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ヘレナの戦い①
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アルシノエさんはアルシノエさんの召喚獣、グリフォンを召喚した。グリフォンが扱うのは風属性と雷属性の魔法だ。アニキウスは土と雷が得意だけど、どう戦うか…。
「雷火」
アニキウスはアルシノエさんに向けて稲妻を放った。アルシノエさんは素早くグリフォンに飛び乗って回避する。…そう、グリフォンに乗って飛び回れるのが厄介よね。まずは地面に引きずり降ろさないと。
「かまいたち!」
「迅雷」
「一陣の風、雷火!」
アニキウスは迅雷で上から攻撃したり土魔法で上手く階段を作りアニキウスも上空へ向かったりしたが、自由自在に飛び回るグリフォンを捕まえるのは至難の業だった。蔓の鎖でグリフォンを絡め取り、アニキウスもグリフォンの上に飛び乗ってアルシノエさんを叩き落とした時は行けるかと会場も湧いたが、グリフォンはすぐに風で蔦を吹き飛ばしアルシノエさんをキャッチした。ワッと歓声が上がる。
『アルシノエ選手、危機一髪でグリフォンの背に戻りました!!』
『アニキウス選手、惜しかったですね~!ここからどうなるか…!』
「ロカリウビア、蔓の鎖」
アニキウスは蔓を上手くクッション代わりにして着地しながら小岩を飛ばす。暫く手に汗握る攻防が続いていたが、最後はグリフォンの放った暴風でアニキウスはリング外へと飛ばされてしまい、勝敗がついた。歓声が上がる。
『アニキウス選手、リング外へと吹き飛んだー!!』
『という事で、勝者、アルシノエ・アダリス!』
『初戦からとても熱い戦いでしたね!』
『はい、最後までどちらが勝つか分かりませんでしたね!両者とも、素晴らしい戦いをありがとうございました!』
救護班がすぐに出て来て選手に治癒を施す。因みに今日の救護班の筆頭はマリウスだ。アルシノエさんとアニキウスは晴々とした表情で互いに握手をする。
『さて、続きましてはあの魔王を倒した最強パーティー、終わりなき冒険をのスナイパー!魔法学院4年、ヘレナ・メルクリウス選手!』
『対しますはまたもや風属性!皆様お荷物やお召し物を飛ばされないようご注意ください、王立学院魔法科6年、ヨハンネス・コルブス選手!』
コールの後選手2人は入場する。ヘレナの相手は昨年の魔法個人部門でゼノン、アルシノエさんに続いて第3位になっていた人だ。かなり手強い相手だが…。
『ヘレナ選手はエミリア嬢のパーティーメンバーですね。如何でしょう、ヨハンネス選手も手強い選手ですが。』
『そうですねぇ、ヘレナの真価はやはり手札の多さだと思うので。もしかしたら私も知らない新しい魔道具を今日に備えて用意して来ているかもしれませんから予想は難しいですね。』
『おぉ、なるほど!それは楽しみですね!』
「ちょっとエミリア!ハードル上げないでよ!!」
『あぁごめんごめん。ヘレナが優勝したらさつまいもの天ぷら作ってあげるから許して?』
私が言うとヘレナは準備運動をしながら「言ったね⁉︎」とニッと笑った。
『なっ、それはまさか春の暁の期間限定メニューでは…⁉︎』
『あら、シリウス卿もご存知でしたか?そうなんですよ、ヘレナの大好物で。』
『ご存知も何も、昨年発売されてから王都中で話題ですよ!姉が一度買ってきてくれて家で一緒に食べましたがあれは最高です。良いなぁ。あの衣何を使ってるんですか?』
『わぁ、ありがとうございます。あれもニゲルの考案なんですよ。衣に関しては内緒です。…さて、ではリングの準備も整ったようですね。では両者構え。』
『──始め!』
号令と同時に動き出したのはヘレナだった。ヘレナはいきなり煙玉を使って視界を奪う。
「一陣の風」
コルブス卿は風で視界を晴らそうとしたが、何故か煙は晴れない。
『!これは…!』
『ヘレナ、結界を張ったのね…!』
ヘレナは周囲に結界を張ったようで、そのおかげで風で煙が攪拌されてまるでスノードームのようになっていた。
『これでは我々にも中の様子は分かりませんね…。』
『風の動きでなんとか予測するしか…。』
