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命令されて喜ぶ、支配されたい欲求、そんなのおかしい人間の考えだ
いつだって俺は自分自身の意思で生きていく
誰かの言葉(コマンド)なんか死んでも聞くものか
そう思っていた
彼に会うまでは
「遼~」
「おー」
食堂に着いた遼に、同じ学部の友人佐々木が手を上げる。こっちこっちと誘われるまま佐々木の前の席に遼は腰を下ろして手に持ったトレーを置いた。
遼はふうと長い息を吐くと、目の前にある昼食をぼんやりとした目で眺める。そんな遼の様子に佐々木が首を傾げた。
「どした?なんか疲れてるな」
言いながら遼の顔を佐々木がジッと見つめた。
「よく見ると顔色も良くないし、大丈夫か?」
「大丈夫だ」
佐々木の言葉に、間髪入れずに遼は冷たく言い放つ。
まるで突き放すような言い方に、佐々木が驚いた顔になった。その表情を見て、遼はあっと声を零した。
「いや......レポートの締切があって寝不足で......だから」
慌てて言い直す遼に、佐々木はフッと顔を緩めた。
「あんま根つめすぎんなよ」
佐々木は心配そうにしながらもそれだけ言うと、ほら飯食おうぜ!と明るく言って遼に昼ご飯を食べるように促す。それからさっきのことはなかったかのように佐々木は他愛のないことを話しだした。
余計な詮索はしない、だけど本当に困った時は助けになってくれる。
大学から知り合った、空気の読める優しい友人に遼は心の中で感謝した。
遼は校内を歩いていた。
思い出すのは、さっき食堂で体調を心配してくれた佐々木を突っぱねてしまったこと。
レポートの締切ももちろんあった。だけど他に根本的な原因があることに遼自身は気付いていた。
その原因を知られたくなくて、あんな風に冷たく言葉を返してしまった。
この世界には男女の性以外にもう一つの性がある。
DomとSub。
そう呼ばれる第二の性が存在する。
Domは「庇護する者」、Subは「庇護される者」として分別され、domは subを支配しSubはdomに支配されたいという欲求を持っている。
まるで逃れられない運命のように生まれた時にそれは決められていて。
遼は subだった。
遼は自分のダイナミクスを受け入れられていない。
(だっておかしいだろ......)
庇護したいされたいなんて、そんなの体のいいとってつけた説明だ。
実際はそんな綺麗なものではないに決まっている。支配されるなんてそんなの考えただけで寒気がする。
Domに命令されて虐げられて Subは喜ぶなんて。
そんなのおかしな人間の話しだ。そんなのまともな関係じゃない。
自分は違う。自分はそんな人間じゃない。
遼は自分がsubなことを誰にも話していなかった。
誰かに従いたいなんて、そんな欲求今まで持ったことも感じたこともない。
現に今までNormalの人間と変わらずやってきのだ。
だからこれからも変わらない。変わらないんだ。
そう思って遼はギュッと拳を握りしめる。
だけど最近、夜眠れないことが多くなった。
どこかが渇くような感覚に襲われて、何かが足りないと感じて、その乾きと足りない何かを埋めて欲しくて堪らない衝動に駆られなかなか寝付けないのだ。
薬の量を多くして誤魔化してきたが、最近はそれもままならなくなってきていた。
「っ......」
ふら、とめまいを感じて遼は立ち止まる。
(まさか......これがSubの欲求不満......?)
そう思ってしまって遼は慌てて首を振る。
(そんな訳ない自分は違う......気のせいに決まってる!)
遼はそう思って自分の気持ちを奮い立たせた。
いつだって俺は自分自身の意思で生きていく
誰かの言葉(コマンド)なんか死んでも聞くものか
そう思っていた
彼に会うまでは
「遼~」
「おー」
食堂に着いた遼に、同じ学部の友人佐々木が手を上げる。こっちこっちと誘われるまま佐々木の前の席に遼は腰を下ろして手に持ったトレーを置いた。
遼はふうと長い息を吐くと、目の前にある昼食をぼんやりとした目で眺める。そんな遼の様子に佐々木が首を傾げた。
「どした?なんか疲れてるな」
言いながら遼の顔を佐々木がジッと見つめた。
「よく見ると顔色も良くないし、大丈夫か?」
「大丈夫だ」
佐々木の言葉に、間髪入れずに遼は冷たく言い放つ。
まるで突き放すような言い方に、佐々木が驚いた顔になった。その表情を見て、遼はあっと声を零した。
「いや......レポートの締切があって寝不足で......だから」
慌てて言い直す遼に、佐々木はフッと顔を緩めた。
「あんま根つめすぎんなよ」
佐々木は心配そうにしながらもそれだけ言うと、ほら飯食おうぜ!と明るく言って遼に昼ご飯を食べるように促す。それからさっきのことはなかったかのように佐々木は他愛のないことを話しだした。
余計な詮索はしない、だけど本当に困った時は助けになってくれる。
大学から知り合った、空気の読める優しい友人に遼は心の中で感謝した。
遼は校内を歩いていた。
思い出すのは、さっき食堂で体調を心配してくれた佐々木を突っぱねてしまったこと。
レポートの締切ももちろんあった。だけど他に根本的な原因があることに遼自身は気付いていた。
その原因を知られたくなくて、あんな風に冷たく言葉を返してしまった。
この世界には男女の性以外にもう一つの性がある。
DomとSub。
そう呼ばれる第二の性が存在する。
Domは「庇護する者」、Subは「庇護される者」として分別され、domは subを支配しSubはdomに支配されたいという欲求を持っている。
まるで逃れられない運命のように生まれた時にそれは決められていて。
遼は subだった。
遼は自分のダイナミクスを受け入れられていない。
(だっておかしいだろ......)
庇護したいされたいなんて、そんなの体のいいとってつけた説明だ。
実際はそんな綺麗なものではないに決まっている。支配されるなんてそんなの考えただけで寒気がする。
Domに命令されて虐げられて Subは喜ぶなんて。
そんなのおかしな人間の話しだ。そんなのまともな関係じゃない。
自分は違う。自分はそんな人間じゃない。
遼は自分がsubなことを誰にも話していなかった。
誰かに従いたいなんて、そんな欲求今まで持ったことも感じたこともない。
現に今までNormalの人間と変わらずやってきのだ。
だからこれからも変わらない。変わらないんだ。
そう思って遼はギュッと拳を握りしめる。
だけど最近、夜眠れないことが多くなった。
どこかが渇くような感覚に襲われて、何かが足りないと感じて、その乾きと足りない何かを埋めて欲しくて堪らない衝動に駆られなかなか寝付けないのだ。
薬の量を多くして誤魔化してきたが、最近はそれもままならなくなってきていた。
「っ......」
ふら、とめまいを感じて遼は立ち止まる。
(まさか......これがSubの欲求不満......?)
そう思ってしまって遼は慌てて首を振る。
(そんな訳ない自分は違う......気のせいに決まってる!)
遼はそう思って自分の気持ちを奮い立たせた。
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