高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

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2学期編3

第15話『文化祭デート-後編-』

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 ベビーカステラを食べた後は3年のクラスの屋台で買ったフランクフルトを食べ、結衣の友人達のクラスの出し物をいくつか見に行く。
 出し物は縁日や迷路など様々で、結衣と一緒に楽しむ。結衣の友達には決まって「ラブラブだね」と言われるので嬉しい気持ちに。結衣は上機嫌で。
 途中で芹花姉さんと月読さんに会った。食べ物系中心に出し物に行ったり、姉さんが在学生のときにお世話になった先生方に再会できたりして楽しんでいるとのこと。また、お世話になった先生のうちの一人が受け持つクラスが校庭でソーラン節を踊り、それを見て感動したのだそうだ。
 また、俺の希望で体育館のステージを見に行く。明日は弾き語りライブの本番なので、お客さん側からでも文化祭当日の会場の雰囲気を体感しておきたかったのだ。
 開会式のときとは違い、体育館の中にはパイプ椅子が並べられている。たくさんの人が椅子に座っている。
 俺達が行ったときにはダンス部がパフォーマンスしていた。ダンスの上手さはもちろんのこと、BGMにアップテンポなヒット曲を使っているのでかなり盛り上がっていて。俺も知っている曲なので結衣と一緒に結構楽しめた。
 演目が終わったときには拍手喝采。俺も結衣もステージにいるダンス部の部員達に拍手を送った。「良かった!」「最高だった!」などと称賛する声も聞こえてきて。

「凄かったね、悠真君!」
「ああ、凄かった。ダンスなのもあって盛り上がったな」
「そうだね!」

 ダンス部のパフォーマンスが凄かったからか、結衣はちょっと興奮気味だ。

「……いい刺激になった。明日は、今みたいに来てくれた人達が『良かった』とか『最高だった』って思ってもらえるような弾き語りライブにしたいな。こんなに多くの人達の前では弾き語りはしたことないから緊張もあるけど」

 俺の弾き語りライブは明日の午後だけど、今から緊張してしまう。練習はしているけど、多くの人達の前でちゃんとパフォーマンスできるのかと。俺の弾くギターの音色と俺の歌声で、ここに来てくれた人達を喜ばせることができるのかと。そういった不安な気持ちも段々湧いてくる。

「悠真君なら大丈夫だよ! 悠真君の弾き語りはとても上手で、凄くいいなって思っているし。オーディションを通過したってことは、ステージに立っても大丈夫な実力があるって認められているんだし。それに、本番は私とか姫奈ちゃんとか胡桃ちゃんとか杏樹先生とかお姉様とか……みんなが客席にいるから」

 結衣は明るさと優しさの感じられる笑顔でそう言ってくれる。俺の右手に手を重ねてきて。結衣の笑顔や手の温もりのおかげで、不安な気持ちが少しずつ霧散していく。
 これまでに弾き語りを披露したときの結衣達はいいねって褒めてくれた。オーディションも通過できた。だから、本番でもいつも通りに弾き語りをすれば……きっと大丈夫だ。

「ありがとう、結衣。落ち着いてきた」
「いえいえ。明日のライブ、楽しみにしてるね!」

 ニコニコとした笑顔でそう言ってくれる結衣。そんな結衣に「ああ」と返事をして、結衣の頭を優しく撫でた。
 明日は弾き語りを聴いた人達がいいなと思えるライブにして、結衣にはかっこいいとも思ってもらえるようなライブにしたいな。そして、楽しみたい。

「この後もステージを見ていくか? それとも、他のところに行く?」
「他のところがいいな。実は1つ行きたいところがあって……」
「いいぞ。行きたいところってどこなんだ?」
「うちのクラスの喫茶店」
「うちの?」

 予想外のところだったので、間の抜けた声になってしまった。結衣は「ふふっ」と笑いながら首肯する。

「うん。お客さんとして悠真君と一緒に行ってみたいなって。これまでも悠真君と喫茶店で一緒にいたけど、それは接客係としてだったから」
「なるほどな。お客さんとして行くのも面白いかもしれないな。じゃあ、うちのクラスの喫茶店に行くか」
「うんっ」

 希望するメイド&執事喫茶に行くことになったからか、結衣は嬉しそうに返事をした。
 俺達は体育館を後にして、うちの教室に向かって歩き出す。
 午後になったけど、学校の中はどこも賑わいを見せている。生徒達も来校した方々も楽しそうで。ほんと、いい雰囲気だ。そんな場所を恋人の結衣と手を繋ぎながら歩けていることがとても嬉しい。
 うちの教室がある第2教室棟に入るとき、スイーツ部の友人達と一緒にいる胡桃や伊集院さんと会った。2人は友人達と一緒にクラスや部活の出し物を楽しめているとのこと。お昼でお腹が空いていたので食べ物系を中心に。また、屋台街にいたとき、休憩中の福王寺先生と会って、中野先輩のクラスの焼きそばを一緒に食べたとのこと。
 この後にスイーツ部のシフトがあるのでそのときに会おうと言い、胡桃や伊集院さんと別れた。
 第2教室棟に入り、うちの教室がある2階へ向かう。
 うちの教室があるこのフロアも依然として賑わっている。
 胡桃のクラスのお化け屋敷の前を通り過ぎ、うちのクラスもメイド&執事喫茶が見えてきた。盛況なようで、廊下に置いてある待機用の椅子に私服姿の女性が1人座っている。
 椅子に空きがあるので、結衣、俺の順番で椅子に座った。