『はは、良い訓練になりそうですね!ですが、これはヘレナ選手も見えないのは同じでは?』
『いや…、ヘレナには見えていると思いますよ。彼女には魔力を可視化する特殊な眼鏡があるので。』
私が言うとシリウス君は「そんな便利なものが⁉︎」と驚いていた。
『あぁ、うちのギルドのシルウェステルが作った試作品第7号です。』
『あぁ、あの有名な魔道具師の!』
『来月発売で明日から予約受付開始なのでご興味ある方は是非。…あ、もしかしてヘレナこれ宣伝のためにやってる?』
結界の中がどうなっているのか分からないのでそんな話をしていると、パリン!と結界が破れた。煙が晴れて選手2人の様子が見えるようになると、やはりヘレナは眼鏡を装着していた。
『ここでヨハンネス選手、結界を破りました!』
『視界も晴れましたね。』
「塵旋風」
「っ、スライムウォール!」
『ウワー、ヨハンネス選手お得意の風の上級魔法です!ものすごい風ですね、髪の毛全部持っていかれそうです!本戦まではこれでリング外へ飛ばされた選手も少なくありませんでしたがヘレナ選手は自身を覆うようにスライムウォールを展開しなんとか押し止まっています!』
ヘレナは飛ばされないようにするので精一杯、と言った様子だった。竜巻の奥から風の刃も飛んで来る。
『ヨハンネス選手、かまいたちでヘレナ選手を弾き飛ばそうとしています!ヘレナ選手はなんとかスライムウォールで防御!』
『スライムウォールを二重にかけてなんとか凌いでいるようですがそろそろ厳しいかもしれませんね。』
爆風で髪の毛がバシバシ当たって痛いし見にくいので、2つに結っている髪をそのままそれぞれお団子にしてまとめ前髪もピンでとめつつ試合を見守る。爆風が止むとコルブス卿はヘレナに向かって矢尻のような小岩の雨を降らせ、ヘレナはそれを身体強化を使って避ける。ヘレナは魔力銃のトリガーを引く。
「っ、一陣の風」
再び強い風が吹き荒れる。この風をなんとかしないと…。
『ヨハンネス選手、暴風で弾を弾き返しました!ヘレナ選手も出力を強化して対応しているようです!』
『ですがやはり風で視界が良くないのと軌道がズレるためかヨハンネス選手には中々当たりませんね。この風をどう制するか…!』
ヘレナは魔力銃に新たな弾を装填し、コルブス卿に放った。しかし弾は当たらず、地面にめり込む。
『おおっと、ヘレナ選手の撃った弾が地面にめり込み燃えています!火魔法の弾だったようですね!』
『…おや?ヘレナ選手、ポケットから何か取り出していますね。…あ、まさかヘレナ、』
ドカン!ヘレナが何かを火に投げ込むと大きな爆発が起こった。シリウス君は何事だ⁉︎と驚いている。
『恐らく粉塵爆発を起こしたのでしょう。模擬戦に持ち込める物であれだけの爆発を起こせるのはそれくらいでしょうから。』
『な、なるほど…!2人とも大丈夫でしょうか、…あ、大丈夫そうですね、ヨハンネス選手はスライムウォールで防いだようです!ヘレナ選手はヨハンネス選手にすかさず魔力銃で攻撃!』
爆発でその周囲の気温が上がったため、風向きがそちらに流れるようになった。風向きが一瞬でも一定になったことでヘレナもちゃんと狙いを定めやすくなり、弾がコルブス卿の肩を掠め電撃を喰らわせる。歓声が上がった。
『ヘレナ選手の攻撃が当たったー!!ですがヨハンネス選手もすぐにかまいたちで反撃です!』
「サンドウォール、ロカリウビア!」
「アクアドロップ」
「蔓の鎖」
激しい攻防が続く。しかし最後はコルブス卿の再びの塵旋風とかまいたちでヘレナはリング外へと吹き飛ばされた。ワッと歓声が沸く。
『試合終了ー!勝者、ヨハンネス・コルブス!!こちらも手に汗握る素晴らしい戦いでしたね!』
『はい、熱気も風圧もすごかったですね~!アルシノエ選手とヨハンネス選手の対戦が今からとても心配になったので今少し結界いじりますね。』
『それはありがたい!ヘレナ選手も豊かな発想で面白い戦いを見せてくれました!それにやはりあの終わりなき冒険をの一員、高い狙撃能力をお持ちでしたね!』
『両者とも、お疲れ様でした!』
ヘレナとコルブス卿が握手をすると会場から拍手が上がった。ヘレナは負けてしまったけど、相手は優勝候補の1人だし私達が普段相手にしているのは人間でなく魔物がほとんどだ。いつもとは勝手も違う。6年相手にここまでよく戦ったのではないだろうか。きっと良い経験になっただろう。
