高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

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2学期編3

第16話『ベビーカステラの屋台』

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 結衣のスイーツ部の屋台でのシフトの時間が近くなったので、結衣と俺はうちのクラスのメイド&執事喫茶を後にする。
 結衣は教室後方のバックヤードに行き、体操着入れくらいの大きさの袋を持ってきた。
 結衣曰く、袋の中にはスイーツ部で作ったTシャツが入っているとのこと。スイーツ部の屋台で仕事をする際は、そのTシャツを着ることになっている。今はクラスTシャツを着ているため、結衣は第2教室棟の1階にある女子更衣室で着替えることに。
 胡桃と伊集院さんが同じ時間のシフトなので、女子更衣室で待ち合わせて一緒に屋台へ行く約束をしているという。また、結衣が服を取りに行ったとき、休憩していた接客係の女子が「2、3分前に伊集院さんが服を取りに来た」と教えてくれたとのこと。なので、既に2人が更衣室にいるだろうと結衣は推測している。
 これから結衣は屋台での仕事があるし、結衣と少しでも長く一緒にいたい。そう思い、結衣達がスイーツ部の屋台に行くまで俺も一緒でいいかと訊いた。すると、結衣は、

「もちろんだよっ!」

 と、快諾してくれた。そのため、俺は更衣室の前で待つことになった。

「じゃあ、着替えてくるね」
「ああ」

 結衣は俺に手を振って、女子更衣室に入った。
 さすがに女子更衣室の前で待つのはまずいので、男子更衣室の前で待つことに。
 ほんと、更衣室があるこのエリアは静かだな。うちのクラスの喫茶店は人はそこまで多くなくて落ち着いた雰囲気だったけど、人の多い場所をいくつも廻ったので静かなこの場所にいると落ち着く。
 スラックスのポケットからスマホを取り出し、SNSでうちの高校について検索する。文化祭の評判がどんな感じが気になったのだ。
 文化祭が楽しいとか最高といった旨の投稿がいくつもあるな。中には写真や短い動画付きで。うちのクラスの喫茶店について好意的な内容の投稿もあった。メイドさんが可愛いとか、執事さんがかっこいいとか、クレープが美味しいとか。良かった。
 スマホを眺めていると、

「お待たせ、悠真君! 姫奈ちゃんと胡桃ちゃんもいたよ!」

 結衣のそんな声が聞こえた。結衣の推測通り、伊集院さんと胡桃は更衣室にいたか。
 女子更衣室の方を向くと、目の前には淡いピンク色のスイーツ部のTシャツ姿の結衣と胡桃と伊集院さんが立っていた。みんな可愛いし、直接見るのは初めてなので、気付けば「おぉ」と声が漏れていた。

「写真を見たときにも思ったけど、結衣、凄く可愛いな。よく似合ってる。胡桃も伊集院さんも似合ってるな」
「ありがとう、悠真君! 嬉しいよ! このTシャツ可愛いよね」
「ゆう君ありがとう!」
「どうもなのです、低田君」

 結衣達は嬉しそうな笑顔でお礼を言った。結衣は特に嬉しそうで。とても可愛い恋人と友人達だ。結衣達がスイーツ部の屋台に立ったら、屋台に来る人が増えそうな気がする。

「一緒に写真撮ってもいいか? 結衣ともみんなとも」
「もちろんだよ!」
「いいよ、ゆう君」
「もちろんなのです」

 その後、俺のスマホで結衣とのツーショットや、胡桃と伊集院さんも一緒の自撮り写真を何枚か撮影した。また一つ、この文化祭の思い出ができたな。それらの写真はLIMEで3人に送った。
 俺達はスイーツ部の屋台に向かって出発する。
 文化祭1日目も終盤になったけど、第2教室棟を出てすぐのところにある屋台街は今もたくさんの人がいて盛り上がっている。
 結衣と伊集院さんと胡桃と一緒だから、結衣とデートしていたときよりも多くの人から視線が集まる。3人とも可愛いからなぁ。当の本人達はあまり気にしていないようだけど。

