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菫川ヒイロ

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好きになってはダメな人でした

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 最近の娘の対応があまりにもそっけない。
 昔はそんなことはなかったのに、いつの間にこんな事になってしまったのか
 私にはまったく身に覚えがないのだ。一体私の何がいけなかったのだろうか?
 何が間違っていたというのだろうか? 今更育て方を間違えたなんて言われても
 リセットするにはもう面倒だと感じる年頃になってしまっているのだ、私は。
 
 
 何がそんなに不満なのだろうか?
 娘が望む物は何でも買い与えてきたというのに、何不自由なく育てて来たのにど
 うして私に対してそんな態度が取れるのだろうか? こんなにもいい父親など何
 処にも居ないのではないだろうか? 世界で一番のパパのはずだったのに……
 今ではランキング外になってしまったようだった。
 
 
 こんな事が信じられるだろうか?
 昨日まで世界一位だったのに翌日にはランキング外になるなんて事がこの世に存
 在するとでもいうのか? 無くはないか……でもすぐにランキング外なんて事は
 無いのではないか? そうでもないか……でも……もうこの話は止そう。別にそ
 ういう話をしたい訳ではないのだ。
 
 
 要は私がどれだけ娘の事を愛しているかという事につきるのだ。
 正直こんなに自分以外の者の事を考えた事など今までなかったから、こんなにも
 気持ちが落ち着かない事があるなんて知らなかった。常に娘の事ばかりを考えて
 いるような気がするが、自分がこんな風になるなんて予想だにしていなかった。
 
 
 初めて娘の顔を見た時はまったくといっていい程可愛くなかった。
 突然に現れたそれに私が興味を示す事などなく、このよく分からない生き物がこ
 れから自分の家族になるのだということを受け入れなければならないという現実
 にうんざりしながらも、これで一応の役割は果たしたのだという事で納得する事
 にしたのだ。


 名前なんてどうでもいいだろとは思ったが、妻からつけて欲しいと言われ、それ
 が役目なのだと言われてしまえばそうせざるを得ない。だからまあつける事にし
 たがそれなりに悩んでしまったのが全ての始まりだったのだろう。命名するとい
 う事がこんなにも私をしばりつけるものなのだとは思いもしなかったのだから。
 
 
 フロリア
 それが私がつけた娘の名前だった。特に変わった事のない名前に落ち着いたのは
 よかったと今では思っている。あの時はもう何が正解なのかが分からなくなって
 いて特殊な名前の方が凄いのではないかとか、一体何に対して張り合っているの
 かも分からずに頭が悪い名前を付けようとしてしまっていたからだ。
 
 
 名前を決めて、初めて娘を呼んだ時に私は何故か分からないが泣いてしまってい
 た。涙が溢れて止まらなかったのだ。そして何よりもまったく可愛くなかった子
 がとても可愛く、愛おしく思えた。自分以外にこんなにも大切なものがこの世界
 にあるということをその時初めて知った。
 
 
 この子の為ならば何でも出来ると言い切れるぐらいになった私は本当にフロリア
 の望みを叶えるために何でもした。ただフロリアが喜んでくれるだけで私は幸せ
 を感じる事が出来たのだ。こんな事があるなんて知らなかった私にとってそれは
 とても喜ばしい発見であった。
 
 
 今まで散々遊んで来た私だが、こういう形の快楽は知らなかったからだ。
 悪くはないと思えたし、寧ろフロリアを喜ばす事にのめり込んで行ったのは当然
 の行動だった。そこに快楽があるのなら突き進むのが私なのだし、そうやって生
 きて来たし、生きていいのだから。それが貴族というものだった。
 
 
 だからそれが出来なくなってしまったのは私にはショックだった。なんでもして
 あげたいのに、フロリアはまったく相手をしてくれない。どういう事なのかが分
 からないから私は聞いてみる事にしたのだ。それが何よりも早い解決方法だと思
 ったからフロリアに近い年頃の娘を注文する事にした。
 

「何をされれば喜ぶんだ? 」


「さあ? 私は学校なんて行ってないし分からないけど、あれじゃない学割とか
 クーポンとかで喜ぶんじゃないの? 知らないけど」
 

 この緑色のインコのような髪色もそうだが、その答えに私はこの女が何を言って
 いるのかがまったく分からなかった。だからすぐに諦めた、こんな者にフロリア
 の気持ちなんて分かる訳がなかったのだ。私は少し冷静になるべきなのだろう。
 たかが庶民になどそんな頭がある訳がなかったし、そもそもこれはただのおもち
 ゃでしかないのだから。

 
 私はいつもの様におもちゃで遊ぶ事に切り替えた。
 それが貴族としての嗜みだし、最近フロリアに無視されているせいで飢えていた
 からちょうどよかった。ああ、どうすればフロリアは昔のように戻ってくれるの
 だろうか? あの世界で一番だった頃に早く戻りたいとうのが今の私の願望なの
 だ。
 
 
 そんな事を考えている間に全ては終わってしまっていた。








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