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13 掟破り
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街の人々は、大量に発生している瘴気よりも、大量に発生している瘴気に侵された妖怪よりも、数名現れた雷帝家の者たちに異質な目を向けていた。
それぞれ手分けして妖怪たちに薬を飲ませていく作業は、街の人々から見れば異質に見える。
けれどやはり見える人数が多ければ街中に蔓延っている瘴気も見る間に減っていった。
「どこに行く気だ」
キオウが建物の影でそっと立ち去ろうとする人影に話しかけると、その影はびくりと震えた。
「お前は結局何がしたかったんだ……サネユキ」
サネユキは建物の影から姿を表した。
その姿は影を纏っているかのように真っ黒だ。
「キオウ……、お前、俺に何した」
「俺は何もしちゃいねぇよ」
「ならなんでこんな見えないんだよ!! 妖怪は前よりはっきり見えるのに、人間がよく見えないんだ。お前が何かしたとしか思えない!」
「そりゃあお前が祓酒を浴びたからだろう」
「はぁ? 浴びてねぇよ! 俺は瓶を叩き割っただけだ」
「叩き割った際に足にかなりの量が跳ねたんだろうな。そいつは十中八九、妖行の症状だ。勉強をまともにしていなかったお前でも、聞いたことくらいはあるだろう?」
祓酒を浴びた上、サネユキは今まで妖怪の血も浴びすぎていた。
「妖行……? それってまさか」
「ああ。お前はそのままほっとくと妖怪になっちまうだろう。お前の大嫌いなな」
「そんな……なんとかしてくれ! 俺は妖怪になんてなりたくない!」
「妖怪と人間なんて本を正せば同じだ。いわば紙一重の違いでお前はたまたま人間だったわけだ。何かきっかけさえあれば妖怪になんて簡単になってしまうかもしれないんだぞ」
「治す方法はないのかっ」
「ある……、が、俺がお前に教えてやる義理はねぇよ」
「頼む!! 頼むよ、悪かった。今までの事全部謝るからっ」
「妖怪も悪くねぇぞ? 楽しくやんな……と、言いたいところだが、お前はどっちみちもう許されるような段階じゃあねぇ。今のお前にゃ見えねてねぇかもしれねぇが、マサが来てる」
「……マサ……様、執行人」
「悪さしすぎたな。雷帝は何も、妖怪を根絶やしにしたい訳じゃねぇ。妖怪のおかげで成り立ってる生業だからな。妖怪との均衡を乱すお前の存在は雷帝にとって邪魔だろう」
かさり、とキオウの後ろで足音がなった。
「そうだな。再三に渡る指導を無視し、雷帝の掟を破った。もはや見過ごすことはできない」
「マサ」
「マサコ様、お願いだ。もうしない。助けてくれ!!」
「その名で呼ぶな……。おい、連れて行け」
「あ、お願いします、お願いします!!」
いつもニタニタと笑っていたサネユキは見る影もなく、ただ情けない顔でマサの部下に連れられて行った。
それぞれ手分けして妖怪たちに薬を飲ませていく作業は、街の人々から見れば異質に見える。
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「あ、お願いします、お願いします!!」
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みんなの感想(1件)
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中野 咲茉様
コメントありがとうございます!
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