「今もいっぱい人がいるね。一緒に頑張ろうね、姫奈ちゃん、胡桃ちゃん!」
「頑張るのです!」
「一緒に頑張ろうね!」

 3人ともやる気いっぱいな様子。楽しそうな雰囲気もあって。結衣と伊集院さんは胡桃とクラスが違うだから、一緒に屋台の仕事ができるのが楽しみなのかもしれない。

「3人とも頑張って。応援してるよ」
「ありがとう! 文化祭終了までのシフトだけど頑張るよ!」
「ありがとう、ゆう君」
「どうもなのです」
「悠真君が来るのを待ってるね」
「ああ」

 結衣は胡桃と一緒に接客係だ。2人に接客されるのが楽しみだ。
 それから程なくして、スイーツ部の屋台の近くに到着した。今も屋台は盛況で多くの人が並んでいた。
 文化祭開始直前に接客係と福王寺先生の間でグータッチしたように、俺達4人の間でもグータッチした。その際、俺は3人に再度「頑張って」と言って。
 3人が屋台に入っていくのを確認し、俺は屋台から一旦離れる。3人がそれぞれの持ち場についたところで、スイーツ部の列に並ぶつもりだ。
 スイーツ部の屋台を見ていると、

『次の方、どうぞ!』

 結衣と胡桃がカウンターに登場し、声を揃えて元気良く言った。いい笑顔だ。その姿を確認して、俺はスイーツ部の屋台の列に並ぶ。
 結衣とのデートのときよりも列が長い気がする。お昼過ぎになって、おやつに甘いものを食べたい人が多いのだろうか。結衣と胡桃がカウンターに立ったし、ベビーカステラを作っている伊集院さんの姿も見えるので、今よりも列が長くなるかもしれない。
 一人で並んでいるけど、接客する結衣と胡桃やベビーカステラ作りをする伊集院さんの姿を見ているから退屈さは全くない。
 結衣は持ち前の明るい笑顔で、胡桃は落ち着いた笑顔で接客している。結衣は快活な性格だし、胡桃は入学直後から書店での接客バイトをしているのでさすがだと思う。あと、結衣は商品を用意してお客さんに渡す係、胡桃がお客さんと金銭のやり取りをする係で分担しているようだ。胡桃はバイト経験が豊富だから、妥当な分担だと思う。
 伊集院さんは……エプロンを着けて部員と楽しくベビーカステラを作っている。綺麗に丸く作っていて凄い。いい手つきだし。

「ユウちゃん」
「悠真君」

 芹花姉さんと月読さんの声に呼ばれたので、声がした方に顔を向けると、近くに姉さんと月読さんがいた。

「芹花姉さんに月読さん」
「結衣ちゃん達にシフトの時間を教えてもらっていたから、それに合わせて屋台に来たの」
「そうだったんだ」
「まあ、味が3種類あるから、お昼に一度寄ったんだけどね」
「抹茶味とココア味が珍しいからその2つを買って、芹花ちゃんと半分こしたの。食べさせ合ってね」
「結衣と俺と一緒ですね。俺達もデートで抹茶味とココア味を買って、半分ずつ食べたんです。食べさせ合いもしました」
「そうだったんだ!」
「同じだったんだね」

 芹花姉さんと月読さんは楽しそうな様子でそう言った。

「彩乃ちゃん、私達も並ぼうか」
「そうだね」
「ユウちゃん、あとで私達と一緒に食べない?」
「それいいね、芹花ちゃん」
「いいですよ。あとで一緒に食べましょう」
「うんっ!」
「また後でね、悠真君」

 そう言い、芹花姉さんと月読さんは列の最後尾へ向かった。
 芹花姉さんと月読さんのように、結衣と伊集院さんと胡桃のシフトに合わせてスイーツ部の屋台に来る人は多いかもしれないな。

「スイーツ部のみんなが作ったベビーカステラ美味しいですよ! プレーンはもちろん、抹茶やココア味もありますよ! 是非、買ってみてくださいね!」

 気付けば、屋台の近くにメイド服姿の福王寺先生がおり、ベビーカステラの宣伝をしていた。
 メイド服姿の女性が現れたのもあり、男性達からは「おおっ」という声が、女性達からは「きゃあっ」とか「可愛いっ」といった黄色い声が飛ぶ。芹花姉さんと月読さんの声も聞こえる。
 みんなの反応が嬉しいのか、福王寺先生はニッコリと笑って両手で手を振る。そのことで男女問わず歓声が上がって。何だかアイドルみたいだな。下手な女性アイドルよりも人気出そう。
 福王寺先生は俺のことを見つけると、嬉しそうな様子で俺のところにやってきた。

「低田君、うちの屋台の列に並んでいるんだね!」
「ええ。結衣達がシフトに入っていますから。デートで抹茶とココアを食べたので、今回はプレーンを買うつもりです。抹茶もココアも美味しかったので、プレーンも期待してます」
「さっき言った通り美味しいよ。並んでくれてありがとう!」
「いえいえ。……先生は部活の様子を見に?」
「うん! それに、今はクラスでの教え子や胡桃ちゃんがシフトに入っているからね。3人がシフトに入っている間には必ず様子を見に行こうって決めてたの」
「そうだったんですね」

 結衣と伊集院さんはクラスで受け持っているし、胡桃は数学の授業を教えている。あとは3人とも1年生なのもあって、様子を必ず見に行こうと決めていたのだろう。あとは、プライベートでも仲のいい3人が、部活Tシャツ姿で働いている姿を見たい気持ちもあるかもしれない。

「結衣も胡桃も伊集院さんも、自分の仕事をちゃんとこなしているように見えます」
「そうだね。結衣ちゃんと胡桃ちゃんは笑顔で接客してるし、姫奈ちゃんはいい手つきでカステラを作ってる」
「ええ。……あと、先生は今もメイド服姿なんですね」
「うん。まだメイド服姿を見せていない部員もいるからね。それにメイド服姿が好評だから」
「ここにいる人達の反応に嬉しそうでしたもんね」
「うんっ」

 と、福王寺先生は笑顔で首肯する。本当に可愛いな、このスイーツ部メイド顧問。

「とても似合っていますよ。あと、屋台の宣伝にいいと思います。クラスの喫茶店の宣伝にもなりそうですし」
「そうだね。この服装でここに来るからか毎回注目されるし。明日もメイド服姿で屋台の様子を見に来ようかな」
「それもいい選択肢の一つじゃないでしょうか」
「そうだね! ……プレーンを美味しく食べてくれたら嬉しいな」
「はい。……あと、後ろに芹花姉さんと月読さんが並んでいますよ」
「いたね。話してこようっと」

 福王寺先生はそう言うと、俺に小さく手を振って俺から離れた。その直後、背後からは芹花姉さんと月読さんと先生の楽しそうな話し声が聞こえてきた。
 その後も列での時間を過ごす。
 接客をする結衣と胡桃、カステラ作りをする伊集院さん、呼び込みをしたり、列整理をしたりしている福王寺先生を見ているから結構楽しい。それもあって、俺の番になるまではあっという間だった。

『次の方、どうぞ!』

 結衣と胡桃は元気良く言った。2人とも可愛いから看板娘って感じがする。そのことに頬が緩んでいくことを感じながら、俺はカウンターへと向かった。

「2人ともお疲れ様。ここまではどうだ?」
「胡桃ちゃんと一緒にカウンターに立っているから楽しいよ! 調理場には姫奈ちゃんもいるし!」
「あたしも楽しいよ。結衣ちゃんとカウンターに立っているし、2人と一緒に仕事をするのは初めてだから」
「それは良かった」

 この3人で一緒に仕事をするのは初めてだから楽しいか。きっと、これも今年の文化祭の思い出の一つになるのだろう。

「悠真君。ご注文をお伺いします」
「プレーンを一つお願いします」
「プレーンをお一つですね。……事前にプレーンを買うって聞いていたけど、こうして注文を受けるのっていいね」
「そうだな」
「ふふっ。200円になります、ゆう君」

 財布を見ると……100円玉が1枚しかない。500円玉があるから500円出すか。そう決めて、胡桃の前に置いてあるキャッシュトレイに500円玉を置いた。また、その直後に結衣がプレーンのベビーカステラの入ったカップを持ってきた。

「500円お預かりします」

 胡桃は落ち着いた笑顔でそう言い、キャッシュトレイに置いてある500円を手に取り、手提げ金庫に入れた。

「300円のおつりになります」

 手提げ金庫からおつりの300円を取り出し、キャッシュトレイに置いた。さすがは普段から接客のバイトをしているだけあって、お金の取り扱いも手慣れた感じがする。そう思いながら、俺はキャッシュトレイから300円を手に取って財布に入れた。

「はい、悠真君。プレーンのベビーカステラになります!」

 満面の笑顔の結衣から、プレーンのベビーカステラが入ったカップを受け取る。何だか感動だ。

「ありがとう、結衣」

 俺は右手で結衣の頭を優しく撫でる。
 結衣の笑顔がニッコリとした可愛いものに変わり、結衣は「えへへっ」と声に出して可愛く笑う。

「頭撫でられて嬉しい」
「良かったね、結衣ちゃん」
「うんっ! ……あと、このカステラは姫奈ちゃんが作ったんだよ」
「そうなんだ」

 このベビーカステラ、伊集院さんが作ったんだな。どれも綺麗に丸くできていて美味しそうだ。甘くていい匂いもするし。
 俺は屋台の中を覗き込む。

「伊集院さん、プレーンのカステラいただくよ」
「はいっ。美味しく食べてもらえたら嬉しいのです」

 調理場にいる伊集院さんは笑顔でそう言い、俺に向かって小さく手を振ってきた。俺はそんな伊集院さんに手を振った。

「じゃあ、結衣、胡桃、この後もお仕事頑張って。伊集院さんも。あと、気付いているかもしれないけど、芹花姉さんと月読さんが並んでいるから」
「さっき、悠真君と話しているのが見えたよ。この後もお仕事頑張るね。ありがとう、悠真君!」
「ゆう君ありがとう」
「ありがとうございます、低田君」

 俺は3人に手を振りながら、スイーツ部の屋台を後にした。
 芹花姉さんと月読さんとベビーカステラを一緒に食べる約束をしているから、2人が来るまでは食べずに待つか。人の数が落ち着いたところまで移動しよう。その際、

「あっ、悠真。カステラ買ったんだね。あたしも買うんだー」

 友人達と一緒に列に並んでいる中野先輩を見つけた。先輩も結衣達のシフトの時間を知っているので、それに合わせて来たのだという。
 スイーツ部の屋台の方を見ると……芹花姉さんと月読さんの順番まではあと少しか。あと、俺が並び始めたときよりも列が長くなっている気がする。
 それから数分ほどして、芹花姉さんと月読さんの番になった。結衣と胡桃は楽しそうに接客していて。伊集院さんもカステラを作りながら何か喋っているようだった。
 芹花姉さんと月読さんはカップを持って俺のところにやってくる。

「お待たせ、ユウちゃん」
「悠真君、お待たせ。待ったかな?」
「いえいえ。スイーツ部の屋台の様子を見ていたらあっという間でした」
「それなら良かった」
「そうだね。……ユウちゃん、彩乃ちゃん、3人で一緒に写真撮らない?」
「ああ、いいぞ」
「もちろん!」
「ありがとう!」

 その後、芹花姉さんのスマホで俺達3人のスリーショットを自撮りした。ベビーカステラもちゃんと入れて。その写真は姉さんに送ってもらった。

「じゃあ、ベビーカステラ食べようか!」
「そうだね!」
「ああ。いただきます」
『いただきます!』

 俺は黄色いピックを手に取り、プレーンのベビーカステラを一つ食べる。
 口に入れた瞬間、カステラの優しい甘い匂いが感じられて。咀嚼すると、口いっぱいに甘味が広がっていく。甘くて美味しいなぁ。あと、ふんわりとした柔らかい食感で。伊集院さん、作るの上手だな。

「プレーンも美味しいね!」
「そうだね、芹花ちゃん! 姫奈ちゃん作るの上手だね」
「上手ですよね。プレーンのベビーカステラも美味しいです」

 さすがはスイーツ部の一員だけのことはある。

「こうしてユウちゃんと一緒に屋台のものを食べると懐かしい気持ちになるね」
「確かに懐かしいな。姉さんが在学生のときに文化祭に行ったら、いくつも屋台を廻ったもんな。今みたいに姉さんの友達とも一緒に」
「だよね。今までとは違って、今回はユウちゃんがクラスTシャツを着て、私が私服だけど」
「ははっ、確かに」

 服装は違うけど、芹花姉さんが美味しそうに食べる姿は変わらない。だから、懐かしい気持ちになれるのだ。

「芹花ちゃんが在学生のときに悠真君が遊びに来たらこんな感じなんだって思ったよ。廻っているとき、芹花ちゃんから悠真君との思い出話をいくつも聞いたから」
「そうでしたか」
「文化祭仕様になってる高校に来たら色々と思い出してさ」

