妖怪達の薬屋さん

いちみやりょう

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12 雷帝の者

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街の中は瘴気によって視界が悪い。
それでも、街に暮らす瘴気の見えない人間たちは街の中で普通に行き交っていた。
瘴気がこれだけ蔓延していても、人間には大きな影響は及ぼしていないらしい。
キオウたちから見れば、視界を大きく妨げるほどの瘴気だが、街の人々は笑顔で生活している。

(知らねぇほうがいいことがあるってのは、まさにこのことだな)

だが、その横で、今まさに瘴気に飲まれ意識を保てなくなっていく力の弱い妖怪達が有象無象に増え続けていた。

「とりあえずケイはダンダーを追ってくれ。おそらく屋敷に向かったろうから。俺は先に妖怪たちに薬を飲ませておくから」
「分かった!!」

ケイが走って去っていく背中を見て、キオウは壁に手をついた。

「はぁ……はぁ……」

(ああ、くそったれ)

森から街に戻る間からずっとキオウはひどい吐き気と倦怠感に襲われていた。
けれど懐から丸薬にした薬を取り出し、スリングショットを使って近くの妖怪の口めがけ薬を放って飲ませていく。

「う゛ぁあっ……あ?」

妖怪は薬が口に入ってしばらくすると正気を取り戻していった。

「う゛ぅ、うう……え?」
「おい、あんた。これ、他のやつにも飲ませてやってくれ」
「あ……? んぇ?」
「頼む」
「……え、えっと。分かった」

早くに正気を取り戻した奴らに手伝ってもらっても、終わりの見えない作業だ。

(おまけにすこぶる具合が悪い)

「キオウ!! おら、これ飲め!!」

叫ばれたと同時に、キオウのもとに飛んできたのは祓酒だった。

「マサ……なんでこんなところに」

キオウはこの街にいるはずのない目の前の女性を見て驚いた。
黒髪を肩の辺りで切りそろえ、やや吊り気味の目は意思の強さを醸し出している。

「いいから早く飲め。お前それだいぶキてるだろ」
「あ、ああ。ありがとよ。助かる」

渡された祓酒を開け飲んだキオウの体は、先ほどまでの不調が嘘のようにすーっと体が楽になった。

「ああ~。楽になった。本当、ありがとうな。それでマサ、なんでこの街に?」
「分かってんだろう。この街の噂くらい、雷帝に届いている。この件にサネユキが深く関わってることもな。あいつはかなりの規約違反を犯してる。それで私が出るのは当然だろう」

キオウは肩を竦ませた。

「あいつはなんでああなんだ」
「それを私に聞かれても分からん。だが、もう様子見の段階はとうにすぎた。それにしてもこりゃ酷すぎるな」

マサは街を見渡しうんざりしたようにそう言った。

「ああ。本当にな」
「迷惑かけたな。雷帝家のものを数人、共に連れてきている。作った薬を分けてくれ。手分けして飲ませるから」
「いいのか? 妖怪を助けるのは雷帝のやり方じゃないだろ」
「これは雷帝の者が起こした事件だからな。さすがに巻き込まれた妖怪を全部殺すような非道は気が引けるだけさ」
「そうか。なら、頼む」
「ああ」

マサに薬を手渡すと、マサがそれを部下に渡し、部下は散り散りに瘴気に侵された妖怪のもとに向かって行った。
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感想 1

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