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第二章
深海までは何マイル?②
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二人がカフェを出て映画館に向かったその頃、海上自衛隊が誇る最新鋭潜水艦「そうりゅう」は、その四、四〇〇tの巨大な艦体を大陸棚の途切れる沖縄トラフの深海に潜めていた。
潜航してから既に一週間。
海自初の非大気依存推進艦である「そうりゅう」は、二~三日で浮上しては内燃機関を燃焼させるために大量の酸素を取り込む必要のあった従来のディーゼル潜水艦に比べ、二週間以上の連続潜航が可能と、その性能は飛躍的に向上していた。
数か月の連続潜航が可能な米海軍の原子力潜水艦と比べると見劣りするものの、日本近海を作戦領域とする海上自衛隊にとっては充分な潜航日数であり、原子力潜水艦に比べ非常に静粛性に長けた「そうりゅう」は正に東シナ海の王者と言えた。
その「そうりゅう」が監視・相対するのは中国の潜水艦。
膨大な軍事費を投入し、海軍力の増強に注力する彼らの装備は、かつてに比べると最新化が図られているものの、ベースになっているのはあくまで古い設計思想の旧ソ連のものであり、お世辞にも強敵とは言えなかった。
そして冷戦時代の昔より、日本海を舞台にソ連の潜水艦と水面下で熾烈な駆け引きを繰り広げ、その戦闘ノウハウを積み上げてきた海自の潜水艦乗りにとっては、ようやく外洋海軍への転換を図りつつある未熟な中国の潜水艦の監視など、赤子の手を捻るよりも容易いことだった。
「ソナーより艦長。感あり。方位〇―八―〇。推定距離二〇、〇〇〇。恐らく潜水艦。………音紋照合しました。中国海軍の元級六番と思われます」
ソナーからのその一報に艦内に緊張が走った。
「動きは?」
「特になし。気づかれていません」
「よし。航海長、進路〇―八―〇。ダウン一〇度。速度このまま」
「了解。進路〇―八―〇。ダウン一〇度、速度このまま」
とりあえずは尾行だ。彼らの動向を探るのが「そうりゅう」に与えられた任務でもある。
「これで四隻目です。ここ二、三日、やけに多いですね」
「ああ、これといった大規模演習は予定されていないはずだ……。気になるといえば気になるな」
海面下での潜水艦の動きは軍事衛星をもってしても探知は不可能だ。敵に見つからない限り、海においては最強の艦と言える。
それゆえに、各国の海軍が最も心血を注ぐのはその潜水艦探知能力の向上だ。
特に日本の海上自衛隊は、従来より、圧倒的な海上航空戦力を保有する米海軍第七艦隊の対潜能力を補完するように増強されてきた。その米国が景気の低迷により極東アジア地域での軍縮を余儀なくされたことから、弱点である航空戦能力強化のために自前の空母を準備する必要に迫られ始めたものの、P3C対潜哨戒機を一〇〇機保有し、また一個護衛隊群当たり十五機の対潜哨戒ヘリSH60を有する海上自衛隊は、対潜能力だけで言えば米海軍に次いで世界第二位の実力を有すると言われている。
そしてそのノウハウは自身が保有する潜水艦にもフィードバックされ、「そうりゅう」級は通常動力の潜水艦においては世界最強と言われていた。もっとも、どんなにハード(艦)がよくてもソフト(人)がついてこれなければ、その能力をフルに発揮することなどできない。だが、その点でも海上自衛隊の潜水艦乗りは非常に優秀と言えた。
潜水艦乗りの任務は過酷だ。
二四時間三交代制勤務で、艦内は狭く、プライベートは皆無に等しい。娯楽は仲間と映画やドラマのDVDを見ることくらいだが、音は出せないのでヘッドフォン着用が必要だ。
光の届かない深海の狭い密閉空間で長期間に渡り過ごす閉塞感だけでなく、敵性国の潜水艦と遭遇するたびに激しい駆け引きが繰り広げられ、極度の緊張状態に置かれることも珍しくない。
そういうわけで、潜水艦乗りは急減圧に耐えられる身体的適性だけでなく、強靭な精神力と忍耐力も求められる、海自の中でもエリート中のエリートなのだ。
