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本編-ARIA-
第107話『アカウント』
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――黒幕『TKS』のTubutterアカウントが復活した。
Tubutterのアカウントは自分で削除してから、一定の期間は復活することができる。おそらく、僕が無実となり釈放されたことを受けて、『TKS』本人がアカウントを復活させたのだろうか
「どうしたんですか? 智也さん」
「黒幕『TKS』のTubutterアカウントが復活したらしい」
「ええっ! 今、パソコンを起動しますね!」
美来は慌てた様子で、部屋の中にあるデスクトップのパソコンを起動する。
「智也君、その『TKS』のアカウントIDを教えてくれない? パソコンが立ち上がるまでは、あたしのスマートフォンで見ましょう」
僕はスピーカーホンにして、スマートフォンをテーブルの上に置いた。
「羽賀、こっちはスピーカーホンにしたから、そのまま喋ってくれ。とりあえず、有紗さんのスマートフォンで『TKS』のアカウントを見るから」
『分かった』
羽賀から教えられた『TKS』のTubutterのアカウントIDを有紗さんが入力すると、『TKS』というアカウント名のTubutter画面が表示される。
「……表示したわ。『TKS』のアカウント。アイコンの画像がたまごで、背景が紫色になっているね」
『そのアカウントで合っています』
有紗さんのスマートフォンを見せてもらう。この『TKS』のアカウント……フォロー数が少ない割にやけにフォロワー数が多いな。ツイート数はさほど多いわけでもないのに。
「フォロワーの数が多いんだな」
『ああ。そのまま『TKS』の投稿しているツイートを見てくれないか。それぞれかなり拡散されていて、その影響でフォロワーが伸びているものと思われる』
羽賀の言うように、これまでに『TKS』が発信したツイートを見てみると、復活してからと呟いたと思われるツイートの多くが1万以上リツイートされている。つまり、多くの利用者によって、ツイートが拡散されているということだ。
『氷室智也は無実として釈放されたが、私は彼が犯罪者であるという真実を知っている。それを近々、世間に露呈されるときが来るだろう。』
『彼が釈放されたのは、彼が犯罪者だと断定できる能力のなかった警察の完全なる落ち度である。』
『私はこの事件の全てを知っている。しかし、私は報道で言われているような黒幕ではない。『TKS』と名乗る人物が黒幕であると言われているのは、氷室智也や担当警察官・羽賀尊などによる私に対する妬みが生み出した妄想だろう。』
『私を犯罪者とするのなら、その代償として再び牢獄に投じてやろうではないか! なぜなら、彼らは犯罪者なのだから! 私を怒らせると恐ろしいことになるということを再び味わわせてやる。これは果たすべき逆襲だ。今後の動向に注目していてください。』
などといったツイートが投稿され、これらが多く拡散されている状況だ。おそらく、これらのツイートを基にして、ネットニュースサイトやまとめサイトで取り上げられるんだろうな。
「僕や羽賀の名前も入ったツイートもあるんだね」
『無実だったが、一度は逮捕されたのだ。私達の名前を入れることで、より注目を浴びようと考えているのだろう』
「でも、どうして『TKS』のアカウントは復活したのかな。こんなことをしたって、『TKS』にとってはリスクが増えるだけなのに」
確かに、有紗さんの言うとおりだ。
昨日まではアカウントが削除されたこともあって、『TKS』が誰なのか特定するほどの情報は一切入手できていない。雲隠れできている状況なのだ。
それなのに、一度消したアカウントを復活し、こんなにも僕の事件のことにツイートをするなんて。『TKS』という名前のアカウントが黒幕である情報も流れているし、『TKS』にとってのリスクはかなりのものだろう。
『おそらく、そういうリスクを承知した上で『TKS』は氷室が犯罪者であり、彼を無実であると信じて捜査した私も同罪であると主張したいのでしょう』
