見つめる。翔太の大きな手が彼女の太腿の上を滑ると女は誘われるように彼にしなだれかかった。

 カウンターから離れた席で変装をし二人の様子を窺うジェシカは片眉を上げて口をへの字に曲げる。

「ふーん。なかなかやるじゃない。っていうか、ノリノリよね……楽しんでない? まあ、本領発揮ってところだろうけどさ」

 二人がバーを出て暗闇に消えていくのを見送ると一足先にジェシカはイルメラのアパートに戻った。本当は最後まで尾行する予定だったのだが予想以上にイチャイチャする二人の様子にムカムカと胸焼けのようなものが込み上げてきたのだ。

「そんなに強い酒は飲んでないんだけどな……」

 そう言うと胃のあたりを押さえソファに横になった。

 深夜日付が変わる頃、扉の開く音で振り向くいた。
 部屋に入ってきた気怠そうな彼の様子に。
 帰ってきた翔太に憮然とした顔で尋ねた。

「首尾は上々ってとこ?」
「ああ。明後日、忍び込む手はずになっている」

 彼女は魔法省の食堂に勤める女性で以前、家に窃盗が入ったと嘘をついて翔太を家に招き入れようとした女性だった。

「どうやって口説いたの?」
「噂の噴水を見てみたいって言ってみた」

 魔法省の奥深くには知識の水という七色に輝く水を噴水に仕立てたものがあると都市伝説的に囁かれていたのだ。
 女性が乗り気になったということはどうやら実在しているらしい。
 
「それだけで女が規則を破ってまで、あんたを招き入れてくれる?」
「そこで、今日以上のことをしてあげるって美味しい餌を撒いたからな」

 何でもないように言ってソファに座ると長い脚ん組んだ。

「今日以上のことね……まあ、いいわ。規則を破ってでも魔法省の内部に招き入れてくれるって、結構難易度高いと思ってたんだけど。上々の出来よ」

 今日以上って、今夜は一体何をしてきたのか。呆れと共に、またムカムカしたものがこみ上げてきた。酒のせいでないのなら何か悪いものでも食べただろうかと考えつつ翔太に冷たい視線を向ける。

「若干、私的な欲求を満たす為だったんじゃないかって疑いたくなるけど」
「潜入捜査の基本は相手をいかに信用させるかだ。俺の優秀さを認めて欲しいところだな」

 大きな欠伸をした翔太は彼女の冷たい視線を気にすることもなく言った。

「悪いけど疲れてるんだ。進行状況の報告はこのぐらいでいいか?」
「私だって疲れてるわよ! っていうか、疲れるようなことしてきたわけ?」
「なんだよ。妬いてるのか? 意外に可愛いとこあるんだな」
「はぁ?! この勘違い男! さっさと寝ちまえ!」

 ジェシカが投げつけてきたクッションを華麗に避けて翔太は笑いながら寝室へと向かった。

 
 
 ◆
 

 
 約束の夜、翔太はいつもの制服ではなく魔法省の中にいても目立たないように黒のローブを纏っていた。
 
 業者が出入りする搬入口から深夜、翔太は魔法省の中に入った。
 手引をした女は翔太と手を繋ぎピッタリと寄り添う。翔太は魔法省の中に入ると小さなオリーブの葉をの床に落とした。
 薄暗い廊下を進み曲がるとまた一枚葉を落とす。

 ジェシカから渡されたオリーブの葉は彼女が密かに通う路地裏の更に奥にある非合法の魔法道具店で手に入れた代物だった。一見さんお断りのその店は大人の玩具や媚薬を売る店で商品には違法に魔法が施されているのだ。
 
 翔太のポケットに入れられたオリーブの葉も人目を忍んで逢引する男女が使う物なのだとか。
 一体どんなところに出入りしてるんだと呆れたものの、そっち方面は嫌いじゃない翔太は店の場所の確認と同時に今度連れて行ってもらうことをジェシカに約束させていた。
 
 数日前店を訪れたジェシカは、事前に用意した翔太の髪の毛と自分の髪の毛を一本ずつ店主に差し出した。受け取った店主は微量の魔力を持つ女の姿格好をした男だ。彼、いや彼女は微量の魔力を持つ一般人で魔法省の招集を逃れた一人だった。彼女のようなモグリの魔法使いもどきが、こういった商売に手を染めているのは公然の秘密だ。 
 真っ赤なマニュキュアが塗られて長い爪で器用に指で二本の髪の毛を摘むと、毒々しい蛍光色の液体の中にオリーブの葉と一緒に放り込んだ。ぶつぶつと何かを呟くと液体はあっという間に蒸発し先程より少しばかり鮮やかに色合いになったオリーブの葉だけが鍋底に残っていた。

 翔太が床に落としたオリーブの葉はジェシカが近づくと蛍光色を放って光り葉の先端が進むべき方向を指す。そして進むと、また葉が落ちている。落とした者が進んだ方向を示し誘導してくれるのだ。道ならぬ恋をする男女が隠れて逢引につかうものだ。

 ジェシカは搬入口からイルメラの家に残された彼女のローブを羽織り魔法省の中に潜入した。
 
 
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