上 下
6 / 69

シェルカラーと俺カラー。

しおりを挟む

「ルベライト公爵が?」
「うむ、今日早速会いにくると連絡があった」
ルベライト公爵が……伯父が会いにくる。いや、俺はルベライト公爵の養子になったから、養父か。

今までゆっくりと話す機会なんてなかったからな。むしろ俺はルベライト公爵に嫌われていると思っていたのだ。
――――――でもそれは全てプレナイト公爵……前プレナイト公爵の嘘だった。プレナイト公爵家に王子を降嫁させるための、嘘。

「あ、でも礼服とかどうしよう?」
今朝は一応シェルから服を借りている。シェルのが今朝普通に用意してきた。急遽既製品を用意してくれたんだろうか。サイズもぴったりだし、ありがたい。簡単なシャツにすらりとしたズボン。スッキリとしていて飾らないスタイル。むぁちゃっかりとシャツを淡い水色、ズボンを黒にしているのだが。

どんだけ俺のこと好きなん?そして自分色に染めたいん?ま、別にいんだけど。

プレナイト公爵家にもあるだろうが、普段着は着古したもの。まぁ、王城へ行く用や公務で必要なものは王子の婚約者としての予算から購入できたから困らなかった。

と言うのもプレナイト公爵家ではプレナイト公爵とその愉快な偽母子のせいで浪費がかさんで余裕がなかったからなぁ。俺の私用の服や備品を買う余裕もなかった。

こちらから浪費を抑えるように言っても俺が虐めるだの言ってウーヴァとヴィーノが泣き叫び、プレナイト公爵が大激怒。話にならないからもう諦めた。

将来アップフェルが婿に来れば公爵位も継承される。その際隠居でもしてもらえばと思っていたがヴィーノと浮気してたんだからその願いは潰える。

ま、俺はルベライト公爵の養子となり、プレナイト公爵家とは縁が切れたからいいんだけどな。今ではシェルの伴侶……大公夫人だ。

しかし、いつの間にか養父になっていたルベライト公爵と会うのだ。養父とは言え礼儀は必要だろう。今の服は礼服にしてはカジュアルな気がする。前世の感覚からすればこれでも充分高級なんだけど。

「それならば問題ない」
シェルがパンパンと手を叩けば使用人たちがさささっと集まってきて、礼服がずらーっと掛けられた移動式ハンガーラックを並べた。

ちょいちょいちょーいっ!!

いや何これ。この量。軽く百セット超えてない!?

「こんなにいつの間に?」

「シェルのサイズに合わせたオーダーメードだ。サイズが変わる毎に礼服、普段着、セクシーナイトランジェリーもろもろ仕立てさせた」
いや何で!?そして何ちゃっかりセクシーナイトランジェリー入れてんのっ!

「そもそも俺のサイズなんてどこで」

「ユウェルのストーカー代表として常にユウェルのサイズを把握するのは当然だ」
何でしれっと俺のストーカー代表なんてのに就任してんの王弟殿下なのに。大公閣下なのに何やってんのこの人。
そして常に俺のサイズを把握ってどんだけぇっ!?そして当たり前のようにオーダーメードを用意してるし!
しかも礼服全部にシェルカラーの黒やアイスブルーに近い淡い水色などが入っている。さらに使用人たちがささっとシェルカラーのあしらわれたアクセサリーも見せてくる。

「……ってことはこの服も!?」
今着ている服もか!?てっきり御用達ブティックから既製品をもらってきたものだと……っ!

「もちろんだ!」
シェルはめちゃくちゃキリッとしながらそう答えた。こやつ、ストーカーであることを誇りにでも思ってるようないい目をしやがる……!!

「今まではユウェル人形に着せ替えしていたが、本物のユウェルが私の仕立てさせたオーダーメードを着てくれるのだな……」
ぽっ。

何かロマンティックに頬を赤らめて微笑んでいるけども、やっぱり俺人形って何っ!着せ替えごっこなんてやってたのこの人っ!

「因みに我が大公家にはユウェルストーカー専任隊も存在する!安心していい!」
いやできるかいっ!何で大公家に俺ストーカー専任隊があんだよ。

「むろんその中に私のユウェルに横恋慕するものなどいない。安心していい」
いやその、ストーカー専任隊があることがまず安心できないと思うんだが。シェルが代表ならギリ許容できるかなぁ。

「ユウェル、どれを着たい?私としてはこれがいいと思うんだが」
そう言って、シェルが淡い水色のジャケットと黒のズボンを勧めてくる。さらにアイスブルーの宝石があしらわれたブローチや耳飾り。

どんだけ俺を自分色で飾り立てたいんだ?まぁ、いいけど。俺の服やアクセサリーをウッキウキで選ぶシェルはなんだか懐いてきた小動物みたいでかわいいし。

「分かった。それを着るかな」
「うむ……!」
めっちゃ嬉しそう。なでなでしたい。なでなでしたくなってくらぁ。

因みにシェルは俺カラーのダークブラウンのスーツにピンクがかった赤い宝石があしらわれたブローチを身に付けていた。

その、俺大好き感が伝わってきて大変嬉しいのだが……。
それ、ルベライト公爵の色でもあるぞ?気付いてる?むしろ俺カラーに身を包んだ幸せオーラ満開で気付いてない? 

ははは……まさか。

そしてルベライト公爵との面会の時間を迎え、ルベライト公爵の姿を見てシェルがピクンと反応し、固まった。

まぁ、そうだろう。シェルはルベライト公爵カラーだし、またルベライト公爵もダークブラウンのスーツにルベライト公爵家の色であるピンクがかった赤い宝石があしらわれたブローチを身に付けていた。

まさかのルベライト公爵までルベライト公爵家カラーかよ!しかもダークブラウンの髪にピンクがかった赤い瞳である。それは自分カラーというか、その、まさか俺カラーじゃないよね?
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

巣ごもりオメガは後宮にひそむ

BL / 完結 24h.ポイント:6,669pt お気に入り:1,589

【完結】出戻り令嬢の奮闘と一途な再婚

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,052pt お気に入り:147

子供を産めない妻はいらないようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,703pt お気に入り:276

私のかわいい婚約者【完結】

nao
恋愛 / 連載中 24h.ポイント:852pt お気に入り:1,344

ひとめぼれなので、胃袋から掴みます

BL / 連載中 24h.ポイント:177pt お気に入り:3,639

この結婚、ケリつけさせて頂きます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,149pt お気に入り:2,909

異世界でおまけの兄さん自立を目指す

BL / 連載中 24h.ポイント:12,091pt お気に入り:12,476

おじさんはΩである

BL / 連載中 24h.ポイント:4,396pt お気に入り:686

処理中です...