『さて!それでは続いて参りましょう、お次は───』
「雷火」
アニキウスはアルシノエさんに向けて稲妻を放った。アルシノエさんは素早くグリフォンに飛び乗って回避する。…そう、グリフォンに乗って飛び回れるのが厄介よね。まずは地面に引きずり降ろさないと。
「かまいたち!」
「迅雷」
「一陣の風、雷火!」
アニキウスは迅雷で上から攻撃したり土魔法で上手く階段を作りアニキウスも上空へ向かったりしたが、自由自在に飛び回るグリフォンを捕まえるのは至難の業だった。蔓の鎖でグリフォンを絡め取り、アニキウスもグリフォンの上に飛び乗ってアルシノエさんを叩き落とした時は行けるかと会場も湧いたが、グリフォンはすぐに風で蔦を吹き飛ばしアルシノエさんをキャッチした。ワッと歓声が上がる。
『アルシノエ選手、危機一髪でグリフォンの背に戻りました!!』
『アニキウス選手、惜しかったですね~!ここからどうなるか…!』
「ロカリウビア、蔓の鎖」
アニキウスは蔓を上手くクッション代わりにして着地しながら小岩を飛ばす。暫く手に汗握る攻防が続いていたが、最後はグリフォンの放った暴風でアニキウスはリング外へと飛ばされてしまい、勝敗がついた。歓声が上がる。
『アニキウス選手、リング外へと吹き飛んだー!!』
『という事で、勝者、アルシノエ・アダリス!』
『初戦からとても熱い戦いでしたね!』
『はい、最後までどちらが勝つか分かりませんでしたね!両者とも、素晴らしい戦いをありがとうございました!』
救護班がすぐに出て来て選手に治癒を施す。因みに今日の救護班の筆頭はマリウスだ。アルシノエさんとアニキウスは晴々とした表情で互いに握手をする。
『さて、続きましてはあの魔王を倒した最強パーティー、終わりなき冒険をのスナイパー!魔法学院4年、ヘレナ・メルクリウス選手!』
『対しますはまたもや風属性!皆様お荷物やお召し物を飛ばされないようご注意ください、王立学院魔法科6年、ヨハンネス・コルブス選手!』
コールの後選手2人は入場する。ヘレナの相手は昨年の魔法個人部門でゼノン、アルシノエさんに続いて第3位になっていた人だ。かなり手強い相手だが…。
『ヘレナ選手はエミリア嬢のパーティーメンバーですね。如何でしょう、ヨハンネス選手も手強い選手ですが。』
『そうですねぇ、ヘレナの真価はやはり手札の多さだと思うので。もしかしたら私も知らない新しい魔道具を今日に備えて用意して来ているかもしれませんから予想は難しいですね。』
『おぉ、なるほど!それは楽しみですね!』
「ちょっとエミリア!ハードル上げないでよ!!」
『あぁごめんごめん。ヘレナが優勝したらさつまいもの天ぷら作ってあげるから許して?』
私が言うとヘレナは準備運動をしながら「言ったね⁉︎」とニッと笑った。
『なっ、それはまさか春の暁の期間限定メニューでは…⁉︎』
『あら、シリウス卿もご存知でしたか?そうなんですよ、ヘレナの大好物で。』
『ご存知も何も、昨年発売されてから王都中で話題ですよ!姉が一度買ってきてくれて家で一緒に食べましたがあれは最高です。良いなぁ。あの衣何を使ってるんですか?』
『わぁ、ありがとうございます。あれもニゲルの考案なんですよ。衣に関しては内緒です。…さて、ではリングの準備も整ったようですね。では両者構え。』
『──始め!』
号令と同時に動き出したのはヘレナだった。ヘレナはいきなり煙玉を使って視界を奪う。
「一陣の風」
コルブス卿は風で視界を晴らそうとしたが、何故か煙は晴れない。
『!これは…!』
『ヘレナ、結界を張ったのね…!』
ヘレナは周囲に結界を張ったようで、そのおかげで風で煙が攪拌されてまるでスノードームのようになっていた。
『これでは我々にも中の様子は分かりませんね…。』
『風の動きでなんとか予測するしか…。』
『はは、良い訓練になりそうですね!ですが、これはヘレナ選手も見えないのは同じでは?』
『いや…、ヘレナには見えていると思いますよ。彼女には魔力を可視化する特殊な眼鏡があるので。』
私が言うとシリウス君は「そんな便利なものが⁉︎」と驚いていた。
『あぁ、うちのギルドのシルウェステルが作った試作品第7号です。』