そして「そうりゅう」艦長を務める土方勇介二等海佐は防大卒業以来、潜水艦勤務一筋の生粋のサブマリナーで、隊内で右に出るものがいないその操艦技術だけでなく、沈着冷静で分け隔てのない性格も相まって、乗組員達から畏れ敬われていた。
そう言えば今日は海斗のサッカーの試合がある日だったな……。
ふと、高校生の息子の顔が土方の頭をよぎった。
WAVEだった妻と隊内結婚し、一男一女を儲けた。若い頃は長期航海を終えて帰宅するたびに顔つきが変わっている子供達にショックを受けていたが、今ではそういうものと割り切り、上陸時は必ず家族で過ごすようにしている。
妻が元WAVEだけあって、夫の仕事に理解があるのも救いだった。おかげで家族仲は非常によく、子供達も思春期であるにもかかわらず、反抗することもなく父親によく懐いてくれていた。
もっとも、どんなに家族仲がよいところで自分の任務の内容など話せるわけもなく、子供達はまさか父親が今、中国の領海のすぐ外でその動向を探っているなどとは夢にも思っていないだろう。他国の潜水艦に遭遇するたびに、今回は無事に帰れるのだろうか? と家族を思い浮かべてしまう自分は、本当はこの職業に向いていないのかもしれないと感じている。だが、自分を信じて命を預けてくれている六十四名の乗組員達のことを考えると、弱音など吐いてはいられなかった。
頑張れよ、海斗。今度父さんが陸に上がるまで絶対に勝ち進むんだぞ。
「ソナーよりブリッジ。元級六番、速度を上げた模様」
「よし、速度十五ノットに上げ。近づき過ぎないように気をつけろ」
「了解。速度十五ノットに上げろ」
少なくともあと一週間は深海の闇とお付き合いしなければならないだろう。普通の人間であれば気の狂う環境の中、「そうりゅう」は息を潜め、中国の潜水艦を追った。
「美味しかった~。ごちそうさまです」
すっかりわだかまりも消え、心底嬉しそうに笑う夕陽の表情に、敏生も釣られて相好を崩した。
港の夜景を望む桟橋の手摺に寄りかかりながら、湾内を航行する船を眺める。
「本日はご満足いただけましたか? 姫」
「ウム、ワラワは満足じゃ」
二人はコツンと額を合わせるとクスッと笑い、そっと唇を重ねた。
「ふふっ、敏生のキス、鴨肉のソースの味がする」
「それはお互いさま」
再び二人の唇が重なり合う。今度は長いキスになった。お互いの背中に手を回しどちらからともなく密着する。啄ばむようなバードキスは、いつの間にか互いを求め合う激しいものへと変わっていき、先に耐えきれなくなった夕陽から唇を剥がした。
よろめく彼女を敏生が抱きとめ、その美しい黒髪に頬を寄せる。
二人はそのまましばらく抱き合っていたが、やがて敏生がそっと夕陽を離した。
絡み合う視線。だが、彼の口から漏れた言葉は夕陽の思惑とは正反対のものだった。
「帰るか」
「えっ?」
てっきり今夜は帰したくない、と言われるものと思っていた夕陽は驚いた表情で彼を見つめた。
「いや、帰港した翌日だし無理はいけないかな、と思ってさ」
どことなく落ち着かない表情の彼。その目が真実を語ってないと思うのは女の勘ってやつだ。
「……これから誰か他の人と会うの?」
思わず零れてしまった彼への疑念。これは言うべきじゃなかった、と思うも後の祭りだ。
だが、彼は疑われて怒るどころか、慌てて夕陽の両肩をつかむと、
「違う! 断じて違う! 神に誓って!」
と必死に弁明してきた。その彼の様子に、夕陽は素直に反省すると俯いた。
「……ごめんなさい。……でも、じゃあ何で……?」
敏生は気まずそうにガシガシと頭をかくと、背の低い夕陽を器用に上目遣いで見た。
「お前、あの時〝あたしのこと好きにしていいよ〟って言っただろ?」
あの時、というのは恐らくひと月前の訓練後のことだろう。
「その言葉がずっと頭から離れなくてさ……。この一か月、もうお前の顔見たらあたりかまわず押し倒しちまいそうで、こらえるのに必死だったんだ」
…………へ?
予想だにしなかった彼のその告白に夕陽はポカンと口を開けた。端から見たらさぞや間抜けな顔を晒していることだろう。
そういえば…あたしそんなこと言ったような気がする…。そりゃあ、あの時は彼に赦して欲しくていろんなことを口走った気が…。
そこまで思い返して夕陽はボンッと爆発した。
あ、あ、あ、あたしったら何てことを―っ!?
「だからさ…、その、俺このままだと欲望剥き出しでお前にひどいことしちゃいそうだから…。もう、お前に嫌われたくないし…」
悪戯がバレた子供のような、バツの悪そうな顔。この可愛い男が米軍からも一目置かれる日本最強のファイターパイロットだなんて、誰も思わないよね?
彼の様子に夕陽は平静を取り戻すと、
「それが敏生の言うオトナの事情ってやつ?」
と意地悪く尋ねた。
「わ、笑いたきゃ笑えよ」
恥ずかしそうにプイッと横を向いたその横顔に夕陽はクスッと笑うと、後ろ手を組んで首を傾げ、彼を見上げた。
「あたしは……いいよ? 何されても。だって好きだから、敏生のこと」
驚いた表情で自分を見つめ返す敏生から気恥ずかしさで視線を逸らし、その逞しい胸にコツンと頭を預ける。
「だから……今夜は一緒にいて。……ね?」
その自分の仕草と言葉がこの色男を完膚なきまでに叩きのめしたことなど、恋愛初心者の彼女には全くもって気づくべくもなく、ただその彼の温もりに幸せを感じて小さな身体を預けるのだった。
潜航してから既に一週間。
海自初の非大気依存推進艦である「そうりゅう」は、二~三日で浮上しては内燃機関を燃焼させるために大量の酸素を取り込む必要のあった従来のディーゼル潜水艦に比べ、二週間以上の連続潜航が可能と、その性能は飛躍的に向上していた。
数か月の連続潜航が可能な米海軍の原子力潜水艦と比べると見劣りするものの、日本近海を作戦領域とする海上自衛隊にとっては充分な潜航日数であり、原子力潜水艦に比べ非常に静粛性に長けた「そうりゅう」は正に東シナ海の王者と言えた。
その「そうりゅう」が監視・相対するのは中国の潜水艦。
膨大な軍事費を投入し、海軍力の増強に注力する彼らの装備は、かつてに比べると最新化が図られているものの、ベースになっているのはあくまで古い設計思想の旧ソ連のものであり、お世辞にも強敵とは言えなかった。
そして冷戦時代の昔より、日本海を舞台にソ連の潜水艦と水面下で熾烈な駆け引きを繰り広げ、その戦闘ノウハウを積み上げてきた海自の潜水艦乗りにとっては、ようやく外洋海軍への転換を図りつつある未熟な中国の潜水艦の監視など、赤子の手を捻るよりも容易いことだった。
「ソナーより艦長。感あり。方位〇―八―〇。推定距離二〇、〇〇〇。恐らく潜水艦。………音紋照合しました。中国海軍の元級六番と思われます」
ソナーからのその一報に艦内に緊張が走った。
「動きは?」
「特になし。気づかれていません」
「よし。航海長、進路〇―八―〇。ダウン一〇度。速度このまま」
「了解。進路〇―八―〇。ダウン一〇度、速度このまま」
とりあえずは尾行だ。彼らの動向を探るのが「そうりゅう」に与えられた任務でもある。
「これで四隻目です。ここ二、三日、やけに多いですね」
「ああ、これといった大規模演習は予定されていないはずだ……。気になるといえば気になるな」
海面下での潜水艦の動きは軍事衛星をもってしても探知は不可能だ。敵に見つからない限り、海においては最強の艦と言える。
それゆえに、各国の海軍が最も心血を注ぐのはその潜水艦探知能力の向上だ。
