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付き合う
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洗濯物を洗濯板で丁寧に洗う。
おばさま曰く、洗濯板を使った方が生地が痛まないそうだ。
僕にはそれが本当なのかもよく分からないけど、とにかくこの季節の水は冷たくて手がカチカチになって取れてしまうんじゃないかという恐怖すら感じる。
最近は咲夜さまも部屋を出るようになって、旦那様の会社で働き始めて随分と疲れている様子だった。それでも夜は毎日求められているから僕はまだあの薬を飲み続けていた。
「最近、お前。勝手に濡れてないか?」
咲夜さまが情事の最中にそう言ってきた。
子供を産める体になると言うことは、そこが自然に濡れたりもするんだろう。
「ふ、ぁ……は、ぁ」
だけど僕がいつものように無言だったので咲夜様はやはり舌打ちをして無言で抽挿してきた。
そして、僕の中心に触れて腰の動きと一緒に撫でられた。
「ひ、んぁ……んん」
僕は久しくそこには触れていなくて突然の快感に出そうになった声を腕を噛むことで何とか抑えた。もう片方の手でやんわりとその手を離すように押しても、咲夜様は離してくれなかった。
それどころか、僕の腕を口から離し、両手をひとまとめに掴まれて頭の上で固定された。咲夜さまの長い指なら僕の両手を片手で抑えることは造作もないらしい。
「んぁ……さくやさま。離して……お願いです。ぁぁ」
「いやだ」
「ふ、んん……んぁ、ひ、ぁぁ……ゃぁ、おねが……ゃぁ」
「何が嫌なんだ。言ってみろ」
「ん、んん。ぁ……ふ、ぁ、ゃだ……んんぁ」
「何が嫌か言え。そしたらやめてやるから」
「僕、ぁ、ぃヤダ……僕の声じゃ……さくや、さま、んぁ……嫌でしょ……?」
「……いやじゃない。そんなことを考えていたのか」
「……ぅ、ぁ、ごめんなさい……ごめんなさい」
「なぜ謝る」
「僕じゃ……美香様の代わりにもなれないんだ」
僕がそう言うと咲夜様は僕の体を抱きしめてくれた。
「お前は美香の代わりじゃないよ。俺は伊月のことがちゃんと好きだ」
「ぁ……嘘だ……」
「嘘じゃない」
咲夜さまはそう言うけれど、きっとやっぱり嘘なんだ。
「ぅそ……でしょう? 咲夜様は美香様を……んん」
美香様を好きなくせにと言うつもりだった言葉は咲夜様からのキスによって止められた。
「伊月は俺のことが嫌いか?」
「そんなわけっ」
「なら、俺と付き合え。もちろん結婚を前提にだ」
「そんな……そんなこと旦那様とおばさまが許してくれるはずありません」
「どうして?」
「僕は男で……家柄も何もない、両親すら知らない孤児で、咲夜様のお世話をする使用人です。咲夜様と釣り合うはずもありませんから」
だからこうやって僕の体で心を癒すことに使ってもらえるだけでも、僕にとっては光栄なことだと思わなければいけないんだ。それなのに、咲夜様の心まで求めてしまってはバチが当たる。
「……そうか」
「はい」
僕の髪を優しく撫でて咲夜様が笑った。
「使用人は命令に従うべきだよな」
「ぇ? はい」
「じゃあ、俺と付き合うよな?」
咲夜様からそう言われ、僕の逃げ道はなくなった。
「……咲夜様のお相手が見つかるまでは」
そう言った自分の声はひどくかすれていた。
咲夜様の心が分からない。
本当に好きだった美香様がいなくなってしまって、おかしくなってしまっているのかもしれない。
どうせ、咲夜様のお相手が見つかるまで僕は妊活をするのだし、咲夜さまの言う付き合うと言う行為と何ら変わることはないのだろう。
だけれど、付き合ったりなんかして一回でも咲夜様の心が手に入ったのだという気持ちになってしまえば、それを取り上げられた時どれほど寂しくなるのだろう。
だから勘違いしてはいけない。
咲夜さまは誰に対してもお優しいのだから。
