高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

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2学期編2

エピローグ『おかえり』

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 9月12日、木曜日。
 今日も結衣達と一緒に学校生活を送っていく。授業の合間の10分休みや昼休みに、芹花姉さんから送られてきたメッセージや写真を見ながら。
 芹花姉さんは月読さん達と一緒にグルメを楽しんだり、最終日なのでお土産を買ったりしているという。
 芹花姉さんが送ってきてくれる写真は、楽しそうにしている姉さんや美味しそうな料理やスイーツが写っているから癒やされて。それは結衣達も同じようだった。



 午後8時頃。
 夕食を食べ終わった俺は、自分の部屋で読みかけのラノベを読んでいる。
 また、事前に芹花姉さんから、今くらいの時間に帰宅する予定だと聞いている。1時間半ほど前に姉さんから、

『東京に戻ってきたよ! 電車で家に帰るね!』

 というメッセージと、羽田空港での月読さんとの自撮り写真が送られてきたので、電車の遅れや運転見合わせがなければそろそろ帰ってくると思われる。
 アイスコーヒーをたまに口にしながら、ラノベを読んでいると、

「ただいまー!」

 と、部屋の外から芹花姉さんの声が聞こえてきた。姉さん……帰ってきたか。火曜日の朝以来に直接聞く姉さんの声はいいなって思う。
 読んでいるラノベをローテーブルに置き、俺は自分の部屋を出る。
 1階に降りてリビングに行くと、スラックスに長袖のブラウス姿の芹花姉さんの姿が。俺の足音に気付いたのか、俺が声を掛ける前に姉さんはこちらに振り向く。

「ユウちゃん、ただいま!」

 芹花姉さんは満面の笑顔でそう言ってくれる。そのことに心が温まり、頬が緩んでいくのが分かった。

「おかえり、芹花姉さん」
「うんっ! 火曜日以来のユウちゃんだー!」

 そう言うと、芹花姉さんは俺のことをぎゅっと抱きしめてくる。帰ってきて早々抱きしめるところが姉さんらしい。
 芹花姉さんに抱きしめられることで、姉さんの優しい温もりや甘い匂い、柔らかさが感じられて。それが心地いいなと思いながら、芹花姉さんの頭を優しく撫でた。

「北海道旅行は楽しかったか?」
「うんっ! サークルでの旅行は初めてだったけど、彩乃ちゃんとか友達が何人もいたから凄く楽しめたよ! それに、ユウちゃんにメッセージや写真を送って、夜には電話をしたからね」
「そうか。旅行を楽しめたみたいで良かったよ」

 メッセージや写真、夜の電話で旅行を楽しめていることは分かっていたけど、こうして実際に顔を合わせながら言われると嬉しい気持ちになる。旅行に行く前は寂しそうにしていたからかな。

「悠真の言う通りね。北海道旅行を楽しめたみたいで良かったわ」
「そうだな、母さん。あと、芹花が無事に帰ってきて良かった。おかえり、芹花」
「おかえりなさい」
「おかえり、姉さん」
「うんっ! みんなただいま!」

 と、芹花姉さんは可愛い笑顔で改めて「ただいま」と言った。姉さんの笑顔を見ると、無事に帰ってきて良かったと父さんが言ったのも納得だ。

「北海道のお土産、たくさん買ってきたよ!」
「そっか。どんなものか楽しみだな」

 リビングには芹花姉さんのスーツケースやバッグの他にも、紙の手提げが2つあって。たくさん買ってきたのは本当のようだ。
 芹花姉さんはスーツケースを開ける。ケースの中にはお店の袋と思われるものがいくつも入っていて。荷物になるから、スーツケースの中にも入れておいたのだろう。

「色々買ってきたんだな、姉さん」
「うんっ! これでも、自分や家族や明日バイト先に持って行くお土産だけを持って帰ってきたの。たくさん買ったからね。夏に一緒に旅行へ行った結衣ちゃん達や大学や高校時代の友達へのお土産は宅配便でうちに届けるように頼んだよ。土曜日のお昼過ぎに届く予定になってる」
「分かったわ。土曜日なら、ずっと誰かは家にいるから大丈夫よ」
「ありがとう」

 俺と芹花姉さん以外に夏の伊豆旅行に行ったメンバーは6人いるし、姉さんは友達が多い。だから、かなりの量のお土産を買ったと思われる。今日や明日渡したいわけじゃなければ、宅配便でうちに届けるのは賢明な判断だろう。

「ユウちゃんとお母さんとお父さんには、真っ白な恋人にキャラメルにバームクーヘンに……」

 と言いながら、芹花姉さんは俺達家族に買ってきてくれたお土産をローテーブルに出していく。
 真っ白な恋人にキャラメル、バームクーヘン、イカの塩辛、鮭フレーク。食べ物以外だとミルク石けん、俺に向けてシマエナガという白い鳥のストラップ、母さんにはハンドクリームとシマエナガのイラストが描かれたエコバッグ、父さんには北海道で有名なお店のおちょこを買ってきてくれた。
 ちなみに、真っ白な恋人というのは北海道のとても有名なお菓子で、チョコレートを挟んだクッキーだ。何年か前に、父さんが同僚の方からもらったものを食べて美味しかったことを覚えている。

「俺達家族にこんなに買ってきてくれたんだな。ありがとう、姉さん。シマエナガのストラップ、可愛いな。学校のバッグに付けるよ。お菓子や塩辛、鮭フレークも美味しそうだ」
「ありがとう、芹花。これからの季節はハンドクリームを特に使うし。お買い物ではエコバッグを使うから、これからはより買い物が楽しくなりそう」
「おちょこ嬉しいな。日本酒を呑むときに使わせてもらうよ。ありがとう、芹花」
「いえいえ! 喜んでくれて嬉しいよ!」

 そう言うと、芹花姉さんはニコッと笑った。
 芹花姉さんがたくさんお土産を買ってきてくれて嬉しいな。お菓子や魚介類系も好きだし、シマエナガのような可愛い雰囲気の鳥や動物も好きだから。母さんも父さんもお土産を嬉しそうに見ている。
 ――ぐうっ。
 近くから、誰かの腹の虫が鳴った。俺と母さんと父さんはさっき夕食を食べたので、この音の発生源は、

「お腹鳴っちゃった。お昼ご飯の後に口にしたのは、ペットボトルのお茶くらいだから」

 あははっ、と芹花姉さんは朗らかな笑顔で言った。移動もあったし、お昼以降に何も食べていなかったらお腹も空くか。

「新千歳空港でお弁当を買ってきたから、それを夕食で食べるよ」
「分かったわ、芹花」
「みんなもお土産をさっそく食べていいからね」
「じゃあ、夕食のデザートにさっそく何か食べるか。悠真、何がいい?」
「真っ白な恋人がいいな。北海道のお菓子といえばこれだから」
「分かった」

 その後、キッチンの食卓で芹花姉さんは夕食として新千歳空港で買った鮭&いくら弁当、俺と母さんと父さんは食後のデザートとして真っ白な恋人を食べる。俺達3人は母さんが淹れてくれたアイスティーと一緒に。
 真っ白な恋人を食べるのは久しぶりだけど、クッキーとチョコが合っていてとても美味しい。さすがは有名なだけある。姉さんがたくさん買ってきてくれたから、しばらくはこれを食べられると思うと嬉しいな。
 また、芹花姉さんは俺に鮭といくらが乗ったご飯を一口食べさせてくれた。それも凄く美味しくて。北海道で買ったものなのもあり、姉さんの旅行気分をお裾分けしてもらった感覚になった。

「ねえ、ユウちゃん。今夜も一緒にお風呂に入って、一緒に寝てもいい? 寝るまで一緒にいてもいい? 2日以上会えなかったから……」

 芹花姉さんは夕食を食べ終わったとき、俺にそんなお願いをしてくる。姉さんならお願いすると思っていたよ。離れていた分、今夜はずっと俺と一緒にいたいのだろう。

「いいよ、姉さん」
「ありがとうっ!」

 とても嬉しそうにお礼を言って、芹花姉さんは俺のことを抱きしめてきた。
 芹花姉さんの旅行の荷物を少し整理した後、俺達は一緒にお風呂に入ることに。
 月曜日と同じく、髪と背中は芹花姉さんと洗いっこした。
 芹花姉さん曰く、宿泊したホテルの大浴場で月読さん達と一緒に初めて入浴したので、月読さんと髪と背中を洗いっこしたのだという。月読さんがとても優しく洗ってくれたので気持ち良かったそうだ。月読さんも姉さんに洗ってもらうときは気持ち良さそうにしていたとのこと。
 芹花姉さん、俺の順番で髪と体と顔を洗った。

「芹花姉さん、入るよ」
「どうぞ~」

 全て洗い終わった俺は、芹花姉さんが浸かっている湯船に入る。姉さんと向かい合う形で浸かった。

「あぁ、温かくて気持ちいいな」
「そうだね。こっちも夜になると涼しくなってきたから、温かいお風呂が気持ちいいよ」
「そうだな。電話でも言ってたけど、北海道は日が暮れると肌寒くなったんだよな」
「うん。だから、ホテルの大浴場はとても気持ち良かったよ。露天風呂は特に」
「そっか」
「でも、ユウちゃんと一緒に入るうちのお風呂が一番気持ちいいよ!」
「ははっ! 姉さんらしいな」

 旅行から帰ってきた直後なのにそう言えるとは。しかも満面の笑顔で。さすがは芹花姉さんだ。思わず大きめの声で笑ってしまった。
 一番気持ちいいお風呂に入っているからか、芹花姉さんの笑顔が幸せそうなものになっていって。火曜日の朝から会っていなかったから、姉さんの笑顔を見ると嬉しい気持ちになるよ。

「ユウちゃん、何だかずっといい笑顔をしてるね。お姉ちゃんが帰ってきたから?」
「……そうだな。一緒に住んでいる家族が無事に帰ってきて嬉しいんだ。正直……ちょっと寂しいときもあったし」
「ふふっ、そっか。ユウちゃんがそう思ってくれて嬉しいよ。お姉ちゃんも彩乃ちゃん達と一緒にいて楽しかったけど、ユウちゃんがいないのが寂しく思うこともあったから」

 芹花姉さんは落ち着いた優しい笑顔でそう言う。
 正直な気持ちを言ったけど、芹花姉さんが笑顔で受け止めてくれて、嬉しいと言ってくれたことが嬉しい。

「芹花姉さん。改めて……おかえり」
「……ただいま、ユウちゃん!」

 芹花姉さんは帰ってきてから一番の笑顔でそう言った。
 それからは芹花姉さんとの約束通り、寝るまでずっと姉さんと一緒にいた。その中で姉さんは北海道旅行でのことをいっぱい話してくれて。笑顔で話すから、今回の旅行がとても楽しかったことが分かって。行く前は寂しそうにしていたから、楽しい旅行になって本当に良かった。



2学期編2 おわり



次のエピソードから2学期編3になります。
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