特に日本の海上自衛隊は、従来より、圧倒的な海上航空戦力を保有する米海軍第七艦隊の対潜能力を補完するように増強されてきた。その米国が景気の低迷により極東アジア地域での軍縮を余儀なくされたことから、弱点である航空戦能力強化のために自前の空母を準備する必要に迫られ始めたものの、P3C対潜哨戒機を一〇〇機保有し、また一個護衛隊群当たり十五機の対潜哨戒ヘリSH60を有する海上自衛隊は、対潜能力だけで言えば米海軍に次いで世界第二位の実力を有すると言われている。
そしてそのノウハウは自身が保有する潜水艦にもフィードバックされ、「そうりゅう」級は通常動力の潜水艦においては世界最強と言われていた。もっとも、どんなにハード(艦)がよくてもソフト(人)がついてこれなければ、その能力をフルに発揮することなどできない。だが、その点でも海上自衛隊の潜水艦乗りは非常に優秀と言えた。
潜水艦乗りの任務は過酷だ。
二四時間三交代制勤務で、艦内は狭く、プライベートは皆無に等しい。娯楽は仲間と映画やドラマのDVDを見ることくらいだが、音は出せないのでヘッドフォン着用が必要だ。
光の届かない深海の狭い密閉空間で長期間に渡り過ごす閉塞感だけでなく、敵性国の潜水艦と遭遇するたびに激しい駆け引きが繰り広げられ、極度の緊張状態に置かれることも珍しくない。
そういうわけで、潜水艦乗りは急減圧に耐えられる身体的適性だけでなく、強靭な精神力と忍耐力も求められる、海自の中でもエリート中のエリートなのだ。
そして「そうりゅう」艦長を務める土方勇介二等海佐は防大卒業以来、潜水艦勤務一筋の生粋のサブマリナーで、隊内で右に出るものがいないその操艦技術だけでなく、沈着冷静で分け隔てのない性格も相まって、乗組員達から畏れ敬われていた。
そう言えば今日は海斗のサッカーの試合がある日だったな……。
ふと、高校生の息子の顔が土方の頭をよぎった。
WAVEだった妻と隊内結婚し、一男一女を儲けた。若い頃は長期航海を終えて帰宅するたびに顔つきが変わっている子供達にショックを受けていたが、今ではそういうものと割り切り、上陸時は必ず家族で過ごすようにしている。
妻が元WAVEだけあって、夫の仕事に理解があるのも救いだった。おかげで家族仲は非常によく、子供達も思春期であるにもかかわらず、反抗することもなく父親によく懐いてくれていた。
もっとも、どんなに家族仲がよいところで自分の任務の内容など話せるわけもなく、子供達はまさか父親が今、中国の領海のすぐ外でその動向を探っているなどとは夢にも思っていないだろう。他国の潜水艦に遭遇するたびに、今回は無事に帰れるのだろうか? と家族を思い浮かべてしまう自分は、本当はこの職業に向いていないのかもしれないと感じている。だが、自分を信じて命を預けてくれている六十四名の乗組員達のことを考えると、弱音など吐いてはいられなかった。
頑張れよ、海斗。今度父さんが陸に上がるまで絶対に勝ち進むんだぞ。
「ソナーよりブリッジ。元級六番、速度を上げた模様」
「よし、速度十五ノットに上げ。近づき過ぎないように気をつけろ」
「了解。速度十五ノットに上げろ」
少なくともあと一週間は深海の闇とお付き合いしなければならないだろう。普通の人間であれば気の狂う環境の中、「そうりゅう」は息を潜め、中国の潜水艦を追った。
「美味しかった~。ごちそうさまです」
すっかりわだかまりも消え、心底嬉しそうに笑う夕陽の表情に、敏生も釣られて相好を崩した。
港の夜景を望む桟橋の手摺に寄りかかりながら、湾内を航行する船を眺める。
「本日はご満足いただけましたか? 姫」
「ウム、ワラワは満足じゃ」
二人はコツンと額を合わせるとクスッと笑い、そっと唇を重ねた。
「ふふっ、敏生のキス、鴨肉のソースの味がする」
「それはお互いさま」
再び二人の唇が重なり合う。今度は長いキスになった。お互いの背中に手を回しどちらからともなく密着する。啄ばむようなバードキスは、いつの間にか互いを求め合う激しいものへと変わっていき、先に耐えきれなくなった夕陽から唇を剥がした。
よろめく彼女を敏生が抱きとめ、その美しい黒髪に頬を寄せる。
二人はそのまましばらく抱き合っていたが、やがて敏生がそっと夕陽を離した。
絡み合う視線。だが、彼の口から漏れた言葉は夕陽の思惑とは正反対のものだった。
「帰るか」
「えっ?」
てっきり今夜は帰したくない、と言われるものと思っていた夕陽は驚いた表情で彼を見つめた。
「いや、帰港した翌日だし無理はいけないかな、と思ってさ」
どことなく落ち着かない表情の彼。その目が真実を語ってないと思うのは女の勘ってやつだ。
「……これから誰か他の人と会うの?」
思わず零れてしまった彼への疑念。これは言うべきじゃなかった、と思うも後の祭りだ。
だが、彼は疑われて怒るどころか、慌てて夕陽の両肩をつかむと、
「違う! 断じて違う! 神に誓って!」
と必死に弁明してきた。その彼の様子に、夕陽は素直に反省すると俯いた。
「……ごめんなさい。……でも、じゃあ何で……?」
敏生は気まずそうにガシガシと頭をかくと、背の低い夕陽を器用に上目遣いで見た。
「お前、あの時〝あたしのこと好きにしていいよ〟って言っただろ?」
あの時、というのは恐らくひと月前の訓練後のことだろう。
「その言葉がずっと頭から離れなくてさ……。この一か月、もうお前の顔見たらあたりかまわず押し倒しちまいそうで、こらえるのに必死だったんだ」
…………へ?
予想だにしなかった彼のその告白に夕陽はポカンと口を開けた。端から見たらさぞや間抜けな顔を晒していることだろう。
そういえば…あたしそんなこと言ったような気がする…。そりゃあ、あの時は彼に赦して欲しくていろんなことを口走った気が…。
そこまで思い返して夕陽はボンッと爆発した。
あ、あ、あ、あたしったら何てことを―っ!?
「だからさ…、その、俺このままだと欲望剥き出しでお前にひどいことしちゃいそうだから…。もう、お前に嫌われたくないし…」
悪戯がバレた子供のような、バツの悪そうな顔。この可愛い男が米軍からも一目置かれる日本最強のファイターパイロットだなんて、誰も思わないよね?
彼の様子に夕陽は平静を取り戻すと、
「それが敏生の言うオトナの事情ってやつ?」
と意地悪く尋ねた。
「わ、笑いたきゃ笑えよ」
恥ずかしそうにプイッと横を向いたその横顔に夕陽はクスッと笑うと、後ろ手を組んで首を傾げ、彼を見上げた。
「あたしは……いいよ? 何されても。だって好きだから、敏生のこと」
驚いた表情で自分を見つめ返す敏生から気恥ずかしさで視線を逸らし、その逞しい胸にコツンと頭を預ける。
「だから……今夜は一緒にいて。……ね?」
その自分の仕草と言葉がこの色男を完膚なきまでに叩きのめしたことなど、恋愛初心者の彼女には全くもって気づくべくもなく、ただその彼の温もりに幸せを感じて小さな身体を預けるのだった。
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