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夏の思い出
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しおりを挟む「遅いな」
待ち合わせ場所に時間よりも早めに着いたのは少しばかり浮かれているからかも
しれない。結構気合を入れて準備をして来たし、そこは褒めて欲しいと思うが
実際にどんな反応を示すのかは分からない、だって彼だから。
だから彼が遅れて来るのもまあアリかもしれない。
本当なら私が遅れて来る方がそれっぽいのかもしれないけれど、こういうのは
一つ借りという事にしてあげよう。彼が慌ててやって来る姿が見れると思えば
そう悪い事でもないだろう。そう思っていたが結局彼は現れなかった。
場所も時間も何回も確認したし、連絡を取ろうとしたけど取れなかった。
一体私は何をしていたんだろう? あんなに浮かれて何を期待していたのかと
自分を罵ってみても答えなんて出なくて、結局これは何かの嫌がらせみたいな
ものなのかとさえ考えてしまった。そんなはずはないのに、彼がそんな奴じゃ
無いって私は知っている。
本当に? 私は彼の何を知っている?
彼が好きなものを何か知っているだろうか?
まだだ、全部これから知って行くはずだったのだ。
これから彼の事を知って行くはずで、私の事を知ってもらうはずで、
なのにどうしてこんな事になってしまったのだろう。
「帰ろう」
そして私は知ったのだ、電車が動いていないという状況。
ついていないと思いながらもどうやって帰るかを調べている中でどうして電車が
動いていないのかを知った時、嫌な予感しかしなかったのを今でも覚えている。
*****
私がそういう体質だとかそういう事は無かったはずである。
でも今こうしてしっかりと彼が見えているし、ちゃんと意思疎通も出来ている
のだ。
「ねえ、ちょっとそこどいてくれない? 」
「え? 別に通れるだろ? 」
「ぞわぞわってするから」
「そうなの! 俺はなんともないんだけど」
死んだはずの彼が私の前に現れて、何故か私の家に入り浸る事がある。
今もテレビを見ていたりするけれど、それが最近は特別な事では無くなって来て
いるのは少し問題なのかもしれないと思い始めている。ほぼ同棲みたいになって
いる気がするし、あまりよくないと思うのだ。
爛れた関係
とまでは言わないがきっと私はこれからもずっと忘れる事はないだろう。
こうやって彼と一緒に過ごした日々を、誰に話した所で信じてなんて貰えない
だろうからずっと胸の中に閉まっておこうと思う。大切なものはいつだって
秘めておくべきだから。
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