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夏休み編4
第7話『優しい果実』
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「……よし。これで完成だ」
8月19日、月曜日。
午後11時半。
俺は新曲『優しい果実』の最終チェックを行なった。この『優しい果実』という曲は、低変人としての胡桃への誕生日プレゼントだ。
旅行から帰ってきてから制作を始めた。ただ、胡桃のことを考えていたら次々とメロディーが湧いてきて、今日になっても楽曲の構成を変更するなどの作業が続いた。それもあり、最終チェックがこの時間までかかったのだ。
「何とか完成して良かった」
先日の福王寺先生の誕生日には、午前0時過ぎに『氷砂糖』という新曲をプレゼントした。なので、胡桃にも同じように、誕生日になってすぐにプレゼントしたいと思っている。それもあり、全ての作業が終わって一安心だ。
今後、誰かの誕生日プレゼント用に送る曲を作るときには、計画的にやっていかないといけないな。
メッセンジャーの自分のアカウントの状態を『作業中』から、いつでも話せる『ログイン中』に変更する。その際、友人一覧の胡桃……桐花さんのアカウントの状態を見ると『ログイン中』になっている。桐花さんもパソコンの電源を入れているのか。
「おっ」
メッセンジャーのポップアップ機能で、『桐花さんからメッセージが届きました。』と表示される。俺のログイン状態が『ログイン中』に変わったから、桐花さんは俺にメッセージを送ったのだろう。
桐花さんとのトーク画面を開くと、
『低変人さん、ログイン状態になったね。アニメを観ていたの? それとも、私にプレゼントしてくれる曲の制作……とか?』
というメッセージが表示される。こう問いかけてくるのは、福王寺先生の誕生日に新曲をプレゼントしたのを桐花さんも知っているからだろう。
『正解です。桐花さんにプレゼントする新曲の最終チェックをしていました』
正直にそう返信する。
ちなみに、俺が敬語なのは、桐花さんの正体が胡桃だと分かるまでずっと敬語で話していたから。あと、正体が分かっても、メッセンジャーで話すときは敬語の方が落ち着くのもある。
『そうなんだ! 0時になるのが楽しみだなぁ』
『楽しみにしていてください。いい曲ができましたから』
『うん!』
その楽しみな気持ちに応えられる楽曲になっていたらいいな。
『15歳最後の夜だから、15歳の間に放送された好きなアニメを観てた』
『おぉ、いいですね。どんなアニメを観ていましたか?』
『『鬼刈剣』と『みやび様は告られたい』の2つ』
『どっちも好きですもんね。俺もこの1年間に放送されたアニメの中では、その2作品は上位にきますね』
『ふふっ、そっか。みやび様はリアルタイムで語ったよね。土曜日の夜に放送されていたから』
『放送された時間もそこまで遅くなかったですもんね』
また、放送時期は高校受験の時期と重なっていた。だから、桐花さんとみやび様を観ながらリアルタイムで語り合えたのはいい気分転換になったのを覚えている。
『15歳ラストに低変人さんとこうして話せて嬉しいよ』
『そう言ってくれると、俺も嬉しいです』
『あと、15歳の1年間を振り返ると、この1年は本当に大きな1年間だったよ。色々なことがあって、いい方向に変わったし』
『そうですか』
『うん。金井高校に入学できて。結衣ちゃんや姫奈ちゃん達と出会えて。2年前のことでゆう君に謝れて。美玲ちゃん達と決別できて。ゆう君に正体を明かせて。好きだって告白できて。本当にいい15歳の1年だった』
こうして文字で見ると……この1年の間に、胡桃には色々なことがあったのだとよく分かる。環境の変化と人間関係の変化だからかな。
『それは良かったです』
『うんっ! きっと、16歳としての1年もいい1年になる気がする』
『そうなることを願っています』
環境と人間関係が変わった今なら、きっとそうなるだろう。俺もネットとリアルの友人として、桐花さんと付き合っていけたらと思う。