それが、どう間違っても僕にだけ特別な気持ちを持つことなどありえないのだと、肝に命じなければいけないんだ。
おばさま曰く、洗濯板を使った方が生地が痛まないそうだ。
僕にはそれが本当なのかもよく分からないけど、とにかくこの季節の水は冷たくて手がカチカチになって取れてしまうんじゃないかという恐怖すら感じる。
最近は咲夜さまも部屋を出るようになって、旦那様の会社で働き始めて随分と疲れている様子だった。それでも夜は毎日求められているから僕はまだあの薬を飲み続けていた。
「最近、お前。勝手に濡れてないか?」
咲夜さまが情事の最中にそう言ってきた。
子供を産める体になると言うことは、そこが自然に濡れたりもするんだろう。
「ふ、ぁ……は、ぁ」
だけど僕がいつものように無言だったので咲夜様はやはり舌打ちをして無言で抽挿してきた。
そして、僕の中心に触れて腰の動きと一緒に撫でられた。
「ひ、んぁ……んん」
僕は久しくそこには触れていなくて突然の快感に出そうになった声を腕を噛むことで何とか抑えた。もう片方の手でやんわりとその手を離すように押しても、咲夜様は離してくれなかった。
それどころか、僕の腕を口から離し、両手をひとまとめに掴まれて頭の上で固定された。咲夜さまの長い指なら僕の両手を片手で抑えることは造作もないらしい。
「んぁ……さくやさま。離して……お願いです。ぁぁ」
「いやだ」
「ふ、んん……んぁ、ひ、ぁぁ……ゃぁ、おねが……ゃぁ」
「何が嫌なんだ。言ってみろ」
「ん、んん。ぁ……ふ、ぁ、ゃだ……んんぁ」
「何が嫌か言え。そしたらやめてやるから」
「僕、ぁ、ぃヤダ……僕の声じゃ……さくや、さま、んぁ……嫌でしょ……?」
「……いやじゃない。そんなことを考えていたのか」
「……ぅ、ぁ、ごめんなさい……ごめんなさい」
「なぜ謝る」
「僕じゃ……美香様の代わりにもなれないんだ」
僕がそう言うと咲夜様は僕の体を抱きしめてくれた。
「お前は美香の代わりじゃないよ。俺は伊月のことがちゃんと好きだ」
「ぁ……嘘だ……」
「嘘じゃない」
咲夜さまはそう言うけれど、きっとやっぱり嘘なんだ。
「ぅそ……でしょう? 咲夜様は美香様を……んん」
美香様を好きなくせにと言うつもりだった言葉は咲夜様からのキスによって止められた。
「伊月は俺のことが嫌いか?」
「そんなわけっ」
「なら、俺と付き合え。もちろん結婚を前提にだ」
「そんな……そんなこと旦那様とおばさまが許してくれるはずありません」
「どうして?」
「僕は男で……家柄も何もない、両親すら知らない孤児で、咲夜様のお世話をする使用人です。咲夜様と釣り合うはずもありませんから」
だからこうやって僕の体で心を癒すことに使ってもらえるだけでも、僕にとっては光栄なことだと思わなければいけないんだ。それなのに、咲夜様の心まで求めてしまってはバチが当たる。
「……そうか」
「はい」
僕の髪を優しく撫でて咲夜様が笑った。
「使用人は命令に従うべきだよな」
「ぇ? はい」
「じゃあ、俺と付き合うよな?」
咲夜様からそう言われ、僕の逃げ道はなくなった。
「……咲夜様のお相手が見つかるまでは」
そう言った自分の声はひどくかすれていた。
咲夜様の心が分からない。
本当に好きだった美香様がいなくなってしまって、おかしくなってしまっているのかもしれない。
どうせ、咲夜様のお相手が見つかるまで僕は妊活をするのだし、咲夜さまの言う付き合うと言う行為と何ら変わることはないのだろう。
だけれど、付き合ったりなんかして一回でも咲夜様の心が手に入ったのだという気持ちになってしまえば、それを取り上げられた時どれほど寂しくなるのだろう。
だから勘違いしてはいけない。
咲夜さまは誰に対してもお優しいのだから。
それが、どう間違っても僕にだけ特別な気持ちを持つことなどありえないのだと、肝に命じなければいけないんだ。
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