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菫川ヒイロ

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好きになってはダメな人でした

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 学校までのおよそ30分を車の中で過ごす私は大体外を見て過ごしている。
 もう何度も通った道だから何処に何があるかなんて事は覚えてしまったけれど、
 行きかう人は変わって行く。大体の流行りなんてものも道行く人を見ていれば分
 かるようになってしまったが、そんな事よりも私は常に目線は制服を探している
 のだ。
 
 
 いつも見る度にいいなと思う。私も一度は着てみたいなんて思うけれど、生憎私
 が通っている学校は制服ではないのだ。まあ当然だろう、貴族が制服など着る訳
 が無い。みんなと同じ格好なんてする事に何ら魅力を感じない、常にオンリーワ
 ンでないと気が済まない、そんなアイデンティティを持っているからこそ貴族と
 して生きれいられるのだ。
 
 
 だから他人と同じものを着るなんて馬鹿な事をしていれば嘲笑される対象になっ
 てしまうし、一度そうなってしまえばもうそこから抜け出すなんて事は出来ない
 世界である。だからそんな私の願望は願望のままで終わる事になるだろうけど、
 憧れるぐらいはなにも問題はないし、寧ろ制服を着る事が逆に個性的になるので
 はないかとさえ最近考えるようになった。まあ、そんな事はないのだけど。
 
 
 それは一週間前の出来事だった。
 信号は赤、車は交差点で止まっている中でそれは起こったのだ。
 
 
「あ、あの、これ」


「え? 何? え? 」


 そんなやり取りが私の車の外で行われていたのだ。
 手紙を渡したのは男子生徒、戸惑っていたのは女子生徒。
 これはもしかしてと思った私が車の窓からガン見をしてしまったのは仕方が無い
 事だと思うのだ。だってそんな瞬間を見れる事なんてそうそうない事だったし、
 誰だって当然その後の事が気になるに決まっている。
 
 
 それで? どうするんだ?
 なんて見ていた私と男子生徒の目が合ったとき彼の驚いた顔といったらもう、あ
 の時程信号が変わってくれた事に感謝した事は無かったけれど……でもその後の
 事が分からないまま、その場を去る事になってしまったのは仕方が無かったとは
 いえ残念すぎた。
 
 
 それからというもの私はずっと探している。
 あの子達がどうなったのかを知りたくて、通学中はずっとあの制服を探している
 のだ。女生徒のあの制服はベッピン女学院のものだったし、男子生徒はイケメン
 学園のものだった。だからその制服を見るとついつい隣を確認してしまうのだ。
 
 
 私は探しました。
 結構真面目に探したのは私が他人の恋愛が気になっちゃう系女子だからで、探し
 た結果……見つかりました。
 
 
「あっ、居た――!!! 」


「お嬢様、静かにしてください! 」
 
 
 すかさず運転手に怒られました。
 確かに私は大声を出したのかもしれない。しれないけれどそんなに怒る程の事で
 はないはずだし、そもそも私に怒鳴るなんて事が許されるなんてありえません。
 だって私は貴族なのだから。
 
 
「ちょっとアンタ、誰に言っているの! 」


「静かにしてください! 」


 まただ。またこの運転手風情が私に口答えをしてきた。
 分かっているのか? 私とお前では立場が違うという事が。一体どういうつもり
 でそんな事を言っている? ふざけているのだとしても面白くもない。
 
 
「辞めさすわよ! 」


「し・ず・か・に! 」


 流石にもう限界である。
 三回も私に口答えをするなんてありえない。死んで詫びる程度で済ませたりはし
 ない。当然、こいつの家族も親族も全部に地獄をみせてやる。貴族に逆らうとい
 う事がどういう事なのかを分からせなければならない。私はパパにいいつける系
 女子なのだ。
 
 
「止めて! もういいわ、アンタはクビよクビ! そしてこれから自分がどれだけ
 馬鹿な事をしたのかを後悔するはめになるわ! 」
 
 
「いいから静かにしろ! 」


 運転手はそういうと目的地である学校を素通りした。
 私は遠のいていく学校を横目に今の状況を整理すると、これはアレだな、誘拐っ
 てやつだなと目星をつけた。まったく、今日はどうなっているのだろうか? 
 こんなにも質が悪い者たちがどうしてこうも潜り込めるようになってしまったの
 だろう。まったく無能程夢見がちだ。自己評価が異常に高い奴ほど決められた事
 が出来ない。それがまるで優れている証拠とでもいうようにルールを守れないか
 ら周りが迷惑するのだ。
 
 
「はあ~、まったく面倒くさいな。汚したらどうするのよ。血って落ちないのよね」


 そもそも甘く見過ぎていると思うのだ。そんなに簡単にさらわれるような事なん
 てある訳がないし、大体何も準備をしていないなんて事があるとでも? こっち
 はもう何度も誘拐されそうになっている系女子である。
 
 
 ふぁああああああああ
 
 
 クラクションが鳴り響く中、私は言うのだ「静かにしなさい! 」って。
 
 






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