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菫川ヒイロ

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好きになってはダメな人でした

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「あ、来たんだ」


 私が席に着くなりそういったサチコ。
 確かにもう帰りたい気分ではあったがさらに上塗りされた状況である。
 警察だのなんだのといろいろと手続きが面倒ではあったが、まあ私が明らかにイ
 ラついているのが分かったようで学校まではパトカーで送ってくれたのだ。さす
 がにそこから帰るのもどうかと思って一応顔を出したまでである。
 
 
「すぐに帰るわ」


 だからそう返事をしたのに眉を寄せるサチコ。
 いやいやお前の所為でもあるんだぞとは思ったけど、まあそれは言わないでおい
 たのは相手がサチコだからだ。
 
 
「嗚呼そうそう、フロリアがこの前言ってた子を見たわ」


 急にそんな話題をフッて来たサチコにそう言えば話していたかもと今更ながら思
 い出した私は今朝の事を思い出して少しイラっとした。もうその話はしたくはな
 いし、結局付き合っていないという事が分かったのだ。恋愛に興味がある系女子
 の私にとってはもう興味がなくなった話題である。
 
 
「金髪ロングの子が角刈り襟足長めと歩いているのを見つけたのよ。あれは完全に
 付き合って居るわ。残念だったわねフロリア」
 
 
 取り敢えず頷いておく事にした私。
 
 
「まあ確かに可愛い系というかカッコいい系ではあったわね。寧ろ角刈りの方が可
 愛い系に見えたし。なんていうのかな、相性がいいのかもねああいうのは。ほら、
 自分に持っていないものを相手に求めるってよく言うじゃない? そういう事な
 のよねやっぱり」
 
 
「へえ、そうなんだ」


 私はサチコが何の話をしているのかまったく分からなかった。
 
 
「だからアンタが入る余地何て一ミリもないわよ。仕方が無い事ってあるけどこれ
 は完全にそれよね。さっさと諦めるべきよ。私っていつまでもごねてるような奴
 をみてると吐き気がしてくるからそれが絶対にいいわ、そうしなさい」
 
 
「それはそうね」


 確かにそんな奴はうざいだけだから同意するけど、サチコの為に私が何かをする
 なんて事がある訳がないよね。確かに私は気にはなっていたが、それがどうして
 私が彼の事を好きだという事になるのか意味がわからないし、どう考えたって結
 びつかない。そもそもどうして私が二人の間に割って入っていくような話になっ
 ているのか? 私はただ恋愛模様を見たかっただけである。
 
 
 大体誰だよ、金髪ロングと角刈り襟足長めって。
 そんな奴らだったなら私はすぐに見つけられただろうに。
 
 
「それにしても金髪ロングはまあわかるんだけど、まさか角刈り襟足長めとは流石
 の私も驚いたわ。ああいう髪型をする人っているのね、庶民の事なんてさっぱり
 分からないけどああいうのって私達の間じゃ絶対に流行らないわよね」
 
 
 なんでここで髪型の話? 流行るかどうかとかそんなの知る訳がない。
 だって私は女なのだから。
 
 
「だってあれは女がするような髪型じゃないわよ、絶対」


 んっ? そっちなの! というかちょっと待て、これは一体どういう話なんだ? 
 もう法螺なのかホラーなのか分かりづらくなってきた。確かにサチコの話は何時
 だって滅茶苦茶だし適当だけど、それでもそんな未知の生物が出て来てしまった
 らそれはもうホラーの領域だろう。それを私は求めてはいなかった。
 
 
 これ以上サチコの話を聞いても仕方がないので私はやはり帰る事にする。
 もう今日は疲れすぎた。これ以上の面倒事はごめんなのである。
 
 
「帰るわ」


「えっ、もう? 」


 いやいやもう十分だろうに。これ以上は流石に笑えない。
 笑えない話をするようなサチコにはもう価値がないのだから、このまま付き合う
 意味はないのだ。後は勝手にして欲しい。
 
 
 私は保健室へと直行して帰る準備を整える。
 学校から勝手に帰るなんて事は出来ないようになっているが、それは建前上であ
 って方法ならばいくらでもあるのだ。
 
 
「あれ、出ないわね。今日って何かあったりする? 」


 保険医が家に電話をしているがどうやら誰も出ないようである。
 そんな事があるのかと思ったが時計を見ればまあそういう事があるのかもしれな
 いと思った。
 
 
「大丈夫ですよ先生。私、車で来ましたから」


「そお? 一応家に着いたら連絡してね、そういう決まりだから」


「はい、わかりました」


 そして私はゲートを出てから思い出すのだ。確かに車では来たがそれはパトカー
 であって家の車ではなかったという事を。
 
 
 




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