僕はナイチンゲール

いちみやりょう

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幼稚園

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僕を思う存分抱いて、満足げにする銀次さんの表情は繋心とそっくりでなんだか可愛く思える。
だけど、僕の体を綺麗に拭ってくれた後、病院からの急な呼び出しが入ってしまった。

銀次さんは仕切りに僕を心配して、謝りながら病院に向かう準備をした。

「本当にごめんね。あと今日は動かないでね。ハウスキーパーを頼んでおくから」
「そこまでしていただかなくても」
「俺がしたいの。できるだけ早く帰ってくるから」

ネクタイを締めながら僕を心配げに見やる銀次さんがカッコよく見えてキュンとした。
僕の額にキスをして、慌ただしく病院へ向かっていく銀次さんを腰が痛くて立つこともできずにただ見送った。
目を閉じると先ほどまでの銀次さんの、僕を抱く真剣な顔が浮かび上がる。

何年経っても銀次さんへの好きは枯れることを知らないみたいだ。

翌朝起きると、腰の痛みもだいぶ引いていて銀次さんが頼んでくれたハウスキーパーさんが出勤してきたので家に招き入れた。

「いつも突然ですみません、多田さん」

ハウスキーパーさんもとい、多田さんは銀次さんの親御さんくらいの年代の女性で優しくて安心感がある。

「いえいえ、繋心坊ちゃんもお可愛らしいですし、いつも頼まれるのを今か今かと待っているんですよ」

多田さんは目尻のシワを深くして笑った。

「おはよう! あぁ! 今日は多田さんがいるの!? やったぁ!」
「おはよう、繋心」
「おはようございます、繋心坊ちゃん」

繋心も多田さんの優しさにすっかりと懐いていて助かるばかりだ。

「伊月さん、繋心坊ちゃんを幼稚園には行かせないんですか?」

多田さんは朝ごはんを机に並べてくれながらそう聞いてきた。

「幼稚園ですか?」
「ええ。坊ちゃんは同年代のお子様との接触があまりに少ないので、このまま小学校に入ってしまうとご苦労をされるんじゃないかと」
「た……確かに。いえ、実を言うと考えてはいたのですが、3歳までは、4歳まではと先延ばしにしてしまってまして」
「では、私の知り合いの幼稚園をいくつかご紹介いたしましょうか?」
「いいんですか!」

どういった基準で選べばいいのか何も分からない状態で、気に入っても入ることができないと言われつつ、先延ばしにしてしまっていたので選択肢が数カ所になるのはとても嬉しい。

多田さんはさっそく買い物のついでに、幼稚園のパンフレットを3冊持ってきてくれた。

「お父さん、何見てるの!?」
「幼稚園のパンフレットだよ。繋心と同じくらいの歳の子が沢山いるところ」
「へぇ~。僕もそこに行いきたい! 行っていい!?」
「うん、もちろん。繋心はどこか気に入った幼稚園はあるかな?」

繋心にパンフレットを見せながら聞くと熱心にページをめくって見始めた。

「僕、これに乗りたい!!」
「え、バス?」
「うんっ!」

繋心が指を指しているのは幼稚園の送迎バスの写真で、幼児に人気のキャラクターの形をしているバスや、カラフルな電車のような見た目のバスが載っていた。
他の2箇所の幼稚園に比べると、家からは少し距離がある。
それでもバスは家の前まで迎えにきてくれるらしいのでこの幼稚園を第一候補として、一応3箇所とも見学に行くことにした。

「パパに相談してから、今度見学に行こうね」
「うん! やったあ!」

繋心は最近はまっている謎のダンスを踊りながら2階で遊んでくると階段を駆け上がって行ってしまった。

その夜、銀次さんが帰ってくると繋心は早速幼稚園について話し始めた。

「パパ! パパ!! 僕、幼稚園に行きたい! ここだよ! 僕、このバスに乗りたいんだ!」
「そうか、かっこいいバスだね。じゃあ見学に行こうか」
「パパも一緒に!? やったあ!」
「じゃあ、見学の予約を入れておきますね。都合の良い日はありますか?」
「んー、明後日とかだったら。でも急かな?」
「明日電話して確認してみます」
「パパも一緒に行けるといいね、お父さん!」
「うん、そうだね」

そんな会話をしたけれど、銀次さんは急患が入って呼び出されてしまった。

「なんだあ。でもパパは病気の人のために頑張ってるんだもんね! 僕はお父さんと行くから大丈夫だよ! お仕事頑張ってね、パパ!」
「本当にごめんね、帰ったら話を聞かせてね」

銀次さんが申し訳なさそうに繋心の頭を撫でると、繋心は逆に銀次さんを励ますように「いっぱい話せるようにちゃんと見てくるね!」と笑った。

3つの幼稚園を見て回っても、結局繋心が最初に行きたいと言った幼稚園が一番お気に入りになったらしかった。
先生もみんな優しげで、他の幼稚園より庭も広くて多くの遊具があった。

「体験入園もできますので、ご希望でしたらこちらにご記入をお願いします」

僕よりも年上の優しい面立ちの先生がそう案内してくれた。

「繋心、どうする?」
「僕、やりたい!!」
「分かった。じゃあ先生お願いします」
「はい、じゃあこの太枠のところを記入してださい」

案内されるまま体験入園の手続きを終えて帰宅すると結構疲れてしまってソファに座った。
最近は謎のダンスの他に家の中の探検にもはまっている繋心は、疲れた僕をよそにまた謎のダンスをしながら2階に行ってしまった。
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