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菫川ヒイロ

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フラグ

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「ようロッペン、調子はどうだ? 」



 見知った顔が殆んど見当たらなくなった戦場で俺に声を掛けて来たのはコンドル
 騎士団のモーリスだ。この男、一体どれだけの戦場を潜り抜けて来たのか分から
 ないがあまりにも普通だった。他の騎士団の者達はそれと分かるがたいと雰囲気
 があるが、この男にだけはそれが当てはまらない。
 

 
 がたいもいたって普通、俺とそう変わりはない。
 そんな奴が騎士団の団長をやっているなんて信じられるだろうか? 俺は全く
 信じられなかったのだ、そもそも同じような民兵だとばかり思っていたぐらい
 なのだ。
 

 
「最悪だよ」



 だからそんな口の利き方をしたらただではすまないような答え方をする。
 きっと他の団員がこの場に居たら目をひん剥いていた事だろう。でも俺のそんな
 言葉遣いを気にもせずモーリスは笑った。
 

 
「ははは。緊張はしておいた方がいい。そうでないと感覚が研ぎ澄ませないからな
 すぐに殺られちゃあ意味が無いんだ今回の作戦は。なあに、これでお前も胸を張っ
 て帰れるさ。なにせこれが上手く行けば勲章ものだからな。良かったじゃないか
 これで結婚出来るぞロッペン」
 
 

 そう言って俺の肩を叩いたモーリス。
 どうして俺はあの時余計な事を言ってしまったのだろう。
 否、そもそもあれは俺のミスだったのだろうか? 完全に仕組まれていたように
 さえ思えて来るのはモーリスという男がどういう奴なのかを知ったからだろう。
 
 

 確かに極限状態だった。
 周りの奴らがどんどん死んでいく中で、どうにかその日を生き延びた俺達民兵に
 酒が振る舞われたのは褒美などではなかった。あの輪の中にモーリスが混ざって
 いるなんて誰が想像出来ただろうか? 俺は緊張から解放されていつも以上に酒
 が回っていた。
 

 
「俺は帰ったら必ず結婚する。反対されようが関係なんかあるもんか、
 あんな糞親父なんてぶっ飛ばしてやるんだ。文句なんて言われてたまるか!
 戦場から帰って来るだけでも凄い事なんだからな、誰にも文句は言わせねえ」
 
 

 そう息巻いていたのを聞かれていたのだ。
 みんな自分の事を聞いて欲しかったのだ、いつ死ぬのかも分からないこの状態で
 誰か一人にでも自分の事をしっていて欲しい、存在していたのだと覚えておいて
 欲しい、そんな思いからみんな話し始めた。
 

 
 でもそれは弱みを見せるという事でもあった。
 そうやって団結力がつく半面、もう逃げられなくなってしまう。
 運命共同体なんていうただの枷をつけられてしまった。
 
 







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