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咲夜サイド3
しおりを挟む父は伊月を探すのに協力的ではなく、むしろ邪魔すらしてくるほどで伊月探しは難航した。
「伊月のことは諦めて、梨乃さんと仲良くしなさい」
最近は居間で食事をするといつもこの話題になる。
いい加減うんざりで声を荒げないようにするのに必死だ。
「梨乃のことはどうでもいい。伊月を探すのを手伝わなくてもいいから、邪魔をするのはやめろよ」
睨みつけながらそう言っても、父は全く意に介した様子はなく笑うばかりでますますイライラが募った。
「落ち着いて、咲夜様。私がついてるわ」
「はなせ!」
「きゃっ」
腕に絡みついてくる梨乃を振り払うと、大袈裟に離れていった。
それにしても、伊月を探すことに夢中で全く眼中になく今まで気がつかなかったが、梨乃の腹の様子が明らかにおかしい。
服の上からでもわかるほどボコボコとしていて中に何か詰めているように見えた。
梨乃に近づきその腹を触ると、梨乃は嬉しそうな顔をした。
「騙せると思ったか?」
「え?」
「バスタオルか? 毎朝ご苦労なことだな」
そう言って梨乃の服の下に手を突っ込むと、案の定腹の部分からはタオルの塊が出て来た。
梨乃は青い顔をしてワナワナと口を震わせている。
「だって……あなたが、あなたがいけないのよ。伊月みたいなやつに構って私を構わないから」
ぶつぶつと恨み言を呟き始めた梨乃を無視し、部屋を出て行こうとすると父が声を上げた。
「待て。梨乃さんには病院に行ってもらう。もちろん、咲夜お前もだ。その結果次第では伊月を探すのを協力してやろう」
「は?」
「梨乃さんが子供ができない体だった場合は、伊月に産ませればいい。その子を梨乃さんと子として育てろ。お前の体がだめだった場合は、梨乃さんには私の子を産んでもらえばいい」
ニヤリと笑ってそう言う親父から、梨乃は後退りして距離を取った。
「いや! 嫌よ!! 何でそんなこと私がしないといけないの!? どちらに転んでも私には何も得がない! ねぇ! 昨夜様も何とか言ってよ!」
キンキンと頭に響く声が鬱陶しい。
けれど、検査をし俺の体に異常がないのなら、伊月を探すのに父は協力すると言った。
「分かった。検査を受ける」
「嫌ああぁああ!!」
梨乃はついに発狂し出した。
その声は耳障り以外の何者でもない。
けれど、伊月を見つけることのできる兆しが見えて俺の心は晴れやかだった。
そうしてしばらくして検査結果が出た。
梨乃は自分の検査結果を見て、複雑な表情を浮かべていた。
自分が不妊だったと知った割には落ち込んでいないように見えるが、そんなこともどうでもいい。
「親父。約束通り伊月を探すのを協力しろよ」
「仕方がないな」
父は心底残念そうに、梨乃の体を下から上まで舐め回すように見た後、そう答えた。
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