それからは桐花さんが15歳の間に放送されたアニメについて語り合っていく。そのことで時間はあっという間に過ぎていき、気付けばパソコンに表示されている時刻が『23:59』となっている。
パソコンの時刻をクリックして、アナログ時計を表示させる。……残り30秒か。
桐花さんとは特にメッセージのやり取りすることなく、静かにそのときを待つ。その間の時間の進みは普段よりも遅く感じた。
「3、2、1……0!」
『桐花さん、16歳のお誕生日おめでとうございます!』
8月20日になってすぐ、俺はそんなメッセージを桐花さんに送った。その間にスマホが『ブルルッ』と何度も鳴る。きっと、胡桃も俺もメンバーになっているグループトークに、胡桃への誕生日メッセージが送られているのだろう。
『ありがとう! 低変人さん!』
『おめでとうございます。あとは、低変人としての新曲『優しい果実』を送りますね。桐花さんをイメージして作りました』
というメッセージの後、俺は『優しい果実』の音楽ファイルを桐花さんに送信した。
『ファイルきた! さっそく聴くね!』
『喜んでくれたら嬉しいです』
新曲『優しい果実』はおよそ5分の曲だ。遅くても5分後には桐花さんから感想のメッセージが届くだろう。
スマホを確認すると、LIMEの旅行メンバーのグループトークに複数のメッセージが届いていると通知が。グループトークを開くと、
『胡桃ちゃん! 16歳のお誕生日おめでとう!』
『胡桃! 誕生日おめでとうなのです!』
『お誕生日おめでとうございます! 胡桃さん!』
『華頂ちゃん! 誕生日おめでとう!』
『胡桃ちゃん、誕生日おめでとう! LIMEスタンプをプレゼントするわ!』
『胡桃ちゃん、お誕生日おめでとう! 明日はバイトがあってパーティーに行けないけど、ユウちゃんにプレゼントを持っていってもらうね』
結衣、伊集院さん、柚月ちゃん、中野先輩、福王寺先生、芹花姉さんが胡桃への誕生日メッセージを送っていた。全員、0時2分までに送っている。みんな胡桃の誕生日を待ち構えていたのかもしれない。俺も低田悠真として、
『胡桃。16歳の誕生日おめでとう』
というメッセージをグループトークと胡桃の個別トークに送った。また、個別トークの方には『優しい果実』の楽曲ファイルも。
『みなさん、ありがとうございます! 16歳になりました!』
胡桃からグループトークにはそんなお礼のメッセージが届き、俺との個別トークには、
『こっちにも送ってくれてありがとう、ゆう君』
というお礼のメッセージを送ってくれた。
LIMEでのメッセージをやり取りしている間に、0時5分を過ぎた。早ければ、もうそろそろ胡桃から曲の感想が届くはず。そんなことを思いながら、パソコンの画面を見ると、
『『優しい果実』聴いたよ! 優しい雰囲気のピアノ曲なんだね。とても癒やされたよ。勉強とかバイトの後に聴いたら疲れが取れそう』
桐花さんから新曲の感想が届いた。喜んでくれたようで嬉しい。
プレゼントした『優しい果実』はMIDIキーボードを使って制作したピアノ曲。胡桃をイメージして作った。胡桃はとても優しくて穏やかな性格の女の子なので、優しい雰囲気のメロディーが次々と浮かんだのだ。ピアノの音とも相性が良かった。MIDIキーボードを使って制作することはあまりないけど、これからは定期的に使ってみようかな。
『そう言ってもらえて嬉しいです。桐花さんは優しくて可愛い女の子ですし、本名の胡桃は果実の胡桃もありますから。それで、『優しい果実』という曲名にしました』
『そうなんだ。曲名の由来には照れちゃうけど、凄く嬉しいです』
『そうですか。好きなときに聴いてください。福王寺先生のプレゼントと同じく、この曲はネットには公開しません。ただ、桐花さんの意思で結衣達に聴かせるのはかまいませんから』
『分かった』
『改めて、16歳のお誕生日おめでとうございます』
『ありがとう! 明日……もう今日か。結衣ちゃん達と一緒にうちに来るのを楽しみにしてるよ。ケーキやスイーツを作って待ってるね!』
『分かりました。楽しみにしています』
明日は午後3時から胡桃の家で誕生日パーティーがある。楽しみだな。
俺も桐花さんも明日はバイトがないため、それからしばらくの間、現在放送されているアニメや最近発売された漫画の話をした。桐花さんにプレゼントした『優しい果実』をBGMにしながら。
8月19日、月曜日。
午後11時半。
俺は新曲『優しい果実』の最終チェックを行なった。この『優しい果実』という曲は、低変人としての胡桃への誕生日プレゼントだ。
旅行から帰ってきてから制作を始めた。ただ、胡桃のことを考えていたら次々とメロディーが湧いてきて、今日になっても楽曲の構成を変更するなどの作業が続いた。それもあり、最終チェックがこの時間までかかったのだ。
「何とか完成して良かった」
先日の福王寺先生の誕生日には、午前0時過ぎに『氷砂糖』という新曲をプレゼントした。なので、胡桃にも同じように、誕生日になってすぐにプレゼントしたいと思っている。それもあり、全ての作業が終わって一安心だ。
今後、誰かの誕生日プレゼント用に送る曲を作るときには、計画的にやっていかないといけないな。
メッセンジャーの自分のアカウントの状態を『作業中』から、いつでも話せる『ログイン中』に変更する。その際、友人一覧の胡桃……桐花さんのアカウントの状態を見ると『ログイン中』になっている。桐花さんもパソコンの電源を入れているのか。
「おっ」
メッセンジャーのポップアップ機能で、『桐花さんからメッセージが届きました。』と表示される。俺のログイン状態が『ログイン中』に変わったから、桐花さんは俺にメッセージを送ったのだろう。
桐花さんとのトーク画面を開くと、
『低変人さん、ログイン状態になったね。アニメを観ていたの? それとも、私にプレゼントしてくれる曲の制作……とか?』
というメッセージが表示される。こう問いかけてくるのは、福王寺先生の誕生日に新曲をプレゼントしたのを桐花さんも知っているからだろう。
『正解です。桐花さんにプレゼントする新曲の最終チェックをしていました』
正直にそう返信する。
ちなみに、俺が敬語なのは、桐花さんの正体が胡桃だと分かるまでずっと敬語で話していたから。あと、正体が分かっても、メッセンジャーで話すときは敬語の方が落ち着くのもある。
『そうなんだ! 0時になるのが楽しみだなぁ』
『楽しみにしていてください。いい曲ができましたから』
『うん!』
その楽しみな気持ちに応えられる楽曲になっていたらいいな。
『15歳最後の夜だから、15歳の間に放送された好きなアニメを観てた』
『おぉ、いいですね。どんなアニメを観ていましたか?』
『『鬼刈剣』と『みやび様は告られたい』の2つ』
『どっちも好きですもんね。俺もこの1年間に放送されたアニメの中では、その2作品は上位にきますね』
『ふふっ、そっか。みやび様はリアルタイムで語ったよね。土曜日の夜に放送されていたから』
『放送された時間もそこまで遅くなかったですもんね』
また、放送時期は高校受験の時期と重なっていた。だから、桐花さんとみやび様を観ながらリアルタイムで語り合えたのはいい気分転換になったのを覚えている。
『15歳ラストに低変人さんとこうして話せて嬉しいよ』
『そう言ってくれると、俺も嬉しいです』
『あと、15歳の1年間を振り返ると、この1年は本当に大きな1年間だったよ。色々なことがあって、いい方向に変わったし』
『そうですか』
『うん。金井高校に入学できて。結衣ちゃんや姫奈ちゃん達と出会えて。2年前のことでゆう君に謝れて。美玲ちゃん達と決別できて。ゆう君に正体を明かせて。好きだって告白できて。本当にいい15歳の1年だった』
こうして文字で見ると……この1年の間に、胡桃には色々なことがあったのだとよく分かる。環境の変化と人間関係の変化だからかな。
『それは良かったです』
『うんっ! きっと、16歳としての1年もいい1年になる気がする』
『そうなることを願っています』
環境と人間関係が変わった今なら、きっとそうなるだろう。俺もネットとリアルの友人として、桐花さんと付き合っていけたらと思う。
それからは桐花さんが15歳の間に放送されたアニメについて語り合っていく。そのことで時間はあっという間に過ぎていき、気付けばパソコンに表示されている時刻が『23:59』となっている。
パソコンの時刻をクリックして、アナログ時計を表示させる。……残り30秒か。
桐花さんとは特にメッセージのやり取りすることなく、静かにそのときを待つ。その間の時間の進みは普段よりも遅く感じた。
「3、2、1……0!」
『桐花さん、16歳のお誕生日おめでとうございます!』
8月20日になってすぐ、俺はそんなメッセージを桐花さんに送った。その間にスマホが『ブルルッ』と何度も鳴る。きっと、胡桃も俺もメンバーになっているグループトークに、胡桃への誕生日メッセージが送られているのだろう。
『ありがとう! 低変人さん!』
『おめでとうございます。あとは、低変人としての新曲『優しい果実』を送りますね。桐花さんをイメージして作りました』
というメッセージの後、俺は『優しい果実』の音楽ファイルを桐花さんに送信した。
『ファイルきた! さっそく聴くね!』
『喜んでくれたら嬉しいです』
新曲『優しい果実』はおよそ5分の曲だ。遅くても5分後には桐花さんから感想のメッセージが届くだろう。
スマホを確認すると、LIMEの旅行メンバーのグループトークに複数のメッセージが届いていると通知が。グループトークを開くと、
『胡桃ちゃん! 16歳のお誕生日おめでとう!』
『胡桃! 誕生日おめでとうなのです!』
『お誕生日おめでとうございます! 胡桃さん!』
『華頂ちゃん! 誕生日おめでとう!』
『胡桃ちゃん、誕生日おめでとう! LIMEスタンプをプレゼントするわ!』
『胡桃ちゃん、お誕生日おめでとう! 明日はバイトがあってパーティーに行けないけど、ユウちゃんにプレゼントを持っていってもらうね』
結衣、伊集院さん、柚月ちゃん、中野先輩、福王寺先生、芹花姉さんが胡桃への誕生日メッセージを送っていた。全員、0時2分までに送っている。みんな胡桃の誕生日を待ち構えていたのかもしれない。俺も低田悠真として、
『胡桃。16歳の誕生日おめでとう』
というメッセージをグループトークと胡桃の個別トークに送った。また、個別トークの方には『優しい果実』の楽曲ファイルも。
『みなさん、ありがとうございます! 16歳になりました!』
胡桃からグループトークにはそんなお礼のメッセージが届き、俺との個別トークには、
『こっちにも送ってくれてありがとう、ゆう君』
というお礼のメッセージを送ってくれた。
LIMEでのメッセージをやり取りしている間に、0時5分を過ぎた。早ければ、もうそろそろ胡桃から曲の感想が届くはず。そんなことを思いながら、パソコンの画面を見ると、
『『優しい果実』聴いたよ! 優しい雰囲気のピアノ曲なんだね。とても癒やされたよ。勉強とかバイトの後に聴いたら疲れが取れそう』
桐花さんから新曲の感想が届いた。喜んでくれたようで嬉しい。
プレゼントした『優しい果実』はMIDIキーボードを使って制作したピアノ曲。胡桃をイメージして作った。胡桃はとても優しくて穏やかな性格の女の子なので、優しい雰囲気のメロディーが次々と浮かんだのだ。ピアノの音とも相性が良かった。MIDIキーボードを使って制作することはあまりないけど、これからは定期的に使ってみようかな。
『そう言ってもらえて嬉しいです。桐花さんは優しくて可愛い女の子ですし、本名の胡桃は果実の胡桃もありますから。それで、『優しい果実』という曲名にしました』
『そうなんだ。曲名の由来には照れちゃうけど、凄く嬉しいです』
『そうですか。好きなときに聴いてください。福王寺先生のプレゼントと同じく、この曲はネットには公開しません。ただ、桐花さんの意思で結衣達に聴かせるのはかまいませんから』
『分かった』
『改めて、16歳のお誕生日おめでとうございます』
『ありがとう! 明日……もう今日か。結衣ちゃん達と一緒にうちに来るのを楽しみにしてるよ。ケーキやスイーツを作って待ってるね!』
『分かりました。楽しみにしています』
明日は午後3時から胡桃の家で誕生日パーティーがある。楽しみだな。
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