『あぁ、あの有名な魔道具師の!』
『来月発売で明日から予約受付開始なのでご興味ある方は是非。…あ、もしかしてヘレナこれ宣伝のためにやってる?』
結界の中がどうなっているのか分からないのでそんな話をしていると、パリン!と結界が破れた。煙が晴れて選手2人の様子が見えるようになると、やはりヘレナは眼鏡を装着していた。
『ここでヨハンネス選手、結界を破りました!』
『視界も晴れましたね。』
「塵旋風」
「っ、スライムウォール!」
『ウワー、ヨハンネス選手お得意の風の上級魔法です!ものすごい風ですね、髪の毛全部持っていかれそうです!本戦まではこれでリング外へ飛ばされた選手も少なくありませんでしたがヘレナ選手は自身を覆うようにスライムウォールを展開しなんとか押し止まっています!』
ヘレナは飛ばされないようにするので精一杯、と言った様子だった。竜巻の奥から風の刃も飛んで来る。
『ヨハンネス選手、かまいたちでヘレナ選手を弾き飛ばそうとしています!ヘレナ選手はなんとかスライムウォールで防御!』
『スライムウォールを二重にかけてなんとか凌いでいるようですがそろそろ厳しいかもしれませんね。』
爆風で髪の毛がバシバシ当たって痛いし見にくいので、2つに結っている髪をそのままそれぞれお団子にしてまとめ前髪もピンでとめつつ試合を見守る。爆風が止むとコルブス卿はヘレナに向かって矢尻のような小岩の雨を降らせ、ヘレナはそれを身体強化を使って避ける。ヘレナは魔力銃のトリガーを引く。
「っ、一陣の風」
再び強い風が吹き荒れる。この風をなんとかしないと…。
『ヨハンネス選手、暴風で弾を弾き返しました!ヘレナ選手も出力を強化して対応しているようです!』
『ですがやはり風で視界が良くないのと軌道がズレるためかヨハンネス選手には中々当たりませんね。この風をどう制するか…!』
ヘレナは魔力銃に新たな弾を装填し、コルブス卿に放った。しかし弾は当たらず、地面にめり込む。
『おおっと、ヘレナ選手の撃った弾が地面にめり込み燃えています!火魔法の弾だったようですね!』
『…おや?ヘレナ選手、ポケットから何か取り出していますね。…あ、まさかヘレナ、』
ドカン!ヘレナが何かを火に投げ込むと大きな爆発が起こった。シリウス君は何事だ⁉︎と驚いている。
『恐らく粉塵爆発を起こしたのでしょう。模擬戦に持ち込める物であれだけの爆発を起こせるのはそれくらいでしょうから。』
『な、なるほど…!2人とも大丈夫でしょうか、…あ、大丈夫そうですね、ヨハンネス選手はスライムウォールで防いだようです!ヘレナ選手はヨハンネス選手にすかさず魔力銃で攻撃!』
爆発でその周囲の気温が上がったため、風向きがそちらに流れるようになった。風向きが一瞬でも一定になったことでヘレナもちゃんと狙いを定めやすくなり、弾がコルブス卿の肩を掠め電撃を喰らわせる。歓声が上がった。
『ヘレナ選手の攻撃が当たったー!!ですがヨハンネス選手もすぐにかまいたちで反撃です!』
「サンドウォール、ロカリウビア!」
「アクアドロップ」
「蔓の鎖」
激しい攻防が続く。しかし最後はコルブス卿の再びの塵旋風とかまいたちでヘレナはリング外へと吹き飛ばされた。ワッと歓声が沸く。
『試合終了ー!勝者、ヨハンネス・コルブス!!こちらも手に汗握る素晴らしい戦いでしたね!』
『はい、熱気も風圧もすごかったですね~!アルシノエ選手とヨハンネス選手の対戦が今からとても心配になったので今少し結界いじりますね。』
『それはありがたい!ヘレナ選手も豊かな発想で面白い戦いを見せてくれました!それにやはりあの終わりなき冒険をの一員、高い狙撃能力をお持ちでしたね!』
『両者とも、お疲れ様でした!』
ヘレナとコルブス卿が握手をすると会場から拍手が上がった。ヘレナは負けてしまったけど、相手は優勝候補の1人だし私達が普段相手にしているのは人間でなく魔物がほとんどだ。いつもとは勝手も違う。6年相手にここまでよく戦ったのではないだろうか。きっと良い経験になっただろう。
『さて!それでは続いて参りましょう、お次は───』
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