 芹花姉さんはニコニコ顔でそう言う。きっと、今のような笑顔で、月読さんに文化祭での俺絡みの思い出を語ったんだろうな。

「そういえば、ユウちゃんってこの後どうするの? 結衣ちゃん達は文化祭終了まで屋台のお仕事があるし」
「……全然考えてなかったな。スイーツ部の屋台に行って、結衣達に接客されるのが楽しみすぎて」
「そうだったんだ。ユウちゃんらしいね」
「分かる。悠真君らしいよね」

 ふふっ、と芹花姉さんと月読さんは声に出して笑う。ただ、朗らかに笑っているので、俺のことを馬鹿にしているわけではないと分かって。それもあって、2人につられて俺も声に出して笑う。

「じゃあ、今までみたいに、お姉ちゃんと友達の彩乃ちゃんと一緒に廻る?」
「芹花姉さんと月読さんさえよければ、俺はかまわないけど」
「私はOKだよ!」
「悠真君なら私もいいよ」
「ありがとう、彩乃ちゃん!」
「ありがとうございます」
「いえいえ。じゃあ、3人で廻ろうね」

 月読さんは優しい笑顔でそう言った。
 去年までのように、芹花姉さんや姉さんの友達と一緒に廻るのも面白そうだ。

「ユウちゃん、ベビーカステラ食べさせてあげる!」

 あ~ん、と芹花姉さんはピックで刺したベビーカステラを俺の口元まで運んでくる。そういえば、文化祭ではこうして姉さんに食べさせてもらうことがあったな。

「いただきます。あーん」

 芹花姉さんにベビーカステラを食べさせてもらう。素直に応じたのが嬉しかったのか、姉さんは「ふふっ」と声に出して笑う。

「美味しい?」
「うん、美味しい」
「良かった。じゃあ、俺からも」
「ありがとう! あ~ん」

 芹花姉さんにベビーカステラを食べさせる。
 俺から食べさせてもらったからか、さっきよりも嬉しそうな様子で食べていて。実の姉だけど結構可愛いな。

「美味しい!」
「良かったね、芹花ちゃん。あと、芹花ちゃんが話してた通り、悠真君と食べさせ合うんだね。今の芹花ちゃん凄く可愛かった」
「俺も可愛いなって思いました」
「だよねっ」
「そこまで可愛いって言われると、嬉しいけどちょっと照れちゃうな」

 えへへっ、と芹花姉さんははにかむ。そんな姉さんも可愛らしい。
 それからも芹花姉さんと月読さんと一緒にベビーカステラを食べる。芹花姉さんは俺と月読さんと何回か食べさせ合って。
 また、食べている間に、結衣の御両親、伊集院さんの御両親、志田さんと御園さんと会った。全員、結衣達からシフトを聞いていたので、それに合わせて来たのだという。
 ベビーカステラを食べ終わった後は、3人で屋台を廻ることに。
 たこ焼きやりんご飴など、屋台での王道の食べ物を楽しんでいく。芹花姉さんとは食べさせ合うこともあって。だから、懐かしい気持ちになって。結衣とのデートも良かったけど、こうして姉さんや姉さんの友人の月読さんと過ごすのもいいな。
 芹花姉さんと月読さんと一緒に過ごしていたら、文化祭も終了間際になった。スイーツ部の屋台を見に行くと、結衣達は変わらず元気良く接客していた。
 そして、午後3時半。

『これにて、金井高校文化祭1日目を終了いたします。生徒のみなさん、職員のみなさん、来校されたみなさん、本日はありがとうございました! 明日の2日目も楽しみましょう!』

 校内放送の形で文化祭実行委員長によって挨拶され、文化祭1日目が終わった。その瞬間、
 ――パチパチ!
 と、生徒達を中心に拍手し始める。芹花姉さんも。終わったときには拍手するのが慣例なのだろうか。
 俺も姉さん達に倣って拍手をする。月読さんも。スイーツ部の屋台を見ると、結衣と胡桃と伊集院さんも拍手していた。
 拍手の音がどんどん大きくなっていったのであった。
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