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終わらない物語
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しおりを挟む静かな廊下を歩いているのに鼓動は走っている時のそれのようだ。
この懐かしい感覚に少しばかり昔の記憶が蘇るが、すぐに首を振る。
それでも何も変わらない顔で俺は彼女に挨拶をする、本番である。
「やあ」
でも彼女からの返事はない。
当然だろう、理由なんて分かっているけどそれでも気にせずに俺はパイプ椅子に
座った。
「何よこれ。こんなつまらない男の人生に興味なんてないわ。大体、この男の人生
はまだまだ先があるじゃない。終わらない物語なんて必要ないって言ったでしょ
私は! 馬鹿なの? なんて事をしてくれたのよ! 私には無駄な時間なんてな
いのよ! 」
「そうだね。だから君がこの物語を終わらせればいいよ」
「どうして私がそんな事をしないといけないのよ! 」
「君が最初で最後の恋人になってくれれば、俺の物語は完結するんだ」
人には物語が必要なのだ。
「私はこっち側の人間なの、決して舞台になんてあがったりはしないの」
彼女がそんなタマである訳がないと俺は知っている。
「君は十分に主人公になれるよ。余命が決まっている若い美少女とそんな彼女の
弱みに付け込んで付き合おうとするクズな男。それだけで凄い物語が出来そう
じゃないか? 」
「何よそれ。絶対に碌な話にならないじゃない」
実際に作り物のように綺麗な物語なんて存在したりはしない。現実はもっと醜く
て悪臭が漂うようなそんな物語しかないからこそ俺が変えてしまおう。どう考え
たって碌な事にならないと分かっているのならそうでなくしてしまえばいいだけ
なのだから。
自信ならある。
彼女が何を求めているかなんて言わなくたって分かるし、俺が彼女の為に出来る
事をすればいい。そんな事ならば得意分野だ。
「どうだろう?
『本当にそうなのか試してみるのも悪くはないと思わないか? 』 」
こんなありふれた台詞でも彼女なら分かるだろう。
ならそれだけで十分だ。さあ始めよう彼女が満足できる物語を。
どんな道化だって演じてみせるさ、これでも少しは有名な子役だったんだ、
アドリブぐらい難なくこなせるぐらいの力量はある。
だからこの終わらない物語を始めよう。
君に最高の物語を捧げることを誓うから、
最後まで君の側に居させて欲しい。
一生のお願いだから。
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