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菫川ヒイロ

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同居人

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「またなの? 」


 そう言って私は見つけた服を放り投げた。
 音も無く落ちた服に悪気がある訳がないのだが、だからと言って私に彼との日々
 を思い出させるに十分な役割を果たすそれに嫌悪感を抱くのは仕方がない事だと
 私は思うのだ。
 
 
 どうせ出て行くのならばこんな思い出さえも全て持って行って欲しかった。
 
 
 彼と出会ったのはおそらく何軒目かも分からない居酒屋で、その時には既に私の
 意識は朦朧としていた。分かっている、飲みすぎだという事ぐらいは……
 でもそうせずにはいられない、そんな日が誰にだってあるはずでしょ?
 だから少しくらいは許して欲しい、明日からはちゃんとするから今日ぐらいは
 今夜ぐらいは、私の気が済むまで飲ませて欲しかった。
 
 
 目が覚めたのはベットの上。
 一体どうやって帰って来たのかは分からないけど、それでもどうやらちゃんと
 帰って来た事に私は安堵しながらもズキズキする頭とこれからどうするかを考え
 ないといけなかった。今日も仕事である。
 
 
「はい、水」


「ありがとう」


 取り敢えず水を欲していたからゴクゴクと音を立てて飲んだ水は嘘みたいに美味
 しい。きっと何処かの有名な湧き水ぐらいにはおいしいのでは無いだろうか我が
 家の水道水は。カラカラの身体に沁み込んでいった。
 
 
「ふう~」


 トイレで一休みしてから私を待っていたのはザ・朝食であり、そして私はそれを
 美味しく頂いた。流石に苦しくはあったがそれでも食べたのはけじめである。
 
 
「いいよ片付けるから、準備したら? 」


「そう? 悪いわね。ごちそうさま」


 そして私は準備をした。
 鏡に映る自分の顔をみて酷い顔をしているなと思ったので、いつもよりも念入り
 に化けてみた。まあ別にこれぐらいは問題なかろう、及川さんよりも薄化粧では
 ある訳だし。
 
 
 身だしなみを整えてから家を出る。
 
 
「えっと……」


「分かってる分かってる、早くしないと遅れるよ? 」


 そう言われて時計を見た私は、確かにそうだなと思い心残りながらも急いで駅ま
 で行く。
 
 
「いってらっしゃい! 」


 そう言って送り出されるのはなかなかに気分がいい。
 





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