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01.
01.取引先のエリート営業マン
しおりを挟む「弥生地所の檜垣と申します、
よろしくお願いいたします」
染めていない柔らかい黒髪、綺麗な肌、
オシャレなスーツ、スマートな立ち振る舞い、
程よく鍛えられた細身の身体、骨ばった指、
優しくて甘い声。
初めて会ったときから、惹かれていた。
私は高瀬緋莉。27歳。
不動産会社でマンションの企画営業をしている。
仕事が忙しくて、仕事で関わる男に
疑似恋愛するので精一杯なアラサー。
モテないわけではなかったが、好みの男には
とことん好かれない人生だったので、
恋愛経験もさほどない。
一言で言うと男運が無さすぎる。
そんな私が今一番ハマっている男は、
同業他社であり、業界最大手に勤める
3つ上の企画営業、檜垣瑤太。
私の周囲の人間は、完璧すぎて怖いだの、
サイコパスっぽいだの言ってくるが、
別に構わない。むしろそこがいいのだ。
「高瀬さんは、うちの麻布の新規物件、どう思う?」
同業の私は、たまにこうして
彼と情報交換するのだが、頭が良い檜垣さんに
何のメリットがあるのか不安になる。
「まず、立地が抜群ですよね
あの辺のエリアは御社にはかなわないですよ。
エントランスの石の使い方も高額物件らしく
落ち着きのある佇まいって感じでした」
あの土地は、彼が買いつけた土地だ。
どこから情報を取ってきたのか分からないが、
仕事もできて、非の打ち所がないとは
まさにこのことだ。
「土地買いの人間も、買った後のことまで
気にするようにっていう上からの方針で、
今回企画まで携わりましたけど、
そう言ってもらえて良かったです」
あんなに良いものを作って何故、ある程度の
適正価格で提供できているのか信じられない。
何も否定するポイントが見当たらない。
「同業の方に褒めていただけると
嬉しいですねえ、やっぱり」
30の大人の色気もあり、ついつい見惚れてしまう。
「高瀬さんがくれた情報のお陰でねえ、
ここまでうまくいったんですよ、
だから、もしよかったら」
徐に、私の手を握る。
「へっ?!」
「今夜空いてたら、お誘いしたいんですが」
「えっ、いえ、私は何もっ」
こんなに色気たっぷりの檜垣さんにも拘らず、
全く下心を感じない。
これは純粋な食事に違いない。勘違いするな。
煩悩を振り払って営業スマイルを作るが
鼓動は早鳴っている。
「……ええ、ぜひ」
こんなのに、アラサーの営業マンが
騙されてたまるか。
直帰だったこともあり、檜垣さんを
待たせるわけにはいかないという気持ちで、
待ち合わせ場所にだいぶ早く着いてしまった。
“もうすぐ店に着きますが、
高瀬さんはお仕事終わりましたか?”
お互い、同じ最寄駅のオフィスに
勤務しているため、少々遅刻しても
なんら問題はないのだが。
“直帰だったので、もう着いちゃいました!”
久しぶりの男性との食事に、正直
信じられないくらい緊張している。
仕事だと言い聞かせても、好みの男性との食事なんて
心躍らずにはいられない。
「あっ、高瀬さん、ごめんね待たせちゃって」
後ろから声を掛けられて、振り抜くと
オフィスで会った時よりきちんと分けられた前髪が
少し崩れていてますます色っぽい。
ああ、どうしてこんなに格好良いんだろう。
「お疲れ様です、全然待ってないです!」
私があまり緊張していておかしかったのか
口元に手を当てて、少し笑う。
「席とってあるから、どうぞ」
お店のドアを開けて、私に先に入るよう促す。
スマート、完璧すぎる。
付き合っている人はいないと以前言っていた。
絶対何人も居るんだよなあ。と
勝手に決めつけ、中に入る。
食事はとても美味しくて、ワインもボトルを
開けてしまい、ついつい飲みすぎてしまった。
「檜垣さんもう一軒~行きましょ~」
朧げな記憶の中、外で檜垣さんに
肩を支えられながらそう言った記憶が
うっすら残っている。
「無防備だなあ、高瀬さんは……
どうして何の躊躇いもなく
僕に着いてきちゃうのかなあ……」
頭がふわふわする。
だけど、意識はちゃんとある。
「まあ、僕には都合がいいけどね」
檜垣さんの口角がニヤリと大きく吊り上がり、
不気味に笑う。
「檜垣さ……」
「あー、あーあー、シー……大人しくして」
声のトーンは一切普段と変わらないのが、
より一層恐ろしい。
「可愛いね、高瀬さん……
高瀬さんのこと、好きだよ…」
低く重く、檜垣さんの声が身体の中まで響く。
舌が絡み合って、頭がクラクラする。
「高瀬さんが普段こんなエッチな下着つけてる
なんて思わなかったなあ……もしかして、
こうなるの、期待してたの?」
下に檜垣さんの大きい指が入ってくる。
気持ちいいところを擦られて、
視界がチカチカする。
何が起きてるのか、どうしてここにいるのか
分からない。
「檜垣さん…待って、っ」
「ん?何、聞こえない」
私の口をキスで塞ぐ。
指先の動きが速くなり、
どんどん快感が高まってくる。
「あ~高瀬さんの首絞めたいな~
ねえ……いいよね?」
私の返事も待たずに、檜垣さんの大きな手が
私の首を絞める。
なに、これ
やだやだやだ
苦しいのに、気持ち良くて、達してしまった。
「高瀬さんイッちゃったの?素質あるね~
僕がもっと気持ち良くしてあげるからね」
檜垣さんは嬉しそうに笑って、私の敏感な所に
自分のものをあてがう。
「緋莉、僕のこと…名前で呼んで」
浅く、私のいい所を何度も擦られて、
耳元で檜垣さんの声が重く響いて頭がおかしくなる。
「あ、っ…瑤太…さんっ、ん…ぁッ!」
首筋をいやらしく舌が這う。
「僕の名前…ちゃんと覚えてるんだ、嬉しいなあ…」
そう言いながら、奥を思いっきり突かれる。
言葉にならない声をあげて、
私は何度も絶頂を迎えた。
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