137 / 167
特別編5
第2話『アイス』
しおりを挟む
「ふふっ、いい下着を買えました」
無事に下着を3着購入し、俺達は下着売り場を出る。俺が選んだり、サイズが合う下着が買えたりしたのもあってか、氷織はかなり嬉しそうだ。氷織の笑顔を見ていると、彼氏として下着を選んで良かったと思う。
「下着を選んでくださってありがとうございます、明斗さん」
「いえいえ。俺も楽しかったよ。色々な下着を試着した氷織を見られたし。こちらこそありがとう」
しばらくの間は、スマホにある下着姿の氷織の写真を見たら、今日のことを思い出しそうだ。会計を担当した女性店員が、ニヤニヤしながら何度も俺を見ていたことを含めて。一緒に選ぶところや試着室前での様子を見ていたのかもしれないな。
「私も楽しかったです。これからも、下着は明斗さんに選んでもらいましょうかね」
「選んでほしいときには遠慮なく言ってくれ」
「ふふっ、分かりました。そのときはよろしくお願いしますね」
「ああ」
俺が選ぶことで氷織が喜んでくれるのなら、喜んで。
「今日買った下着は今度のお泊まり女子会の日に付けましょう」
「そっか。確か、今週末にお泊まり女子会をするんだっけ」
「ええ。沙綾さんと恭子さんと美羽さんが家に泊まりに来ます。みんなで夜ご飯を食べたり、お菓子を食べながら『秋目知人帳』のアニメを観たりする予定です」
「そうか。楽しい女子会になるといいね」
「はいっ!」
ニコッと笑いながら氷織はそう言った。本当に楽しみにしているのだと分かる。
お泊まり女子会ってことは、きっと火村さんは氷織と一緒にお風呂に入るんだろうな。葉月さんがお泊まりしたときに、氷織と妹の七海ちゃんとお風呂に入ったことを以前聞いて羨ましがっていたから。氷織のベッドで一緒に寝るかもしれないな。女の子同士だし止めるつもりはない。火村さんは相変わらず氷織LOVEだけど、氷織が嫌がることはしないだろう。
あと、当日は女子会なので、こちらからメッセージや電話をするのは控えておくか。普段から、夜にメッセージや電話をする。夏休みに入ってからは、バイトなどがあって氷織と会わなかった日は、夜に長めに電話することもあるけども。
――ぐううっ。
ちょっと大きめにお腹が鳴ってしまった。お昼ご飯はそうめんだったからかな。食べたのも2時間以上前だし。氷織の家まで自転車を漕いだり、氷織の家から東友まで歩いたりしたからなぁ。
「お腹空きましたか?」
「ちょっとな。お昼ご飯を食べたのも2時間以上前だから」
「そうですか。私もちょっとお腹空きましたし、せっかく東友に来ましたから一階にあるフードコートでアイスを食べませんか?」
「おっ、アイスいいね。今日は暑いし、あのアイス屋さんは美味しいのがいっぱいあるし」
「ですね。では、行きましょうか!」
アイスを食べるのが楽しみなのか、氷織は楽しげな様子で俺の手を引いてくる。東友に来てから、氷織に手を引かれることが多いな。
下りのエスカレーターに乗って、俺達はフードコートのある1階まで降りる。
1階に降りてフードコートに行くと、結構多くの人で賑わっている。俺達のようなカップルもいれば、学生らしき若い世代のグループ、親子連れなど世代や年齢問わず様々。これまで、氷織と一緒に放課後デートなどでアイスを食べに何度か来たことがあるけど、ここまで人が多いのは初めてだ。夏休みだからだろうか。
フードコートには目的のアイス屋さんはもちろん、ラーメン、うどん、ファストフード、コーヒーと紅茶メインのドリンクショップなど様々な飲食店が入っている。だから、色々な飲食物の匂いが香ってきて。そのことでお腹がより空いてきた。
どのお店にも列ができているけど、アイス屋さんは特に長い列になっている。俺達と同じようなことを考えている人が多いのかな。そんなことを思いながら、俺達はアイス屋さんの列の最後尾に並んだ。1列なので氷織を先にして。
「この長さなら、10分ほどで私達の番になりそうですね」
「そうだな。今日は晴れて暑いから、アイスを食べたい人が多いんだろうな」
「そうですね。ここには美味しいアイスがいっぱいありますから」
「ああ。今日はどのアイスにしようかなぁ……」
「迷っちゃいますよね」
