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されど初恋
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しおりを挟む彼と実際に会ったのはクラス替えを経てである。
彼は私の事など知らないけれど、私はもうとっくに彼の事を知っているという
実に有利な状況下の中で私は彼と初対面を果たす事になった訳ではあるのだが、
正直物足らないという感想であった。
まず、このクラスにテーナが居ないというのが一番悔やまれる所である。
どうしてここに居るべき人がいないのか? 私がここに居るよりも彼女がここに
居るべきだったであろう事は明らかなのに何故か私だけが同じクラスになってし
まったのだ。明らかな配置ミスである。
私が見たかったのはあくまでもテーナなのであり、そして彼を前にした時の彼女
の動向を見ていたかったのだ。それが見れないなんて意味がないではないか!
なんて思っていたけどまあこればかりはどうしようもないし、機会がないという
訳でもないだろうからそれに期待する事にした。
そして何よりも残念だったのは彼がまったくもって忍者ではないという事だ。
運動が全くもって出来ないのである。俊敏さとかが皆無だし、常にちんたらとし
ていて無気力というか何をするにしてもやる気がないというのが彼の印象だった。
だからつい本音が漏れてしまった。
「アンタにはがっかりだよ」
「? 俺に期待なんかしているなんて変わってるな」
私の嫌味にそんな返しをされた瞬間、少しムッとしたがなんとなくテーナの気持
ちが分かった気がした。そうかそうか、こういうタイプだったのかと彼の認識を
改める。よくよく考えてみればそうなのだ、誰も彼もが必死になって自分をアピ
ールするのが当然だとばかり思っていたし、そうしておかないと生きてはいけな
いようになっているのに彼はまったくしないのだ。
寧ろ逆を行って隠そうとさえするからこっちから見つけないといけない。
それが面倒だと思ってしまうからもしれないが本来はそれが自然だし、アピール
をする方が不自然なのだ。そもそもアピールなんてものはいつだって過大広告で
あり、いかに自分をよく見せるかというまやかしでしかない。
結局は本質を誤魔化しているだけなのだから分かったようでいて実際は何も分か
ってはいないなんて事だらけだろう。現実は上辺だけの世界だって分かっている、
分かってはいるけどそれが楽だしそれが正しいと思ってみんな生きている。馬鹿
にされたり、蔑まれたりはしたくない、誰だってよく見られたいと思うものだ。
だというのに彼の行動は不可解で、そんな彼の事を私はもっと知りたいと思って
しまっているのだ。他人を知ろうとするのは当然興味があるからで、そしてその
感情の行きつく先は恋なのだ。そして私は恋に落ちる、あまりにもありきたりで
どこにでもあるような話だった
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