「いってらっしゃいませ、ご主人様」

 俺達が座ってすぐ、教室から男性1人が出て、文化祭実行委員の田中さんが男性を見送った。

「お嬢様。カウンター席であれば、すぐにご案内できますが」

 と、田中さんは結衣の前に座っている女性に問いかける。

「カウンター席でかまいません」
「かしこまりました。お次は……2名様ですね。お嬢様、ご主人様」

 田中さんは俺達のことを見ながらそう言った。俺達がカップルだと分かっているし、デートすることも知っているので、何名で利用するのか確認せずに「2名様ですね」と言ったのだろう。

「はい、2名です!」
「かしこまりました。現在、店内は混んでおりますので、もう少々お待ちくださいませ」
「うん、分かったよ。あと、ここまでお疲れ様、沙羅ちゃん」
「お疲れ様、田中さん」

 俺達がそう言うと、田中さんはニコッと笑って「ありがとうございます」と言って俺達に頭を下げ、教室の中に入っていった。

「中身は分かっているけど、喫茶店楽しみだね」
「ああ。楽しみだな」

 結衣と一緒に、お客さんとしてメイド&執事喫茶を楽しみたい。
 その後もお客さんが来て、立って並ぶお客さんも。田中さんなど接客係の生徒達が待機列の整理をしたり、何名で利用するのか訊いたりしていた。
 俺達が待機列の椅子に座ってから10分ほどで、教室から男女のお客さんが出てきた。それから程なくして、

「次のお嬢様とご主人様、店内へどうぞ。おかえりなさいませ!」

 俺達の番となり、田中さんによって店内の2人用のテーブル席に案内された。その際に店内を見渡すと……接客係のみんなは落ち着いて接客しているな。あと、福王寺先生もメイドとして接客していて。あと、俺達に気付いた何人かのクラスメイトが手を振ってきたので、俺達は手を振った。
 俺と結衣は向かい合う形でテーブル席に腰を下ろす。

「こちらがメニュー表になります。ご注文がお決まりになりましたらお呼びくださいませ」

 田中さんはそう言うと、軽くお辞儀をして俺達のテーブルから離れた。

「何にしようかなぁ」
「……私、クレープを食べようかな。小腹が空いたし。それに、この後はスイーツ部のシフトが入っているし」
「おっ、いいんじゃないか。……何だか、俺もクレープを食べたくなってきたな」
「ふふっ。あるよね、そういうこと」
「ああ」

 クレープはチョコバナナクレープといちごクレープの2種類がある。どちらも興味があるけど、今の気分は、

「俺はチョコバナナクレープにしようかな」
「いいね。私はいちごクレープにしようっと。それで一口交換しない?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとう!」

 結衣は嬉しそうにお礼を言った。どちらのクレープも食べられるから嬉しいのだろう。俺も嬉しい。
 その後、結衣が田中さんのことを呼び、結衣はアイスティーといちごクレープ、俺はアイスコーヒーとチョコバナナクレープを注文した。
 改めて、店内を見渡す。
 午前中に3時間ほど接客したけど、今はお客さんとして来ているから、店内はちょっと新鮮に思えて。席に座ってゆっくりしているのもあり、とても落ち着いた雰囲気に感じられる。
 あと、接客係の生徒や福王寺先生が着ているメイド服や執事服を統一しているから、ここが本当のメイド&執事喫茶って感じがしていいな。それに、

「美味しくな~れ、美味しくな~れ、萌え萌えきゅん!」

「美味しくなーれ」

 と、メイドも執事も美味しくなるおまじないをしっかりとかけているし。いい喫茶店だなって思う。

「どうしたの、悠真君。お店の中を見て、いい笑顔になって」
「店内の様子を見ていたんだ。落ち着いた雰囲気のいい喫茶店だなって思った」
「そうだったんだ。……いい雰囲気だよね。あと、メイド服と執事服を統一したから、本物のお店みたいだなって思えるよ」
「俺も思った。お店の制服って感じがするもんな」
「うんうん」

 と、結衣はニコッと笑いながら何度も頷く。結衣も同じ想いで嬉しいな。
 結衣と今日の文化祭のことで雑談しながら、注文したメニューが来るのを待つ。結衣とのデート中だし、こういう待ち時間も楽しい。

「お嬢様、ご主人様、お待たせしました!」

 注文してから数分ほどして、田中さんが俺達の注文したメニューを持ってきた。また、俺達がお客さんだからか、福王寺先生もやってきて。田中さんと一緒におまじないをかけてくれるのかな。
 田中さんは俺達の前に注文したメニューをテーブルに置く。アイスコーヒーもチョコバナナクレープも美味しそうだ。結衣のアイスティーといちごクレープも。

「では、私達が美味しくなるおまじないをかけさせていただきますね!」

 田中さんがハキハキとした声でそう言うと、田中さんと福王寺先生は両手でハートのマークを作って、

『美味しくな~れ、美味しくな~れ、萌え萌えきゅん!』

 声を揃えて、美味しくなるおまじないをかけてくれた。
 接客しているときも、おまじないをかける結衣達が可愛いと思っていたけど、自分に向けてかけてくれるとより可愛いと思える。おまじないのおかげで、目の前にあるアイスコーヒーとチョコバナナがもっと美味しそうに見えるよ。おまじないって凄いね。

「可愛いっ! きゅんっ!」

 結衣は小さく拍手をしながら喜ぶ。個人的には2人以上に結衣が可愛いのですが。

「可愛いよな、結衣。おまじないのおかげで、コーヒーとクレープがより美味しそうに見える」
「分かる!」
「ふふっ、お嬢様とご主人様にそう言ってもらえて嬉しいです」
「私も嬉しいです。お二人の注文したメニューにおまじないをかけられたことも」

 本心からの言葉だと示すように、福王寺先生は嬉しそうな笑顔で言う。結衣と俺はプライベートでも親交があるから、おまじないをかけることができて嬉しいのだろう。
 あと、メイド服姿の福王寺先生は大人の色気を感じさせるけど、今の笑顔は幼子のような可愛らしさがあって。本当に魅力的なメイドさんだよ。

「そう言ってもらえると、俺も嬉しくなりますね」
「私もですっ!」
「ふふっ。……ごゆっくり」
「ごゆっくり!」

 福王寺先生と田中さんはそう言うと、お辞儀をしてテーブルから離れていった。
 スマホで自分の注文したメニューや、結衣と結衣の注文したメニューの写真を撮影した。結衣も俺の注文したメニューを俺と一緒に撮影してくれたので、お互いにLIMEに写真をアップした。

「それじゃ、いただきます!」
「いただきます」

 まずはチョコバナナクレープを食べよう。
 調理係の生徒達が事前に練習したり、福王寺先生と田中さんがおまじないをかけてくれたりしたからとても美味しそうだ。期待が膨らむ中、俺はチョコバナナクレープを一口食べた。

「うん、美味しい」

 とても甘くて美味しいな。チョコとバナナはもちろんのこと、ホイップクリームともよく合っていて。皮は既製品を使っているのもあり、食感やほんのりとした甘味がいい。
 いちごクレープを食べた結衣は「う~ん!」と可愛らしい声を上げて、

「いちごクレープ凄く美味しい! 美味しくなるおまじないのおかげだろうね」

 と、幸せそうな笑顔でそう言った。

「きっとそうだろうな。チョコバナナも凄く美味しいぞ」
「そうなんだね!」

 そう言い、結衣はいちごクレープをもう一口。美味しいからか、ニッコリとした笑顔で食べていて。本当に可愛いな。
 結衣の笑顔を見ながらもう一口食べると、一口目よりも美味しく感じられた。また、アイスコーヒーも甘いチョコバナナクレープとよく合っていて美味しい。

「ねえ、悠真君。約束通り、クレープ交換しよっか」
「ああ、しよう」
「じゃあ、まずは私から。はい、あ~ん」

 と言い、結衣は俺の口元にいちごクレープを差し出してくれる。
 あーん、と言って、俺は結衣のいちごクレープを一口食べる。……チョコクレープがとても甘いからだろうか。いちごクレープはいちごの甘酸っぱさもあって結構さっぱりとした印象だ。

「いちごの方も美味しいな。いちごが甘酸っぱいから、結構さっぱりしてる。チョコバナナの方が甘いのもあるけど」
「生クリームとかもあるけど、さっぱりしてて美味しいよね」
「ああ。じゃあ、俺のチョコバナナをどうぞ」
「うんっ、いただきます」 

 あ~ん、と結衣にチョコバナナクレープを一口あげる。俺が持っているクレープを食べるので、クレープにかぶりつく瞬間が可愛く思えて。
 クレープを口に入れた直後、結衣は「う~んっ!」と甘い声を漏らす。チョコバナナの方はどうだろうか。

「チョコバナナも美味しいね! イチゴクレープの後だから結構甘く感じる。こっちも好きだなぁ」
「そうか。良かった。チョコバナナも美味しいよな」

 俺が一口あげたものを美味しく食べてくれて、しかも好きだとも言ってくれると結構嬉しい気持ちになる。

「2種類とも食べられて幸せです。ありがとう、悠真君」
「いえいえ。こちらこそありがとう」
「いえいえ」

 その後もスイーツやドリンクを楽しんだり、結衣と談笑したりしながら、喫茶店での時間をゆっくりと過ごした。
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