ふふっ、と氷織は楽しそうに笑う。
氷織と一緒だし、こうして何のアイスを買おうか考えるのも楽しいから、長い列に並んでいても全然苦にならない。
前に来たときは……確か抹茶アイスを食べたな。抹茶も美味しかったけど、今回は別のアイスにしよう。甘いチョコ系もいいし、さっぱりとしたものが多いフルーツ系もいいな。ベーシックなバニラをベースにしたアイスも捨てがたい。いい意味で迷う。
「私はオレンジアイスにしようと思います。前回はチョコチップだったので、今回はさっぱりしたものを食べたくて」
「そうか。オレンジいいな。俺は前回苦味もある抹茶だったから……甘いチョコ系にしようかな」
「チョコ系のアイスは色々な種類がありますよ。今日は暑いですから、スーッとするチョコミントがオススメですね」
「チョコミントか。爽快な気分になれるよな。よし、俺はチョコミントにしよう。オススメを言ってくれてありがとう」
「いえいえ」
チョコミントは好きだけど、ここのアイス屋さんのチョコミントはまだ食べたことがなかったな。楽しみだ。
それからも氷織と話しながら列での時間を過ごした。それもあって、あっという間に俺達の番に。さっき話していた通り、俺はチョコミントで氷織はオレンジのアイスをカップで購入した。
フードコートにはテーブル席とカウンター席がたくさん用意されている。今は人が多いので多くの席が埋まっているけど、俺達は運良く2人用のテーブル席を確保することができた。
俺と氷織は向かい合う形で椅子に座る。氷織がスマホでオレンジアイスを撮っているので、俺も真似してチョコミントアイスをスマホで撮影した。
「では、食べましょうか」
「ああ。いただきます」
「いただきますっ」
プラスチックのスプーンでチョコミントアイスを一口分掬って、口の中に入れる。
口に入れた瞬間、ミントの爽やかな香りが口の中に広がっていき、スーッとする。ただ、チョコやアイスの甘味もしっかりしており、ミントの香りとのバランスがいい。
「チョコミント美味しいな」
「美味しいですよね。オススメして良かったです。オレンジアイスも美味しいですっ」
そう言うと、氷織はオレンジアイスをもう一口。美味しいと言うだけあって、氷織は「う~んっ!」と可愛らしい声を漏らしながら、幸せそうな笑みを浮かべている。物凄く可愛いな。そんな氷織を見ながらチョコミントをもう一口食べると……さっきよりも美味しく感じられた。
「小さい頃からここのオレンジアイスは何度も食べていますが、明斗さんと一緒ですから今日が一番美味しいですね」
「ははっ、嬉しいな。俺もチョコミントは他のお店だったり、市販のものを食べたりするけど、ここのアイス屋さんが一番美味しく感じるよ」
「そう言ってくれて嬉しいです。明斗さん、今日も一口交換しませんか?」
「ああ、しよう」
俺が快諾すると、氷織はニコッと笑う。
ここのアイス屋さんでアイスを食べたときには、氷織と一口交換するのがお決まりとなっている。互いに違う味のアイスを買うのでお得感があるし、氷織と一口交換すると幸せな気分になれるから。
氷織はスプーンでオレンジアイスを一口分掬い、俺の口元まで持ってきてくれる。
「はい、明斗さん。あ~ん」
「あーん」
俺は氷織にオレンジアイスを食べさせてもらう。
オレンジの爽やかな香りとともに、オレンジらしい甘酸っぱさが口の中に広がっていく。チョコミントを食べた後だから、結構さっぱりとした印象だ。
「うん、甘酸っぱくて美味しいね」
「美味しいですよね。甘さと酸っぱさのバランスが良くて、フルーツ系のアイスではかなり好きです」
「そうなんだ。甘さと酸っぱさのバランスがいい……分かるかも」
レモンアイスだと酸味の強いものが多いし、メロンアイスやグレープアイスは甘味の強いものが多い。甘味と酸味の両方を最も楽しめるのはオレンジアイスかもしれない。あとはストロベリーアイスくらいだろうか。
「あと、さっぱりしているのもいいね」
「ですねっ」
俺が同意したからか、氷織はニッコリとした笑顔を見せる。可愛いな。
俺は自分のチョコミントアイスをスプーンで一口分掬い、氷織の口元まで持っていく。
「はい、氷織。あーん」
「あ~ん」
