37 / 56
幼稚園
しおりを挟む
僕を思う存分抱いて、満足げにする銀次さんの表情は繋心とそっくりでなんだか可愛く思える。
だけど、僕の体を綺麗に拭ってくれた後、病院からの急な呼び出しが入ってしまった。
銀次さんは仕切りに僕を心配して、謝りながら病院に向かう準備をした。
「本当にごめんね。あと今日は動かないでね。ハウスキーパーを頼んでおくから」
「そこまでしていただかなくても」
「俺がしたいの。できるだけ早く帰ってくるから」
ネクタイを締めながら僕を心配げに見やる銀次さんがカッコよく見えてキュンとした。
僕の額にキスをして、慌ただしく病院へ向かっていく銀次さんを腰が痛くて立つこともできずにただ見送った。
目を閉じると先ほどまでの銀次さんの、僕を抱く真剣な顔が浮かび上がる。
何年経っても銀次さんへの好きは枯れることを知らないみたいだ。
翌朝起きると、腰の痛みもだいぶ引いていて銀次さんが頼んでくれたハウスキーパーさんが出勤してきたので家に招き入れた。
「いつも突然ですみません、多田さん」
ハウスキーパーさんもとい、多田さんは銀次さんの親御さんくらいの年代の女性で優しくて安心感がある。
「いえいえ、繋心坊ちゃんもお可愛らしいですし、いつも頼まれるのを今か今かと待っているんですよ」
多田さんは目尻のシワを深くして笑った。
「おはよう! あぁ! 今日は多田さんがいるの!? やったぁ!」
「おはよう、繋心」
「おはようございます、繋心坊ちゃん」
繋心も多田さんの優しさにすっかりと懐いていて助かるばかりだ。
「伊月さん、繋心坊ちゃんを幼稚園には行かせないんですか?」
多田さんは朝ごはんを机に並べてくれながらそう聞いてきた。
「幼稚園ですか?」
「ええ。坊ちゃんは同年代のお子様との接触があまりに少ないので、このまま小学校に入ってしまうとご苦労をされるんじゃないかと」
「た……確かに。いえ、実を言うと考えてはいたのですが、3歳までは、4歳まではと先延ばしにしてしまってまして」
「では、私の知り合いの幼稚園をいくつかご紹介いたしましょうか?」
「いいんですか!」
どういった基準で選べばいいのか何も分からない状態で、気に入っても入ることができないと言われつつ、先延ばしにしてしまっていたので選択肢が数カ所になるのはとても嬉しい。
多田さんはさっそく買い物のついでに、幼稚園のパンフレットを3冊持ってきてくれた。
「お父さん、何見てるの!?」
「幼稚園のパンフレットだよ。繋心と同じくらいの歳の子が沢山いるところ」
「へぇ~。僕もそこに行いきたい! 行っていい!?」
「うん、もちろん。繋心はどこか気に入った幼稚園はあるかな?」
繋心にパンフレットを見せながら聞くと熱心にページをめくって見始めた。
「僕、これに乗りたい!!」
「え、バス?」
「うんっ!」
繋心が指を指しているのは幼稚園の送迎バスの写真で、幼児に人気のキャラクターの形をしているバスや、カラフルな電車のような見た目のバスが載っていた。
他の2箇所の幼稚園に比べると、家からは少し距離がある。
それでもバスは家の前まで迎えにきてくれるらしいのでこの幼稚園を第一候補として、一応3箇所とも見学に行くことにした。
「パパに相談してから、今度見学に行こうね」
「うん! やったあ!」
繋心は最近はまっている謎のダンスを踊りながら2階で遊んでくると階段を駆け上がって行ってしまった。
その夜、銀次さんが帰ってくると繋心は早速幼稚園について話し始めた。
「パパ! パパ!! 僕、幼稚園に行きたい! ここだよ! 僕、このバスに乗りたいんだ!」
「そうか、かっこいいバスだね。じゃあ見学に行こうか」
「パパも一緒に!? やったあ!」
「じゃあ、見学の予約を入れておきますね。都合の良い日はありますか?」
「んー、明後日とかだったら。でも急かな?」
「明日電話して確認してみます」
「パパも一緒に行けるといいね、お父さん!」
「うん、そうだね」
そんな会話をしたけれど、銀次さんは急患が入って呼び出されてしまった。
「なんだあ。でもパパは病気の人のために頑張ってるんだもんね! 僕はお父さんと行くから大丈夫だよ! お仕事頑張ってね、パパ!」
「本当にごめんね、帰ったら話を聞かせてね」
銀次さんが申し訳なさそうに繋心の頭を撫でると、繋心は逆に銀次さんを励ますように「いっぱい話せるようにちゃんと見てくるね!」と笑った。
3つの幼稚園を見て回っても、結局繋心が最初に行きたいと言った幼稚園が一番お気に入りになったらしかった。
先生もみんな優しげで、他の幼稚園より庭も広くて多くの遊具があった。
「体験入園もできますので、ご希望でしたらこちらにご記入をお願いします」
僕よりも年上の優しい面立ちの先生がそう案内してくれた。
「繋心、どうする?」
「僕、やりたい!!」
「分かった。じゃあ先生お願いします」
「はい、じゃあこの太枠のところを記入してださい」
案内されるまま体験入園の手続きを終えて帰宅すると結構疲れてしまってソファに座った。
最近は謎のダンスの他に家の中の探検にもはまっている繋心は、疲れた僕をよそにまた謎のダンスをしながら2階に行ってしまった。
だけど、僕の体を綺麗に拭ってくれた後、病院からの急な呼び出しが入ってしまった。
銀次さんは仕切りに僕を心配して、謝りながら病院に向かう準備をした。
「本当にごめんね。あと今日は動かないでね。ハウスキーパーを頼んでおくから」
「そこまでしていただかなくても」
「俺がしたいの。できるだけ早く帰ってくるから」
ネクタイを締めながら僕を心配げに見やる銀次さんがカッコよく見えてキュンとした。
僕の額にキスをして、慌ただしく病院へ向かっていく銀次さんを腰が痛くて立つこともできずにただ見送った。
目を閉じると先ほどまでの銀次さんの、僕を抱く真剣な顔が浮かび上がる。
何年経っても銀次さんへの好きは枯れることを知らないみたいだ。
翌朝起きると、腰の痛みもだいぶ引いていて銀次さんが頼んでくれたハウスキーパーさんが出勤してきたので家に招き入れた。
「いつも突然ですみません、多田さん」
ハウスキーパーさんもとい、多田さんは銀次さんの親御さんくらいの年代の女性で優しくて安心感がある。
「いえいえ、繋心坊ちゃんもお可愛らしいですし、いつも頼まれるのを今か今かと待っているんですよ」
多田さんは目尻のシワを深くして笑った。
「おはよう! あぁ! 今日は多田さんがいるの!? やったぁ!」
「おはよう、繋心」
「おはようございます、繋心坊ちゃん」
繋心も多田さんの優しさにすっかりと懐いていて助かるばかりだ。
「伊月さん、繋心坊ちゃんを幼稚園には行かせないんですか?」
多田さんは朝ごはんを机に並べてくれながらそう聞いてきた。
「幼稚園ですか?」
「ええ。坊ちゃんは同年代のお子様との接触があまりに少ないので、このまま小学校に入ってしまうとご苦労をされるんじゃないかと」
「た……確かに。いえ、実を言うと考えてはいたのですが、3歳までは、4歳まではと先延ばしにしてしまってまして」
「では、私の知り合いの幼稚園をいくつかご紹介いたしましょうか?」
「いいんですか!」
どういった基準で選べばいいのか何も分からない状態で、気に入っても入ることができないと言われつつ、先延ばしにしてしまっていたので選択肢が数カ所になるのはとても嬉しい。
多田さんはさっそく買い物のついでに、幼稚園のパンフレットを3冊持ってきてくれた。
「お父さん、何見てるの!?」
「幼稚園のパンフレットだよ。繋心と同じくらいの歳の子が沢山いるところ」
「へぇ~。僕もそこに行いきたい! 行っていい!?」
「うん、もちろん。繋心はどこか気に入った幼稚園はあるかな?」
繋心にパンフレットを見せながら聞くと熱心にページをめくって見始めた。
「僕、これに乗りたい!!」
「え、バス?」
「うんっ!」
繋心が指を指しているのは幼稚園の送迎バスの写真で、幼児に人気のキャラクターの形をしているバスや、カラフルな電車のような見た目のバスが載っていた。
他の2箇所の幼稚園に比べると、家からは少し距離がある。
それでもバスは家の前まで迎えにきてくれるらしいのでこの幼稚園を第一候補として、一応3箇所とも見学に行くことにした。
「パパに相談してから、今度見学に行こうね」
「うん! やったあ!」
繋心は最近はまっている謎のダンスを踊りながら2階で遊んでくると階段を駆け上がって行ってしまった。
その夜、銀次さんが帰ってくると繋心は早速幼稚園について話し始めた。
「パパ! パパ!! 僕、幼稚園に行きたい! ここだよ! 僕、このバスに乗りたいんだ!」
「そうか、かっこいいバスだね。じゃあ見学に行こうか」
「パパも一緒に!? やったあ!」
「じゃあ、見学の予約を入れておきますね。都合の良い日はありますか?」
「んー、明後日とかだったら。でも急かな?」
「明日電話して確認してみます」
「パパも一緒に行けるといいね、お父さん!」
「うん、そうだね」
そんな会話をしたけれど、銀次さんは急患が入って呼び出されてしまった。
「なんだあ。でもパパは病気の人のために頑張ってるんだもんね! 僕はお父さんと行くから大丈夫だよ! お仕事頑張ってね、パパ!」
「本当にごめんね、帰ったら話を聞かせてね」
銀次さんが申し訳なさそうに繋心の頭を撫でると、繋心は逆に銀次さんを励ますように「いっぱい話せるようにちゃんと見てくるね!」と笑った。
3つの幼稚園を見て回っても、結局繋心が最初に行きたいと言った幼稚園が一番お気に入りになったらしかった。
先生もみんな優しげで、他の幼稚園より庭も広くて多くの遊具があった。
「体験入園もできますので、ご希望でしたらこちらにご記入をお願いします」
僕よりも年上の優しい面立ちの先生がそう案内してくれた。
「繋心、どうする?」
「僕、やりたい!!」
「分かった。じゃあ先生お願いします」
「はい、じゃあこの太枠のところを記入してださい」
案内されるまま体験入園の手続きを終えて帰宅すると結構疲れてしまってソファに座った。
最近は謎のダンスの他に家の中の探検にもはまっている繋心は、疲れた僕をよそにまた謎のダンスをしながら2階に行ってしまった。
32
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
記憶の代償
槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」
ーダウト。
彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。
そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。
だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。
昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。
いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。
こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる