44 / 425
終わらない物語
6
しおりを挟む夏休みが終わった。
これと言って何があったと言う訳でもない俺の夏はただただ室内で過ごすという
事に重点が置かれていたのだ。暑すぎるから授業が出来ないなんて事は冷暖房が
装備されている昨今ではあり得ない言い訳ではあるが嫌いではない。夏休みがな
い学生生活など存在理由がないのだから。
教室には日焼けをした生徒がそれなりにいて何となく夏を実感しながら席に着い
た俺は何も変わらず二学期を迎えるはずだったのに……残念ながらそうはならな
かったのだ。目の前の空席。それがどういう事を意味するのかが分かるのは数日
が過ぎてからで、それはまあ俺が俺だからという理由だった。
どうやら学校を辞めたらしい。
そんな噂が俺の耳にも入るぐらいに広まっていたのは彼女がそれなりに有名人と
いう事もあるのかもしれないが、何よりも噂が好きな人間は当然のように存在し
ていてそういう輩はよくしゃべるのだ。その空っぽの頭の中のテープは擦り切れ
るまで回り続ける。
男遊びが酷かっただとか、歓楽街で見かけたとか、妊娠したから来れないとか、
いろんな噂が降って湧くのはなかなかの勢いである。そもそもそんな突然に出て
来た話など誰が信じるのだろうか? なんて思ったがそう言う事ではないのだ。
本当か嘘かなんて事はどうでもよくて、ただそこにある不幸がみんな大好きな
だけだった。
元を辿ればフラれた相手だったり、賞味期限の切れた嫉妬だったりとどれもくだ
らないものというオチがあったとしてもそんな事など誰も興味などなく、未だに
必死にしがみついているものも居たがやっと話にも陰りが見え始めた頃、俺を
呼び出すメールが着ていた。示された場所へ行くかどうかなんて迷う事もなく
俺が直行したのはその場所がよく知っている場所だったからだ。
「意外と元気そうだね」
「そお? こう見えても私もうすぐ死ぬのよ」
久々に会ったというのにそんな事を平然と言う彼女。
予想はしていたし、覚悟ならあったけど実際に言われるとなんともずっしりと
くるものがある。ましてやここは病院で、シチューションとしては最高だった。
「それで? 俺は何をすればいい? 」
「思った通り察しが良くて助かるわ。
一生のお願いだから私に物語を、最高の物語を持って来てほしいの」
それは本物のお願い。
本当に一度きりの願いだったから俺は聞き入れる以外に選択肢はなかった。
そして物語に全てを捧げるなんて事を選んだ彼女に最高の物語を贈ろうと
俺はその時に決めたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる