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人界編
決闘の果てに
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「ならば、我と一戦交えてみろ。それで貴様の覚悟を見せてもらおう。」
ギルファムの突然の申し込みに、驚きながらも、覚悟を決めて受けたユリアス。目の前に立ちはだかるのは、現魔族王にして、魔族最強の男。ヴィーラに負けるまで、無敗を誇った歴戦の勇士に、自分が挑む。まっすぐにギルファムを見据えるユリアスに、エクセラが声をかける。その目は儚げだ。
「ユリアス、絶対に、生きて帰ってきてね…貴方とは、もっと旅がしたいの。この世界を巡りながら、貴方という人物をもっと知りたい。貴方は、温かいもの。」
彼女はそれだけを託し、あとは何も言わず、黙ってユリアスを見届けようとしている。本当は止めたいはずだ。しかし、自分のためにそれを必死に我慢している。彼はそんな彼女の健気な気持ちを胸に、剣をとった。
「剣での決闘か。いいだろう。貴様の全霊を込め、我にかかってくるがいい!」
ギルファムもまた、厚いマントを脱ぎ、軍服に似た薄着になる。その背中には黒く光る剣を背負っている。彼もそれを鞘から抜いた。そして、城門を抜け、ユリアスの前に立つ。
互いの誇りと意地が対峙する前には、少々大人しすぎるほど、時が経ってゆく。英雄たちはただ、剣の丘にて其の刻を静かに迎えた。
決闘の火蓋を切ったのは、ユリアスの剣戟だった。消えた、ともとれるような速さでギルファムに斬りかかる。
しかし、ギルファムも一介の剣士ではない。彼はユリアスの高速の剣戟を、目で追った上で受け、斬り返したのだ。決して直感などではない。彼には、ユリアスが見えている。
「ほう、なかなかな速さだな。だが、」
「…っ!」
ユリアスが身を翻して彼の斬撃を避けたあと、ギルファムは恐ろしい速さで連撃を浴びせてきた。ユリアスにはそれを裁くので手一杯だ。
「速さ、とはこういうことだ!」
連撃でユリアスを仰け反らせ、空いた腹に拳を入れる。体に重い一撃を受け、ユリアスは吹き飛ばされた。
これが、統べるものの強さ。絶対的な力で持って民を統制するための、あまりに暴力的で圧倒的な力。これまで、ユリアスがここまで苦戦したことはなかった。彼は今、圧倒的な覇気に押しつぶされている。
「どうした、もう終わりか?我はまだ全力じゃあないぞ。貴様の覚悟はその程度か?」
まだだ、まだ倒れるわけにはいかない。ユリアスはゆっくりと立ち上がり、剣を構える。ルーン魔術によりダメージは少しは回復したが、それでもまだ残るほど、彼の拳は重かった。あれでまだ本気を出していないとは…ユリアスも本気でかからなくては勝てる見込みはない。もとよりそのつもりではあるが、改めてそう感じた。
今度はギルファムが攻撃してくる。剣速。力。全てが今のユリアスを凌駕している。当然のごとく防戦一方に追い込まれてしまう。
「くっ…!はあっ!」
「遅い。」
全力の斬撃も全て受け止められてしまい、逆に相手の攻撃を許してしまう。ついに彼はギルファムの斬撃を受けてしまった。
「ぐあっ!」
斬撃を受けたユリアスは、ルーン魔術にて回復を試みるも、その隙を与えないギルファムの攻撃が容赦なく降り注ぐ。
「くっ!ここで…死ぬわけには!」
彼も全力で攻撃する。互いの剣は残像のみが写り、爆風と轟音が周囲を襲う。王城の丘はざわめき、天は割れていく。
「ユリアス…」
丘で佇み、二人の決闘を見守るエクセラは、防戦に立たされるユリアスを憂いていた。自分も力を貸したい。その気持ちは山々だ。今にも足が動き出しそうだ。しかし、それをすればユリアスの戦いが意味をなさなくなる。そんなことが起きては、彼の決意も覚悟も無駄になる。それはあってはならないのだ。
「死なないで…」
彼女に許されたのは、悲痛な祈りのみだ。
その彼女の姿を見て、ユリアスは気づく。そうだ、俺は死んではならない。生きて彼女と旅を続けなくてはならない。その覚悟が彼を突き動かす。防戦一方だった彼がついに一撃を振るった。
「何っ!」ギルファムは驚嘆する。
「俺は…死ねない!」
ユリアスの目は決意の色を帯びていた。彼の闘気、生を渇望する力が王城の丘を揺るがした。
決闘は苛烈を極めた。互いの剣技は加速し、一撃一撃が稲妻のような衝撃と轟音を生み出した。ユリアスも体が限界を超えてようやくギルファムについて来られるようになった。防戦主体である状況に変わりはないが、彼も攻勢に出ることができるようになってきている。
そんな彼の成長に、ギルファムも応える。
「ほう!やるではないか、人間!ならばもっと我を楽しませてみろ!」
ギルファムは魔力を解放した黒刀を、ユリアスに振るう。ユリアスもまた、ルーン魔術と組み合わせた先頭を繰り広げる。
「俺は!負けるわけにはいかないんだ!」
彼の全力の一撃が、ようやくギルファムに通用した。ユリアスの全力の一撃、魔術を込めた彼の剣はギルファムを吹き飛ばした。
ギルファムは驚きつつも、不敵に笑った。
「フッ…貴様もこの戦いで成長したようだな…ならば見せてやろう。我の、魔族最強の奥義をな。」
そしてギルファムは黒刀を天に掲げた。
「原初の空よ、無を言祝う。世界を裂くは我が剣つるぎ!いざ仰げ!」
黒刀は瞬く間に輝きを放ち、膨大な魔力を帯びてゆく。
そして、その全てを解き放つ…
地壊。まさにそれを象徴する破壊の奥義。ギルファムの黒刀、グリザレイは天地を分かち、今の空と地を創ったという、12の神器にすら匹敵する逸話を持っている。その全てを解放した今、混沌と絶望がユリアスに立ちはだかる。
「ぐっ…!おおおおおおおおお!」
ユリアスは愛剣でグリザレイの放つ斬撃を受けていた。あまりに大きなその一撃が、彼の体を揺るがす。彼の剣もまた、遠い昔の軍神の愛剣とされており、絶大な力を持っているが、神代の力の前にはあまりに脆い。
「これが、神代より栄華を誇った破壊の力!我が一刀は世界すら揺るがす!さあ、これを超えられるか!?貴様の覚悟とやら見せてみよ!」
ギルファムは試しているのだ。その真価でもって、ユリアスの覚悟を。
(これが…神代の英雄の力…!今までのどの攻撃よりも強い!)
ユリアスの胸に絶望にも似た何かが起こる。神代の力の前に、なす術なく散ってしまうと思われた。自身があまりに脆すぎる。彼は死を覚悟した。
閃光が走った。と、形容するのに相応しいだろうか。死を覚悟したユリアスの脳裏に突然声が響く。どこからともなくそれは現れた。
"生きろ。その目で答えを見つけるまで。"
そうだ、生きなくてはならないのだ。目の前の事実から目を背けるな!
彼は突如、光に包まれた。大いなる神の威光とでも言おうか。周囲に閃光が迸る。
エクセラは、そのユリアスの姿に、かつて見た誰を思い描いた。猛々しく、意志に満ち溢れたその姿に。
光の中から転生した彼は、強い意志を紅く光る瞳に宿している。生きようとする意志。その力が彼の中の力を引き出した。
「俺は…負けられない!死ぬわけにはいかないんだ!」
願い、にも似た咆哮とともに彼はグリザレイの光を弾き飛ばした。彼の持つ愛剣は、かの騎士王アーサーの持つ最強の剣、エクスカリバーを思わせる光を帯びていた。その剣光がグリザレイの邪光すら凌駕し、世界を震わした。
「まさか…これほどとはな…!」
ギルファムは驚愕し、歓喜した。かつて、あの男のみが防いだ愛刀の一撃を、実力で防ぐものがまだこの世界にいたこと。その事実だけで、彼には十分だった。
「ふっ…貴様の覚悟、見せてもらった。まだ人間にこれほど意志の力を備えたものがいたとはな。」
彼はユリアスを見て言う。その目にはもう、侮蔑はなかった。
「貴様が外なる者を討つために戦うというならば、それには協力してやろう。ただ勘違いするな。人間に協力し、人間を許すわけではないぞ。つまり、貴様が人間の無実を証明してみせろ。私に世界の真実をしっかりと示してみせろ。それで認めてやる。せいぜい旅を続けることだな。」