羽賀のその意見に俺も賛成だ。
「智也さん、有紗さん。パソコンでも例の『TKS』のツイートを見ることができました。どうやら、『TKS』は他の利用者からのリプライに対するツイートもしているようです」
「なるほど……」
パソコンの方で見てみると、『TKS』は多くの人に返事のツイートをしている。そこでも、僕や羽賀を非難する旨の文章であるものが多い。
「羽賀、どうやら『TKS』はまずネット上で、僕や羽賀を犯罪者だという空気を作り上げたいみたいだな」
『そのようだな。しかも、トレンドというところに『#TKS』のワードが入ってしまっている。私達が報道を利用して氷室が無実であり、浅野さんや私が巻き込まれたと世間に知らせたように、『TKS』もネットを使って、氷室や私を犯罪者という風潮を作ってしまおうと考えているかもしれない』
「そんな状況の中で、『TKS』が何かを仕掛けて、また僕等が無実の罪で逮捕されるかもしれない、ということか」
『ああ、そうだな』
どうやら、『TKS』は事態を静観するつもりはないらしいな。
おそらく、僕や羽賀の釈放を受けて怒りが増し、僕らを再び無実の罪で逮捕されるように計画を練っているかもしれない。いや、もしかしたら準備は既にできていて、いつでも実行可能な状況になっている可能性だってある。
「羽賀、そのツイートはどこから投稿された?」
『部下に頼んで、利用端末を調べてもらっているところだが、おそらく……身元が特定されないようにネットカフェのパソコンから投稿したと思われる』
「そうだよな……」
おそらく、『TKS』は再び自分のことを特定されない方法で、僕や羽賀のことを嵌めに来るはず。もしかしたら、第2の佐相警視のような警察関係者が協力することもあり得る。そうなったら、非常にやっかいなことになるぞ。
『氷室、『TKS』のTubutterアカウントが復活したというのは大きい。今のこの状況を上手く利用する方法はある。一定期間、アカウントが復活できると知ってから、もし復活したときのための策は既に練ってある』
「それはどんな策なんだ?」
『ただ、その策はリスクが伴い、氷室達にも協力してもらわなければならない。しかも、それが成功するとは限らない』
「そうか。でも、リスクなしで必ず成功する作戦なんてそうそうないって思ってる。それに、『TKS』がはっきりと動きを見せるまで待つというのも、それはそれでリスクが伴うと思う。羽賀、お前が考えている策を教えてくれないか」
『……分かった』
僕達は羽賀からその策について話を聞く。
なるほど。これは確かにリスクが伴うし、もし失敗してしまったら、再び『TKS』を特定して逮捕まで結び付ける可能性はかなり低くなりそうだ。
『どうだろうか?』
「……このまま捜査し続けても、『TKS』を特定できる可能性は低いんだよな」
『そうだな。これからの『TKS』の動き次第ではあるが、これまでと同じようであれば可能性は低いだろう』
「……美来と有紗さんは? 危険かもしれませんが……どうでしょうか。羽賀の策に協力するなら、かなりの覚悟が必要です」
僕だけでいいのであれば迷うことなく協力するけど、2人の協力が必要となれば話は別だ。なるべく、2人を危険にさらすわけにはいかない。特に、一連のことで被害者とされてしまった美来には。
「私は……協力します。必ず成功するとは限りませんが、これで事件が解決し『TKS』を逮捕できるのなら」
「あたしにも協力させて。このまま黙って何もしないのは絶対に嫌だもん!」
「……だそうだ、羽賀」
やっぱり、2人は協力すると言ってくれたか。僕も覚悟を決めて、黒幕『TKS』と対峙しなければいけないな。
『分かった。では、こちらも準備を進めていく。とりあえず、3人には『TKS』のアカウントの動向を監視していてほしい。今後は適宜、私や浅野さんから指示を出す』
「分かった」
羽賀の策が上手くいけばいいけど。
『TKS』は一度、僕を無実の罪で逮捕させ、多くの警察関係者を巻き込むことに成功している。実際に、真犯人の佐相さんや協力者の佐相警視は逮捕されたものの、『TKS』自身は逮捕されていない。特定さえも難しい状況になっている。相手にするには非常にやっかいなタイプだ。
