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甘やかされる元悪役令息。

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チュン、チュン。

「ユウェル、好き」

ちゅっ

んちゅっ

ちゅぷっ

何故か朝からシェルにちゅっちゅされている。
額から頬、鼻の先とか、まんべんなく。

「シェル?朝から何して……?」
「朝の儀式。騎士団にいた頃も毎日やってた。……ユウェル人形に」
いや騎士団入った意味どこ行ったぁ――――――っ!?

そして俺人形って何!?恐いんだけど何それ!!
いつの間にそんなもの作ってたの!?そしてやってること何!?何してんのこの人はぁっ!

「だが、今日からはユウェル本体に朝の儀式ができる」
ぱあああぁぁぁっ!!

やっぱ、眩し――――――っ!無表情なのに顔が輝いてるぅ~~っ!!

「ユウェル、好き」

ちゅむっ

「むっ!?」

そして最後に唇に口付けを落としてくる。

「シェルったら。その、そんなに俺のこと、好きなのか?」
自惚れだろうか。でもついつい聞いてみてしまった。

「好き……好き……ユウェル」
「シェルっ」
まっすぐに見つめながら愛を囁いてくるシェル。顔がキレイすぎるのがさらに反則ぅっ!

「愛、してる……はっ」
愛してると呟いたシェルはさっと両手で顔を覆いふるふると首を振る。照れ屋さんか~~っ!何この人やっぱかわいいんだけど。
めちゃクール系美人なのに照れ方乙女かっ!!

「ユウェル」
「ん?」
照れは収まったのか?ゆっくりと掌を顔から離し、俺をもじもじしながら見つめてくるシェル。
やっぱ乙女?

「ユウェルは、好き?」
え、シェルのこと?嫌いでは、ないけど。

「まぁ、好きかな」
好きな範囲には入る。顔は好み。性格も……そこまで合わなさそうな感じじゃない。それに俺のこと、助けてくれたんだよな。好意は持っている、かも。

「ん……っ!」
ぱあああぁぁぁっ!!

ま、また眩しいー。あ、でも朝の目覚めには最適かも~。

「好き」
そしてむぎゅーっと抱き締められた。

「今日からこれも朝の儀式に加えよう」
いや、これもってどこからどこまでを加える気ぃっ!?そして毎朝するの!?朝から糖分過多~~っ!

「朝は、カレーライスだ」
「え、カレーライス?」
昨日の残りかな?いや、さすがに高位貴族でもある大公家だ。その大公邸で朝食が昨晩の残り物ってのも考えにくい。残ったとしても使用人たちの賄いになるはずだ。

「昼もカレー、夜もカレーだ」

「うん??」
ちょまっ、今恐ろしいメニュー構成が聞こえた気がするのだが。

「ずっとユウェルの好きなカレーだぞ!」
そう来たかぁあぁ~~っ!!!

「あの、好きだからずっとカレーってのもちょっと困るんだけど」
「えっ」
何その顔、何その反応。仏頂面が珍しく3ミリくらい動いてるよ。そこまで衝撃だったのぉ!?あとこの邸の食事が全部カレーになったら使用人たちの賄いもそれになってみんなでカレーパラダイス・ザ・エターナル(※文法適当by俺流)だよ!!

「では他に好きなものは」
「オムライスかな?」

「では、オムライスフォーエバーでいこう」
「ちゃうちゃうちゃーうっ!」
今まで何聞いてたのっ!いや、頭はいいひとだと思うのだが何故そうなる。

「その、なぁ、シェルの好きなものはなんだ?」
「ユウェル!」
何の迷いもなく告げたなこのストーカー。

「いや、好きな食べ物だよ」
「ユウェルが口を付けた紅茶スプーン!」
何の曇りもないアイスブルーの瞳で告げたよこのストーカー上級者。
因みに昨日は紅茶を飲んでない。
てことはどこで?まさか王城で飲んだ紅茶のスプーンを秘密裏に入手し味見をおおぉぉぉっ!?いや、どんだけやねんこの人何してんの王弟殿下ああぁっ!

「いや、料理とか」
「ユウェルの生クリーム乗せ」
いやいやいや、何それ知らない!俺生クリーム乗せになったことないよ!?どゆことそれ!?

「その、それはどういうものなんだ?」

「毎日夢の中でペロペロしてる」
毎日どんな夢見てんねんこのストーカー変質者ああぁぁっ!!!

「あ、今日は実際にやるか……ユウェルの生クリーム乗せ」
「いや、やらねーよ。普通に生クリームケーキにしろよ。あとこれから大公邸の食事メニューについては俺が仕切るから。大公夫人として俺が仕切るから。いいよね?」
毎日カレー祭り、毎日オムライス祭り、俺の生クリーム乗せフェスティバルは勘弁して欲しい。

「大公、夫人」
「だろ?俺のこと、嫁にしたんだから」

「ユウェルが私の嫁ユウェルが私の嫁ユウェルが私の嫁」
復唱するほど興奮してんのかいやしてるわ。無表情なのにふはふはしてるよこの人――――――っ!

「――――――てことで、いいよな?」
「うん、ユウェルは私の嫁」
キラッ。

何これ。俺すごいパワーワード見付けちゃった。俺はシェルの嫁。

「朝はもう準備してるだろうからカレーでいいや。ほら、朝食行こう」
「ん、ユウェルは私の嫁っ」
そんなに嬉しかったのか、シェルのセリフが俺がシェルの嫁だけになっとる~~っ!!

しかしまぁ、家令とのやり取りは普通にしていたので、惚気てなければ仕事のできる王弟殿下ーー大公さまなんだろうなぁ。

ついでに本日の昼ご飯はーーオムライスにしてもらった。


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