「では…共に戦ってくれるのですね。」
「まあ、貴様には手を貸してやってもよかろう。」
ギルファムはそれ以上言わなかった。しかしユリアスはよくわかった。彼が心を開いてくれたこと。そして、協力してくれること。ユリアスは大いに喜んだ。自身の旅が進んだ。戦いは報われたのだ。
一方で彼は自身の内に突如宿った力に疑問を感じた。彼が生きたいと願った時、宿った大いなる力、そしてあの声。自身には何かあると、そしてこれは世界を変えうる大きな可能性を秘めている。未知の可能性に彼は疑問と一抹の期待を持った。
苛烈を極めた決闘を終え、ユリアスは王城の丘に大きく横たわった。どうやら体は動きそうにはないようだ。そのまま丘に薫る風に身を委ねる。そこはエクセラが駆け寄った。
「おめでとう。貴方は、貴方の意志で彼を認めさせたのね。やっぱり貴方はすごいわ。」
彼女は笑顔で声をかける。
「ああ、ただ俺の中には何か未知の力があるようだ。そのおかげで俺は、グリザレイを超えた。光が俺に言ったんだ。生きて世界の真実を見ろ、と。わかるのはただ一つ、俺には使命があると言うことだよ。」
彼女にも、覚醒の理由を話した。すると彼女はこう言った。
「貴方のあの姿に、遠い日に見た誰かを見たの。私には思い出せないわ。もしかしたらあれもまた、世界を変える何か、なのかもしれないわね。」
彼女には、既視感のある何かに見えたようだ。この謎はますます深まるばかりなのかもしれない。
「でも、そんなことよりも貴方は疲れたはずよ。あれだけの戦いをしたのだもの。今日はゆっくり休むといいわ。」
そう言って彼女は俺を背負って丘を下る。そうだ、彼女はドラゴニュート。力ならばユリアスさえも凌駕する存在。となれば自分を持ち上げることが容易なのも納得いく。今日は彼女に頼ろう。ユリアスはそう決めた。
彼らの旅は、一つの光明を得た。広大なこの世界の真実を探す旅はこれからも続く。事実を知った時、彼らは何を思うだろうか。
ギルファムの突然の申し込みに、驚きながらも、覚悟を決めて受けたユリアス。目の前に立ちはだかるのは、現魔族王にして、魔族最強の男。ヴィーラに負けるまで、無敗を誇った歴戦の勇士に、自分が挑む。まっすぐにギルファムを見据えるユリアスに、エクセラが声をかける。その目は儚げだ。
「ユリアス、絶対に、生きて帰ってきてね…貴方とは、もっと旅がしたいの。この世界を巡りながら、貴方という人物をもっと知りたい。貴方は、温かいもの。」
彼女はそれだけを託し、あとは何も言わず、黙ってユリアスを見届けようとしている。本当は止めたいはずだ。しかし、自分のためにそれを必死に我慢している。彼はそんな彼女の健気な気持ちを胸に、剣をとった。
「剣での決闘か。いいだろう。貴様の全霊を込め、我にかかってくるがいい!」
ギルファムもまた、厚いマントを脱ぎ、軍服に似た薄着になる。その背中には黒く光る剣を背負っている。彼もそれを鞘から抜いた。そして、城門を抜け、ユリアスの前に立つ。
互いの誇りと意地が対峙する前には、少々大人しすぎるほど、時が経ってゆく。英雄たちはただ、剣の丘にて其の刻を静かに迎えた。
決闘の火蓋を切ったのは、ユリアスの剣戟だった。消えた、ともとれるような速さでギルファムに斬りかかる。
しかし、ギルファムも一介の剣士ではない。彼はユリアスの高速の剣戟を、目で追った上で受け、斬り返したのだ。決して直感などではない。彼には、ユリアスが見えている。
「ほう、なかなかな速さだな。だが、」
「…っ!」
ユリアスが身を翻して彼の斬撃を避けたあと、ギルファムは恐ろしい速さで連撃を浴びせてきた。ユリアスにはそれを裁くので手一杯だ。
「速さ、とはこういうことだ!」
連撃でユリアスを仰け反らせ、空いた腹に拳を入れる。体に重い一撃を受け、ユリアスは吹き飛ばされた。
これが、統べるものの強さ。絶対的な力で持って民を統制するための、あまりに暴力的で圧倒的な力。これまで、ユリアスがここまで苦戦したことはなかった。彼は今、圧倒的な覇気に押しつぶされている。
「どうした、もう終わりか?我はまだ全力じゃあないぞ。貴様の覚悟はその程度か?」
まだだ、まだ倒れるわけにはいかない。ユリアスはゆっくりと立ち上がり、剣を構える。ルーン魔術によりダメージは少しは回復したが、それでもまだ残るほど、彼の拳は重かった。あれでまだ本気を出していないとは…ユリアスも本気でかからなくては勝てる見込みはない。もとよりそのつもりではあるが、改めてそう感じた。
今度はギルファムが攻撃してくる。剣速。力。全てが今のユリアスを凌駕している。当然のごとく防戦一方に追い込まれてしまう。
「くっ…!はあっ!」
「遅い。」
全力の斬撃も全て受け止められてしまい、逆に相手の攻撃を許してしまう。ついに彼はギルファムの斬撃を受けてしまった。
「ぐあっ!」
斬撃を受けたユリアスは、ルーン魔術にて回復を試みるも、その隙を与えないギルファムの攻撃が容赦なく降り注ぐ。
「くっ!ここで…死ぬわけには!」
彼も全力で攻撃する。互いの剣は残像のみが写り、爆風と轟音が周囲を襲う。王城の丘はざわめき、天は割れていく。
「ユリアス…」
丘で佇み、二人の決闘を見守るエクセラは、防戦に立たされるユリアスを憂いていた。自分も力を貸したい。その気持ちは山々だ。今にも足が動き出しそうだ。しかし、それをすればユリアスの戦いが意味をなさなくなる。そんなことが起きては、彼の決意も覚悟も無駄になる。それはあってはならないのだ。
「死なないで…」
彼女に許されたのは、悲痛な祈りのみだ。
その彼女の姿を見て、ユリアスは気づく。そうだ、俺は死んではならない。生きて彼女と旅を続けなくてはならない。その覚悟が彼を突き動かす。防戦一方だった彼がついに一撃を振るった。
「何っ!」ギルファムは驚嘆する。
「俺は…死ねない!」
ユリアスの目は決意の色を帯びていた。彼の闘気、生を渇望する力が王城の丘を揺るがした。
決闘は苛烈を極めた。互いの剣技は加速し、一撃一撃が稲妻のような衝撃と轟音を生み出した。ユリアスも体が限界を超えてようやくギルファムについて来られるようになった。防戦主体である状況に変わりはないが、彼も攻勢に出ることができるようになってきている。
そんな彼の成長に、ギルファムも応える。
「ほう!やるではないか、人間!ならばもっと我を楽しませてみろ!」
ギルファムは魔力を解放した黒刀を、ユリアスに振るう。ユリアスもまた、ルーン魔術と組み合わせた先頭を繰り広げる。
「俺は!負けるわけにはいかないんだ!」
彼の全力の一撃が、ようやくギルファムに通用した。ユリアスの全力の一撃、魔術を込めた彼の剣はギルファムを吹き飛ばした。
ギルファムは驚きつつも、不敵に笑った。
「フッ…貴様もこの戦いで成長したようだな…ならば見せてやろう。我の、魔族最強の奥義をな。」
そしてギルファムは黒刀を天に掲げた。
「原初の空よ、無を言祝う。世界を裂くは我が剣つるぎ!いざ仰げ!」
黒刀は瞬く間に輝きを放ち、膨大な魔力を帯びてゆく。
そして、その全てを解き放つ…
地壊。まさにそれを象徴する破壊の奥義。ギルファムの黒刀、グリザレイは天地を分かち、今の空と地を創ったという、12の神器にすら匹敵する逸話を持っている。その全てを解放した今、混沌と絶望がユリアスに立ちはだかる。
「ぐっ…!おおおおおおおおお!」
ユリアスは愛剣でグリザレイの放つ斬撃を受けていた。あまりに大きなその一撃が、彼の体を揺るがす。彼の剣もまた、遠い昔の軍神の愛剣とされており、絶大な力を持っているが、神代の力の前にはあまりに脆い。
「これが、神代より栄華を誇った破壊の力!我が一刀は世界すら揺るがす!さあ、これを超えられるか!?貴様の覚悟とやら見せてみよ!」
ギルファムは試しているのだ。その真価でもって、ユリアスの覚悟を。
(これが…神代の英雄の力…!今までのどの攻撃よりも強い!)
ユリアスの胸に絶望にも似た何かが起こる。神代の力の前に、なす術なく散ってしまうと思われた。自身があまりに脆すぎる。彼は死を覚悟した。
閃光が走った。と、形容するのに相応しいだろうか。死を覚悟したユリアスの脳裏に突然声が響く。どこからともなくそれは現れた。
"生きろ。その目で答えを見つけるまで。"
そうだ、生きなくてはならないのだ。目の前の事実から目を背けるな!
彼は突如、光に包まれた。大いなる神の威光とでも言おうか。周囲に閃光が迸る。
エクセラは、そのユリアスの姿に、かつて見た誰を思い描いた。猛々しく、意志に満ち溢れたその姿に。
光の中から転生した彼は、強い意志を紅く光る瞳に宿している。生きようとする意志。その力が彼の中の力を引き出した。
「俺は…負けられない!死ぬわけにはいかないんだ!」
願い、にも似た咆哮とともに彼はグリザレイの光を弾き飛ばした。彼の持つ愛剣は、かの騎士王アーサーの持つ最強の剣、エクスカリバーを思わせる光を帯びていた。その剣光がグリザレイの邪光すら凌駕し、世界を震わした。
「まさか…これほどとはな…!」
ギルファムは驚愕し、歓喜した。かつて、あの男のみが防いだ愛刀の一撃を、実力で防ぐものがまだこの世界にいたこと。その事実だけで、彼には十分だった。
「ふっ…貴様の覚悟、見せてもらった。まだ人間にこれほど意志の力を備えたものがいたとはな。」
彼はユリアスを見て言う。その目にはもう、侮蔑はなかった。
「貴様が外なる者を討つために戦うというならば、それには協力してやろう。ただ勘違いするな。人間に協力し、人間を許すわけではないぞ。つまり、貴様が人間の無実を証明してみせろ。私に世界の真実をしっかりと示してみせろ。それで認めてやる。せいぜい旅を続けることだな。」
「では…共に戦ってくれるのですね。」
「まあ、貴様には手を貸してやってもよかろう。」
ギルファムはそれ以上言わなかった。しかしユリアスはよくわかった。彼が心を開いてくれたこと。そして、協力してくれること。ユリアスは大いに喜んだ。自身の旅が進んだ。戦いは報われたのだ。
一方で彼は自身の内に突如宿った力に疑問を感じた。彼が生きたいと願った時、宿った大いなる力、そしてあの声。自身には何かあると、そしてこれは世界を変えうる大きな可能性を秘めている。未知の可能性に彼は疑問と一抹の期待を持った。
苛烈を極めた決闘を終え、ユリアスは王城の丘に大きく横たわった。どうやら体は動きそうにはないようだ。そのまま丘に薫る風に身を委ねる。そこはエクセラが駆け寄った。
「おめでとう。貴方は、貴方の意志で彼を認めさせたのね。やっぱり貴方はすごいわ。」
彼女は笑顔で声をかける。
「ああ、ただ俺の中には何か未知の力があるようだ。そのおかげで俺は、グリザレイを超えた。光が俺に言ったんだ。生きて世界の真実を見ろ、と。わかるのはただ一つ、俺には使命があると言うことだよ。」
彼女にも、覚醒の理由を話した。すると彼女はこう言った。
「貴方のあの姿に、遠い日に見た誰かを見たの。私には思い出せないわ。もしかしたらあれもまた、世界を変える何か、なのかもしれないわね。」
彼女には、既視感のある何かに見えたようだ。この謎はますます深まるばかりなのかもしれない。
「でも、そんなことよりも貴方は疲れたはずよ。あれだけの戦いをしたのだもの。今日はゆっくり休むといいわ。」
そう言って彼女は俺を背負って丘を下る。そうだ、彼女はドラゴニュート。力ならばユリアスさえも凌駕する存在。となれば自分を持ち上げることが容易なのも納得いく。今日は彼女に頼ろう。ユリアスはそう決めた。
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