氷織にチョコミントアイスを一口食べさせる。口に入れたときの氷織の顔はとても可愛くて。一口交換するときの楽しみだ。
さっき、オレンジアイスを食べたときと同じく、氷織は笑顔で「う~んっ!」と可愛らしい声を上げる。
「美味しいです! チョコの甘味はもちろん、このスーッとするミントの爽やかな風味がいいですね」
「そうだな。ここのチョコミントは甘味とミントのバランスがちょうど良くて美味しいよ。他のお店や市販のものの中には、ミントの強いものがあるからな」
「ありますよね。こことは別のお店なのですが、小学生の頃、お母さんに一口もらったチョコミントアイスがかなりミント強めで。ミントが辛くて、かなりスースーして。しばらくの間はチョコミントはもちろん、ミント系のお菓子が食べられない時期がありました」
「トラウマになっちゃったんだ」
「ええ」
そのときのことを思い出しているのか、氷織は苦笑い。
そういえば、俺の姉貴も……昔、親が持っているミント強めのミントガムを勝手に食べて、辛いって号泣していたな。それから一時期はミント味のものを避けていたっけ。
あと、友達の中には「歯磨き粉の味がする」と言って、チョコミントが食えない奴もいたなぁ。
「ただ、ここのチョコミントを食べて、それが美味しかったので、またチョコミントを食べられるようになりました」
「そうだったんだ」
「はい。ただ、明斗さんに食べさせてもらった今のチョコミントが一番美味しいです」
「……そうか。嬉しいな。俺も氷織に食べさせてもらったオレンジアイスは凄く美味しかったよ」
だから、きっとこれからも、氷織と一緒にアイスを食べるときには一口交換をするだろう。別のものを買ったときはもちろん、同じものを買ったとしても。
俺は再びチョコミントを一口食べる。氷織が口を付けた直後だからか、これまでよりもさらに美味しく感じられた。
それから少しの間、氷織と一緒にアイスを食べるのを楽しんだ。そのおかげもあって、暑い中氷織の家に帰っても疲れを感じることはなく、氷織と一緒に夏休みの課題を集中して取り組めたのであった。
無事に下着を3着購入し、俺達は下着売り場を出る。俺が選んだり、サイズが合う下着が買えたりしたのもあってか、氷織はかなり嬉しそうだ。氷織の笑顔を見ていると、彼氏として下着を選んで良かったと思う。
「下着を選んでくださってありがとうございます、明斗さん」
「いえいえ。俺も楽しかったよ。色々な下着を試着した氷織を見られたし。こちらこそありがとう」
しばらくの間は、スマホにある下着姿の氷織の写真を見たら、今日のことを思い出しそうだ。会計を担当した女性店員が、ニヤニヤしながら何度も俺を見ていたことを含めて。一緒に選ぶところや試着室前での様子を見ていたのかもしれないな。
「私も楽しかったです。これからも、下着は明斗さんに選んでもらいましょうかね」
「選んでほしいときには遠慮なく言ってくれ」
「ふふっ、分かりました。そのときはよろしくお願いしますね」
「ああ」
俺が選ぶことで氷織が喜んでくれるのなら、喜んで。
「今日買った下着は今度のお泊まり女子会の日に付けましょう」
「そっか。確か、今週末にお泊まり女子会をするんだっけ」
「ええ。沙綾さんと恭子さんと美羽さんが家に泊まりに来ます。みんなで夜ご飯を食べたり、お菓子を食べながら『秋目知人帳』のアニメを観たりする予定です」
「そうか。楽しい女子会になるといいね」
「はいっ!」
ニコッと笑いながら氷織はそう言った。本当に楽しみにしているのだと分かる。
お泊まり女子会ってことは、きっと火村さんは氷織と一緒にお風呂に入るんだろうな。葉月さんがお泊まりしたときに、氷織と妹の七海ちゃんとお風呂に入ったことを以前聞いて羨ましがっていたから。氷織のベッドで一緒に寝るかもしれないな。女の子同士だし止めるつもりはない。火村さんは相変わらず氷織LOVEだけど、氷織が嫌がることはしないだろう。
あと、当日は女子会なので、こちらからメッセージや電話をするのは控えておくか。普段から、夜にメッセージや電話をする。夏休みに入ってからは、バイトなどがあって氷織と会わなかった日は、夜に長めに電話することもあるけども。
――ぐううっ。