黒幕『TKS』の言葉を借りるなら、これは逆襲だろう。僕や羽賀は一度逮捕されているからね。この借りはきちんと君に返すつもりさ。
Tubutterのアカウントは自分で削除してから、一定の期間は復活することができる。おそらく、僕が無実となり釈放されたことを受けて、『TKS』本人がアカウントを復活させたのだろうか
「どうしたんですか? 智也さん」
「黒幕『TKS』のTubutterアカウントが復活したらしい」
「ええっ! 今、パソコンを起動しますね!」
美来は慌てた様子で、部屋の中にあるデスクトップのパソコンを起動する。
「智也君、その『TKS』のアカウントIDを教えてくれない? パソコンが立ち上がるまでは、あたしのスマートフォンで見ましょう」
僕はスピーカーホンにして、スマートフォンをテーブルの上に置いた。
「羽賀、こっちはスピーカーホンにしたから、そのまま喋ってくれ。とりあえず、有紗さんのスマートフォンで『TKS』のアカウントを見るから」
『分かった』
羽賀から教えられた『TKS』のTubutterのアカウントIDを有紗さんが入力すると、『TKS』というアカウント名のTubutter画面が表示される。
「……表示したわ。『TKS』のアカウント。アイコンの画像がたまごで、背景が紫色になっているね」
『そのアカウントで合っています』
有紗さんのスマートフォンを見せてもらう。この『TKS』のアカウント……フォロー数が少ない割にやけにフォロワー数が多いな。ツイート数はさほど多いわけでもないのに。
「フォロワーの数が多いんだな」
『ああ。そのまま『TKS』の投稿しているツイートを見てくれないか。それぞれかなり拡散されていて、その影響でフォロワーが伸びているものと思われる』
羽賀の言うように、これまでに『TKS』が発信したツイートを見てみると、復活してからと呟いたと思われるツイートの多くが1万以上リツイートされている。つまり、多くの利用者によって、ツイートが拡散されているということだ。
『氷室智也は無実として釈放されたが、私は彼が犯罪者であるという真実を知っている。それを近々、世間に露呈されるときが来るだろう。』
『彼が釈放されたのは、彼が犯罪者だと断定できる能力のなかった警察の完全なる落ち度である。』
『私はこの事件の全てを知っている。しかし、私は報道で言われているような黒幕ではない。『TKS』と名乗る人物が黒幕であると言われているのは、氷室智也や担当警察官・羽賀尊などによる私に対する妬みが生み出した妄想だろう。』
『私を犯罪者とするのなら、その代償として再び牢獄に投じてやろうではないか! なぜなら、彼らは犯罪者なのだから! 私を怒らせると恐ろしいことになるということを再び味わわせてやる。これは果たすべき逆襲だ。今後の動向に注目していてください。』
などといったツイートが投稿され、これらが多く拡散されている状況だ。おそらく、これらのツイートを基にして、ネットニュースサイトやまとめサイトで取り上げられるんだろうな。
「僕や羽賀の名前も入ったツイートもあるんだね」
『無実だったが、一度は逮捕されたのだ。私達の名前を入れることで、より注目を浴びようと考えているのだろう』
「でも、どうして『TKS』のアカウントは復活したのかな。こんなことをしたって、『TKS』にとってはリスクが増えるだけなのに」
確かに、有紗さんの言うとおりだ。
昨日まではアカウントが削除されたこともあって、『TKS』が誰なのか特定するほどの情報は一切入手できていない。雲隠れできている状況なのだ。
それなのに、一度消したアカウントを復活し、こんなにも僕の事件のことにツイートをするなんて。『TKS』という名前のアカウントが黒幕である情報も流れているし、『TKS』にとってのリスクはかなりのものだろう。
『おそらく、そういうリスクを承知した上で『TKS』は氷室が犯罪者であり、彼を無実であると信じて捜査した私も同罪であると主張したいのでしょう』
羽賀のその意見に俺も賛成だ。
「智也さん、有紗さん。パソコンでも例の『TKS』のツイートを見ることができました。どうやら、『TKS』は他の利用者からのリプライに対するツイートもしているようです」
