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夏の思い出
2
しおりを挟む彼に初めて会った時の事を私は正直覚えていないのだが、彼が言うには最悪な
出会いであったようだった。でも私にはまったくそんなつもりはなかったし、
そもそも覚えていないのだからどうする事も出来ないけれど、確かに彼の私に
対する態度は最初あまりいいとは言い難かった。
「ねえ、ここってどうすればいいの? 」
私は丁度隣に座っていた彼に聞いたのは一人黙々とキーボードを叩いていたから
だ。習うより慣れろという実践派の教師の授業は私にはいささか難しくって、
だからこういう時は誰かに聞くのが一番いいというのが私の経験則でもあったか
らそれに従っただけである。
でも予想外なのは彼が私を無視したという事だろう。
私が話しかけているのは明らかなのに無視をするなんてどういうつもりなのか?
そんな人間に出会った事などなかった私には衝撃的であったし、どういう教育を
受けて来たらそんな風に育つのか分からないが私がここで引くという選択肢は
無かった。
「ねえ、ちょっと。聞いてるんだけど? 」
私は彼の方を向いて正式に声を掛けた。
これで無視なんて出来ないだろうと思っていた私の予想を超えた彼の対応に私は
苦笑いを浮かべるしかなかった。
「チッ。何? 」
こいつ今舌打ちしやがったとは思ったがそれでも私は冷静に聞いたのだ。
それは大人の対応であったと思う。こんな事ぐらいで私は目くじらを立てたりは
しないのだ。だというのに、
「知らない」
画面をのぞき込んで来て言ったのはそれだけで、すぐに自分の席へと戻り作業を
始めた。いやいやいやいや、そんな訳ないじゃん。どうして自分のは出来るのに
私のは出来ないのよ。これはもうただの嫌がらせでしかないと判断した私には
もう十分に文句を言う資格があった。
「そんな訳ないじゃん! どうしてそっちは出来てこっちは出来ないのよ! 」
それは当然の疑問だし、追及でもあった。
「それ、俺の使ってるスライスソフトじゃないから使い方とか知らない」
画面を見ながらそう言った彼。
こっちを見ながら言われていたらきっと私は耐えられなかったであろうこの羞恥。
耳が熱くなっているのを理解しながらゆっくりと画面の方へと顔を向けた私は
そのまま教科書を熟読する以外に解決方法が見当たらなかった。
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