ちょっと大きめにお腹が鳴ってしまった。お昼ご飯はそうめんだったからかな。食べたのも2時間以上前だし。氷織の家まで自転車を漕いだり、氷織の家から東友まで歩いたりしたからなぁ。
「お腹空きましたか?」
「ちょっとな。お昼ご飯を食べたのも2時間以上前だから」
「そうですか。私もちょっとお腹空きましたし、せっかく東友に来ましたから一階にあるフードコートでアイスを食べませんか?」
「おっ、アイスいいね。今日は暑いし、あのアイス屋さんは美味しいのがいっぱいあるし」
「ですね。では、行きましょうか!」
アイスを食べるのが楽しみなのか、氷織は楽しげな様子で俺の手を引いてくる。東友に来てから、氷織に手を引かれることが多いな。
下りのエスカレーターに乗って、俺達はフードコートのある1階まで降りる。
1階に降りてフードコートに行くと、結構多くの人で賑わっている。俺達のようなカップルもいれば、学生らしき若い世代のグループ、親子連れなど世代や年齢問わず様々。これまで、氷織と一緒に放課後デートなどでアイスを食べに何度か来たことがあるけど、ここまで人が多いのは初めてだ。夏休みだからだろうか。
フードコートには目的のアイス屋さんはもちろん、ラーメン、うどん、ファストフード、コーヒーと紅茶メインのドリンクショップなど様々な飲食店が入っている。だから、色々な飲食物の匂いが香ってきて。そのことでお腹がより空いてきた。
どのお店にも列ができているけど、アイス屋さんは特に長い列になっている。俺達と同じようなことを考えている人が多いのかな。そんなことを思いながら、俺達はアイス屋さんの列の最後尾に並んだ。1列なので氷織を先にして。
「この長さなら、10分ほどで私達の番になりそうですね」
「そうだな。今日は晴れて暑いから、アイスを食べたい人が多いんだろうな」
「そうですね。ここには美味しいアイスがいっぱいありますから」
「ああ。今日はどのアイスにしようかなぁ……」
「迷っちゃいますよね」
ふふっ、と氷織は楽しそうに笑う。
氷織と一緒だし、こうして何のアイスを買おうか考えるのも楽しいから、長い列に並んでいても全然苦にならない。
前に来たときは……確か抹茶アイスを食べたな。抹茶も美味しかったけど、今回は別のアイスにしよう。甘いチョコ系もいいし、さっぱりとしたものが多いフルーツ系もいいな。ベーシックなバニラをベースにしたアイスも捨てがたい。いい意味で迷う。
「私はオレンジアイスにしようと思います。前回はチョコチップだったので、今回はさっぱりしたものを食べたくて」
「そうか。オレンジいいな。俺は前回苦味もある抹茶だったから……甘いチョコ系にしようかな」
「チョコ系のアイスは色々な種類がありますよ。今日は暑いですから、スーッとするチョコミントがオススメですね」
「チョコミントか。爽快な気分になれるよな。よし、俺はチョコミントにしよう。オススメを言ってくれてありがとう」
「いえいえ」
チョコミントは好きだけど、ここのアイス屋さんのチョコミントはまだ食べたことがなかったな。楽しみだ。
それからも氷織と話しながら列での時間を過ごした。それもあって、あっという間に俺達の番に。さっき話していた通り、俺はチョコミントで氷織はオレンジのアイスをカップで購入した。
フードコートにはテーブル席とカウンター席がたくさん用意されている。今は人が多いので多くの席が埋まっているけど、俺達は運良く2人用のテーブル席を確保することができた。
俺と氷織は向かい合う形で椅子に座る。氷織がスマホでオレンジアイスを撮っているので、俺も真似してチョコミントアイスをスマホで撮影した。
「では、食べましょうか」
「ああ。いただきます」
「いただきますっ」
プラスチックのスプーンでチョコミントアイスを一口分掬って、口の中に入れる。
口に入れた瞬間、ミントの爽やかな香りが口の中に広がっていき、スーッとする。ただ、チョコやアイスの甘味もしっかりしており、ミントの香りとのバランスがいい。
「チョコミント美味しいな」
「美味しいですよね。オススメして良かったです。オレンジアイスも美味しいですっ」
そう言うと、氷織はオレンジアイスをもう一口。美味しいと言うだけあって、氷織は「う~んっ!」と可愛らしい声を漏らしながら、幸せそうな笑みを浮かべている。物凄く可愛いな。そんな氷織を見ながらチョコミントをもう一口食べると……さっきよりも美味しく感じられた。
「小さい頃からここのオレンジアイスは何度も食べていますが、明斗さんと一緒ですから今日が一番美味しいですね」
「ははっ、嬉しいな。俺もチョコミントは他のお店だったり、市販のものを食べたりするけど、ここのアイス屋さんが一番美味しく感じるよ」
「そう言ってくれて嬉しいです。明斗さん、今日も一口交換しませんか?」
「ああ、しよう」
俺が快諾すると、氷織はニコッと笑う。
ここのアイス屋さんでアイスを食べたときには、氷織と一口交換するのがお決まりとなっている。互いに違う味のアイスを買うのでお得感があるし、氷織と一口交換すると幸せな気分になれるから。
氷織はスプーンでオレンジアイスを一口分掬い、俺の口元まで持ってきてくれる。
「はい、明斗さん。あ~ん」
「あーん」
俺は氷織にオレンジアイスを食べさせてもらう。
オレンジの爽やかな香りとともに、オレンジらしい甘酸っぱさが口の中に広がっていく。チョコミントを食べた後だから、結構さっぱりとした印象だ。
「うん、甘酸っぱくて美味しいね」
「美味しいですよね。甘さと酸っぱさのバランスが良くて、フルーツ系のアイスではかなり好きです」
「そうなんだ。甘さと酸っぱさのバランスがいい……分かるかも」
レモンアイスだと酸味の強いものが多いし、メロンアイスやグレープアイスは甘味の強いものが多い。甘味と酸味の両方を最も楽しめるのはオレンジアイスかもしれない。あとはストロベリーアイスくらいだろうか。
「あと、さっぱりしているのもいいね」
「ですねっ」
俺が同意したからか、氷織はニッコリとした笑顔を見せる。可愛いな。
俺は自分のチョコミントアイスをスプーンで一口分掬い、氷織の口元まで持っていく。
「はい、氷織。あーん」
「あ~ん」
氷織にチョコミントアイスを一口食べさせる。口に入れたときの氷織の顔はとても可愛くて。一口交換するときの楽しみだ。
さっき、オレンジアイスを食べたときと同じく、氷織は笑顔で「う~んっ!」と可愛らしい声を上げる。
「美味しいです! チョコの甘味はもちろん、このスーッとするミントの爽やかな風味がいいですね」
「そうだな。ここのチョコミントは甘味とミントのバランスがちょうど良くて美味しいよ。他のお店や市販のものの中には、ミントの強いものがあるからな」
「ありますよね。こことは別のお店なのですが、小学生の頃、お母さんに一口もらったチョコミントアイスがかなりミント強めで。ミントが辛くて、かなりスースーして。しばらくの間はチョコミントはもちろん、ミント系のお菓子が食べられない時期がありました」
「トラウマになっちゃったんだ」
「ええ」
そのときのことを思い出しているのか、氷織は苦笑い。
そういえば、俺の姉貴も……昔、親が持っているミント強めのミントガムを勝手に食べて、辛いって号泣していたな。それから一時期はミント味のものを避けていたっけ。
あと、友達の中には「歯磨き粉の味がする」と言って、チョコミントが食えない奴もいたなぁ。
「ただ、ここのチョコミントを食べて、それが美味しかったので、またチョコミントを食べられるようになりました」
「そうだったんだ」
「はい。ただ、明斗さんに食べさせてもらった今のチョコミントが一番美味しいです」
「……そうか。嬉しいな。俺も氷織に食べさせてもらったオレンジアイスは凄く美味しかったよ」
だから、きっとこれからも、氷織と一緒にアイスを食べるときには一口交換をするだろう。別のものを買ったときはもちろん、同じものを買ったとしても。
俺は再びチョコミントを一口食べる。氷織が口を付けた直後だからか、これまでよりもさらに美味しく感じられた。
それから少しの間、氷織と一緒にアイスを食べるのを楽しんだ。そのおかげもあって、暑い中氷織の家に帰っても疲れを感じることはなく、氷織と一緒に夏休みの課題を集中して取り組めたのであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
46
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる