【R18】恋愛願望強めの魔女は邪な欲望のままに召喚する

とらやよい

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21.あなたの目的は

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 豪華な室内の装飾を見て、身分の高い貴族の邸宅かと思った。しかし、現れた侍女達にここが王城だと知らされると青褪めたイルメラとジェシカをよそに翔太と泉は理解が追いつかず顔を見合わせた。

 裸にシーツを巻きつけただけの明らかに場違いなイルメラと泉は別室で身支度を整えられ、一般市民では食べられないような夕食が振る舞われた。そして、ふかふかの広いベッドが用意され丁重にもてなされたのだ。

 しかし、身の回りの世話をする侍女に何を聞いても答えてはくれない。悶々とする中、朝を迎えた四人の前に現れたのは国王だった。

 魔力持ちとは言え、一般市民が国王にお目にかかるなんてありえないことだ。国王が現れただけでも驚きなのに国王の背後に見覚えのある顔を見つけイルメラは我が目を疑った。

 そこにいたのは紛れもないジスランだった。イルメラ達四人を王城に残して何の説明もなく姿を消した彼がしれっと王の後ろに立っているのだ。
 自分を見ようともしない彼の態度に沸々と怒りが湧いた。イルメラの視線はジスランに注がれる。なかば睨みつけているような状態だ。

 国民の信頼も厚い若き国王自ら事の経緯が説明された。

 国王は予てから神官達に権力が集中し彼等が力を持ち過ぎ、政治にまで口出し、その発言力を強めていることを懸念していた。  
 
 国王は水面下で魔法省内部に密偵を送り込み探らせることにした。そして、魔法省の中枢に潜入し密偵の任に就いたのがジスランだった。

 彼は貴族家の三男で彼の兄と国王は古くからの友人だった。そして国王は親友の弟であり幼き頃からよく知るジスランにも絶対的な信頼を寄せていた。
 魔力持ちである彼が適任であり彼以外にはこの任務に就くことは難しかったであろう。

 数年に及ぶ潜入の成果として、神官達の悪行の数々の証拠を掴んだ。その後の国王行動は迅速だった。

 相手は魔力持ち、裁判など正当な手段で戦うのは不利と考えた国王は強硬手段に出た。
 数年に及ぶは潜入期間で、密集団である黒蛇を国王側に寝返らせ国王直轄の集団として神官や他の魔力持ちと戦わせたのだ。それに尽力したのは紛れもないジスランだ。

 説明を聞き終えたイルメラは悔しそうに唇を噛み、なんと不躾にも国王ではなく後ろに控えていたジスランに聞いた。

「ジスラン、あなたの目的は? 王命だからって味方を裏切ってまで従ったのには理由があるんじゃないの?」

 ジスランはイルメラを真っ直ぐ見据えて答えた。

「イルメラと同じだ。俺は後世に自分の子供にまで、こんな生き方をして欲しくなかった。魔法省が力を持ち過ぎたこの世界を壊してお終いにしたいと思っていた」
 
 ジスランが国王からの依頼を受けた根本には、魔力持ちが世間から隔離され生活させられるとで、人としての尊厳を踏みにじるような制度や規則が、あたかも特別な人間にだけ与えられた特権であるように偽装され誤魔化され続けている現状を王に、そして世間の目に明らかにすることが目的だった。

 数々の制度や規則により人としての尊厳を奪われ続けたことを証明したいという強い意志があった。

 その最たる制度が性交制度だ。ジスランは自分自身が苦しんだこの制度を廃止したかった。イルメラと同じ意志を持ちジスランはイルメラと違う形で戦っていたのだ。
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