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菫川ヒイロ

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そこに愛はありますか?

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「ちょっと行って呼んで来てよ」


「なんで俺なんだよ。面倒くさい」


 食事を並べ終えた母は何度呼んでも下りて来ない姉にしびれを切らし俺に命令を
 するがそんな事は知った事ではないし、放って置けばいい。俺はちゃんとこうし
 して食卓へ降りて来たのだから早く食べたいし、お腹がへっているからこそそう
 返事をしたというのにさらに母は言う。
 
 
「面倒臭いって何よ! アンタ、弟なんだがらそれぐらいしなさい! 
 お母さん今日忙しいんだからね。これから藤田さん所に行かないといけないし、
 バレーボールの練習もあるんだから! 」
 
 
 そんな全てが納得できない理由で俺を動かそうとする母にこれ以上何かを言った
 所で何が良くなるものでもない事は分かっているから仕方なく俺は動く事にした
 のだが……弟にそんな役目はないはずなのに、まったくもって嫌になる。


 そもそもバレーボールだとか言っているがあの柔らかいボールでやる方だし、
 あんなのの何が面白いというのか? おばさんが集まってやるような事じゃあ
 ないだろう。そもそもどっちがボールか分かったものではないじゃないか! 
 なんて思いながら階段を上がり二階へ行くとすぐに姉の部屋だ。
 
 
「姉ちゃん、飯! さっさと下りて来いってさ」


 俺がそう言っても返事がない。
 寝ているのかもしれないが一応確認のためにそっとドアを開けて中を覗いて見た
 ら芋虫みたいに毛布に包まった姉と目が合った。暗くした部屋の中でテレビの灯
 りが姉の顔浮かび上がらせており、もはや妖怪のようだった。
 
 
「げっ! 」


 だからそれは反射的に出てしまった。
 寧ろ気持ち悪いと言わなかっただけマシだし、よく我慢したと褒めて欲しいくら
 いだったのに、ここにはそんな事を理解してくれるような心優しい人は居ない、
 居るのは芋虫のような妖怪だけだった。


「ノックぐらいしなさいっていつも言ってるよね? 」


 また面倒臭いのが始まってしまった。
 これだから呼びに行くのが嫌だったのだ。
 








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