「なるほど……」
パソコンの方で見てみると、『TKS』は多くの人に返事のツイートをしている。そこでも、僕や羽賀を非難する旨の文章であるものが多い。
「羽賀、どうやら『TKS』はまずネット上で、僕や羽賀を犯罪者だという空気を作り上げたいみたいだな」
『そのようだな。しかも、トレンドというところに『#TKS』のワードが入ってしまっている。私達が報道を利用して氷室が無実であり、浅野さんや私が巻き込まれたと世間に知らせたように、『TKS』もネットを使って、氷室や私を犯罪者という風潮を作ってしまおうと考えているかもしれない』
「そんな状況の中で、『TKS』が何かを仕掛けて、また僕等が無実の罪で逮捕されるかもしれない、ということか」
『ああ、そうだな』
どうやら、『TKS』は事態を静観するつもりはないらしいな。
おそらく、僕や羽賀の釈放を受けて怒りが増し、僕らを再び無実の罪で逮捕されるように計画を練っているかもしれない。いや、もしかしたら準備は既にできていて、いつでも実行可能な状況になっている可能性だってある。
「羽賀、そのツイートはどこから投稿された?」
『部下に頼んで、利用端末を調べてもらっているところだが、おそらく……身元が特定されないようにネットカフェのパソコンから投稿したと思われる』
「そうだよな……」
おそらく、『TKS』は再び自分のことを特定されない方法で、僕や羽賀のことを嵌めに来るはず。もしかしたら、第2の佐相警視のような警察関係者が協力することもあり得る。そうなったら、非常にやっかいなことになるぞ。
『氷室、『TKS』のTubutterアカウントが復活したというのは大きい。今のこの状況を上手く利用する方法はある。一定期間、アカウントが復活できると知ってから、もし復活したときのための策は既に練ってある』
「それはどんな策なんだ?」
『ただ、その策はリスクが伴い、氷室達にも協力してもらわなければならない。しかも、それが成功するとは限らない』
「そうか。でも、リスクなしで必ず成功する作戦なんてそうそうないって思ってる。それに、『TKS』がはっきりと動きを見せるまで待つというのも、それはそれでリスクが伴うと思う。羽賀、お前が考えている策を教えてくれないか」
『……分かった』
僕達は羽賀からその策について話を聞く。
なるほど。これは確かにリスクが伴うし、もし失敗してしまったら、再び『TKS』を特定して逮捕まで結び付ける可能性はかなり低くなりそうだ。
『どうだろうか?』
「……このまま捜査し続けても、『TKS』を特定できる可能性は低いんだよな」
『そうだな。これからの『TKS』の動き次第ではあるが、これまでと同じようであれば可能性は低いだろう』
「……美来と有紗さんは? 危険かもしれませんが……どうでしょうか。羽賀の策に協力するなら、かなりの覚悟が必要です」
僕だけでいいのであれば迷うことなく協力するけど、2人の協力が必要となれば話は別だ。なるべく、2人を危険にさらすわけにはいかない。特に、一連のことで被害者とされてしまった美来には。
「私は……協力します。必ず成功するとは限りませんが、これで事件が解決し『TKS』を逮捕できるのなら」
「あたしにも協力させて。このまま黙って何もしないのは絶対に嫌だもん!」
「……だそうだ、羽賀」
やっぱり、2人は協力すると言ってくれたか。僕も覚悟を決めて、黒幕『TKS』と対峙しなければいけないな。
『分かった。では、こちらも準備を進めていく。とりあえず、3人には『TKS』のアカウントの動向を監視していてほしい。今後は適宜、私や浅野さんから指示を出す』
「分かった」
羽賀の策が上手くいけばいいけど。
『TKS』は一度、僕を無実の罪で逮捕させ、多くの警察関係者を巻き込むことに成功している。実際に、真犯人の佐相さんや協力者の佐相警視は逮捕されたものの、『TKS』自身は逮捕されていない。特定さえも難しい状況になっている。相手にするには非常にやっかいなタイプだ。
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