26 / 425
婚約破棄が出来るとても素晴らしい世界で祝福を!
3
しおりを挟むコーヒーの香りを嗅ぎながら優雅な時間を過ごす。
あれからヒメラルダからは何の要求もなく、本当に婚約が破棄されたという
証明書と謝罪文、あとはちょっとした贈り物が届いた。まあそれがこのコーヒー
セットなのだが中々にいいものである。
最近の俺の楽しみは専らこの一時である。
コーヒーを飲みながら新聞を読むという時間の使い方が何よりも俺を落ち着かせ
てくれるのだ。
ブ―――――!!!
だからこうして口からコーヒーをぶちまける日が来るなんて思っていなかった。
結局最後までヒメラルダは俺を弄ぶ女だった。
「王子と婚約しただと! 」
コーヒーまみれの新聞の記事には王子と一緒に写っているヒメラルダの写真が
載っていた。意味が分からない、どうしてそんな事になっているのかが理解出来
ない。だってあのヒメラルダだぞ? 雨の中待っていた俺を馬車が汚れるからと
いう理由でそのまま放って帰った奴だぞ? いつだってつまらないからと理由だ
けで俺に無理難題を言ってくる奴が王子と婚約だなんて出来る訳がない!
俺は信じられないので家を飛び出した。
そして店に置いてある新聞をとりあげるとそこには確かにヒメラルダと王子の
婚約の記事が載っていた、どうやら本当の事らしい。
「お客さん、困りますよ。それ売り物なんですから」
「ああ、すまない。買うよ」
ポケットに手を入れた俺は金なんて持っていない事に気が付いた。
****
それからというものヒメラルダはどんどん上り詰めて行った。
最早、国内外で彼女の名前を知らぬ者などいないくらいなってしまった。
一体何があったらこんな事になるのだろうか? 俺にはまったく分からない。
これでは結局は俺が駄目な奴だったからという事になるではないか。
全ては俺が悪かったのか?
そんな訳はない! 彼女は元からおかしかったし、あれは生まれつきそうで
あったのだ。だから俺が何かしたなんて事はない! 寧ろ俺だからこそ彼女は
どうにかやってこれたのだ、普通なら殺されたっておかしくないような所業を
していたはずなのだ。
「ああ、そうか」
そして俺は答えに辿り着く。
「ヒメラルダは転生者だったんだ」
だってそうじゃないと辻褄が合わない。
でもだからと言って今更俺が何かを言うなんて事もまた違うから、俺はただ彼女
を祝福するだけなのだ。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる